第207話 牢獄の採用試験


いつものように木工作業していつものように終わったはずだ


寝て起きると俺の部屋ではなかった


寝る前には「あの旨い料理をまた食いたいなぁ」なんて思っていたのだが・・・


多分この部屋はあのアンケートの部屋の奥だと思う



前のようにポイントを使って何かをしたわけではない、だからこそ恐怖はある


だけど殺されることはないだろう、一応警戒して外に出てみる



「どうぞ、座ってね」


「は、はぁ?」



また外に出ると数人が横一列に並んでこちらを見ていた


椅子が一つある


この椅子に座れということだろう



「アンケートありがとうございます、レアナー教洋介です」



知ってる


それと一緒に座っているのは半透明の女神様、コースケ元杉、レアナービルの元マフィアのトクダ、空飛ぶ虎に乗っていた謎の少女、そして見知らぬ仮面の男


みんなテーブルの上にある紙を見たり、俺を見ている




「これが採用試験の最後です」




さいようしけん・・・?


これまでの生活は俺たちの今後を考えていたものだったのか?


元マフィアのトクダになにかを耳打ちされている洋介



「あ、採用試験って言わない方がいい?ごめん、さっきのはなかったことで」


「は、はい」



わざとなのか?情報によると洋介は一宗教の指導者で様々なことをしてきた


もしかしたら道化のような活動はフェイクなんじゃないか?なんて意見もある


なぜならこれだけ世界を引っ繰り回しておいて彼にダメージを与えられたものはいない



物理的にも政治的にもだ



故に彼の行動は計算しつくされたものではないか?そんな意見も出ていた


彼は世界をおどけて惑わせるピエロか?それともこれまでにいなかったIQ300の新人類か?



「この面談で君と君の妻子の将来が決まる、心して話すように」


「はい」



真実は定かではないがそう言われては背筋を正すしかない


まずは牢獄の生活について色々聞かれた



正直に答えていく



料理についてポイントについて生活について仕事についてなどなど


面接官の人たちは興味深そうに聞いている


少し苦い顔をしているコースケ、元弁護士の彼にとっては完全にアウトな話もしているしな



「食事には不満を漏らすものも多いです」


「何を食べているのか?」


「基本は不味いスープです」



と答えたときには「おい洋介」とコースケは最高指導者を見ていた


正直に本気で真面目にきっちりと答える


アビゲイルとグレースの身の安全も考えないといけない



「じゃあレアナー教に忠誠を誓うこと、それと隷属を受け入れることには合意できるの?」


「はい、家族のためであるなら」



何かを考えた表情の洋介は机の上の半透明の女神を見た



「どうですかね?・・・・・なるほど、そうですね」



女神様となにか話しているが俺にはよく聞こえない


その部分も気になるが仮面の男も気になる


全く動かずにじっとこちらを見ているだけだ



「ではこれから貴方に隷属の魔法をかけます、僕以外の面接官が部屋を出たら脱いでください」


「はい」



結局仮面の男は何もしゃべらずに出ていったが・・・妙に気になったな



そして俺は隷属の魔法を受け入れた




全身に・・・!




いや、わかるよ?




俺たちは特殊な訓練を受けたレアナー教にとって危険人物だ、理解はしている




だけどさ




男性器にまですることないだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!????





頭、両手両足、そして股間に隷属の魔法がかけられた


服を着ると女神がはっきりと見えるが少し苦い顔をしていた


洋介がしっかりとこちらを見て話し始めた



「あなたはテストケースです、諜報員や工作員は危険な存在です、レアナー教という組織としては信徒の安全のためにも殺してしまうのが正しい、はずでした」


「はい」



何度も似たような言い回しで言われていたからレアナー教の考えはよくわかる



「これから貴方には外でも働いてもらいます、真のレアナー教徒となるべく、その働きに期待します」


「はい」


「・・・はいってー!」



ドアが開きグレースとアビゲイルが走ってきた



「お父さん!」


「グレース!!アビゲイル!!」



しがみついてくるグレースに無言のアビゲイルと抱き合う


頭に俺と同じ隷属の印が見れた


沸騰する怒りがばれたのだろう頭が締め付けられた



「お父さん落ち着いて!これは私達から言い出したの!」


「グ、グレース?なん、で、バカなことを・・・!?」


「私たちは納得してるわ」



痛む頭のせいか?それとも妻も娘も奴隷になったからか?思考がまとまらないが焦燥感がのしかかってきた


だめだ!!だめだだめだ!!!



「そんな、洋介様!俺のことならどうしてもかまわない!!2人の隷属を外してください!!!お願いします!お願いします!」



頭の痛みを無視して2人を振り払って洋介様の足にすがりついた



「落ち着いて、ね?」



洋介様が杖を振ると俺の身体はすん、と身体が脱力した


説明によると2人には俺のことを先に話していたようだ


俺はこれから数年は危険かもしれない仕事をするはずだった、もちろん2人への説明は無しで



しかし2人は話し合って仕事によって俺が死ぬかもしれないのをどうにかして俺と一緒にいられるように考えた結果らしい


レアナー教としては犯罪者の家族は関係ないし2人を隷属させる気はなかった



でも俺と一緒に生活出来るようにするのなら2人が危険な目にあう可能性は十分にある


なら、2人の安全、そして俺の裏切り防止を考えてむしろ隷属はありなんじゃないか?と協議した結果だそうだ



確かに、もしも何もせずにどこかの組織に妻や娘が捕まったとなれば俺はレアナー教を裏切る



だが隷属の印があれば敵組織は捕まえても意味がないと考えるかもしれない


だから2人は自分から隷属を言い出したらしい



アビゲイル、グレースを止めろよ



いや安全を考えれば・・・あり、なのか?



とにかくこれから俺はこれから警備を含んだ活動を外でもすることになる、魔法によるバックアップ付きで


即死しなければなんとでもなるらしいがそれでも死なないとは限らない



「私は家族のためにレアナー教のために頑張る!」


「貴方、私もグレースも納得してるの、わかった?」



洋介様が杖を振ると俺は頭の痛みもなく元の動ける状態に戻った



「本当に、良いのか?」


「当たり前よ、愛してるからね」

「私も!」


「あぁ、あぁ!!俺も愛している!!!」



絶対に家族のために頑張ろう、2人を愛してるのだから

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