第556話 挨拶とナンパと痴女と仲間たち
「ハルネー、紹介するぜ!こっちがエゼル姉貴とフィル姉貴だ」
洋介が連れて帰ってきた人の中に、目を引く人達がいた
一人は大きくてゴリゴリのマッチョだ、服殆ど着てない
帯刀した和服のエルフに狼、トレンチコートのようなものを着た男に腰の曲がった杖のおばあさん、それとダリア、5人と一匹は特に目を強く引く
加護を授かった人は存在感が違うらしいし彼らは確実に強い力を持っていることが見ただけでわかる
「春日井遥、洋介にはるねーちゃんって呼ばれてます」
「フィルフェリアだ、ヨウスケにはフィルと呼ばれている」
えっ喋るの?この狼
毛の長い、どこか近寄りがたい冷たさを感じる狼だと思っていたが獣人の中でも獣に近いタイプなのかな?
姉貴って言ってたし雌・・じゃない、女性で良いんだよね・・・?
「エゼルリーリャ・ノッセ・アラレウム・バイセンです、この出会いに神に感謝を」
和服のエルフさんだ、名前エゼルとバイセンしか覚えられなかった
剣、というよりも刀?いや、鞘から見るに青龍刀を長くしたような形状のものを渡してきた
「お預けします」
剣の柄を私に向かって地面とは水平に差し出してきた
「・・・・・」
「・・・・・」
え?喧嘩売られてる?いや、抜けばいいの?抜いたら殺し合い始まるとか?
「ハルネー、受け取るんだ、敵意はないって儀礼だから」
「わかった、そっちの礼儀には詳しくないからなにかしちゃったらごめんね?じゃあ私もこれ預ける」
ハルバードを収納袋から出して手渡す
以前の長柄の柄の中が空洞のものと違ってこれは芯まで金属が詰まっている
大の大人でも片手で持つのは難しいのに、ひょいと持ったエルフさん
「洋介の仲間なら信頼してますし、武器は持ってても大丈夫なので返します・・大丈夫だよね?ダリア?」
「おう!」
剣は軽いがハルバードは重量武器で、邪魔だ
交換してそれぞれが仕舞った
「こ、婚儀の申込みでしょうか?」
「違います」
何故か動揺したエルフさん・・常識が違いすぎてどこに地雷があるかわからない
洋介もヨーコもルールも、狩りは基本とたまに山を見てウズウズしているしミルミミスとダリアはこっちでいつの間にかシカやクマを狩ってきていた
もしかしたら私も「神に感謝を」って言ったり、受け取った武器は手に取らずに「大丈夫ですよ」とすぐに返したほうが良かったのかもしれない
「<歓迎したい気持ちは本物です、でもそちらの世界の常識を知らないため少し困惑しています、よければ仲良くしてくれると幸いです>」
胸に手を当て片足を引き軽く頭を下げて西洋風に大きく礼をする
わかりやすく大仰なぐらいが良い、少し魔力を込めて話した
日本式に土下座は石畳の上だとちょっと良くは映らないだろう
「<私の神チーテックにこの気持ちに嘘偽りがないことを誓い、この出会いを神に感謝します>」
多分、紳士的な対応はできたと思う
まだダリアのように酒で打ち解けるまでは行かないまでも悪くはないはずだ
エゼルリーなんとかさんは武人っぽい雰囲気があるし、と言うか侍?なんで着流しなの?
こういう時にヨーコがいれば助かるのに・・なんか影の中に女性をいれて頭をゲシゲシ踏みながらどこかに連れて行って居なくなってしまった
洋介から聞いた話ではこの3人も洋介に好意をもっているはずだ
旅の仲間で助けてからずっと一緒にいるエゼルとフィルとダリアってのは間違いなくこの3人だろう
ロムはロムでなんか私のことを敵視しているし・・ただでさえ男女とか言われる私に女の争いというか男の取り合いは難しいな、譲るつもりはないけど
「あとでお酒でも一緒に飲みましょう」
「楽しみにしてるぜ!」
「はい」
「肉も楽しみにしている」
「任せて!」
まだぎこちないかもしれないがこんなところでいいだろう
こちらも洋介が旅でお世話になったというのは洋介から聞いている
それが洋介への好意からなのか、純粋な魔王討伐のためなのか・・・それとも加護狙いのクソ貴族の仲間なのかもわかっていないから様子はしっかり見るべきだ
笑顔を取り繕って見極めないといけない・・少し嫌だな・・・女って怖い、私も女だけど
私の心中を知ってか知らずか、嫌な気持ちはすぐに吹き飛ばされることとなった
トレンチコートのようなものを着た気障ったらしい男に公衆の面前で誘われ、巨大な怪獣を洋介が出し、エゼルリーリャさんが和服っぽいものを脱いだ
白い競泳水着というのだろうか?なんで脱いだ?透けそうなんだけど?
胸は薄いがムキムキと言うほどではない、健康的ではあるがマッチョではない
しなやかな肉体で若干細い、ハルバードを持てるだけの筋力があるようにはとても思えないエルフさん
ケーリーリュさんはエルフでも胸大きかったし、ダリアも大きい方だがエルフと言えば大きいわけじゃなかったのね
なんで抜いだのかは不明だけど剣を持ってなにかした
私が見ても手を動かしたような違和感だけで、抜いたかもわからず、納刀の音と巨大な生物が裂けてやっと何をしたかわかった
重力で潰れていても高さが大きなマンションのようなサイズの巨大なクラーケンを一刀で切り裂いたのだ
フィルフェリアは凍らせることが出来たし、腰の曲がったおばあさんも超高速で飛ぶ、野球のボールみたいなスピードであっちこっちに行って杖を振っている
残像も見えるしちょっと怖い、妖怪みたいだな
何度か行った領地のドワーフさんや獣人の人達も居た・・もしもメディアでインタビューを受ければその珍しさから一夜にしてスターになれるほどのはずなのにナンパ男と言い、残像おばあちゃんと言い、存在感がありすぎて霞んでしまう
ナンパ男は変身して働いてる人もいるけど皆の邪魔をしてる
働いてるのもいるけど壁に張り付いた巨大ナメクジとかもニロンさんだよね?殺虫スプレーかけたい
洋介は彼らについて「まだましな方」と目をそらして言っていたが魔王というのを倒すのには奇抜さも必要なのだろうか?
それとも強くなるにつれて常人には計り知れない奇抜さも身につくのか?
少なくともニロンという人は自分同士で殴り合ったり、巨人に踏まれたりしていて特にやばい人だとわかった
改めて私は普通であると再確認してしてしまう
と言うかクラーケンとかサーペントとか大きなワニとか、こんなの狩ってたなら連れていきなさいよ
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