第532話 死の宣告


「ゆ、ゆゆゆ、勇者よ!あ、貴方は死にます!!!」



「だれ?この人」


「・・・・すいません、妹です、挨拶しなさい」


「そ、それよりも大変なのよ?な、なんでわかってくれないの!あぁ、こんな、酷い!!」



馬車から女性はなにかが見えているのか、目の前の何もない空間に手を振って・・・・とてつもなく不審だ


額にも3つ目の目があって、亜人種の血が濃いことを強く感じる


その目がぎょろりとこちらをむいて、突然突進してきた



「はやくはやくはやくぅうう!!!」



ミルミミスが前に出て、フィルが突進してきた妹さんの首を噛んで地面に倒した


フィルフェリアは氷を使う狼、氷を使えばいいのにとも思ったが戦闘後なのか魔力が少なくなってるようだ



「いたい、痛いわ!?何この魔獣!!殺される!!!穢らわしいわ!!!」


「<だまりなさい>」


「ひっ」



エゼルがフィルに倒された妹の目の前に行き、しゃがんで目を合わせて圧をかけた



「ぶち殺しますよ?」


「だった、だって!魔獣がっ!!それにエルフなんだから誰かの奴隷なんでしょう!!?わ、わたしは王族よ!!!さっさとたすけなさ・・・・・」



音もなくエゼルの剣が額の目の前すれすれで止まった



「目をくり抜いて―――――・・ゆっくりと手足を切り落としてあげましょうか?」


「あ、あわ、わたし・・・・」


「黙れ、78に分割されたくなかったらこれ以上口を開くな」


「は、はい」



「      喋ったな?      」




女性同士の争いは止めると面倒になるととーさんと亮二お義父さんに言われたことがある


だけど、これ、エゼルやる気だ



「すまんそこまでにしてやってくれ、こんなのでも使えるから連れてきたんだ」



アダバンタスが止めに入った、しかしエゼルと妹さんは微動だにしない


エゼルは完全に殺す気で圧をかけているし、アダバンタスの妹さんはピクリとも動かない



「・・・・・」


「・・・・・」



視線があったまま、そこだけ時が止まったようだ



「え、エゼル?」



敵か味方かはわからない人だけど、アダバンタスの妹なら殺すのはちょっと・・・


声をかけたエゼルの長い耳がピクリと呼びかけに反応し、剣をしまって妹さんの髪をつかんで耳元でなにか言った



「・・・・・ヨウスケ殿に伏して感謝なさい、愚物が」



聞こえてる


最近耳も良くなったんだ、怖い


フィルも噛んだ首を離した


わたわたとこちらに土下座した妹さん



「あ、あああああ、ありがとうございます聖下!」


「すいません、妹はザウスキアで育ってザウスキアの神殿育ち、色々とわかってないんです」



アダバンタスも起き上がってきて、申し訳無さそうにしている


呪われた足の傷は治ったが血を流しすぎたのか顔色は酷く悪い



「次に不敬を働いたら・・・・・・わかってますね?」


「はいぃぃいいいい??!!!!」



「・・・・・」



・・・ひとまずごはんにしよう


アダバンタスの出血はここだけでもひどかった


身長は6メートルはあるだろうか?いつからこれだけ出血していたのかはわからないし治療してもちょっと危ないかもしれない



新たな食べ物を積んだコンテナを降ろしていてどちらにせよ皆でご飯を食べる予定だったんだ


妹さんはエゼルの威圧に盛大に漏らしたから近くの人に湯浴みに連れて行ってもらう


大きなブルーシートをひいて、その上に絨毯を出した、絨毯は倒れてるアダバンタスとフィルの場所用



アダバンタスには中華料理店でもらったレバニラを大量に出した



「これは?」


「向こうの料理、レバニラって言って確か造血効果のある料理だよ」


「なるほど・・・」



アダバンタスが大皿ごとつかんで、全部一口で流し込んだ


大皿のはずなのにアダバンタスだと大きさが狂って見える



「< う ま い っ >」



アダバンタスが叫ぶと大声が衝撃のように響く



「うるせぇ!」


「<何だこの味は!!この世にこんなものがあって良いのか!!!??>」


「向こうの世界の料理ね、こっちのじゃないよ?まだいっぱいあるからね、お腹いっぱい食べて寝るといい」



流石に難民たちを区別して食べ物を出すのは酷だろうし・・なし崩しに宴になってしまった



フィルには牛のもも肉の丸焼き、はるねーちゃんがある程度焼いたやつをいれてくれてた


フィルに食べてもらいたいって思ってたから塩コショウは最低限で骨髄のソースも味付けの濃くないものを用意してもらっている



「エゼルは何を食べたい?」


「ではヨウスケ殿の国のものを」



エゼルには食べたいものを聞いて、僕の国の料理と言われて・・・出していく


まずはおでん、おおきな四角い鍋ごと出して皆で食べられるスペースを作る


それと肉じゃがと白米と、味噌汁



「ヴァージャーですね!こちらではなかなか無いですが!!これだけの量を集めるとはっ!」



ヴァージャーは多分白米、米に線が一本入っているけど米っぽいものらしいと話したことがある


翻訳魔法でも米と翻訳されてないから多分僕も知らない別の種類のものだと思う


エゼルの国でもあまり食べられるものではなかったがこれが好物らしい



「「「<うまい>」」」



三人ともうまいうまいと食べてくれた


レアナー様には神様用の台を出してそこにデザートチーズを出していく


日本にはいっぱい美味しいものがある



「何でも出せるのか?こんなうまいもの、なかなか買えないだろう?金子はあったのか?」


「大丈夫、まだまだいっぱいあるよ!」



三人とも美味しいと食べてくれた


妹さん、ケテスティアさんは運ばれてきた


拷問用の椅子にくくられて・・・


喉も目も、椅子の高い背に縛られているし手足もきっちりくくりつけられて運ばれてきた



「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


「エシャロット?」



エシャロットはダイドンの茎を手に持ったままニコーって笑顔を向けられた


槍を持った子供たちが周りを取り囲んでいる


アダバンタスも頭を抱えているが、戦争中に敵国の人間が走って駆け寄ってくるなんて警告なしで切り捨てられたっておかしくはない


しかもザウスキアでは亜人はいっぱい居ても奴隷で当たり前だし、アダバンタスの妹ってことは王族だ


ザウスキアの貴族は奴隷の扱いが酷い


気に入らなければ矢の的にするなり、殺し合わせたり・・切り捨てることもあるという話は聞いたことがある


僕の領地は純人種もいるけど人種に関係なく増えたが、難民に厳しかったザウスキアは特に嫌われている


王族許すまじと言う人もいるし・・・殺されなかっただけマシかな?



可哀想だし喉と目の布は外してあげる



「勇者の元杉・・・様ですね?」


「うん」


「話してもよろしいでしょうか?」


「うん、皆武器をおろして」


「「「「はっ」」」」



槍を下ろしても戦意は落ちていない


この人、何言ったんだろうな



「あなたは死にます、それも残酷に」



予言、それも神が関与してるみたいだ


嘘は感じない



「首は晒され、人々に希望はなく、世界の果てで巨悪は高笑いするでしょう」



予言は予言でしか無く、変えることができるはずだ



「―――――・・これは絶対の予言です、貴方は近いうちに死ぬでしょう」

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