第226話 悲しみの被害者Aの恋


なんとか奴らを追い払ったのだが朝にもまた攻めてくるという情報があって起きていた


こちら側も電子機器がダメになる距離がなんとなくわかってきたのでその範囲外で情報を仕入れているみたいだ


攻めてくるのは傭兵団らしいがその団員の中にここの人間の従兄弟がいるとかで教えてもらった、凄い片言の日本語で



てか敵に内通者いるんだけど・・・



結構な距離はあるんだけどいつ頃来るかは知っていたしただ待つ


こちらの人間も何考えてるか全くわからないが勝手に武装して勝手に陣地作ってる


こいつらもこいつらでなにやら俺を金儲けに使ってるふしまであるしほったらかして帰りたい


寝て起きたら透明な存在Xと俺の周りに拝む人間が居たり、俺に隠れて金を巻き上げていたのは見たことがある



待っていると空からなにか来た



朝焼けの光とともに、ばればれの敵が迫ってきていて今か今かと戦いが始まろうかという時にそれはきた


光る鳥のようだ、ネオンライトのような光で形作られた光る鳥


大きさはサッカーコート幾つ分だろうか?


薄暗い日の出たばかりの空を切り裂いて光るそれはゆうゆうと現れた



朝焼けの戦場にとてつもなく目立っていて敵味方散り散りに逃げていった


光はほどけて人が2人、それと白虎のような生き物が出てきた


1人は幼女で剣を持った金髪の子、それともう1人の女性は洋介くんと同じような服だ


彼女たちを銃で撃つものもいた


あんなのがいきなり戦場に現れたらそりゃそうなるよね


味方側からも撃たれているが俺と同じく弾丸が当たってない



「日本人かー!?」


「わー!わー!!このぉ!!!??」



一瞬「なんでぇ!」と叫んだ女性だけどなんで来たんだ?こっちが聞きたいよ


すぐにいなくなった小さな金髪の女の子と違って目立って撃たれまくっている黒髪の女の子に近づく


彼女は白いムチを取り出して銃を巻き上げ、人を持ち上げて投げ飛ばしている


落ち着かせないと


両手に武器のない証明として手を上げて近づいていく



「変態!!?」


「ちがっ?!」



俺もムチに巻き取られて頭から地面に刺さった


痛みはない、が、柔らかい地面で抜け出せない


もがいていると静かになった


戦闘が終わったんだろうか、息が苦しい



ズシャズシャ



なんだ?巨大なライオンでも来たような足音が伝わる


首から下は沼にハマってるが謎の宇宙存在Xになにかされてから超感覚が備わるようになった



「ゴルルルルル」



動けない


のど鳴りが近い



ジュボッ!!



腰に何かが触れたと思った瞬間、引っこ抜かれた



「はぁはぁ、あ、ありがとう」


「黒葉、この人が知ってるはずです」


「この人・・・?もしかして光人間の内田さん?」


「はい、内田良平です」


「とにかく服着て下さい」



ズボンは裂け、パンツ一丁に変なネックレス、そして全身入れ墨


よく通報されなかったな



あ、ここ日本じゃなかった



「ミルミミスはどこに居ますの?」


「それはどんなものですか?」


「竜です、巨大な」



なんだろう?竜?そんな物は見たことがない


日本語だー・・まともな日本語だ―・・・


小学生ぐらいの金髪の女の子だけど日本語だ


思わず頬ずりして抱きしめてしまいたい


久々に日本語の通じる相手に涙が出てきそうだ



「えっと、よくわかりません、でも変な存在なら知ってます」


「案内してくださいまし」


「はい」



存在Xのところに連れて行くとやはり透明


不定形というか犬のようになったり、人のようになったりしているようにも思える


透過率95%とかだろうか?わずかに謎の輪郭が見えるそれは土をかけても皮膚の一定範囲に入ればその土は透明となる、範囲外に土が出れば土は見えるようになる


謎の存在である



「ミルミミス!*****!!******* *****!**** ** ********!********!!」



なにやら幼女は存在Xに話しかけている


動かない存在X


その間に背の高い女性に話しかける



「洋介くんの関係者の方であってますか?」


「はい、レアナー教日本支部大神官、黒葉奈美です」


「よかった・・!おねがいします!日本に帰りたいんです!助けてください!!!」


「わ、私も有名な光人間さんがいて驚いてます、あの、さっきはすいません、頭大丈夫ですか?」



あぁまともな反応、こんな美人に気を使われている



胸がどきどきする



これが恋だろうか



久しく感じていなかった



彼女の黒髪、甘い声、艶やかな唇



ぞくぞくして、目が離せない



朝焼けの光が彼女を映し出して女神のようにさえ思える



「大丈夫です!ハハハ!俺頑丈なんで!!」


「だったら良かったです」



自分でも止められない胸の高まり、気恥ずかしくなって彼女から目をそらしてしまう


これまでの数ヶ月の苦難は彼女に会えたからむくわれた


透明な存在に向かって蹴りを入れている幼女を見て俺は心の底からそう思った

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