Ⅲ
「本当だ。計算を一からやり直してみると答えが間違っているな。でも、なんで、計算せずに答えが分かったんだ? 暗算でもしたのか?」
「うん。これくらいの計算なら暗算くらいでできるよ」
佐々木は本を閉じて、窓の外を見た。外は綺麗な青空が広がっており、太陽がサンサンと輝いている。
佐々木の成績は、あまり聞いたことはないが、俺よりも上だというのは確かだろう。授業までサボって、これだけ頭がキレる奴を相手にする教師は、どういう顔をしているのだろうと想像がつかなかった。
「ちなみに佐々木の成績ってどれくらいなのか。聞いてもいいか?」
「いいよ。学年で十番以内だよ。この前の春課題テストがそうだった」
「あ、そう……。どうりで……」
俺は言葉を失った。ちなみに、俺の順位は中の上。八十八番だった。
それからは佐々木に数学の課題を手伝ってもらいながらギリギリで朝課外が終わる五分前には終わった。
「やっと終わった……。助かったよ、佐々木。これでなんとか、数学の授業に提出できる」
「そう。良かったね。そろそろ、教室に行こうか? もう、朝課外も終わるころだし……」
「そうだな。悪いな、貴重な朝の時間を取らせてしまって」
「これくらいいいよ。私もどうせ暇だったし、これくらいは……ね」
佐々木は、読んでいた本をカバンの中に入れ、ゆっくりと立ち上がる。
俺も数学の課題をカバンの中に入れ、同じようにゆっくりと立ち上がる。
部屋の電気を消し、扉の鍵をしっかりと閉めた後、二人で丁度、朝課外が終わった、であろう自分達のクラスへと向かった。
佐々木とは、教室に向かうまで一言も話さなかった。一年三組の教室が見えてくる。廊下からでも分かるくらいクラスメイト達の話声が聞こえてくる。
「どうやら終わっているようだな。後ろのドアから入るか? 前だと目立つし……」
「うん。そうしたほうがいいね。私もあまり目立ちたくないし」
田舎の学校は、遅刻してくる生徒に注目する感じがあり、それが人気のある生徒程、そういう風に違う意味で目立ってしまう。人は、集団で一人でも掛けると、なぜ、注目を浴びなければならないのだろうか。違う事をしているから、それの何がダメなのだろうか。分からない。
例えば、みんな違って、みんないい。というフレーズがあるが、それでいいのではなかろうか。
俺が先に教室の後ろの扉を開け、こっそりと教室に入り、続けて佐々木が教室に入り、扉を開けっぱなしにした状態にする。佐々木は、窓側の席に移動し、俺は廊下側の席へと座った。
「あー、やっぱり、今来たんだ。陣君、朝課外、サボっていたでしょ⁉」
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