第208話 学祭のメイン



どうしてよ




どうしてあいつは私の人生で邪魔してくるのよ




死んでいてくれれば私が悪く言われることもなかったのに




大学での私の生活はめちゃくちゃだ


これまで媚びてきた仲間も居酒屋の一件で離れていってしまった



トイレで囲まれたこともあった



「ねぇ、なんであんな嘘付いたの!」


「お陰で私達、今でも人でなし扱いだよ!?」


「真莉愛!私らはあんたのことも好きだったけどさ、遥とも友達だったんだよ?なんでこんなことしたのさ!」



「あぁ、もううっざい!!!」



「なんなのよ、あんたが悪いんじゃない!」



「僻むの止めてくれる?私のパパのこと知ってるよね?止めてくれる?」


「っん!!」



パーンと音が響き、頬を叩かれた



「あんたがそんな子だとは思わなかった!絶交よ!好きにすればいいわ!!」



ガリ勉女は以前から気に食わなかった


これまで講義のノートを貸しもしないし試験の問題を共有しない、レジュメのコピーもさせてくれない



「あんたのためにならないから」そう言ってまともに貸してくれない



別にそれぐらいは他に友達いるし問題はない


だけどちょっと頭がいいからってこの女が調子に乗っていたのは確かだ


服の趣味の悪さもあったし横に置いとくのにはちょうどよかったんだけどね



以前からパパの会社に入りたいと言っていたのだけど赤くなった頬のことを言ったらガリ勉女はこのイベントの前には就職活動をまた始めていたから本当にいい気味だ



他の仲間もそっけなくなったり私が近づくと黙る、早く留学したいな



絶対に学祭の企業ブースには来なさいってパパの言ってた意味がわかってよかった


パパも幾つかの企業ブースを回って私を紹介してくれる




「お嬢様ですか!いやーお美しい!」




たまにある顔見せだ、こうやってパパの人脈を少しずつ引き継ぐことが出来る


パパは多くの人に慕われているしとても偉い


このあたりの会社の人間であればパパのことを知らない人間はいないだろう


私の交友関係の先輩や仲間たちは就職先の人間にペコペコと頭を下げる


その上司の上司の上司ぐらいがパパに頭を下げてくる


私のことを切り捨てた元仲間が頭を下げさせられているのが心地よい



大学では私を無視するけど社会じゃ私を無視なんてできないのよ、おぼえておきなさい



他のブースに行っても同じで最高の気分だ



大学でこんなにいい気分なのは久しぶりだ



パパにはしっかり働くんだぞと言われたが私は衣装もあるし私は任されたブースで指示をしておけば良い


ブースに居るスタッフは全員私の言うことに従う



あと私の仕事は3つ



1つは彼氏である裕也のイベント参加を見ること、1つはイベントで賞品を渡すこと、そしてこの学祭のメインであるミスコンに出て勝つことだ



裕也の優勝は難しいだろうが私のために頑張ると言ってくれて嬉しい


裕也は部活で足の靭帯を痛めたそうだ


ふとした時に痛む程度で普段は何も問題ない


プロも参加するかもしれない運動イベントで賞品は難しいかもしれないが彼氏が頑張る姿を見れるんだ、応援しないとね


ドレス姿でイベントスペースから裕也に手を振る



後の2つの仕事、1つは賞品の授与だけどこれはおまけにすぎない


おそらく学生メインのイベントなのに自前の装備で来ている場違いで空気の読めない山男に渡すことになるんだろうな


まぁそれは良い


それよりもこの後のミスコンで軽く優勝してくることのほうが私には大切だ


投票できるのは学生だけではない


一般人や企業ブースの人間も投票できる


私は美貌に自信があるしパパの娘である私が参加するだけで票は集まるだろう


つまりこれは負けない戦いだ



このためにエステにも行って肌を磨いてきたし、ヘアサロンからネイルまで完璧に仕上げてきた


SNSでも宣伝したし負ける要素がない



ゴール手前で落ちてしまった裕也に賞品を渡せないのは残念だけどパパにいってなにか賞でも出してもらおうかな?



日本を出る前に元友達にもやり返せるし最高のイベントだなって思った、はずだった




だけど、まさか、やつが、やつらが来るとは



聞いたところによると遥は大森に絡まれていい気味だったがアタッシュケースに数億円の金を貰っていたらしい



なにそれムカつく、意味はわからないけど遥が大金を持ってるとかムカつく



それだけでもムカついて仕方ないのになんでイベントにも来てるのよ


テレビのスタッフも興奮してインタビューしちゃってさ


やつもやつで「私はここの学生で今日のために訓練してきました」なんて言いやがる


いや、訓練したってそんなに筋力ないはずだからね?クソゴリラが


応援団もいるみたいでキャーキャー言われてるのがムカついてたまらない、頭からビールぶっかけてやろうか



だいたいロッククライミングだろ?ジャンプするなよ、手を使えよ、淫乱ゴリラが



遥はジャンプでゴールしていたし洋介とかいうガキは空を飛んでいた


私は反則だと2人の失格を主張したけどTVスタッフ、車のメーカー、クライミングの会社は今後の宣伝にもなるとかで彼女が乗るのはありだろうとなった、役立たずが・・・・


パパも一度イベントで顔を合わせたことのある「私の友達である」遥の勝利には喜んでいるから私の反対はかき消された


しかし流石に空飛ぶ魔法はだめだろとガキは失格となった


年齢も16か17、乗らないのは確実だけど今までのやらかしから無免許でも乗るかもしれないし事故の可能性も心配だ


空気が震えるほど応援している2人のシンパもいるし2人共何もなしには出来ないだろう、しかもルール説明で「ジャンプしてタッチしても良いんですか?」と言った質問にオーケーを出していたらしい


クソがクソがクソがっ!!



それよりも賞品を遥に渡すのが決まった



この私が、遥に・・・?



私がやつに車の鍵を渡すのか?あり得ない


出来得る限りの反対はしたがうまくいかなかった



「ガリ勉女、これ遥に渡しといて」


「ちょ、え、はぁっ!?」



壇上を降りてちょうど横を通ったガリ勉女に任せた


少し校舎の裏でタバコを吸って気を落ち着かせる


後で何事かと心配したパパには「急にお腹が痛くなって」と言うと「仕方ないな」って心配してくれた



ミスコンも優勝予定だったし出たんだけど



「飛び入り参加者はいませんかー!」



なんて言いやがるから奴らが来た


私が壇上で列に並んで出るのを見た遥と目が合ってしまって、参加してきた



黒葉と異世界人も一緒に・・!



だけどドレスとかないし負けるわけ無いじゃん、そう思ったのに3人は見事なドレスでトップを総なめにした


MVPは遥、1位は私を居酒屋で追い詰めた黒葉、2位が異世界の女王、そして3位が私



「フランスに行ってからデザイナーの人がおくってくれるんですよー」



なんてマイクで言いやがる、世界屈指のデザイナーから送られてくる?嘘じゃん?



クソクソクソクソクソクソクソ!!!



1位の黒葉は背が高いのに地味だと思っていたが背も高いし髪を上げて化粧をすれば化けた


お腹を出したドレスが卑猥でムカつく、クソが


勝利インタビューを受け、声援を受けている遥



幸せそうにガキを見ている遥に我慢ができなかった








私は磨かれたネイルで遥の顔を引っ掻いた



「 死 ね よ ク ソ ビ ッ チ が !!!!!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る