第447話 烈火の神の心変わり・狙われし和尚


誰が作ったのか微妙に言いにくそうにしていたのはあれか?おしょーと言うのは聞いたことがないしお父様の現地妻か?


加護持ちはモテる


加護にも種類や人気はある


その土地の住民を護る土地神や幸運の神、そして武神や軍神のような戦闘に直接関わる加護は人気だ


戦闘ができるということはそれだけで他者に害される可能性も減る


収穫の神や豊穣の神、技巧の神も人々の生活を支えるし人気がある


しかし、大神であるレアナー様の加護は段違いだ



誰だって健康で居たい



普通はそう願うものだ、だからこそレアナー様の加護、格別の治癒能力は人気だ


他にも治癒のできる加護持ちは居るがレアナー様の加護と比べると見劣りしてしまう


レアナー教の大神官であれば欠損した部位を治すことも出来るがそれは特別なのである


レアナー教が後ろについた戦争では死者の数が違うし、味方でいてくれれば何かあったとしてもこれほど頼りになる存在は居ないだろう


しかもお父様はボクのような魔族の血が混じっていない純粋な人種、黒目に黒髪、純粋無垢、可愛らしい男の子


さぞ異世界でも人気なことでしょうよ


おしょーというのがどんな女かは知らないけど



胸がちょっと痛む



「ムキー!!!!」


<クフフハハハハハハハハハハ!!!!いいぞ!もっと不幸になるといい!!>


「ボクの神様、最低すぎる・・」


<褒めたか?>


「褒めてない!!」


<だいたい、ずっと「師匠だから」って接してきたのに結婚してほしいなんて気付くわけないっしょ>


「うるさいやい・・・あんたどうせ裏で邪魔ばっかりしてるでしょ」


<もちろんだ!いやー、楽しいなぁ>


「もうやだこの神・・・」




いじけてしまいそうになりながらもなんとか調査した


驚くべき調査結果だったが夜になってしまったし休憩を入れることにした


<何だこの味は!!!??>


「美味い!」

「やべぇよ、もう旦那のご飯食べれない」

「あははは、美味しすぎて」

「・・・・・・・」

「やばい!タヌカが美味すぎて昇天しかけてるぞ??!」

「どのタヌカだ!?」



おしょーとかいう女が作った「ちきんかれー」なるもの、なにかの肉が煮炊きされたなにか・・・まじやばい、まじやばうますぎる、目玉飛び出るかと思った


美味さの暴力だ


もう泣いて食べる奴もいれば神に祈りを捧げているやつまで居る



火にかけてから予兆はあった


お腹のすく香辛料の香り、もう待ちきれないと仲間が味見を申し出てきたが却下し、皆でしとやかに食べた


骨が入っていたのはその方が旨味が出るからでもあるだろうし、肉が付いてるのも唇でほぐれそうなほどに柔らかくとろけるほどに美味しい


知ってる鳥じゃない、鳥はこんなに柔らかくて旨味が出て、美味しいものじゃない


・・・まさに天上の、神峡の味ってこういうものなんじゃないだろうか?



<ロムたん!さっさと洋介たんさっさと落とせよ!何やってんだ!!?>


「邪魔してたのはあんたでしょ!!?」


<うっせぇ!さっさと嫁になってこい!そんでこのちきんかれーをおしょーに作って貢がせろ!!!>


「えっ」



・・・・・・・・よく考えてみる


お父様はこんなにも美味しいものをこんなにも大鍋で作ってくれる女性が異世界に居る


きっと貴族だ


王宮でもこんなに美味しいものを食べたことがない


どんな人だろうか?そのおしょーは?



春日井遥と黒葉奈美、ヨーコルノリア・メレニ・フォプセ・ケメヌ・セセ・マリュニャロ・ガムボルト・マルディの3人は少しだけ知っている



春日井遥は旅でよく聞いたはるねーちゃんだ


隣に住んでいて家族ぐるみの付き合い


運動大好きで男よりも凄い、山や川に海といった場所が好き、虫をいっぱい捕まえた、食べ物は危険、胸はない、頼りになる、髪と瞳は黒


そんな風に分析していたが数年のうちに背の高い巨乳になっていた、性格はそのままに見えるが



黒葉奈美は食べ物よりも酒が得意とは神様の噂で少し聞いた、春日井遥よりも更に背が高い、胸は比べると小さい気もするボクよりかはある


黒葉奈美が貴族の差し向けた令嬢かと思いきや春日井遥の親友であって、行動しているうちにいつの間にかということだったと聞く、一般人で口が悪い


ガムボルトは一国の王であった人物、お父様に剣をぶっ刺した大罪人、シーダリアによくボコボコにされていた


彼女はもちろん異世界で料理など作れない



ということはこんなにも美味しく、こんなにも量を作ってくれた「おしょー」こそがきっと貴族の寄越した嫁の座を狙う刺客だ


きっと春日井遥よりも胸が大きく、黒葉奈美よりも背が高く、ヨーコルノリア・メレニ・フォプセ・ケメヌ・セセ・マリュニャロ・ガムボルト・マルディよりも異世界では家格があり、これだけの素材を集める権力と金銭を持っていて・・・・・・それでいて料理が美味しく作れる存在だ



お父様のいた世界は黒目と黒髪の人間がほとんどといってたし、きっと艶のある黒髪の令嬢



そんな存在にこのちきんかれーを作らせて、ボクたちに貢がせる?



何故かゾワゾワした



わ、悪い女じゃないかそんなの!?


<いいじゃん悪い女?とにかく協力するからさぁ!さっさと勇者である洋介たんとくっついてくれ!!>



娘っていう立場になってからも腐れ貴族への牽制もあったし少しはその気で狙ってはきたが邪魔をしてきたのはお前じゃないかっ!!?


ボクは洋介の師匠として正しく接してきたつもりだぞ!?


読めない字を教え、疲れたときには鞭打って起こして、何度も間違える彼を見捨てず、常に正しく接した


なのにそのボクがそんなことをやらせるのかっ!?



<そうだ!>


「だめでしょ?!」



脳裏に浮かぶボクをバカにしてきたような顔をした神様



<じゃあ、あれかお前>


なによ


<国がよこしたかもしれない、ちょっと胸が大きくて、背が高くて、料理が作れて、洋介のことをなんとも思っていないかもしれない加護狙いかもしれないやつに、洋介が好きにされても良いのか?>



・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「焼き殺そう」



骨も残さん



<だろ?いやいやそいつは生かしておかねぇとだめだ>


「なんでよ?」


<だって殺しちまったら洋介たんが学ばないかもしれないし、国から送られてきたんだったら次が来るだけだろ?洋介たんの立場ってものもある>


「・・・そっか、たしかに」


<だから、お前が正室の座について、洋介たんをわからせて、ただそいつには飯を作らせ続ければ良い、国のやつなら繋がりが持てただけで十分利があるし貢いでくるだろう?>


「・・・・・・・・・・・・たしかに」



体の芯がゾクゾクする、やっちゃいけないことなのに、だけどこれって


<女の戦いだろ>



だよね、うん、いい、素晴らしい


お父様と仲の良いところをそいつに見せつけてボク達の絆をわからせてやりたい



「くひひ」


<・・・・・>



なんだろう、ムズムズする


何も悪いところがない、そのおしょーからお父様を護るためでもある


悪いことをして、悪いことは何もない


やっちゃいけないことなのに・・・・・・・・・やってみたくてたまらない



<だからさっさと帰るぞ!!>


「だねっ!」



気分が晴れて、楽しみで仕方ない


朝になる前に飛び立つ


夜に飛ぶ魔物も居るがついでにボクの炎で焼き尽くす


このほうが役にも立てるだろう



「たーのしみー!!!くふふぁははははははは!!!」

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