第531話 死屍累々とした人々と負傷者


城で使えそうな食材をいっぱい出しておいた


ある程度食材や道具は使い方や食べ方がわからないと困ることがある


領地ではカレーのルウもチョコと同じようにそのまま食べていた・・日本語が普及している訳じゃないし仕方ないかもしれないがそれは流石に食べれないだろう



色々と食材はあるがとーさんは「なんでもカレーに入れれば美味しくなる」と言っていた



しかし肉や魚、野菜は特定のものばかりを食べて良いものではない



こちらの世界でもそうだけどなんでも食べ過ぎはよくない


偏食な人でも健康で問題ない人はいるけどそれは人による


特に妊婦は子供のためには食べ物に気をつける必要があるそうだ


食べてはいけないものを調べるとマグロやレバーやうなぎなど健康に良さそうなものも食べすぎないほうが良いのだとか


向こうの世界には多種多様な人種もいる、同じものばかり食べていれば健康被害というものが出てしまうだろう


カレーにすればだいたいなんでも美味しくなるのは確かだと思う


今思えばはるねーちゃんは納豆が嫌いだったのをカレーにいれて・・・まぁましになったからそこから料理に目覚めたきっかけの一つになったのかもしれないな



「うぅ・・・」

「たす・・・・・けて・・・・・・・」

「・・・・・ムッター・・・イッシュベニッチスタァブン・・・・」

「死んだ、はずの・・・・・・・・爺さんが・・・・・・・・・・呼んでる・・・・・・・・・」



チョコはつくられ、阿部から食べた


打ち上げられた魚のようにビクビクしてる


魔晶石の濃度の最も濃いチョコを食べて、白い炎の中に放置した


そして次を食べさせようとしたが、流石に第一号を見て尻込みした研究者たち


なにやら頭の良さそうな言い訳をしていたが実験は取りやめられることはなかった


人種や体重、年齢それと今までの色んな何かを陸斗が考慮してグループ分けしており、チョコの量は人にもよるが実験は続行された


普段からやらかしてる人から順に濃度が高いグループに振り分けられているとちらりと聞いたけど・・・うぅむ、これもある種の自業自得ってやつだと思うし目をつむることにする



各自の実験の内容は人によって異なる



ボルボルさんは「食べたチョコ」と「白い炎に包まれたこと」と「口をすすぐのに飲んだ魔力を含んだ滝の水」で魔力の量は微妙だけど覚醒することが出来た


故に実験は「チョコのみ」や「チョコと白い炎」それに「チョコと水」などで使う道具を分けられ、更に炎に包まれる時間やチョコの量もグループによって違うようだ


白く揺らめく聖なる炎や口をすすぐための魔力水や聖水、普通の水もポルポルさんと話し合って決めたらしい


チョコも死ぬほどでは多分ないし炎は人を傷つけない、せーちゃんが見てるから大丈夫なはず



最後の抵抗とばかりに研究者たちは幾つかの方法でチョコを希釈した


水が大半であったが、次々に倒れる他の研究者に恐れ慄いた彼らは、カレーに混ぜて食べた



・・・・・しかし彼らにとってはその方が酷だったのかもしれない



―――薄めれば薄めた分を食べないといけない



カップラーメンと同じだ、お湯を多く注いでも全部食べれば体に入る塩分の量は同じ


悪い顔でのたうち回る科学者を見る陸斗が教えてくれた



気絶することもなく、全身が痛む中、吐いてはいけない



全部食べきらないと実験にならない



・・・・・・・・・・結果としてカレーは万能ではなかった




世界から集まってきた食材、特にいっぱい集めてくれる食材を試してもらうことにした


カンガルーなんてわずかに覚えていたが可愛い動物園の生き物であって食べ物ではないと思っていたがビックリだ


国によってはよく食べられるらしい


他にも色々と置こうとしたがそれはだめだった


タランチュラやコウモリも美味しいらしいが毛皮が不衛生であったり、カエルやヘビ、ハチには毒があるから事故の防止のためにも駄目と言われた



食材を置いてから領地に戻って大量の食材や資材をおろしていくとダリアたちが来た



「久しぶりー!」


「ヨウスケ!!会いたかったぜ!」


「また生きて会えるとは・・神に感謝せねばな」


「フィルもエゼルも久しぶり!アダバンタス、も?」



フィルフィリアとエゼル、アダバンタスにニロンもいる


だがアダバンタスは馬車を杖代わりに歩いているし、ニロンは馬車の屋根でのびている



「早速ですが、三人の治癒をお願いできますか?」


「わかった」



アダバンタスは足を、ニロンは顔面ボコボコ、ダリアの拳も怪我している



「・・大したことねーよ、俺よりもデカブツを先に見てくれ」



相変わらず大きなアダバンタス、意識がないことを考えればニロンを優先したほうが良いのではないかと思ったが・・


「こいつは自業自得だから後でも大丈夫です」



杖を取り出して【治癒】をアダバンタスの足に放つ


ん?


むしろ血が大きく滴りだした



「この傷は?」


「かなり強い魔族が相手でしたので、なにかの魔法か呪いですね」


<痛そうですぅ>



アダバンタスは服をめくると足どころか肋骨のあたりまで黒ずんでいる


すぐに地面に寝かせて、アダバンスを【聖域】と【魔力障壁】で囲み、中を【清浄化】で満たす



「< グ ゥ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ >」


神様これは?


<身体の中に入った呪いが暴れてるんですぅ>



アダバンタスも神の加護を授かっているし、呪いには強いはずだ


しかも巨人の血が濃くでていて、下手な魔法ではダメージにすらならない


ダリアも同じように治したがダリアは拳の表面だけで出血し続けていただけでむしろ魔法薬を飲んで治そうとして手よりも胃が気持ち悪いらしい



治してる間に何があったか詳しく聞いてみると魔族の襲撃があったらしく、その剣で切られた部分から悪くなってるみたいだ













「あのクソ魔族共、どこ行った!!?」



姿も見えず、気配も消えていなくなったクソ魔族


代わりに山盛りのアンデッドがでてきた


ゾンビナイトや、スケルトンナイトが1軍分はいるだろう


エゼル姉貴が全員切り捨て、フィル姉貴が氷漬けにした



クソが、クソクソクソクソ!!!



前線で怪我した兵も連れているし、馬車も護らないといけない


どこに行ったのか、追いかけたいが追いかければ別の次元から攻撃してきかねない


あっさり終わった戦闘だがデカブツが動かない


追いかけてヨウスケを殺そうとしてる卑怯者共を殺したいのに



「アダバス、動けるか!!?」


「動けそうにない・・・血が止まらん」



少し待ってついてきていた神官に治療もしてもらったが俺の拳もデカブツの足も癒えることはなかった


おそらく高度な魔剣だった可能性があると


デカブツは片足は完全に使えそうになかったがヨウスケのところまで行けば生きてさえいればなんとかなる


馬車を杖代わりにヨウスケのところまで歩いてもらう


このデカブツを連れて歩けるやつがここにはいないし仕方がない



傷病兵は国境伝いに軍と合流してもらう


国境の向こう側の死の荒野、ザウスキアとヨウスケの領地の道は離れていて迂回する暇はないがフィル姉貴が地面を凍らせて領地まで急いだ


さすがのフィル姉貴、馬車をひいているのも貴族の屋敷にいた8本足のスレイプニール種、空をとぶように移動できた


半ば捕まって引きずられそうなデカブツだったがデカくて入れないし仕方ない


領地について速度を落としたら馬車の車軸が折れた・・・仕方がないか



運の良いことにヨウスケが居た


弱った姿は見せたくなかったがあのクソ魔族の剣を殴った拳がじわじわと汚染されている


肘から先が全く動かなくなってきていたし高位神官でも治せなさそうだったから助かった


切り落として治したほうが早いと思ったがこの身は神の・・おねーちゃんの住む家、下手に切り落せば治ってもすぐには力を発揮できないかもしれない




俺とエゼル姉貴は僅かながらだが異界に隠れる魔法に干渉できた


エゼル姉貴はあの卑怯なクソ魔族を切れなかったのは剣を何かでずらされたそうだ、相性が良くない



治癒は身体の中でヘビが暴れまわるように感じたがしばらくすれば痛みもなく動けるようになった



次に会ったらあのクソどもは絶対に殴り殺してやる・・・・・!












僕の仲間である伊達男のニロンは夜間の見張りで疲れて眠っていて襲撃に気がつかなかったのに


「くっ・・私がいればこんな大惨事になるはずがなかっただろうに、やれやれ、すまないね・・・君たちも、このわ・た・し・が!いればこんなことには!!」とか酒を飲みながら言ってダリアたちに途中ボコボコにされたらしい


本当に久しぶりに会うけど相変わらず駄目な大人だった

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