第533話 え?あぁ、そう


「・・・・・」


「・・・・・」



死の宣告をしてきたけどその後何も言ってこない



「・・・・・それで?」


「え?貴方は抗いようもなく無惨に殺されますけど・・・・」


「・・・・・」


「・・・・・・・え?」



色んな料理を出す


血を流した後と言えばレバニラだとどこかで聞いた気がするし、もっと出す


こってりしたにんにくの効いたタレにレバーの肉が合う


それだけだと味が濃くて食べにくいのをニラの歯ごたえがいいアクセントになる


ご飯をかきこむのに最高だとはるねーちゃんが言っていた


手を動かしながら聞いているけど口をパクパクさせて何も言ってくれない・・食べたいのかな?



「いやもっと詳しく、あ、このレバニラ美味しいね、アダバンタスもっと食べる?」


「はい」



僕はご飯の上にレバニラを載せて自分の分を作る


ダリアが見てたのでダリアの分と・・アダバンタスには量が少ないよね


業務用の炊飯器をひっくり返してアダバンタスようにレバニラ丼を作って渡す


レバニラだけだと飽きるかなと思ってステーキ肉も載せておいた



「え?えええ??」



死の宣告なんて何度もされてきたし驚くようなことではない


と言うか回避するために情報がいるんだからもっと詳しく話してもらわないと


レバニラ丼以外にもフィルに出したようなおおきな肉、それに大量のボウルサラダも出しておく


アダバンタスは見かけどおりの巨漢だ、よく食べる


出したら出しただけ駄菓子みたいに食べちゃうから他の人の分が出せなくなる


そうだ、カニもだそう、あれはゆっくり食べるものだし!



「驚かないんですか?」


「いや別に、よく言われてきたし、詳細詳しく」


「わ、私の予言は回避できるものもありますけど、これは何度どう見たって回避できま・・・ほらまた死んだじゃないですかぁ!!」



いや、そう言われても・・・


全身拘束されたままの女性を中心に話を聞きながら宴が盛り上がる


やはりこちらの世界の渋くて硬い肉よりも向こうのものは美味しい、お酒はなしだ


アダバンタス大怪我してたしね



「さっさと話せグズが」


「はい、はなしますはなしますごめんなさいぃい!!!!???」



妹さんは何もない場所を見ていて突然騒ぐのでちょっと怖い


幻を見て惑わされた人のような仕草をしているがきっと僕らとは見えているものが違うのだろう


エシャロットがナイフで脅すと話し始めた


場所は不明、アンデッドもいるから多分地下、強力な魔族との戦いで僕は無惨に、残酷に、時には一瞬で殺される


戦って戦って、限界まで戦っても死ぬ


何万回、寝ても起きても同じように繰り返し始まって、別の死に方をし続けている




・・・ふむふむ




「何処だ?」


「わ、わかりません!!」


「じゃあどんなやつが敵だ!!!」


「暗くて、靄がかかって見にくいんですけど」


「<さっさと言えぶん殴るぞ!!!>」


「ひぃ・・い、色んな死に方なのでわからないので「アァン!!?」き、貴族のような服の大剣を持った魔族の男と、ダークエルフのような女と、魔道士のような魔族の老人がよくでてきました」


「ちっ!嘘ついてたら目玉から指突っ込んで魔物の巣に生きたままぶち込んでやるからな!!」


「うそじゃないんですぅうううううう!!おにいだばーじんじでぐださおぅおぅううううう」


「ダリアどうどう」



号泣する妹さんだが、拘束を外してどんな敵が居たのか、どんな死に方だったのか、敵の癖や戦闘方法を詳しく教えてもらう


幸いこういうことは今までにも多かったみたいで絵はかけるようだ


泣く泣くで少し申し訳ないが描いてもらってどんどん情報を集める


例の三人とやらはここに来るまでにアダバンタスたちが戦った敵だそうですぐに似顔絵から敵の情報を割り出していく、情報が集まり次第すぐに指名手配犯として国際連合軍及び全ての国へ通達してもらおう


新聞紙の魔導具も出来たって聞いてたしそっちでも描いてもらおう



魔族との戦闘でエゼルがその場にいたのに倒せなかったのは不思議だった


エルフの中でも最強の勇者、ダリアが捕まっていた地下にいたエルフのおねーさん


英雄の中でも神から『勇者』としての称号を授かったのは彼女唯一人



彼女は空間ごと断ち切る加護を持ち、ミルミミスの角と頭蓋、目を大きく切り裂いた剣聖として名高い


幾多の強敵を倒せたのは、彼女が居てこそだった



「ヨウスケ殿、私、おでんが好きです」


「はいはい、おかわりね、そっちはエシャロットで僕じゃない」



だけどエゼルは目が見えていない


剣聖として、勇者として魔王を倒せるだけの絶技を授かったは良いものの代わりに視力を失った


だから勇者として魔王を倒せるだけの可能性はあるが戦闘面はむしろ弱体化してしまった剣聖


地下で拷問されていたのを助けた後に神々がこの勇者をどうするか考えた結果『姉妹で感覚を共有できる恩寵』を与えられた


姉妹は同じものを見て、同じ味を体感できる



魔族との戦闘ではエゼルの必殺の剣は、剣ごと敵の魔法か何かでずらされて当たらなかったそうだ


下手に切ればアダバンタスとダリアが危なかったから動けなかったそうな・・そんなときもあるよね



「そうだ、日本でエゼルが着れそうな服あったから、普段着にでも使うといいよ」


「ありがとうございます・・・とても美しい柄ですね、ダリア、そう怒ってないで着物をもっと見てもらえますか?」


「・・・おう」


「あら綺麗、この花は?」


「これは桜って言って向こうの世界ではよく見る花だよ」



エゼルが手に取り、ダリアが色んな角度から見て細部を確認している


頬を赤く染めて、興奮しているのがわかる



桜の柄の入った着物はエゼルも気に入ったようだ


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