第233話 理解と別れ
「客観的にだけどさ、俺が真莉愛の彼氏ってのは抜きにして」
ちょっとイラッとしてしまった、もう彼氏ではないんだけどな
顔に出てしまったのか裕也が止まった
「あぁ、なんでも、教えて欲しい」
「まず、その、遥さんに対しては酷いことしたように見える」
「なんで?俺は何もやってないのに?」
「遥さんとの結婚するかは抜きにしてさ、吉川さんとのどんな関係かは知らないし」
「話しにくいだろ、春樹でいいって」
「春樹、との関係は知らないけど、別れる前に他の女性と寝たのは良くない、と、思う」
言いにくそうに名前を呼ばれた、まぁいいけど、うん、それはそう・・・かも、いや、そうだな
「その遥さんは自分から病気になったわけじゃないし、言いにくくても別れてから他の女性と付き合うべきだったと思う、一緒に寝てる裸の写真も」
ん?なんでそこまで知ってるんだ?
「あれは、僕がやったんじゃなくて真莉愛が勝手にやったんだ」
「でも別れる前に遥さんに写真が送られたのは遥さんにとって良くない・・・と思う」
え?あれ?仕方ないんじゃ・・?僕は悪くないはずじゃ・・・?
逆で考えよう、僕が遥の立場だったとして
僕が律子と付き合ってて、僕が死にかけて、で、僕が婚姻届を律子に渡して、婚姻届は持って帰ってもらったけど真莉愛・・じゃない裕也でいいや、裕也と律子が裸で寝てるベッドの写真が送られてきて、それで僕の悪い噂がサークルにも同期にも流れていて、僕がなぜか悪者として叩かれる
ゾッとした
悪夢じゃないか
でも遥はそれを体験した
っ・・・!ごくっ
タバコの味の混じったかのような不味くて仕方ないビールが胃の底から口元までもどってきた
手で抑え、それをかろうじて飲み込む
・・・・いつから僕は悪くないって信じてたんだ?
誰に・・・じゃない、僕だ
真莉愛に悪くないって言われたけど、それを信じこんだのは僕だ
遥の死の直前を見てしまって、将来への責任とか不安、死への恐怖が、どうしようもなくて目をそらしたんだ
周りから責められたのも真莉愛のせいにしてしまっていた
「それと、子供への暴力、洋介くんは12歳ぐらいの体らしいし、3人を止めようとして間に入って蹴ったって聞いた」
「それはっ・・・!・・・・・・・・・そう、そうだな」
確かに殴りかかられたわけじゃない
先に手を出したのは僕からだ
「それに」
聞きたくない、僕の悪い部分なんて聞きたくはない
だけど、聞いたのは僕だ
「真莉愛がやってしまったことは本当にどうしようもなく悪いことだと思う、だけど真莉愛はそれは春樹のためにやったんだし、かばう気があるなら、彼氏でいるためなら責められてる時にはなんでかばわなかったんだ?」
「それ・・は・・・・・!?」
「居酒屋を出た後になんで追いかけなかったんだ?」
「あっ・・・・」
・・・・・・・・・僕は最低だ
「でもさ、俺は俺で真莉愛に救われてきたんだ」
「は?」
「俺の両親のこと知ってるだろ?」
裕也の両親は裕也の高校卒業の前に2人共大病を患ってしまった
だから裕也は少しでも治療費を稼ぐためにもと働き始めた
「あ、あぁ」
「無理してもどうにもならないのにとにかく頑張ってさ、余裕がない時に真莉愛と出会えた」
「・・・そうか」
「本当に優しくて、心の支えになってくれたんだ」
知ってる、真莉愛は優しい
僕のことをいつも考えてくれて、僕に似合う服や立ち振舞いを教えてくれていた
「・・・で?」
「だから、そうだな、俺の間違いも謝りたいし真莉愛のことも謝りたい、それと真莉愛に関わったお前にも幸せになってもらいたい」
「何いってんだ?」
「何言ってるんだろうな、でも心の底からそう思って声に出しちまった」
「ははは変なやつだな」
「だから、とにかく・・・!本当に!!ごめん!!!!!」
ゴインッ!!!
いきなり立ち上がった裕也がテーブルに頭をぶつけて謝ってきた
「もういいって!!」
それよりも店内で大声を出されてすごく恥ずかしい
注目が集まるし、裕也の頑丈そうなおでこから出血した
「裕也くん!?大丈夫!!?」
律子が出てきて裕也のおでこになにか当てた
えっ、なんで2人が知り合いなの?
「星野さん、大丈夫だから」
「でも、血が・・・!」
「えっ?えっ?なんで2人が仲良さそうにしてるの?」
困惑してしまう
さっきからそうだ、なんで裕也が知ってるというような話が出てきた、律子とは友達だったのか?
意味がわからない
「さっきの動画、真莉愛が暴れた時には俺たち居合わせたんだよ・・・」
「そうですね・・・」
きっと苦労したのだろう
動画は僅かにしか見れなかったが狂気に染まった真莉愛は獣のようだった
「私も春樹さんには言いたいことがあります」
キリッとした律子も可愛いな
「私は春樹さんと別れます、今までありがとうございました」
「な、なんで・・・?」
「私に会うまでの話は聞きました・・・だからです」
「な、あ・・・で、でも・・・・・」
「ごめんなさい、だからあの日、貴方から逃げてしまいました」
「が、学祭のこと?いいってそんなの」
「付き合ってからの貴方はとても良い人でした」
「だ、だったらさ!」
「でもそれまでのことを聞くとどうしても貴方を許せなくて、ずっと信じられない気持ちが胸に残るのが本当に無理なんです」
「・・・・・」
「だから別れます、今までありがとうございました」
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