第415話 目を覚ましてくれ


「えっと小林さんは黒葉のお父さんってことでいいのかな」


「・・・・・・・・・・・はい」



消えてしまいそうな声で黒葉が答えてくれた



「パパだ、パパと呼びなさい」


「パパはなんでこんな事したんですか?」


「貴様にパパと呼ばれる筋合いはない!!!娘に言ったんだ!!!!!」


「お父さん黙ってて」


「奈美!?」



床に手をついてしまった黒葉、かなり心配だ


ちょっと二人にしてほしいということだったので柱を担いで個室に入る



「な、何をするダァ!!?モガ」


「お父さん、黙って」



黒葉がムチで目と口元に巻きつけて黙らせた


バケツとタオル、それと服と靴も何着か置いておく


クシや身だしなみに使う道具も・・・



「大丈夫?」


「すいません、任せてください」










青年に柱ごと担がれて個室に入れてもらえた


チャンスだ


娘の目を覚ませられるかもしれない



「何やってんのお父さん、だいたい分かるけど」


「奈美が心配で・・見に来たんだ」


「むちゃくちゃしないでよ、フィンリーちゃんに謝ってよね」


「・・・だれ?」


「元杉神官そっくりな女の子よ、お父さん更衣室に連れ込んで脱がそうとしたんだって?」


「誤解だ!!」



似た女の子?金的の子か・・・・・


あの女の子が結婚相手で『元杉洋介』という存在自体がフェイクの方のがまだ良かった



娘の貞操に関わるのだ



もしもこの宗教が人を治すというフェイクで作り上げられたもので、元杉洋介という存在も春日井遥やヤクザたちによって作り上げられたものであれば


・・・・・きっと娘は何らかの理由があって加担しているが婚姻関係とかふざけたものは存在しないはずだ



元杉洋介の写真は何度も見直した、間違いなくあれが元杉洋介だ



水着だったあの子が本物であって、娘のそっくり発言も私にごまかすためという可能性もありえる



「お前が親友って言ってた、春日井遥、彼女だってネットでビッチだとか援助交際ってよく出るし、この宗教だって怪しいじゃないか!?だからお前が心配で」



そもそも春日井遥と奈美の接点は大学からでここ数年だ


だけどたった数年の大学生活で競馬やパチンコ、マルチ商法に宗教なんかの悪い友達に引っかかることもよくある話だ



「お父さんの馬鹿っ!!!遥は私の親友で!お父さんでも悪口は許さないよ!!!」



不味い、奈美がどっぷりと薬漬けにでもされていて完璧に信頼しているのなら私の声は届かないかもしれない



「客観的な評価だ!!そういう友だちがいることでお前がどう思われるかが心配で「<余計なお世話!!!!>」



なんだ?娘から殺気のようなものを感じたぞ?!


だが止められんよ


真の親ではないかもしれない


でも奈美からは信頼されているはずだ



「お前が婚約とか聞いて!『レアナー教の黒葉奈美』なんて遠い世界の知らない人かと思ったらまさかの娘だよ!?だから調べに来たんだ!!」


「はぁ」


「何だそのため息は!??まともに聞いても隠すかもしれないだろう!!」


「・・まぁわかるけど」


「それに相手の男だよ!!奈美含めて3人が結婚相手?ふざけやがってぶっ殺してやる!じゃない、信徒も爺さんも、男にも手を出してるとか!?12万人ってなんだよ!?!信徒皆お嫁さんってかクソが!!!ヤクザが関係してるやばい女が、お前と同じ大学の子つながりでお前がなにかやってるとか!!!完全に洗脳されてるだろ!!!目を覚ましてくれ!!!!!」



奈美が信頼している私がここまで言うのだから、自分でも自分の置かれた環境が変だと気がついてくれるかもしれない



「・・・・・・・」



ここだ


何かに気がついてくれたのかもしれない


私が奈美から嫌われても良い


ただ奈美の幸せのためにこんなやばい宗教から足を洗ってほしいのだ



「挨拶にもこない!!尻軽なビッチと付き合う!お前を二番三番に蔑ろにするクソ野郎!!だから調べに来」


パシッ



奈美が右手で私の口を覆って塞いだ






「<お父さんなんて・・・・・お父さんなんてだいっきらい!!!>」





本気で怒らせてしまった



・・・・・・失敗してしまった

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