第569話 ダリアのデート
服を選ぶだけで物凄い時間がかかってしまったがエゼル姉貴も楽しそうなので良しとしよう
こちらの世界では服が安価に作られるというのは不思議だ、俺も織物をするからわかるが服ってのはなかなかに手間がかかる
どうせ破けるし服なんてどうでもいいと思っていたが選べるほどあるとなれば結構選ぶのも疲れるものだな・・
服には独特の匂いがあるものだ
なにせ染色仕立てであればそれなりに美しいが匂いがするし、古着であればそれなりに汗の匂いがする
用意されたものはどれも人の汗の匂いはしないし、くすんだりほつれもない・・・
「不思議な臭いがするが、これまさか古着じゃないのか?」
「全部信徒たちがあなた達に着てほしいって作ったのよ」
「嘘だろ?!!」
寸法に誤差は多少あるが、どれも俺とエゼル姉貴に合わせたものだ
計測された覚えはないし目測だろう、服の神の神官でもいるのか?
よく見ればアダバンタス用の馬鹿みたいにデカい服にフィル姉貴の服もある、フリフリドレスだけど絶対嫌がるだろうな・・・・・あとなんかヨウスケの人形も置いてあってスカートやドレスが並べられている
初めてヨウスケに会ったときは髪も長くて女の子のように見えていたが・・こちらでは男の子もスカートを履くのかもしれんな・・・
よくわからん乗り物は椅子が付いているし乗り込むものだとはわかるが牽く機獣もつなぐための金具も綱もない
チビがついてきたが・・こちらの常識に疎い俺らのために道案内のためだろう
ヨウスケを後ろからぶっ刺したときのことを思い出してつい殴ってしまいたくなる
上等な衣をいただいたがやはりエゼル姉貴は何を着ても似合うなぁ・・・着替えが終わってくるまというのに乗ってみると機獣もなく動いて驚いた
ハルネーは丸いもので動かしていて横にはチビがついてきてエゼル姉貴の質問に答えている
俺もあまり詳しくないがこちらの世界はとんでもないと思う
「あれは?何のためにあるのでしょうか?ダリア、あの光るものを見てください!」
「信号機ね、車が進んでもいい時期と車が止まりなさいという時期を知らせてくれる魔導具のようなものよ」
「この音は誰が鳴らしているのでしょうか?楽師がいるようにも感じませんが」
「それは車につけられたクラシックというものですわ!小さな爪のような板に何千曲も入ってるのです!」
「素晴らしいですね!」
「微妙に違う気もするけどそんな感じ」
違う部分があるときは後ろからチビを殴りそうになるがハルネーとの約束で暴れないことになっている
この乗り物はものすごく高価らしい
その辺をビュンビュン走っているし、ミルミミスと空を飛んだときはいくつもあったから狩っていいかと思ったけど獣ではなく馬車のようなものだと判断して止めた
賊がこれもってたら狩って帰れるのにな・・山とかにいねーかな?
「そういえばエルフや巨人、ドワーフの逸話ってどんなのがあるんだ?」
「あー・・・えっと、真実かもわからないし怒らないで聞いてくれる?きっと失礼なものもあると思うから」
「わかりました」
エルフの逸話は多かった
『森の中に住んでいる、神秘的な存在で奴隷として求められる』『魔法が得意で弓矢は絶対に外さない』『動物を食べることはなく、動物を食べる人間を野蛮と蔑んでいる』『排他的で外から来た人間を差別している』『妖精や精霊と仲良し』『森や木々の意思が感じ取れる』『世界樹となんかよくわからないけど一緒にいる存在』『子供が生まれるのが珍しい』『女しか産まれず、男は外で拐ってくる』『森を傷つけると襲いかかってくる』『時間の感覚がおかしくて「またすぐ会いましょう」と言ったら10年経ってたということもある』『手のひらサイズの人で、木の窪みを覗くといる、人というよりも妖精の一種』『寿命は永遠である』『見つかったら連れ去られる』『エルフの臓物を食べれば永遠の命が得られる』『キノコや木で家を作る』『基本貧乳、だが爆乳という説もある』『神様が作った時に美しい存在がエルフ、それを真似てうまく出来なかったのがオーク』『月の女神に加護を受けたのがエルフ、邪神に加護を受けたのがゴブリン』『木を切るドワーフと仲が悪い』『金属の匂いが嫌いで、身につけることもない』
大いに笑わせてもらっているうちに目的地に着いた
エゼル姉貴のお腹が笑いで動けなくなってしまったが仕方ないだろう
勿論神話や伝説であるからぜんぜん違うものもあって酷い
なんで肉食べないのかとか、金具使わないとかは意味がわからない
人を拐ったり木の穴覗いたらそこにいるとかどんなモンスターだよ、こえーよ
すぐに降りることは出来ずに、周りを護衛してくれる人が来るまで少し待つ
かーなびというのが道案内してくれているそうだが、楽器を弾いて、道案内までしてくれるとはなんと賢いんだ・・・
外も色々あって興味深いものがあったが本当に文化が、世界が違う
外を見てみると子どもたちだけで歩くとか、相当に治安がいいのだろうな
「武器は出しちゃダメだし使うのも駄目、わかった?」
「それは襲われてもでしょうか?」
「できるだけね、そうね、種族代表としてここにいるように考えると良いかもしれないわ」
「どういうことだハルネー?」
「さっき言ってたように、こっちの世界には人間しかいないの、だからこれから初めて見る人達にとってあなた達はエルフ全て、ダークエルフ全ての代表ってことよ」
「貴女達が暴力を一度振るったら人伝にエルフはすぐに暴力を振るう種族って思われるかもしれませんわ」
「なるほど」
身の引き締まる思いだけどそれはどうすれば良いんだ?教えておねーちゃん
<ダリアはいつもどおりでいいんじゃないかな?取り繕っても変われるものでもありませんし・・・>
「なにか言われても言葉わかりませんって笑顔で手を振っときゃなんとかなるわよ、わかった?」
「はい、ダリア、リリア行きましょう」
「ほんとに大丈夫なのか・・え?リリアって誰?」
外に降りておねーちゃんを紹介する
少し、歩いてみてクラクラする
乗り物も悪くないが自分で歩かないとこうやってくらくらすることがある
「ルーリリアは俺の姉で加護くれてる神様の眷属」
「<ルーリリアです、ダリアをよろしくお願いします>」
「ご丁寧に、ありがとうございます、こちらこそよろしくお願いします」
「わたくし、結構付き合いが長いと思うのですが紹介されていませんが・・・」
「チビはヨウスケにしたこと思い出してから言え・・・なんだ?」
すぐに群衆に取り囲まれてしまった
戦闘かと思ったが変な板をこちらに向けてパシャパシャと音を立てていて、全く敵意は感じられない
「写真良いですか!?」
「握手してください!!」
「ダークエルフさんだ!エルフさんもいるぞ!!」
「け、けけ、結婚してくださイっ!!」
「サインお願いしまーす!!!」
「下がってくださーい、プライベートですのでー!!」
人がどこからか群がってきたが、体格の良い連中が現れて壁になってくれた
なんだこれ、いくら俺が英雄って言っても異世界に名前が知られてるわけじゃないだろうに・・なんでこんなに顔が知られているんだ?
「うちの聖騎士部よ、ほら、笑顔で手をふって」
「お、おう、こうか?」
「「「「キャー!!!!」」」」
ただ、ダークエルフだってのに、亜人だってのに、嫌な視線はない
蔑むどころか、鼻をふくらませて興奮している
まるで大神官に会った信徒のようだ
ハルネーの連れて行ってくれたお店はまるで異世界だった
商店の外にまで商品が並び、それを誰も見ていない
子供が働いているようなこともなく、そのへんで残飯を漁る子もいない
倒れてるやつもいなけりゃそのへんで飲んだくれてるやつもいない
それに・・・何だこの地面は、土が全然なくて硬い
どこに行っても群衆がついてくるのは厄介だがそこまで悪い気がしない
もう万を超える人が来たんじゃないかな?
「フラッシュはやめてくださーい!!」
「あまり近づかないでくださーい!」
「エルフと触れ合える距離で黙ってられるか!!ぼ、ぼくとけっこ「確保ぉっ!!」うぐっ」
「すごい世界ですね・・・」
「あぁ離れるなよエゼル姉貴」
「えぇ、頼りにしてますよ」
本当ならしょっぴんぐせんたーを回るつもりだったがあまりにも動けなくなったのできっさてんってのに入ることになった
食事や茶を飲める場所らしい
レアナー教徒の家族がやっている場所で店ごと貸し切ってるから大丈夫だそうだ
「やっぱりこうなったか・・なんかごめん」
「いえ、それよりもすごい熱気ですね」
「エルフ大人気だね」
「ふふっ、不思議なものです」
「どうせならなにか食べよっか、何食べる?」
「何と言われても・・何が有るのかわかってないのですが・・・」
なにか書かれた物を差し出されるがこちらの世界の文字は読めない
「あー、じゃあ適当に頼むから好きに食べて」
「はいっ!私メロンソーダとオムライスが良いですわ!!」
チビはこちらに詳しいのか、注文をした
何だそれ?
「チビ、何だそれ?」
「元杉の好物ですわ!」
「じゃあ俺もそれで!」
「私もおねがいします」
「足りなかったらチビの分抜いてくれ!」
「酷いですわっ!?」
チビを見るとついつい酷く扱っちまう
エゼル姉貴みたいに首筋に寸止めしたり、フィル姉貴みたいに氷漬けにしないだけまだ優しいと思うが・・・
まぁいきなりヨウスケの心臓ぶっ刺したこいつが悪い
「あー、まぁ、そうね、オムライスでかけるソースは全員別々で、メロンソーダ4つと水も4つおねがいします」
「わかりました・・あの」
「はい」
「後でサインと写真良いでしょうか?」
「・・・・わかったわ、後取皿もお願い」
よくわからんが、レアナー教徒からも人気なようだ
ヨウスケの好きな飯か・・楽しみでもあるがこの世界はかなりぶっ飛んでるし少し怖くもあるな
一体何がでてくることやら
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