第571話 何かを隠されている


城の患者を治し、鍛え、世界中から物資を集めて向こうに持っていく・・それと勉強が少し


ただ繰り返していく、それが最良なのだと


人が増えたからか、それともエゼルたちを信用してないのか黒葉についてないときは僕の近くにいるようになったせーちゃん


ダリア達三人がそれぞれ何神かに酒を捧げるからそれを狙うミルミミス


相変わらず多い患者たち




まだ魔王を倒してから1年と経っていない


だけどもう領地には『行く』、城には『帰る』って気持ちになってる


何も殺さなくてもいいし、こんなに幸せで・・・どこか怖い気もする


もしかしたらまだ旅の途中で、焚き火の前で寝て幸せな夢を見てるんじゃないかと思う時がある。


起きたらまた敵を倒さないといけないんじゃないか?とーさんとかーさんもまだ生き返って無くて・・・また仲間が死んでいったりするんじゃないかって言いようもない嫌な気持ちが胸に広がってしまう



「ドワーフがなんでうさぎになってふふふ、もう私のお腹が引き攣ってしかたありませんよ」


「かわいいね」


「可愛いが・・どう見たって髭の塊のようなドワーフとこのうさぎは似ても似つかぬだろう」


「ネザーランドってのはどういう意味だ?」


「うさぎの品種だし・・調べてみるね、国の名前みたいだね」


「エルフについての竹に住むエルフやサラダに住むエルフも面白かったですがドワーフは更に面白いですね、ダリアなんて笑いすぎて息できてませんよ」


「・・っ!・・・っ!!!」



帰ってきたエゼルたちはエルフやドワーフの伝承を知りたかったらしく僕のスマートフォーンで調べることになった


調べて出てきたのが『ネザーランドドワーフ』という可愛らしいうさぎについてと竹エルフや花エルフと言ったもので・・もしかしてこっちにもエルフいたんじゃないかって面白いものが多い



「黒葉にも聞いてみようか?」


「あっ、待ってください!えぇっと、竹から産まれたという姫についても教えてください!」



やっと動いてきた黒葉だけどやっぱり辛そうだ


だけどエゼル達を見て顔を引きつらせていた、一言目には「挨拶に行ったばかりなのにこんな美人さんも増えるんですか?」って


いや、うん、ごめん


旅の最中に助けてからもう三人共決めてたみたいだし許して


何か話し合っていたみたいだけど「元杉神官は知らなくてもいいですから」とかいっていたのがちょっと怖い、レアナー教なら裏で殴り合ってるところだ



「そういえば大人の姿になっていましたが女性の姿にもなれるそうですね」


「そうだね」


「なってみてください」


「・・・・・うん」



だいたいあれやると遊ばれるから素直にうんとはいえなかった


まぁやるけど・・・



「じゃあみんなで着物着てみましょう!黒葉殿!しゃしんをおねがいします!」



えぇ・・・


逃げようと思ったが黒葉が乗り気に見えた


機嫌が良くなるのならやるべきだろう


なんでかピンクの着物を着せられたけどせめてそこは男の子用にしてほしい


お腹の帯硬いし分厚くない?お腹折り曲げられないし後ろででっかいリボンつけるの絶対男の子用じゃないよね?



「似合いますね!元杉神官!!クルってしてください!クルって」


「・・・くるー」


「少しだけ裾が動く程度で!ふわっと!!」


「ふわっとー・・・」


「いいですねー!いいですねー!!」



フィルも長い毛をまとめられて和柄のヘアピンつけられて死んだ魚のような顔をしているし、我慢だ我慢


それにしてもフィルの毛が段々とツヤッツヤになってる気がする


毛の長い狼であるフィルフェリアだけど旅の途中は土の道路も山の中を歩くのも普通だったから、毛がいつのまにか結構汚れてたのかもしれない


本人はお気に入りの絨毯もってたりしてきれい好きなんだけど、綺麗になるにしても限度がある



「・・なんだ?」


「凄く毛がつやつやしてきたね」


「・・とりーとめんとが良いのだ、我も美しくなるのは悪くはないがあの風呂というのは慣れんな・・・」


「こっちの薬品すごいよね、向こうのだと変に青臭い匂い残ったりするのに」


「・・たしかにな」


「それに信徒たちにいっぱいブラッシングしてもらってたよね」


「うむ、奴らには見どころがある」



黒葉はパシャパシャとエゼルとダリアを撮ってるし僕もそろそろ治療に行くかな?


和服を脱いで いつもの状態に変身する


ヨーコと勉強した光るだけの魔法で魔法少女変身・・というか上から服着るだけなんだけど神官服になって部屋を出・・



「あ、元杉神官、ルールが元杉神官に用があるって」


「コルルルル」



部屋の隅で丸まっていたルールがのっそのっそ歩いてきて目の前にブラシを落としてちょこんと座った



「ブラシして欲しいの?」


「コルルル」


「最近元杉神官がブラシしてなかったから寂しそうでした」


「ふーん」



そう言われても信徒たちに構われまくっていてルールも上機嫌で受け入れているし割って入る余地がないというか・・


まぁいいや



「ルール伏せ」


「ナ”ァ”」



素直に伏せたのでルール専用のブラシで毛をすいていく



「ルルルルルル」



結構な時間が経っただろうか?一通りブラッシングしてこんもり毛が抜け落ちた


毎日お風呂に入って、ブラッシングもしてもらってるのになんでこんなに毛が出るんだろう?フィルみたいに長い毛じゃないのに


黒葉が何かを気にしているのか、怪しい



「じゃあそろそろ・・」


「次は我だ」


「・・・・・」


「次は、我の、番だ」



どっしりと僕の前にきたフィル


長い毛に使う用のブラシを出してブラッシングしていく


なにか皆して怪しい気がする


ちらりとルールを見ると気持ちよさそうにしてたのに目をそらした


黒葉もだ



「なにか隠し事してる?」


「我に、ブラッシング、するのだ」



怪しすぎる



「次も待っているぞ」


「キュクルルルル」



ミルミミスは鱗なのになんでしれっとならんでるんだ?


どうやらなにかしようとしてるらしい


悪いことなら黒葉と一緒にいるレアナー様がなにか言ってくれるはずだしきっと悪いことじゃないんだろう



「・・・わかったよ」


「よろしく頼む、ゆっくり、時間をかけてな」



フィルは誤魔化すのがとても下手だ


付き合うとしよう、ただ、トイレ行きたいけど言ったら困らせるよなぁ・・・

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