第424話 ゆーしゃの世界


ゆーしゃがカメラに向かって話しかけている


この異世界は魔力が薄いがとても文明が進んでいる


雲の高さでも地上の人と話ができる魔道具、機械、スマートフォーン


誰でも使えて、声や映像をデンパが届く範囲ならどこでも使える便利な道具



球体状の撮影用魔道具もゆーしゃが考えたものだ



ゆーしゃは生き埋めになったりはぐれてしまうこともあるのでそれを撮影して仲間のところに元にまで飛んでいき位置を知らせるという性能がある


画質は似たものだけど音も聞こえる


カメラというのは撮影と録画だけではなく世界の反対にまでこの映像と声が届くなんてとんでもない道具だ



僕らも黒葉奈美大神官に習って教えてもらう



「カメラ?興味があるんですか?」


「うん、すごい道具」


「えーっと、何に使うのですか?」


「色々撮ってみたい」


「例えば?」


「ゆーしゃ」


「わかりました、データをくれるなら教えましょう」


「・・・?おう」



教えてもらった、どうせなので最新の凄いカメラを貰った


同じ機種を揃えて、一緒に勉強する


動画も良いが写真というのは素晴らしい


僕達は覚えていられるけど、一度に同じ見た光景を同時に思い出すことは出来ない


俺たちにはそれぞれ好みがある


お互いに一番いいものを比較することができるこの道具は素晴らしい


世界でたった一人の自分と似た人間


何十人も神格の入った私達にとって同じように加護のたくさん入った人間なんてもう二度と現れないかもしれない


また他の人が現れるかもしれない、聖下でなくともよろしいのでは?などとエッサイは言いやがるが何を馬鹿なことを言っているんでしょうか?


僕達を、王である以外に目覚めさせてくれたのは彼で、ゆーしゃ以外などありえないというのに



カメラで何かを撮るのは楽しい


城、自然、虫、空、ルール、ミルミミス、内田、壁、火、水、土、トイレ、ブローチ、精霊、かーさん、肉、紙、ペン、竹村、バイク


僕達はいろんなものを撮った


遥、はるちゃん、春日井、遥さん、春日井様、特に興味深い、綺麗だ、ちょっと中も見たい



「撮るのはいいけどもう少し離れて、危ないから」


「・・・はい」



29.765ミリの距離から瞳を撮るのは駄目だった、次はかかとを撮ろう


人間の瞳孔というものはよく見るととても興味深かったのだが



いざこうやって写真にしようとすると色んな角度で撮ってしまう



ゆーしゃにもいろんな服を着せて撮ってみる、ふむ・・・



「春日井の服を着て欲しい」


「なんで?」


「・・・・なんでだろう?」


「人のもの勝手に使うのはよくないよ?」



・・・難しい


エッサイに聞くか



ライブ放送の内容はつまるところ世界に存続の危機があるから魔法を習う機関の発足するというものだ


この世界のレアナー教は世界の人口や国力を鑑みるに本当にちっぽけだ


領地もなく、領民もなく、主権もない


聖騎士も遊び程度、タヌカたちを連れてくるか?最低限の武力を持っているし情報の大切さを知る彼らがいればゆーしゃも助かるかもしれない






助かる?





なんだ?


何かが引っかかった


ゆーしゃの能力は魔王を倒した頃よりも向上している


今なら一流の騎士とも渡り合えるだろう



仲間もいる



最低でもゆーしゃと私さえいれば、考えられるどんな相手が敵でも勝てなくとも絶対に負けることはないはずだ


なのに、何かが引っかかった?


誰だ?僕達の誰がそう考えた?


何に引っかかったのかも分からないが考えろ


敵対が国家でも問題はない・・・227268の想定を考えたが出るのは神々からの攻撃と結婚者からの裏切り


結婚していれば喧嘩を推奨しているレアナー教同士の喧嘩は障壁や結界を貫通する


勇者領地の子どもたちの中にいる十二将が敵に回れば?


わからない、それはないと考える私達も居る


ここの暗部たちか?ここには私達の思いもしないものもあるかもしれない



・・・いや、魔族の生き残り共による攻撃?



あぁーイラつく、そうですね、だね



収納袋からゆーしゃの手袋を鼻に・・・・止めておく



何かが引っかかっている気がする、何かが違う気がする


引っかかる時点でなにかの見落としや想定外の可能性もある



想定外を考えすぎて困るのは王としての私達でもよくあった


これまでも多くの想定外で私達はこうなった


外的要因を考えればきりがない



こちらの世界は『安全を当たり前』と『嘆くような出来事を特別』と考えているような人間ばかりの国だ



それでも例外はあるだろう


このゆーしゃの育った異世界と私の育ったレアナー教国の違いに、文明の違いに創造もしないなにかの要因があるのかもしれない、考えすぎじゃないか?でも引っかかった、たしかになにか引っかかった、それでもこれ以上考えても答えのでない問題だと思うがね、そうですね





・・・・それよりも愛人として頑張るべきだ


寝てるゆーしゃのベッド


大きなベッドにルールがゆーしゃに向けてお腹を出している


お腹を枕にゆーしゃたちが眠っている


左右のテーブルには剣やムチ、スマートフォーンに装飾品などが置かれている


ルールは目も開けていないがこちらに気がついているようだ



「かーさん・・・」



「わ、こわっ!?・・・こんな夜にどうかしましたか?」



大神官を起こしてしまった


天井や床下から出ていったわけではなく正面からだったがこれもだめ?


エッサイにまた聞く必要がある



「なんでもない」


「そうですか?一緒に寝ますか?」


「寝る」



睡眠はあまり必要ではないが横になることにする


愛人とは最も愛される人である


それを目指すのには情報が足りなさすぎる、俺たちは完璧なはずなんだがなぁ・・・



今日は教えてもらうのは止めておきましょう


ベッドの足側に回り込む


ユーシャ、洋介、元杉、ゆーちゃん・・愛しい無二の人・・・彼の香りを堪能して眠りにつこうと足の間から



「それはだめです、いっしょにねましょうねー」


「写真いる?」


「朝起きたらください」


「わかった、おやすみ」


「はい、おやすみなさい、いい夢を」



いい夢?夢、夢か


これまで一度として体験したことが無いのだけれど・・ここでなら体験できるのかしら?



これも一つの楽しみかもしれませんね

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