第413話 逃亡・・・要望を押し通す


「探せ探せっ!」

「男子更衣室に連れ込んで脱がそうとした変態だ!容赦すんな!!」

「ガルルルル!」

「ローラー作戦だ!!」



やばい、不味い、怖い、死んじゃう


おじいちゃんおばあちゃんですら血眼で鎌を持って私を探している


使い込まれた棍棒と、人を固定するための使用感のある柱と手錠を持った人もいる


縄を持って人語を忘れた人もいて、捕まったら絶対にただでは済まない





・・・・・・・



膝が震えそうになるが



「すいません、この辺のトイレって何処が近いですかね?」


「向こうだよ、今不審者がいるそうだから気をつけな」


「はい」



堂々とするべきだ、度胸は大事


もしも捕まっても堂々としていなければボコボコにされる可能性がある


ここまでやらかしてしまっては取り返しはつかない、本当に床に足はついているのか?こんなにやらかしてしまったのはいつ以来だろう


内心冷や汗ダラダラであるがトイレに入って・・窓はなかった・・・天井も開きそうにない・・・・・


清掃中の看板を奥から出して、人がいないうちに僅かな変装だがほくろと髪の色を落とす


思い切って水の入ったバケツと雑巾を持って外に出る



「ん?あんた何処に行くんだ?」


「お疲れ様ー、掃除してたんだけど車につけられたしめ縄が山で汚れたって聞いてな、レアナー様も見るかもしれないのに汚れたままにするのもよくないだろう?」


「あー、たしかにな、寒いしほどほどになー」


「あいよ、ありがとー」



こういう時のくそ度胸はよく武器になると言われる


建物に入る前に止まっていた車のフロントにつけられた正月飾りが汚れたのを見たのだ


そして今日は大晦日


ちょっと変わった場所を掃除するのもあるあるだろう


できれば見つからずに抜け出して後で謝ろう


このままだと吊るされかねない



入り口には検問がされていた


一人ずつ、顔はおろか口の中まで調べるほどの検査がされている


入るときにはなかったから明らかに私のせいだ


目立たないようにゆっくりと戻る



「ん?あんたどうしたんだい?」


「よく考えてみたら泥で汚れたしめ縄だったら雑巾と水よりもブラシがあったほうが汚れ落とせると思ったんですよ、取りに戻ろうと思ってさ」


「なるほどなー、茶髪の不審者がいたみたいだから気をつけなね~」


「あいよー、ありがとー」



・・・・・すでに私の顔写真が張り出されていた


少し写真を見てから立ち去る


見ないで通り過ぎるのも怪しいし、見すぎてもきっと怪しい



服や化粧道具をまとめたカバンを取りに戻りたいが・・無理だな


幸いにしてサンダルを履いた人が多いしあまり私は目立っていない


できれば窓のある部屋から外に出れたら良いのだけど


別のトイレを見つけたので調べに・・窓は・・・無い


急いで掃除中の看板を出して掃除道具入れから使えるものを探す



消臭スプレー、新品の雑巾、何に使うかガムテープ


デッキブラシに洗剤のスプレー




女は愛嬌、男はくそ度胸だ




新品の雑巾の袋を破ってガムテープで丸め、服の中に入れて少し胸を作る


大きめの白い布を見つけたので髪の毛を覆う


肘の手前まで覆えるゴム手袋もつけて少し腰を落として歩く



看板を戻し、トイレから出て更に奥に行く


洗剤とモップと雑巾を持って、ポケットにも雑巾をいれておいた


ほぼ完璧な掃除のおばちゃんだろう、今なら少しキツめにフローラルな香りもするぞ



少し腰を曲げて歩き方を変えて奥まで行くと、ショッピングセンターがあった


オープンスタイルの店ではズラッと壺が並んでいるのが印象的だ



「いたか?」


「いないな、別のエリアか奥の未踏破エリアに行ったんじゃないか?」


「Shit!!」




物陰で掃除していると私を探している外国人がいた


コートを着ていたが明らかに銃を持っていそうだ



壺も売ってるが強面の外国人も走り回っている


駄目だ、この宗教、危険



歩いてみると神様?まんじゅうや洋介の絵に・・・・像も売っていた


あれか?よくわからんけど「教祖様のありがたいホニャララ」的な感じで高額なものなのか??


単位レアナーってなんだよ


100レアナーって10万円ぐらいなのか?



良くない噂も多い宗教だ


この城の大きさに比べて明らかに広いとかは置いておいて、この施設、中に入った人間と外に出る人間の数が合わないのだとか


・・・治療をする宗教のはずだ


だけど間に合わない人間もいるだろうし、そう考えると人数が合わないこともあり得るのかもしれない


だがここの人間はチンピラや半グレ、議員だってこの建物に入れて・・・帰ってこないということがあるそうだ



出れたとしてもそれは別人となる



安藤や渡辺といった議員がこの施設に連れ込まれたが明らかに別人となった



だめだ・・だめだだめだ!思考がどんどん悪い方に行ってる?!



お互い奇声を発してから腕を組み合ったり、あれだけ叩いていたレアナー教へ祈りを捧げるそうだ



始まりは登仙病院とヤクザの癒着によって保険金を詐欺していたとか、健康な人間を癌に仕立て上げて金儲けしていたとかとワイドショーでやっていたが正しかったのかもしれない



ここ最近、明らかにうちの店の客層が変わったのもそうだ


店の周りで銃声が聞こえたりもした


そして客が常連以外ではレアナー教のワッペンを付けた人間が多くなって・・・・・



考えてしまう



ここから逃げ出して、その先はあるのか?



「いたぞ!!」


「抵抗はしない」



信徒らしき人間が何人も寄ってきた


さっき声をかけた男がいる、なんでバレたんだか



「よし、大人しくしろよ?」


「ホワチャッ!!!我が子だけは連れ帰らせてもらう!!!おらっ!こいつの命が惜しかったら道を開けんかい!!!」



中国拳法を習っていたことはある


自分から信じられない声が出た


油断した男の顎先に良いのが入って、倒れそうだったので後ろから裸絞にして進む



「き、貴様!?」


「誰か聖騎士さん達呼んで!!」


「こちとら心臓止まりそうなんじゃいコンチクショー!!!!!」



あぁ、世界が洗濯機のように回っている

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る