第14話
女神「女神界で『絶対こいつには異世界転生したくないランキング』1位です! おめでとうございます! どんどんぱふぱふ〜♪」
アレン「
アレンです。『前回のあらすじ』『後日談』『本日のテーマ』の三本立てでお送りしたいと思います。
それでは前回のあらすじから。どうぞ!
どうしても女の子の柔肌に触れたい俺は性懲りもなくハイ・エルフのアウラに決闘を申し込む。
全身に黄金比が適用されているシルフィと違ってアウラはグラビアスタイル顔負けのスタイル。いや、むしろ勝っているレベルだ。
シルフィを美乳美人と表現すればアウラは巨乳美人。その豊かな双嬢の女神に埋もれたい、いや埋もれパイと考えてしまっても無理はない。
そこで俺は新入り奴隷との親交を深めるという名目でアウラと対局することを決意する。
切り出すタイミングを見計らっていたときのことだ。
「お可愛いこと」
畑しか耕せない無能なご主人様とも思っているのだろうか。なんと向こうから嘲笑を浮かべて煽ってきた。
美月ちゃんから「お兄ちゃんって将来、すぐキレる老人になりそうだよね。でも私が介護してあげる。真冬の商店街に放置してあげるから安心してね」と言われたことのある俺は怒りを表に出すようなことはしない。
というか、美月ちゃん! 当時はなんて優しい妹なんだろう、なんて思ったけど、後半ただの虐待じゃねえか!
そんなわけでぐいぐいアウラに近づいていく。
おっぱいやお尻、脚を見ていることがバレていたことを盗聴で知った俺はアウラの目をしっかりと見据える。
くそっ……! 見たい! 本当は見たい! 男を惑わせずにはいられない凹凸のあるアウラを視姦したい。だが、我慢だアレン。
いずれ
女性の噂が伝達するスピードは相対性理論を凌駕すると聞く。
休憩中に「もうマジ最悪。セクハラ社長にめっちゃ脚見られてさあ」「うっそ。キモーい!」などと盛り上がらせるわけにはいかない。これからマジマジと凝視するのはやめよう。
とはいえ、だ。俺もお猿さんなのである。たわわに実った果実があるなら収穫して楽しみたい。
ではどうするか。みなさんお分かりだろう。そう。罰ゲームを利用する。
「リバーシで勝負だアウラ!」
これを馬鹿の一つ覚えと言います。
☆
「……一色に染まった場合はわたくしの勝利でいいんですのよね?」
「チェックメイトですわ」
「もう詰んでおりますわよアレン様」
「え? 繊細な風で一片を抜き取るのは卑怯? ジェンガをなんだと思ってるんだ、ですの?」
なぜだ⁉︎ 俺はまさかタイプリープしてきたのか⁉︎ この
案の定、返り討ちにあった俺はアウラに命令権を譲渡するだけの悲惨な結果に終わっていた。完パイ、いや完敗。
「俺はまだ本気出してない」
小物! 圧倒的小物感!!!!
なんたる器の小せえ男だ! お願いだ女神様! 俺に大きな度胸とイチモツをください!!
逃げなければ……!! 一秒でも早くこの場を去らなければ!
勝者は敗者に一つだけ好きなことを命令できる? ワシ聞いてへん!
会社や役所の幹部がやたらと抜く宝刀「ワシ聞いてへん」を今こそ発動するときだ。
俺は自分の両目が潤んでいることを自覚しながら、シルフィママに泣きつくことにした。
なーにが、
「アウラの実力が知りたいから本気でお願い」やねん。おもいっきり振りになってやがる。もはやピエロじゃねえか!
「シルフィ! シルフィ!!!! アウラが俺のことイジメる! ご主人様に全然花を持してくれない! 俺の代わりに叱っといて」
アウラを含め新入り奴隷の躾がなっていないと感じた俺は部下(あえてこの表現を使用)であるシルフィを呼びつける。
新人教育を言い渡してあったのだから、先輩エルフであるシルフィさんの管理不足でもあるわけで。
俺は嫌な感じが出ないように細心の注意を払いつつ、けれどもプリプリお怒りになっていますよ感を出す。
シルフィの
でも捨てられたくはないからあとできちんと労おうと思う。『料理チート』で褒美を出そう。これを飴と鞭と言います。
後のことを任せて去ろうとした次の瞬間。
俺は次のアウラの言葉を一生忘れることはないと思う。
「お可愛いこと」
クソが!
☆
ここからが『後日談』である。
俺とアウラの歴史的な一局は新入り奴隷たちの間で瞬く間に広まっていた。
女性の噂好きを垣間見た瞬間である。寡黙で無機質なドワーフたちも話の種になっていた。
さすがは好奇心旺盛のエルフと未知なるモノに興奮を禁じ得ないドワーフである。
発案者でありご主人様であり、村長でありながらアウラにサンドバック。
だが、ここで発想の転換をできるのが俺の長所である。
そこで俺は名ばかり村長であることを利用して『遊べ! みんな遊ぶのだ!』を発令。村長第一号命令である。
リバーシ、チェス、将棋、ジェンガをエルフ&ドワーフたちに解禁し、好きに興じてもいいことにした。もちろんご主人様の許可も不要。さらに長時間労働の禁止を徹底する。
こう聞けばずいぶんとホワイト村長かと思われるだろうが、むろん俺のためである。
無責任だと罵られることになるだろうが、これは万が一の保険である。
もしも財政破綻した際「食っちゃ寝リバーシしてたの俺だけじゃないもん! 奴隷のみんなも全然働いてなかったんじゃん! だから俺を責めるのいくない!」と政治家お得意の責任逃れだ。
初対局でルールを熟知しているような俺を叩きのめすことができる頭脳の持ち主たちだ。きっとのめり込むに違いないと踏んでいた。どうやらこの世界には本当に娯楽が少ないようだし、社員の福利厚生を充実させるのは社長である俺の役目。だから俺悪くない。
ちなみにこの解禁によりオセロ選手権、棋戦、チェス選手権——すなわちプロが誕生するのはそんなに遠い話ではなく、そしてまた別のお話だ。
さて、俺のお達しに動いたのはシルフィ、アウラ、ノエルである。
なんと村長との親睦を深めるという名目で奴隷たちが次々に対局を挑んでくる。
結論から言えば逆五十人切り——という、かつてない拷問が始まった。
気遣い不要。村長との距離を縮めようと開催されたのだが、もはやただのイジメである。
シルフィ、アウラ、ノエルとエルフ&ドワーフの知能指数が高いことはもはや分かりきったこと。
アウラの躾がなってないと八つ当たりされたシルフィの復讐がエグ過ぎる。彼女は怒らせてはならないとそう心に誓った。
とはいえ、このご主人様フルボッコ娯楽事件には思わぬ好作用をもたらしてくれたのである。
「あっ、村長!」
「おはようご——いえ、こんにちは村長さん。今日はお早いんですね♪」
「村長様、村長様、ぜひ私とこのあと対局してくださいな」
とエルフのみなさん。
さらに、
「ダメ。今日は村長からお話を聞く」
「私も聞きたい」
「私も」
ドワーフにとって前世の記憶を持つ俺は知識の宝庫とも言える存在らしく、引っ張りたこである。先日は魔法を発動しなくても空を飛ぶことができる講義で大盛り上がりだった。
楽しい。
よもや何千年と積みかせてきた人類の叡智をわずか三年もしない間に次々に発明・再現していくことなど夢にも思っていない俺はこの講義が伏線になっていること知らないわけで。そして、それもまた別のお話である。
ごほん。閑話休題。
シルフィの拷問により俺は親しみ易い存在だと認識されて奴隷たちとの距離がグッと近づいたのである。
村長弱すぎワロタ、みたいな感じで盛り上がったとかだろうか。それはそれで複雑だ。
しかし、美人との距離が近いというのは役得以外の何者でもない。
気軽に部屋に招待してくれるし(ドワーフたちの錬金術により煉瓦を重ねられた部屋が人数分できている)なにより目の保養になる。いい匂いもするし、最高である。
痛みに耐えてよく頑張った! 感動した!
よもや逆五十人切りなどと人が思いつくようなものじゃない拷問の裏にこんな狙いが隠されていたとは……!
感動した俺は素直に、
「すごいよシルフィ!! ありがとう!!」
と感謝を伝えたところ、
「(アレンなら)当然よ」
と口の端を吊り上げていた。
しゅごい……! カッコ良すぎる! もう抱いてシルフィさん!!
ちなみに現在はお昼である。これで文句を言われないどころかお早いと言われるのだから『遊べ! みんな遊ぶのだ!』発令は成功したと言ってもいいだろう。
では最後『本日のテーマ』
これは一言で伝えることができる。
『俺の奴隷が全然自重しない件』である。それではどうぞ。
「【
はい。もうすごいやつ。聞いたらわかる。すごいやつやん。
シルフィが神秘的な光に包まれかと思いきや、それに呼応するようにアウラが輝き出す。
現在は合掌で集中しているシルフィさんから事前に聞いた話によりますと植物を自在に操ることができる木魔法(以下、略して【木】)は風から派生した希少属性とのこと。
選ばれし者しか発動できないらしい。
しかしシルフィの固有スキル【無限樹】は風に愛された種族であれば【木】を発動させることができるらしい。
俺は? ねえ俺は? と聞いたところ「アレンは無理よ」とのこと。
ええ、まあわかっていましたとも。俺は四限素【火】【水】【風】【土】全て発動できませんから。風どころか魔法と運命に愛されていませんから……辛い。
さらに【無限樹】のすごいところは書いた字の通り、無限に系図を引くことができること。
今回新しく加わったエルフ奴隷の中でも頭三つほど抜けているアウラが選ばれ、彼女に系図が敷かれていく。
アウラもまた目利きしたエルフに
【
さらにシルフィの意志一つで系図の取り消し、無効化も可能という。
俺はもう彼女には張り合わないことにした。勝てない。もうどうやったって勝てない。まずい。このままどんどんシルフィが強くなっていく。いつの日か押し倒せる日が来るのだろうか。
いざとなったら大樹の猛撃を【再生】一本による進撃で対抗しよう。男の子のえっちしたい欲望を舐めてはいけないよ。
続いてノエルたちドワーフたちの出番である。彼女たちは俺が一生懸命土を掘り返したところに肥料を撒いたあと、
「「「「【土壌浸食】」」」」
土魔法を一斉に発動する。
ドワーフ自慢の肥料に含まれた栄養を土壌に浸透させる魔法とのこと。
発掘を得意する種族である彼女たちは【土】はお手の物らしい。ただし、ドワーフと錬金術師だけが所有する【金】を扱う発明の方がやりがいがあると言っていた。
【土】を発動できれば地下水を土壌に引き上げることができるため、準備は万端。
俺が固い土を無限【再生】で掘り起こし、鍬で耕し、ノエルたちが肥料を投入。栄養を吸収し、魔法の圧力を利用して地下水を引き上げ、種を植える。
ここで印相を結んだシルフィとアウラが、
「木魔法【
発芽、成長、結実の頭文字を取った発成実は俺命名である。
シルフィから一緒に魔法名を考えて欲しいと頼まれた俺は中二心を完全に掌握されていたようである。
なんというか命名したものを真剣な声音で発せられるとむずむずする。
余談だが、植物の成長を促すことができる魔法が存在するなら農業知識は不要ではないかと思うことだろう。
事実俺はシルフィから「要らない子」宣告を受けるのではないかと内心ビクビクしていた。しかし、どうやら俺の知識は大いに役に立つらしいとのことだった。
コストパフォーマンス面が圧倒的に良いとのことだった。
痩せた土地で植物の成長を促進させた場合、魔力を消耗するとのことだ。(※ただし、これは穀物など食用の植物に限る話で、攻撃用の木を生やすだけなら何の問題もないらしい)
さらに穀物の場合、土壌の栄養や水分が味に直結するため、環境が整備されているところで【発成実】を発動する方が圧倒的に効率が良いらしい。
アレン一安心。
【発成実】の素晴らしいところは時間のスキップと本来は難しい異なる植物を同時に結実させられる点だ。
集中することで植物の栄養を自在にコントロールすることができるため、雑草や虫、病原菌の影響を受けることなく収穫までありつけるというチートっぷり。
もはや俺にできるのは神経と魔力を消費した彼女たちを労いマッサージすることだけなのだが、【再生】持ちということで柔肌に触れることさえできないという……辛い。
早送りしたようにグングンと小麦が育っていく光景はここが異世界なんだなと思い知らされる。
せめて収穫ぐらいは役に立たせてくだせえ、そう思っていたのだが。
「アレン様はお休みなっていてください」
「収穫と後処理はお任せ」
「見ていてくださいな村長様」
俺の唯一活躍できる場面でしゃしゃり出てきたのはエルフのみなさん。
「「「——風よ」」」
まだなんも言ってへんのに詠唱始めよったでこいつら⁉︎ 搾取や! 村長の出番を根こそぎ掻っ攫う気やでこいつら!
さすがは風に愛されたエルフ。
ジェンガでも一片を繊細に抜き取ることができる彼女たちは【風刃】で刈り取り、くだく・ひく・ふるうという手順を風圧や風力を自在に操作し、下処理を手を汚さずやってのける。
褒めてください。と言わんばかりのドヤ顔。ちっ、チミたちというやつは……キチィぜ。
しかし、ここでバカの一つ覚えで拗ねて帰ってはリストラ後の反撃が恐ろしい。
「すごいよみんな! 自慢の奴隷だよ!」
「「「えへへ」」」
可愛い&お美しい。まあ、いい。女の子の笑顔は決してお金で買えるものじゃない。
それに笑っていられるのも今のうち。
くくく……俺が何の秘策も用意せぬまま、シルフィやアウラ、ノエル、そして奴隷たちに農業チートをさせるわけがなかろう!
次回、アレン調理チートで死す☆ デュエルスタンバイ!!!!
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