第271話 ボクっ娘でファザコンな師匠の娘


「何を、したの?」


「人工呼吸」



暗い闇に、死に、落ちていく感覚があった・・・はずなのに気がつけば起きていた


キョトンとする洋介くんだけど僕の唇を奪っておいて何だその反応は!?


僕のほうが恥ずかしくなるじゃないか!!?



「ちょっとドゲズァしなさい」


「はい」



もう戦闘は終わっているし、洋介くんも肩の傷は治っている、頭と足、服に血がついたままだけどね


体を丸めて地面に座ったまま伏せた洋介くん


あれ、セーズァだったかな?


やけに身体が軽い、けど完全には治った訳では無い


まだ胸の奥が痛む


最高位の神官でも治せなかったのに何をしたんだ?



「僕に何をしたんだ?」


「人工呼吸です」


「なにそれ?」



異世界に伝わりし死者蘇生法だったようだ


心臓が止まってすぐなら治ることがあるらしい



物は試しと何度か試させてみた



ものすごく恥ずかしかったが真っ赤な洋介くんを見ると溜飲が下がった


口づけはすごく恥ずかしいし人に息を吹き込まれる感覚は不思議だ


他の人にこんなされたら極大魔法をうちこんでいいと思うんだけど一度死んだからなのか度胸がついたと自分で思う


洋介くんだからかもしれない


内心は胸が張り裂けそうだ



「あれー?人工呼吸は医療だから恥ずかしいことじゃないんじゃなかったかなー?」


「お姉さん初めてだったんだけどなぁ」


「責任取ってほしいなぁ」


「ねーねー?」



胸を揉ませてみたがこちらはどうも違うらしい



「こふっ?!」



地面に寝てやってもらうと苦しくて驚いた、おっぱいじゃなくてその間の真ん中を押された



「こ、これじゃないみたいだね、じゃあもう一つの方が良かったのかな?」


「!!!??」



苦しくていたくてお返しにまた口づけした


あまりにも真っ赤になった洋介くんは記憶を魔法で消した



「<魔力をくれるリュートギーン神、この恥ずかしい記憶を忘れさせてください>」


「ちょっ!?」



ちっ、追い込みすぎたか?


もう一回やって思い出させてもまた同じことになるだろうし傷つけるのは本意ではない


からかいすぎた反省する



それにしても何が効いたのか?


人工呼吸には治癒魔法や清浄化もこめたらしい



幸い瘴気に当てられた患者はいくらでもいるし薬と違って悪くなることはない



馬鹿げた量の清浄化が体内の瘴気に効くことがわかった


軽度の瘴気であれば自己治癒力で回復できる、でなければ狩猟や傭兵たちは皆すぐに闘えなくなる


普通の神官の清浄化でもある程度の瘴気なら治すことが出来る


だけど深く根付いた瘴気でも治すことが出来るなんて聞いたことがなかった


試しに清浄化を瘴気に侵された難民にかけさせてみたが高濃度の清浄化を湯船につけさせるように使わないと効果は出ないようだ



重度まで瘴気に侵食された僕も神官様にたまにかけてもらっていたがほんの少し良くなる程度で治ることはなかった



魔法は加護を授けた神の影響も受けるから多くの加護を持った洋介くんの魔法の効果が高いのか?


瘴気によって増えたアンデッドの群れも洋介くんの清浄化で薙ぎ払っていたし・・・



また追い込みすぎて恥ずかしがって記憶を消しても事なのでちゅっちゅするのはもう止めておいた


よく考えたら洋介くんはまだ子供だしね、恥ずかしがって当然だ



もうちょっと成長したらいただこう



旅の途中で僕以外にも洋介くんを狙うやつが出てきた、いつでもぶっ飛ばせる用意をしておく


ムカつくことに小人族の王家の1人が僕たちの安全のためにもなんて名目を立てて洋介くんと結婚しやがった


旅の目的のため、僕らの安全のためにも理解はできる


だが納得しているわけではない


お前、洋介くんを後ろからぶっ刺しただろう?ただドジだし、間が悪いし、相手にされてないのには笑う



・・・・・ムカついてしょうがない



ガムボルト、その唇から爆炎魔法を口づけてやりたいな


きっと清浄化の光を見るよりも僕の心を慰めてくれるだろう



洋介くんの力は日に日に増し、肉の身体から神霊に昇華しようとしていた


なので力を減らすためにも養子をとるようになった


いつの間にかガムボルトも魔力量が増えていたのはそういう理由だろう、ちっ


難民から養子を取っているがどうせなら僕を結婚相手にしてよと迫ったことがあるけどそれは無理だった


たしかに僕も器は一般人よりも大きいけど僕も仲間も既に加護持ち、下手したら悪化する可能性もあった


むしろお前が加護持ってるのが悪いとガムボルトに詰め寄ったが難癖であった、どう考えても洋介くんのほうが強い魔力だしね


魔王討伐前に瘴気の濃い土地で透け始めた洋介くん、他に人もいなかったので僕は養子になった



名前はロム



異世界の本にロムというお酒があるらしく、絵の説明によると僕の髪の色のような薄い茶色だった


アオキチキューという異世界は覗き見の好きな神様がニホンという国で見聞きした名称らしいが昔はもっと違う名前だ、ディチォウだったかな


言葉の意味や名称は国や民族によって意味が異なるしロムという言葉に意味がある訳では無いがなんとなく良いなと少し思って決めた



名をつけられてえげつないほどの魔力が流れ込んできて驚いたよ


僕の加護は烈火の神、愉快な神様に見込まれて授けられた加護だ


魔力も英雄の中でも多かったのにここまで差が出るとは思ってもいなかった、僕も魔力が使い放題になった


それよりも教えた子供が自分の父になるなんてその方が驚きかな?



・・・昔、父に「お父様と結婚する」といったことがあるのだけど・・・・ありだよね?うん



魔王の討伐ができたら一度姿を消すように言ったのは僕だ


貴族社会は魔王よりも酷いというのは体験済み、あいつらろくなことしないから



それから養子になったという名目もあったので何度も立ち寄った勇者領地に行って住むことにした


エシャロットやヴァンが頑張って領地を栄えさせようとしていたので僕も参加した


洋介くんの師匠だったこともあって僕はすぐに代表の1人となった



「なるほど・・・では元杉神官の師匠なんですね!」


「そうだ!」



この女わかってる


だけどまだ僕は認めたわけじゃないけどね



「ん」



それよりも黒葉が連れてきた女が黒葉から出されるお菓子を先に横取りして回っている


女の正体も気になって仕方ない



「で、そっちの女はだれさ?」


「ミルミミスさん」


「ははは、まさかそんな御冗談を」



ミルミミスといえば雷星竜ミルミミスだ


流れ星のように光の線を残し、雷を落としながら飛ぶ古龍


旅ではお父様の言うことを聞いて素直だった恐ろしい竜



「うん?ん、幼子の仲間、ん、久しぶり?」


「食べながら話すなよ、何だその姿?世界最大の竜だろミルミミスは?」



喋って一言でわかった、こいつ、ミルミミスだ


寝ることと食うことばかりの阿呆竜だ



「これもおいしーな!」


「話聞けよ」


「うん、位階が上がった、幼子の卵産んでみたい」


「帰れ!!すぐに帰れ!!!」



僕の大切な領地にお前みたいなのがいたら困るわ!

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