第448話 恐怖王


「煩わしい、もう出ていって殺しちまわねぇか?」


「そう言うな、儂等は出来るだけ表に出ないようにしないといけない、主上の命じゃからな」


「そーだ!そーだ!!」



雑兵とは言え自陣で使ってるアンデッド共がこうも簡単に蹴散らされて腹立ってしまう


あんなにも無防備に、空の上から一方的に魔法を打ち込まれて苛立ってしまう


人間の軍隊相手であれば瘴気に包まれつつあるこの地はアンデッドに有利だった



なにせ殺せば殺したやつもアンデッド入り、広い国でうじゃうじゃと数だけはいる人間どもを殺すにはもってこいのはずだ


人間を一人ひとり殺していくなんざ何年もかかってしまうし、間違いなく楽ができるやり方だ


うまく行ってたはずだったのに勇者の小僧、訳のわからない魔法で超遠距離からアンデッドを、瘴気をなくしちまう


戦場の盤面ごとひっくり返してくる



「ははは!ザウスキアのクソどもが!!」

「聖下!万歳!!」

「クソ魔族!いねーかー!!?あ、居るわけないよなぁ!?漏らしちまって帰っちまったんだよなぁ!!!」

「「「はっはっはっはっはっはっはっは!!!」」」



クソ雑魚のアンデッド相手にぴーぴー鳴いて逃げ回っていたカスどもがこうやって調子にのってやがる


あぁ、殺したくてたまらん



「ガルーシャ、まだか?」


「もーちっとまつしかないさね」


「落ち着いて待てばええ、主上の戦じゃ」


「だってよ、敵の頭があんなところにいるのになにもしないのは、馬鹿見てぇじゃねぇか?」


「主上の命じゃ」



茶を飲んで落ち着いているフレン老、ガルーシャも横で菓子をつまんで落ち着いている



ガルーシャもフレン老も慎重が過ぎるのではないか?


とるべきは唯一人、勇者のはずだ


それが遠距離とはいえあんな目立つ場所にいる


機獣も小さい、やつの周りにはちょこまかしてたお供もいない


絶好の機会だというのに



「とにかく、勇者の魔法が終わるまでは待て」



この地にもあの馬鹿げた光がまた来た


避けるとかはできない、自然災害と同じ、いや、それ以上の効果範囲だ



「おぉぉおおおおお!!」

「今だ!!建物の影のアンデッドを殺し尽くせ!!」

「魔族も今のうちに探せ!!いたら虫のようにのたうち回ってるかもしれんぞ!!」

「ははは!捕らえた隊には金貨百枚だ!!殺しても同じく金貨百枚!!」

「探せ探せ!!」



ギリリ



ムカつく、苛立つ、腹立たしい


こいつら纏めて塵にしてやりたい



「抑えろ」


「わかって・・る」



神聖系浄化魔法、アンデッド共に有効な魔法、俺達にはそんなに効果があるわけじゃないがうざったいことこの上ない


外のアンデッドなど最低位のゴミしかいない


別に失ったところで大したことはない



「なんだ!歯ごたえがねぇな!!!」

「さっさとぶっ殺せ!隠れてチビッてる魔族も探せ!!」

「きっと魔族のションベンはくっせぇぞ!!」

「ははははは!」



調子に乗ったカスどもに嘲られて、我慢しなけりゃならん


怒りが燃え上がりそうだ



「目的を忘れるな、わかっとるな?」


「あぁ」



俺達がここに呼ばれたのはこの地が地形的に良いからだ


連合軍のカスどもの中でも練度も低いカスの中のカスが集まってる、勇者の小僧さえ邪魔しなければさっさとやれたものを



「あん?ここなんかおかしくないか?」

「何いってんだ?何もないぞ?さっさと行くぞ」

「いや、ここはおかしい!聖下の魔法の光がここを避けてる!当たりかもしれん!!俺の恩寵も魔族はここだって言ってる!」

「・・・わかった」



ピーーーーーーーーーーーッッ!!!!



見つかったか、ならもう出番だ




「ガルーシャ・・・・・・・・・・・・・・・・・・まだか?」


「もうちょっと・・・」



外に群がってくるクソども



「見つけたぞ!!!魔族だ!!3匹も居るぞ!!!」

「金貨三百枚だ!」

「女もいるぞ!!」

「やっちまえ!!!」



ズカズカと俺様のいるこの家に上がり込んでくるとは・・



「出来たわ」




殺されたって文句はねぇよな!




「よぉっし、よくやった!」





苦笑しているガルーシャ、これでこの都市から出ることも入ることもできない



「ジジィっ!」


「好きにせぇ、なるべく痛めつけて殺すんじゃよ」



朗らかと茶を飲むジジイ、手伝う気はなさそうだ



「後、儂はジジイじゃないフレンペペル・リキュレーガとちゃんと呼ばんか?」



なにかジジイが言ってるがもう知らん


御大層な鎧をつけたカスが切り込んできた



「ラァッ!!!」


「元気なこったなぁ!!!!」



剣を掴んで、柄のすぐ上で折る


鋼を砕き割ったというのに柄から手をはなさないのだけは流石だ


掴んだ剣をゆっくりと目に近づける


近づく俺から避けようと動いてもその剣は目に近付いていく



「隊長!!」

「魔族がっ!!」

「どうなってんだ!!!?」



3人から飛ばされた矢を投げ返す、ゆったりとその矢は放った彼らに近づいていく


炎をいくつも出して残ってるカスどもを追わせる


逃げても弾いても向かってくる武器に恐怖したのか来たばかりというのにこの家から出ていってしまった



「ここで待ってるわ、楽しんでね」


「おう!」


「ふん、儂はここに残るからの」


「わぁってるよ」



ガルーシャの仕事は都市ごと結界で覆うこと、フレン老は殺した死体をアンデッドにしていくこと


そして俺は



「ははは!逃げろ逃げろカスども!!逃げ場なんてねぇからなぁ!!!」


「ヒィィ!!!??」

「来るな!来るなぁ!!ぐっ?!」

「隊長がやられたぞ?!」

「なんなんだこいつらは!!!??」



「<魔王軍幹部恐怖王コーヴァニアフだ!!ゆっくりと殺してやるから恐怖して死んでくれ!!ハハハハハハハハハハ>」




できるだけ苦しめてカスどもをいたぶり殺すことだ

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