第572話 記念日が多数決で決まった日


なにか怪しいと思っていたが



「お誕生日おめでとー!」


「よーくん、ふーよ!ふー!!」



僕の、誕生日??






ミルミミスは竜の形態で待機していたが竜の状態だと毛が生えてないもんね・・人型になって頭を差し出してきた


ブラッシングしているとレアナー様となにか話した黒葉に連れて行かれた


ドアをあけるとなんか部屋が飾り付けされていた


何かあったっけかなと思ったら数も数えられないほどの料理の並べられた大きな机の真ん中に座らされて



「「「「お誕生日おめでとー!!!」」」」



誕生日、誕生日・・・誕生日??


パンという何か弾けるような突然の音に驚いたが紙吹雪が散った



「ねー、かーさん、僕って誕生日、今日なの?」


「そうよぉ?・・・・・え?忘れてたの?」


「うん、あ、今日なんだね」



3月14日・・そうなんだ?


知らなかった


単に忘れていたってのもあるし、レアナー教では産まれた日に祝うという習慣はそこまで重要とされない


いや誕生した日はお祝いはするし、5歳と9歳で儀式を執り行う


神殿では年に一度の祭壇でそういう行事はあるけど、僕はそれよりも旅があったのでちらりと見ていただけだった


それと大きく祝うのは成人の12歳と15歳、12歳は神様への信仰を自分で決めるし15歳といえば仕事に慣れてきて結婚に向いている時期で婚活パーティーをレアナー様が主催するについてきてお祝いされる時期らしい、僕は関係なかったけど



そうか僕の誕生日、誕生日かー・・・・17歳かー・・・・・・・実感ないや



「なんとなく思い出してきたよ、今日なんだね、皆ありがとー!」



はるねーちゃんがバレンタインの日に産まれて、僕は3月14日だった・・気がする


なんかの日の気がする・・お返しの日だ、うん、バレンタインのお返しのホワイトデー


それではるねーちゃんとのセット扱いされてなんかクラスの子とかに言われてたような?


うん、思い出してきた


だからはるねーちゃんはバレンタインの日に僕にチョコやお菓子を皆の前で渡させて逆に僕の誕生日であるホワイトデーに何かくれていた



「うぅ・・息子の12歳から16歳の誕生日がなかったばっかりに・・・」


「今年からは毎年祝おうな!盛大に!!」


<派手にやりましょー!うちのよーすけのためですぅ!!>



なんかかーさんが泣いて、とーさんに頭を撫でられた


強く抱きしめられて少し苦笑してしまう


そんなに子供じゃないんだけどな僕



「えっと、とーさんかーさん、僕を産んでくれてありがとうね」


「ほんっといい子!うちの子・・・いい子!」


「そうだな・・・洋介、、産まれてきてくれてありがとうな・・・ほら、ケーキだ、ふーってしろ!ふーって」


「そうよ、よーくん・・ふーよ!ふー!!」



出されたケーキには「お誕生日おめでとう」と書かれている


段付きのチョコケーキである


床すれすれのカートに載っていて僕の背よりも大きい


バースデーソングを歌われ始めたがなんか恥ずかしい・・消すんだよねこれ?


とーさんが少し持ち上げてくれて、一番上のろうそくに息を吹きかけた



「「「「「「おめでとー!!」」」」」」


「大きくない?」


「練習よ練習」



微妙に思い出した自分の誕生日、祝われる側のときはなんかプレゼントもらったり、直子おねーさんからケーキを作ってもらったりしたはずだ


直子おねーさん、直子お義母さんが作ってくれるケーキは白くて、数回作ってくれたはるねーちゃんのケーキはチョコだ


直子お義母さんからギリギリの合格点をもらったもので、たしか最後に食べたのはギリギリ味は良かったけど表面を厚くコーティングされたチョコが大きく割れたものだったはず


箱を開けた瞬間、はっきり問われていたチョコレートケーキに空気が固まってはるねーちゃん泣きそうだったな・・


味自体は中を直子お義母さんが作ったものではるねーちゃんは市販のチョコをとかしたものをかけただけ


ただいっぱいかけたほうが僕が喜ぶって直子お義母さんの目を盗んで何度もかけてコーティングした


その結果チョコが分厚くなりすぎて市販のチョコの倍は分厚いものになった


チョコが割れたのは隣の家からこっちの家に持ってきて冷蔵庫に入れるのに一度落としかけたそうだ


勿論ろうそくも硬い表面に刺さらず、割れた隙間にろうそくを刺してろうそくを立てた


しかもチョコが固すぎて包丁が太刀打ちできずに金槌で割って食べた



「ふふっ」


「どうしたのよ?」


「昔チョコケーキ作ってもらったの思い出してた、割れたやつ」


「・・あれね、まぁあれよりは腕を上げたわよ、ほら、あーん」


「あーん」



甘い、普通のチョコケーキだ


ものすごく美味しいわけじゃない


だけど普通に美味しく食べられるものだ



「美味しいね、ありがとうはるねーちゃん」



直子お義母さんのチョコケーキなら凄く美味しい



――――だからこれははるねーちゃんが作ってくれたものだ



「んっ」



大きさは僕よりも大きいけど信徒も食べるからだろう


頭の後ろをがりがり掻きむしっているはるねーちゃんは照れたのだ


エゼルたちがやけに僕を引き止めたのはきっとこの準備のためだね



「じゃあ皆今日はお酒解禁でエゼルとダリアも好きに飲んでね」



黒葉はジンジャーソーダを作ってくれて、ヨーコは丸っぽい謎のお菓子をくれた


ジンジャーソーダは有機ジンジャーというものを使って作られたものでやけに美味しい、喉がピリピリしてスッキリする


ヨーコの謎のお菓子はたこ焼き器で作ったのかカステラのようなクッキーのような謎のお菓子だった


クリームが詰められていて美味しい


食べ物だけじゃなくて皆色々プレゼントもくれた


はるねーちゃんからは指輪だ



「これ洋介に」


「きれいな指輪だね」



少しキラキラ光っていて、魔力を感じる


光の魔力を感じるし、何故かよく馴染む



「これどうしたの?」


「作った、あんたのダンジョンの石使って作ってた」



魔力覚醒実験で使ってた謎のチョコの原料だそうだ


これを作るための砕いた結晶がチョコに使われたそうな・・よく砕いて粉末状にしたら薬にも使えるそうだ



「ありがとう、凄く嬉しいよ」


「いくつも作って・・・最初にできた指輪よ、良い出来のはまた上げるわ」


「わかった、楽しみにしてる」


「そう」



何故かこういう時のはるねーちゃんはそっけない気がする


少し照れているのだ


いつもなら照れ隠しなのか後ろから脇に手を入れて僕の胸のあたりで手を重ねて僕を振り回すけど今日はかーさんが後ろにいて無理だ


ダリアたちが無理しないように見に行ってくると言って、おでこを髪の上からキスしてはるねーちゃんはいってしまった



「わ、わたしからはこれです」


「これは・・・?」



黒葉から分厚い本を渡された、ちょっと警戒してしまう


漢字の勉強じゃないよな・・・?



「写真です、元杉神官や領地の子たちの写真をまとめて本にしました、撮る分にはデータで良いんですけどやっぱり見る分には写真がいいですよね」


「見ても良い?」


「はい、勿論」



こっちに来てからの写真が一枚一枚まとめられていた


僕の写真に、ビルの写真、六太の肩に乗ってみた写真やはるねーちゃんとの写真、海で修行した時の写真・・辺境でミャーゴルと遊んでいる写真、ケーリーリュのも色々


エゼル達のもある、信徒たちもよく写真を撮るし黒葉も写真はいっぱい撮るもんね



「嬉しいよ、ありがとう黒葉」


「それでですね、私も・・・」



ほっぺを両手に持たれおでこに顔が近づいてきた



「やっぱりこっち・・・で、ではまた!」



おでこに当たるかなと思ったが口にキスされた


唇には軽く触れるだけだったが少し鼻もあたって物凄い気恥ずかしい


なんかかーさんのことが、信徒たちの顔が見れない



「わたくしからはこれですわ!」



ゲーガの腹の革で作られたお財布だ


日本ではお金は紙やスマートフォーンでできるけど、向こうの世界では硬貨や金属に宝石が基本


当然お財布の形も違っている


だからこういう袋は使い分けに本当に便利なのだ


お金は重いし財布は破れやすい



「それとあの3人からも預かってますわ!」



フィルからは氷の魔道具、エゼルからはゴツいグレートソード、ダリアからはカジンの捕縛布の新品をいくつもだ



「お祝いの席でこちらの作法がわからないから時期を見計らって渡してくれと預かりましたわ」


「後でお礼を言うね」


「良いんですの・・あの耳に触れてもよろしいでしょうか?」


「良いけど」


「では・・・ありがとうございます」



危なそうなのでもらったものは全部【収納】にしまう


なんか耳を手で揉まれて、ヨーコは「はしたなかったかも知れませんわー!」と声にならない声を上げていなくなってしまった・・何だったのか・・・?



ミルミミスからは鱗、せーちゃんからはせーちゃんのいつも着ている神官衣と女物の服・・・着ろと?



お酒を解禁したからやはりどんちゃん騒ぎになってしまったが大人のストレス解消にたまにはいいかもしれない



ただ・・・・信徒やレアナー様が『洋介生誕記念日』をレアナー教で作ろうという提案を皆でし始めてしまって・・賛成大多数、反対1で僕の意見は飲み込まれてしまった


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