第453話 研究の最先端


世界はレアナー教のニュースに溢れているがお陰様でよろしくない影響を受けているものもいる


研究者は特にそうだと思う、僕もそうだ


なにせ研究の結果、新たな薬を作り出し日進月歩の果てに人を癒やす薬を作り出す


だというのにどのような過程は理解できないが結果として現代医学で治せないものをたやすく治してしまう


薬など必要もなく、研究も開発もいらない


ただただ治るのだ


理不尽に過ぎる



山は険しくあるからこそ挑戦したくなるものだ



だからエベレストには命をかけて自らの足で登るものが多く、何人も散っていく



不可能と思えるものだからこそ可能にしようとやっていく


誰もが無理だと思うからこそ、誰にも成しえなかったからこそやる価値がある


研究の世界には前人未到の地に道路を敷設し、不可能を可能にする可能性がある


しかし常に興奮して、常に新たな発見ができるものではない



研究の毎日は地味なものだ



そういう積み重ねによって山を登り、いずれ到達する


もちろん途中で死んでしまうかもしれない過酷なものだ


人によっては過酷な道、人によっては踏み固められた楽な道、人によっては誘惑の多い花畑かもしれない



ただ、同じ分野の研究している人間はいるわけだし、先を越されることもある


費用の問題で研究は止めないといけないこともある


自分のところよりも更に良い結果を出される、自らの発見が評価され続けないなど、どうしても考えてしまうことがある


「こんなことをして意味があるのか?」と


実際のところ研究を続けることに意味は無いのかもしれない


誰かの薬も、私の薬も、将来もっと革新的な薬が誕生するかもしれない


レアナー教の魔法はヘリであっさり山頂まで登り、人の腕を生やしてしまう


もはや薬すら必要はないかもしれない



ただ理解しているのだ



日の目を見ない研究であったとしても、将来、こちらのほうが別の薬で効果があったり革新的であると見直されることもある


誰かがやらねばならない必要なことなのだ


いつの間にか発見や到達の喜びだけではなく、給料や世間に認められたいと別のものを求めている自分がいる



「はぁ」


「どうしました?先輩?」


「いや、なんでもない」


「そういえば知ってますか?」


「主語をつけろ、いつも言っているだろう」


「すいません、レアナー教のことなんですがこれを見てください」



メガネを取り出してスマホを見る、細かい字は読みにくい



レアナー教ニュース、異世界の物をオークションで売る?


-危険はないのか?白く燃える石-

-アメリカは最も数を多く競り落としたことを発表-

-これから研究が進む-

-昨今の異世界情勢に拍車がかかる-

-専門家は危険性を指摘-

-観測不可能な物質の正体は何だ?-

-日本の得られた数はゼロ-

-オークション参加者、危険性を訴え、訴訟の方向に-

-出遅れた日本-


「・・・・・・なんだこれは?」


「異世界のいろんなものがオークションにかけられたみたいですよ」



タイトルだけでだいたいわかった


日本の得られた数がゼロか


歯がゆい、研究者であれば自分で調べ、研究し、作り出すことに喜びを覚えるものもいる


だが未知の物質の研究など、羨ましいではないか!!?



「それとレアナー教でも募集をかけてるみたいですよ」


「見せろ」



なになに?


『低い給料、新たな発見、未知の物品が貴方を待っている。

アットホームな職場で垂涎の研究をしませんか?


参加資格

・日本における成人以上。

・やる気のあるもの。

・情報を盗まないよう、隷属の魔法を受けいれることが出来るもの。

・レアナー教の信徒になることが出来るもの。

・レアナー教に攻撃的な活動をしないもの。

・レアナー教外に情報を漏らさないもの。


研究対象

・幽霊、心霊、呪い、オカルト、超能力、魔法、奇跡など。

・地球上にいない生物と非生物。

・異世界の物品、魔道具など地球上に存在しないもの。

・賢者の石(仮)。



我々と、世界を変えませんか?


予算は基本的に無制限 好きなだけある研究室 いくらでも働くことの出来る魔法によるバックアップ 好きなだけ食べても良いうまい食事 知識はなくとも無限にいる助手 レアナー教徒は美人も多い 飯もうまい 城に来て僕と握手 個室 大浴場(水泳可能) 遊園地 プール トロッコ ショッピングセンター 野球場 サッカー場 闘技場 研究室 畑 祈りの間 牢獄 床屋 食堂 空中浮遊 結婚式場 儀式の間 修練場 説法の間 鍛冶場 レストラン 戦略対策室 武器庫 トレーニングルーム 詰め所 など完備



日本レアナー教 研究局局長 阿部雅人



「どうかしましたか?」


「・・・・・」



なんだろう、数人でそれらしく混ぜてそのまま作って失敗したような文章だ


この募集が本物かどうかなどの裏取りもしていない


ペンを取り出して必要なことを書いていく


なんだ?退職願と退職届は違う?面倒くさいな


必要な文章を書いて行く


こんな昂りは子供の頃以来ではないだろうか?


もう金は稼いだ


後の人生、僕の望んだ未知と接触したって良いじゃないか?



「僕、行ってくるわ」


「お供しますよ」


「じゃあこれからは同期だな」


「まずは採用されましょうよ」


「そうだな」



無能上司に怒鳴られたがなんとか辞めることが出来ることとなった


この後2週間はどうしても働かないといけなかったがもうこの無能の顔を見なくてすんでよかった、会長の孫だからとスピード出世


人としては有能ではあるが研究の世界での積み重ねが違う、なのに私が座るはずの椅子を奪ってニヤつくこいつに腹が立った


水酸化ナトリウムでも食って死んでしまえと何度思ったことか・・・



「でもなんで、すぐ決めたんですか?」


「ん?あぁ、僕、雅人とは同好の士なんだ」


「え?なにか趣味があったんですか先輩!?菌と会話するような変態じゃなくて!!!??」


「失礼な、彼は心霊現象が好きだけど僕はサイ・・超能力が好きなんだよ、ネットで知り合った友人だ、実はもう席はもぎ取った」


「じゃあまた先輩じゃないですか!」


「そう、なるのか?」


「まぁいいんで私のことも局長に紹介してくださいね」


「もちろんだ、このまま行こうか」


「今から!!?」



何を言っているのだろうか?未知があり、研究出来る、しても良い環境がある


この山は登るのが楽しそうだ


さて、どんな景色が見れるかな?

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