第232話 元彼氏と現彼氏


無言で申し訳無さそうにポテトを食べている裕也



「なぁ、話してくれよ・・」


「はる、吉川さんが食べ終わってからのほうが良いかなと」


「春樹でいい、俺も真莉愛に騙されて別れた部分はあるしな」



やっと目を合わせられた



「正直恨みはある、今でも体は痛むしふざけんなって思ってる部分はある」


「本当にごめん」


「だけどせめて話ぐらいは聞く度量はあると思ってる」



お前と違ってな


そう言いたかったがぐっと飲み込んだ


裕也は真莉愛に騙されたってわかってるから、俺も真莉愛に騙された部分はあるってわかってるからそう思ってしまう



「ごめん、これ、少ないけど慰謝料、親の病気もあるし虫の良いことってわかってるが少しずつ返していきたい、駄目なら今からその辺で借りてくる」


「じゃあこれだけ受け取る、それで終わり・・でもな」



封筒にいくら入ってるかは知らないが階段から落ちたことにして保険を使い治療費も親に出してもらった


きっと裕也にとって無理して集めたような金なんだろう


これ以上追い詰めて自殺でもされたら一生のトラウマだ



・・・・・それにあの出来事があったから律子と出会えて少しは感謝している、ほんの少しだけだけど




「・・・でも?」


「何があったか、暴力無しで全部話してくれ」


「分かった」



全部聞いた


と言っても予想通り、僕と別れてから真莉愛に誘われたって馴れ初めだけ本人の口から言われただけ



「今でも真莉愛とは付き合ってるのか?」


「そのつもりだ」



ちょっとムカついた


それに気がついたのだろう、すぐに謝られた



「ごめん、でも、あんなことがあってちょっと今はわかんなくなってる部分もある」


「あんなこと?喧嘩でもしたのか?」


「学園祭のこと知らないのか?」


「なにそれ?」



ほんの一週間前の話だ、あれから忙しくしていたし一ヶ月は前に感じる


スマホを渡され動画サイトを見てわかった、真莉愛が滅茶苦茶やったそうだ



ザマァ



「ははっ・・ははは・・・」



でも



「はぁ」



粘着くため息が胃袋から漏れ出る



笑えないな



あの糞女、これからどうするんだろうか?今はフランスに行っている


留学の名目で学園長に金かコネで押し込んだんだっけか?



「逆にどう、真莉愛に騙されたんだ?」


「嫌なこと聞くよな」


「ごめん、でも、聞いておきたいんだ」



そうだよな、真莉愛の次の犠牲者はこいつだ


また騙されて襲われてもかなわない


遥のことも含めて病院からすべて話した



遥が怪我をして病院に入院したこと、病気で死にそうになって婚姻届を渡されたこと


そのタイミングで何故かホテルで真莉愛といた事・・・


少し歯を食いしばって聞く裕也、タバコを一服吸って思い出す



思えばあれはハニートラップだったんだろうな



真莉愛と飲んでいて最後のハイボールはやけにまずかった


きっと何か盛られたんだ


かもしれない話だけど、正直にそう付け加えて教えたら歯を食いしばったままうつむいてしまった裕也


別れたきっかけは遥のデマを真莉愛が吹聴していたらしくてそれで周りの仲間から責め立てられた


1人にしてって言われてそうした、そうしたらお前が現れた



「俺の何が悪かったんだろうな・・・」


「・・・・・」


「なぁ、現彼氏さん、何でもいいから教えてくれよ」


「本当になんでも良いのか?」


「おう」



追加で頼んだビールを飲む、なんて不味いんだ


気分で酒の味がかわるとはよく言ったものだ


かと言ってコーラを取りに行こうとしたら裕也が注ぎに行くだろうしそれも悪い気がする



「客観的にだけどさ、俺が真莉愛の彼氏っての抜きにして」

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