第300話 校庭の中心で愛を叫ぶ


・・・・・遥が戻ってくるまで本当に大変だった



倒れ伏している元杉神官、場所はどこかの学校の校庭



「元杉神官!!?起きてください!もとす・・洋介さんっ!!」



駆け寄って揺さぶる


うつ伏せで気持ちよさそうに寝ている


けど


・・・・・・呼吸をしていない



「嫌っ!死なないでっ!!?お願いっ!!」



揺さぶって、顔を叩く



意識がない



いつから息をしていなかったんだろうか?



血色は良い



とにかく顎を上にそらしてを鼻を摘んで息を吹き込む



・・・・・反応はない





「嫌だっ!!愛してるのに、お願いだから!死なないで!!!」





半袖のパジャマのような服を破いて心臓マッサージを・・・・ん?



「あれ?なんだこれ?」



服を破こうとしたのはAEDも考えてだ


だけど服どころか元杉神官自体が空気のように軽い


パジャマを破ろうとしたら元杉神官ごとぐいっと動いた



これは・・元杉神官じゃ・・・ない?



魔力の繋がりも感じない


よく出来た人形だ、ものすごく軽い



「人形だ・・・」


「おぉ!良かった!!」


「おじいちゃんじゃない!です!!」



隊員たちの顔を見ると泣いて喜んでいる、が、気恥ずかしくなった


私今この人たちの前で何やったっけ!!?






愛してるってとりみだし





あぁああああああああああああ!!!!!!!?????








身悶えして心が空虚になった、空は青いなぁ



「ここは?」


「日本の、学校の校庭・・・教育機関で、地域の子供達は集まってここで勉強するの」


「なるほど、です」


「ほぉ、ここが」

「お父様のニホン」

「建物ばかりで壁が見えませんな」



彼らはニヨニヨと私の方を見てきたりもした


けど空気を読んでか周りをキョロキョロと物珍しそうに見ている


・・・正直助かる



「あっちに人がいます!」


「話を聞いてきますね、どぅわっああああああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」



一瞬だった


よく見ればホイッスルをかけた教師が座っているがピクリとも動かない


体育教師に向かって走り出した隊員は地面と・・その先の世界ごと陥没して落ちていって見えなくなった


落ちた先はまっ白


なにかの魔法的なトラップだろう



「皆動くな!!奴は飛べる!周りを警戒しろっ!!!大丈夫かー!!!??」



返事はない、ここまでの道のりが安全すぎて緊張感がなかった



「・・・おそらく大丈夫でしょう、先に進みましょう」



学校の校舎を調べ、曲がり角ごとに1人ずつ落ちていった


落ちる可能性も考えて警戒していた


なくなった地面を考えて空を飛べる隊員に言ってもらっても隊員は消えた



しかし、おそらく元杉神官の教室には来れたと思う


記憶でできた世界だ、記憶深い場所である場所のほうが鮮明になっているのだからこの教室のはず



だけど・・・・・・どの席だ!!!??



生徒はいない


教師はちらほら廊下に見えるが全く動かないしきっと景色と一緒だ



教室の何処かに情報がないかと考える


席の表なんかがあれば一発なのだがそんなものはない



「何をしてる、です?」


「席の数を数えてるの」


「数えるとわかる、です?」


「推測だけどね」



名前の順で考えるとあかさたな順で「あ」から始めるなら左前の人がその可能性が高い


席数は28、前の列が6席あり、その後ろに4席か5席ずつある


もとすぎ、なら「あかさたな」の順でま行の最後、席の右側の可能性が高い


一応ミーキュちゃんに説明した



「なら確率だけなら右が高い、です」


「って言っても14席あるし可能性が高いだけなんだけどね?」


「可能性が低いよりかはマシでは?」


「確かに」



多分このあたりだろうと席に座らせて・・・世界は崩落した



「ぬぅ!?ミーキュ!母上!!!」

「うぁあああああああああ!!!!???????」

「部屋ごと!!?」



落下地点は見えずに落下が長く続く


ムチでとっさに巻きとれたのはミーキュちゃんだけだ


他はなにもない真っ白な空間



「あわわわわ」


「大丈夫だから、しっかりつかまってて」


「はい!です!!」



ミーキュちゃんと落ちて、魔力障壁を出して、地面の衝突に備えた


どんと肩に衝撃がはしって



「うぎゅう」



抱いているミーキュちゃんを潰してしまった


落ちたのは多分1メートルほど、私は落下中に左の腕を下にしてミーキュちゃんを抱いて落ちた


横に現れた関羽さんは普通に着地していた



「大丈夫ですか!?母上!!?ミーキュ!!!」


「大丈夫、です!おばあちゃんが助けてくれた!です!!」



足から落ちればよかった・・・



その後休憩すると私みたいに皆落ちていたそうで皆で何度もトライした


席は5回試し、周りの建物や家を探そうとしてみたがそのたびに落ちた


何が正しいのかはわからずに、何度も何度も


失敗の回数も多くなってきたが制限はかからないらしく戻る必要もないようだが、突破は難しかった


魔法を使っているものを探すと隊員が魔法をぶっ放して落ち、どこかに敵がいるんじゃないかと開かない校長室を遠距離攻撃してルール違反なのか落下し、空を飛んで行こうとして見えない壁にあたって墜落した


家に帰って寝るというのも可能性としてありえると考えたが・・・この学校の位置も元杉神官の家の位置もわからない



どこかには答えがあるんだろうと何度も挑戦して疲れていた



遥が帰ってきて神々しく見えたよ



どっちに進めば良いのか、全くわからずに人海戦術と精神力がどんどん消費する


教室のように何が正解なのかもわからないのはストレスだ



あれだけ酷い目にあったのに家に帰って和室に寝かし、あっさりとクリアした遥



だけど少し妬けちゃうな



元杉神官を見た瞬間は殴るかと思った、拉麺の問題は理不尽な問題だもんね


元杉神官が悪いわけではないにしてもこのダンジョンの問題は理不尽すぎる


なのに遥はすぐに慈愛のこもった目を元杉神官人形に向けていることがわかった



奪い合う間柄ではないとはわかっているのだけど、私にもそんな風に出来るのか・・出来ているのかはわからない

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