第414話 大晦日ラプソディー


顔に青タンが出来て柱に吊るされている・・・私の父親


私は口からいらないことをしてしまう人間と自分で理解しているがこの叔父はいらないことをやらかしてしまう人間だ


だからなぜこんなことをしたのかわかる



わかってしまう・・・



私の本当の両親は病気で死んだ



流行りのインフルエンザをこじらせた父親と、簡単な切り傷から悪い菌が入ってしまった母親


それで父親の親族はいなかったし、母親の弟のもとに私は引き取られた


小林翔、私の名前が変わると私の交友関係になにかあるかもしれないと私の名前は父の黒葉のままだ


それで育ててくれたお父さんだけど、仕事はバーテンダー、母親はお店で知り合った女性でバツイチ子なし


私には尊敬しているお父さんだけどお酒を夜に出す仕事ということで自分では良い父親ではないと思っているふしがある


亡くなった祖父と祖母がやっていたクリーニング屋を改造してできたのが父親のバーだ


色々苦労していたのは知っていたし私も可能な限りお手伝いをした


亡くなった父親のカメラで見栄えする料理や店内の写真を撮ったりして、メニュー表を作ったりなんかして・・・


私が成人してからたまにお店に顔を出すと嬉しそうだった


お父さんたちが病気で死んだ時、家族のことがわからずに3ヶ月施設で育った私はきっととても大変な子供だったと思う


何を伝えれば良いのか、言葉が出ずにいて・・


新しいお父さんに心の底から思ったことを言えばいいと言われて・・・失言の酷い私が生まれた


子供の頃はひどかった



「ますみちゃんはブサイクだね」


「はぁっ!?」


「ご、ごめん、で、でも好きな子にイタズラで泥で汚すって馬鹿じゃないの?心がブサイクっていう、あ、ごめん」


「てめー!ごめんって言えば許されると思ってるのか!?」



新しいお父さんは「姉さんそっくりだ」と言っていたが・・父さんも同じようなものだ


出たとこ勝負の度胸は誰にも負けないと豪語するだけあってタトゥーまみれの外国人が相手でも物怖じしない


お父さんもいろいろやらかすのは同じで・・法律とか無視して色々やる


バーの横の家のやつが暴走族になって煩かったら何をやったのか丸刈り坊主で更生してたし、通学路で誰にでも箒を振り回して暴言を吐く老人がいたけどいつの間にか老人ホームにいれられてた


本人は何もしてないよーと言っていたが燃えるゴミの中に灰になりかけたあの老人の住所や家族の資料があった


あまり付き合い方がわからないけど大好きな新しいお父さんだ


お父さんがお母さんと結婚して凄く嬉しくて・・・私はできるだけ家を出るようにした


お父さんのことは大好きだったしお父さんは私で苦労していたのは知っていた


だからお母さんとうまく行けばいいと思う


お母さんはお母さんで自分の不妊症が原因でバツが付いたので私のことをものすごくかわいがってくれた


寝てたら撫でてくれるし、私には良いところを食べさせようと料理の良いところを私に取り分けてくれる


すぐに腕組んだりペアルックしようとしてきたりキスしてくるのは厄介だが



思えば遥が病気で倒れたのは私のトラウマだったのかもしれない


本当の両親が死んだ時、私は見ていた


本当にどこにでもある死


苦しく咳をしていてあっさり死んでしまった父


悲しみながらも私を助けようとしてくれた母親


だけど本当に小さい傷だったのに父が死んですぐに後を追うように感染症で死んでしまった



大学では一人暮らしをしてお父さんとお母さんの時間を作った


弟か妹欲しかったし・・何よりもお父さんには幸せになってほしかった



レアナー教に入ってからは全然家に帰らなかった


両親が知れば確実に興信所に調べられていただろう


私の治癒の能力が上がって、お母さんの不妊症を治せればいいなと黙っていた



レアナー教のことはいつかは話さないといけないとはわかっていて計画していた


今でも私の家族だからということでレアナー教からこっそりガードを派遣している


今年で大学の卒業単位を取り終えて準備ができたら、2人に話す予定だった



だけど今年は大学がいっぱいいっぱいで冬休みはレポート漬けになる


だから今年は帰らないと言ったのだけど、だからこそ心配して来たんだ



父親の行動パターンから考えると・・・


レアナ➖教が大暴れし「レアナー教の黒葉奈美」が私と知った


私が地球にいない間に着信めちゃくちゃ入ってたもんね


だから心配して、お父さんなりに調べ尽くしたのだろう


めったに帰ることの無くなった私のアパートの部屋からレアナー教のワッペンが減ってる気がしていたんだ


ワッペンの中にはICチップが仕込まれているから入り口の防犯センサーをくぐれた


レアナー教、エゴサすると酷いものも多いし内部情報は結構限られている


そんな宗教で働く私、騙されてるのかと見に来てあわよくば助けようとしたんだろう


で、お父さん。考察力と度胸と口の達者さが化け物だからきっと色々話を聞いたりうまく行って・・・・元杉神官の影武者ことフィンリーちゃんに間違えて声をかけたんだ


目の色は黒ではないけどレアナー教の騒動でバレないように影武者をやっていたらしい、髪を黒く染めたフィンリーちゃんは元杉神官によく似ている、女の子だけど



「お父さん・・」


「パパと呼びなさい・・・」



こんな事も、というか信徒の家族にレアナー教に攻撃的な危険人物がいる可能性もあったのでせーさんがフィンリーちゃんのガードをしていた


フィンリーちゃんの背格好が似ていたのでせーさんは元杉神官用の服を作るのに観察していたそうだけどヨーコ達がいたから警備のことを聞きに行っている間に事件が起きたわけだ


そしてきっと私にバレないようにここから出ようとして、きっと腕自慢でもあるからなにかしたんだろうなぁ




うん・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・・・・・




なんかフローラルな香りがして、胸に偽装用作り物おっぱいが装着されたのがはだけて見えている父親


私のために来てくれたんだろうけど・・・・・・見たくなかったなぁ

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