第190話 学祭と講義
「ホットドック売ってまーす!」
「ボルダリング体験!ボルダリング体験はどうですかー!」
「今日の記念に肖像画描いてまーす!どうですかー!」
「メイド喫茶どうですかー!?御主人様お嬢様ー!」
「手相見まーす!」
「おー」
「人の熱気がすごいですわね」
大学は前に来たときと違って人の熱気が凄い
祭りのように活気にあふれて屋台や客引きをしているものも多い
僕も看板持って歩いちゃダメか聞いてみると怒られた、ここの学生じゃないしね
はるねーちゃんいわく「マンモス校」という大学の中でも学部や人の多い学校らしい
まだ朝だけど目的地がある
はぁ・・やる気が出ない
これから誰も来ないかもしれない講義をするのは気乗りがしない
今日は大学の学祭、空いている教室では多くの催し物をしている
定番のメイド喫茶にお化け屋敷、手芸に料理教室など
学生はキャピキャピと楽しそうにしている
プロジェクターで映画を流したり、サークルや愛好会の人間がこれぞとばかりにアピールする
地域の名物となる屋台を出しているサークルなどは1日に何十万も稼ぐらしい
学生にとっては楽しいイベントだろう
だがそれだけではない
数百人のキャパシティの教室が何十もあるし大学のPRと地域貢献も兼ねて一般向けに多くの講座を開催する
経済情報学部であれば本を出しているような方が講演するし、法学部であれば痴漢と疑われたときの対処法なんか教えてもらえたりする、私もそっち見に行きたい
学部関係なく外部から企業や会社も多く来ているしそういうのを見てみたい、それか部屋で寝たい
人気の先進技術の紹介や地元企業のアピールをしに来たりと学祭の名目はあるが色々と大人の都合もあるのだろう
そんな中、私がやるのは「ネットマナー講座」だ
スマートフォンやPCでのネットにおける危険性なんかを講義をする
近頃この講座は人気がない
そもそもネットの危険性なんか今どき周知されきっている
問題を起こすのは危険とわかっていても大丈夫だろうと安易にやってしまう場合なんかだろうね
数年前は結構な人数が来ていたそうだが前回、前々回の受講者は一桁
こんなに人数が少ないのなら最初から開催をしなければ良いのにとも思うが我々も何かしらの活動をしていると大学と地域に示さないといけない
実験的に別の講義室でシステム管理やアプリケーションの作成なんかも教えたことがあったが受けはよくなかった
もっと専門的かつ高度な内容に特化しようとも考えたが地域民に1時間2コマで高度なプログラミング言語を理解させることは出来ない
もう、こんな事するぐらいならサーバーのメンテナンスさせてほしい・・・
ガランとした教室を見る
学内でも大きな講義室
講義室は階段状になっていて少し急勾配で使いにくい
海外の講義スタイルで生徒全員の顔が見れるのは良い
忘れ物もすぐにわかるし設備もしっかりしている
だけど受講者ゼロでは流石に良いとはいえない
講義室は大きいとは言え学祭では使いにくいだろう
それにここは大学の入口からすごく遠い、講義室を探すのは大変だろうしそれまでに魅力的な講義や催し物は多くあるはずだ
逆に考えよう、受講者ゼロは講義をやめるきっかけになるんじゃないか?
少し会議でお小言をもらうかもしれないがそれは仕方ない
もっと魅力的にしろと言われてもメインテーマ自体がどうしようもない
今どき毎日のように何処かで注意喚起されるネットマナーだ
もう必要はないだろう
小学生でもネットマナーに詳しかったりすることはあるが危うい部分は見て取れる時はある、どうせならそういう子どもたちにちょっと講義はしてみたい気もするが
「んぅっ・・・」
パソコンで別の講義用のデータを纏めているがここの椅子は硬い、目の悪い講師のためにかよく手元が見えるように照明が強い
ノングレア液晶に照明の光がちらつく、徹夜明けには色々ときつい
もうすぐ講義開始時間だな、誰もこなかったら缶コーヒーでも買いに行くかな
アホな冷やかしの学生すらいないし良いだろう
「しつれいしまーす」
「そのまま入っていいから」
なんか子供が来た
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