第576話 魔法学校、生徒確保


立て札を見て集まった生徒さん達はみんな同意した


黒葉の翻訳の魔法で全員話せるし聞き取れるから間違いはないはず、少数言語の人とかいたらそもそも説明できなかったから全員話せてよかった


後は説明も考えていたし任せておけばいいと思って後ろで見ていたのだが



「質問よろしいでしょうか?」


「はい」



100人ほどいるし、資料も用意して説明もしたけど質問は来るよね


なんだろう?



「学費無料と言うことですが本気ですか?」


「え?何が?」


「人になにか教えるということはそれだけの時間をかける、つまり人件費が発生しますし・・それに学食があるというのも気になります、学費は無料でも学食がものすごく高いとか、教材に使う道具が超高額で後で借金をしないといけないとかは怖いです」


「なるほど・・学費が無料なのは僕が出すからで、世界の安定のために普及してほしい技術だからレアナー教としての社会への奉仕の一面もあるけど・・学食と教材費ってどうなってるの?」



直子お義母さんと陸斗に聞く


信徒や神官以外からの質問は貴重なので何人か集まってもらった、酒に倒れてる人は抜きにして



「学食はここで鍛える上で食べられるものですが基本的には安いですね・・・でも外国の方もいるので一概には言えないかと思いますが日本の大学の学食やその辺の定食程度の値段を頂く予定です」


「人件費と教材費は基本的に聖下が出すので今のところ特別な料金を取るつもりは全くありません」


「ってことらしい」


「それよりも聖下、入学式って必要なのでしょうか?」


「え?」



陸斗に聞かれた、普通じゃないのか?



「学校って言うとそういうのが当たり前なんじゃないの?」


「そういう一面もありますが必要なのは魔力への覚醒と自己鍛錬です、ぶっちゃければ今日一日だけで帰ってもらうことも可能です」



ざわついた空気・・・たしかにそうかもしれない


チョコ薬を飲んでもらって半日ほど火だるまで放置、その後はひたすらに自分の中の魔力を動かす訓練をして、動かせるようになったらいくつもある魔法から単純な魔法を学び、更に術式や詠唱を覚えて【清浄化】や【治癒】のような魔法を覚えてもらう


だから最初は正直覚醒した後はどれぐらいかかるかは本人次第だ


ボブみたいに僕と関わって魔法に何度か触れる機会があったりすると感覚的につかみやすいし、チョコのような強制的に誰でも魔法が使えるようなものでなくても本人の資質で覚醒する可能性はある


ボブは魔力を含んだ水は飲んだけどチョコ食べてないしね


覚醒した後はボブが経験したような魔力の籠もった水に打たれたり、瞑想したりするような訓練を続けるのと魔法についての座学をするだけだ



「じゃ、じゃあ一日で俺らもファイアーボールとか使えるようになるのか!?」


「そういうのは教えないんで・・・僕らも教える方法は用意したけどまだまだ手探りなんだ」


「そう、ですか」



なんでがっかりしてるんだろうか?


火の玉の魔法って、危ないと思う


アンデッドに有効なこともあるから求められたのかな?検討するべきかな?



「適性もあるから教えても全員が能力に開花するかはわかりません」



うん、適正がなかったら何年かかるかわからないしどこまでできるようになるかはわからない


竹村は真面目に訓練していたが超簡単な魔法程度しかできない


そもそも一般的な最低限の神官になるのなら適正のあるものが数年かかって覚えるものである


聖句を読む時間や神殿のために働く時間、神像を磨く時間なども全て抜いて、魔力の覚醒から浄化系魔法までを覚えてもらおうとしている


いつ世界と世界がどこかで繋がるか、もしかしたら繋がらないかもしれないけど・・・もしも繋がったらきっと大変なことになる


世界では多い土葬、そこに瘴気がふれればゾンビで溢れてしまうことになるかもしれないし魔法は必要だと思う



「覚醒には特別な薬が必要と聞いたのだがそれだけ売ってもらうことは出来ますか?」


「その予定はありません」


「えっと、入学式は無しでみなさんがよかったらそのまま覚醒と鍛錬をしてもらいますが」


「「「「やります!!!」」」」



入学式まではその人達が怪しい人じゃないかを調べる時間もあったんだけど、こんなに早く人が集まると次から次に押し寄せてきかねない


既に電話がガンガン来てるらしいし、もう決まりました!で進めたほうが良いと思う


ちょうど外国人も多くいて日本人だけに集中していない


実験にもなるという説明も彼らにはしたし怪しい部分はレアナー様チェックで基本どうにかなる



「じゃあ、まず聞きますが、なにか魔法をやましいことに使おうとしているか、不純な動機で覚えようという人はいますか?いるなら先に言ってくださいね」


「聖下、不純っていうのはどういうものですか?」


「魔法の技術でお金儲けしようとしたり、悪いってわかる人や政府や何処かの機関に情報を売ったり、その力を悪用しようとしたりかな」


「あがっ!!?」

「ぐぐっ?!」

「・・・っ」


動けなくなった8人、そのうち一人は薬を売って欲しいって人だった


誰の指示なのか聞くためにも彼らを聖騎士部の人達に運んでもらう



「8人か・・、じゃあ他の人は誓約書書いてレアナー様の像の前でなんで魔法を学びたいか宣誓してね、安全のために隷属の魔法も結んでもらうし・・止めるなら今ですよー!アンデッドと戦うかもしれないですし!」



残り92人、しかし更に問題があったのは5人・・いや6人には少し待ってもらう


特別個人的に質問したいことがある人が3人と、問題がある人が3人、少し待ってもらう



「隷属の魔法は安全のためということなのでわかりますが私はこれでもデザイナー、もう少し場所や形を考えてはもらえないでしょうか?」


「おでこじゃ駄目なの?」


「ンーフ、一律の場所、額と首なのは良いとしても、デザインが線一本ではっ!あまりに美しくありませんっ!あぁここは愛の宗教だというのにこれではあまりにもよろしくない!!」


「そ、そう?後で変えられるから学んでる間にデザイン考えてもらえます?この魔法はレアナー様の従属神の魔法なのでそのデザインでできるか確認してみますから」


「ンーフ!わかりましたわ!」



デザインか・・・たしかに元々は罪人とわかるようにするのと、手首や足首を切り落とすための魔法だし一本線でシンプルなものだ


このおばあちゃんデザイナーさん、面白い人だな、後ろでペコペコしてる付き人さんは大変そうだけどどうなるかな?



「私は借金持ちでして・・今働かないと食っていけないのですが・・・」


「うちで色んな仕事あるよ」


「今働いてる場所がブラックでして、仕事を辞めるなら代わり見つけてこいって言われてて・・・近くの友人の家にいたらここに連れてこられて、でも魔法は覚えたいし、悪霊とかと戦うならやります!」



目の下に隈があるおじさん、ちょっと内蔵やられてるのが見える


アンデッドはいつ出るかわからないけど、やる気は本物だと伝わってくるし、いい人材だと思う


やる気があれば成長しやすいし、戦場でも士気に影響する


適性があるかはわからないけど



「それは頼もしいですね、陸斗、どうにかできる?」


「聖下、退職代行に聖騎士部と法務部に相談すればいけると思います」


「だって、どうする?辞めてうちで働く?手伝えるよ」


「ありがとうございます!ありがとうございます!!!」



後問題があるのは4人


次は夫婦だ



「ダーリンとあーしはなんで待機なんかな?」


「妊娠してますし、この新たな試みでほんと「ダーリン!」「ハニー!」「やったな妊娠だって!愛してるぜ!!」



あれ?この人達何処かで見たことある気がする


子供について聞かれて影響はわからないと答えると男の方は「子供との未来を守りたいからなキリッ」と答えて「ダーリンカッコイー!ますます惚れ直した!!」なんていう


2人で話し合ってここで学んで出産までするそうだ



「「強い子になりそうなんで!」」



あ、ロッククライミングのカップルだこの人たち


体育館で人前でいちゃついてた2人、幸せそうで何より・・おめでとう、赤ちゃん含めて3人、頑張ってください



最後に残ったのは男性



「えっとその、不純な動機についてなんスけど」


「何かありましたか?」


「も、モテたいってのはありッスか」


「ありっす!」



よし、92人、外部からの一期生は確保!

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