第272話 呑みにケーション


私のダメな危機察知がこう言っている


このロムさん、危ない


何がとは言わないけどなんだか「元杉神官に治してもらった」って部分から少し恍惚の笑みが出てきちゃっているのが危ない



「ぶっちゃけ、元杉神官狙ってますよね?」


「うん?そうだね、そうかも知れないよ?」


「そうですかロムさん、負けませんからね?」


「ふふ、変なこと言うね?僕はもう勝ってるんだけど?」


「さぁそれはどうでしょうね?ふふふ」


「はははは」


「「ははははははは」」



ふぅ


私がこんな海外の昼ドラみたいなことをするとは思っても見なかったけどなんだか面白いね


そうだ



「これ、一緒に飲みませんか?」


「それは?」


「ラム酒です、貴女の名前の元となった酒です」


「これが・・瓶というのは綺麗なものだね」



そっか、こっちにはガラスがないんだった


近いものならある


元杉神官に見せてもらったがもっと割れやすくて濁ったものでとても窓や食器には使えない



「ロムさんの髪の色に近いですね」


「そうだろ?異世界の辞典でも絵が載っていてね、チンチン!」


「ちんち、乾杯!ですね」


「うん、君たちの言葉だ、研究もしててね」



何をいうかと驚いたけどチンチンはフランス語での乾杯の言葉の1つだ


ガラスの鳴る音から来た言葉らしい


ロムというのもそうだけどフランス語から名前が来ている人が多い



・・・・・もしかしてチンチンも居るのか?いや、決して悪い意味ではない乾杯だからね



ラム酒をなみなみと注いだ強化ガラスのコップを軽く鳴らし、視線はお互いに外さずに飲み干した



うん、結構強いね、このお酒


ラム酒はサトウキビから作られた蒸留酒


本来はビールのように直接一気に飲むものではないけど今日は特別だ


喉が焼けるように熱く、独特な甘みにクドくないまでにほんのりほろ苦い


アルコールが鼻から抜ける


ラム酒はよくお菓子に使われるが製菓用でない高級なものはここまでかわるのか


とても美味しい



「美味しいじゃないか!・・このさ・・・・」



ぐらん・・とさっ・・・



「ふふ、強いお酒だからね」



ふっと倒れたロムさん


流石に10万円を超えるラム酒だ、飲みやすい


製菓用の香りやアルコール度数の強いものとは全くの別物



以前聞いたことがあったのだ「師匠はお酒に弱いけど飲んじゃうダメ大人」って


寝てる師匠を背負って帰ろうとして首筋に吐かれたことが嫌だったそうで私にも飲み過ぎ注意と話してくれたことがあった


飲めない人にとって酔っ払いの介護はきついよね



こちらの世界では食料の供給自体がままなっていないしお酒も当然貴重品


食いつくことはわかっていたが絨毯に座り込むように倒れたロムさんに少し溜飲が下がった



こちらの世界で何かあったときのためにも高級なお酒はいくつも用意している


私も遥も収納袋に小分けして食料や武器、衣類に金貨、地球の武器などを詰め込んでいる


元杉神官の【収納】とは違って食品の時間は進むし容量に限界はあるし、無理に詰めれば中で割れる


ただ重みもないし、かさばらないのは便利だ



「わ、儂も飲んでいいかの?」


「おれも!」


「子供じゃなかったら良いよ、ただ強いお酒だからね、こ っ ち の 人 は お  酒 が 弱 い み た い だ し 」



ちらりとロムさんを見て言う


高校生ぐらいの見た目だけど何度も魔王軍と戦っていたと聞くと長命種なんだろうな


私悪くありませんけどと醸し出しておいた


いけないいけない、これじゃ昼ドラの悪女そのままじゃないか



まぁいいや、溜飲は下がった



「カンパーイ!」


「「「おー!」」」



荷物は限界まで入れているが限りはある


高い酒を消費するが・・これは無駄じゃない、うん


ごつい、どう見てもドワーフや羊のような角の人、鱗が見えてる人、凄く大きな人とも飲んで仲良くなった


ミルミミスさんも満足そうだ



「で、元杉神官はどこに居るのよ?」


「ん、んー?」



エシャロットも飲んでる、飲んでいい歳なのか?この子


ラム酒は後2本しかないし、心配になったのでカクテルにしよう


ラム酒とココナッツミルクに100%のパイナップルジュースをシェイカーに適量入れる


氷は飲んでるときに魔法で作ってもらったのでそこから少しいれてシャカシャカ振る



カクテルのピニャコラーダだ



本来ラム酒の中でも水のように透明度の高いライトなラムを使った飲みやすいお酒だ


見た目は本来ココナッツミルクの文量が多いことからミルク色に近いのだが素人の私が作っただけあってかラム酒の種類が色が元々濃いものだったからか少しアイボリー色


父さんの作るものはもっと美味しそうなんだけどな


味見しても結構いけるので同じレシピで何人かに渡してそのまま話を聞く



「元杉神官はどこにいるのですか?」


「ダンジョンだ、ダンジョンの奥にいる!はず!」



なるほど、ダンジョンか、わからん

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