第137話 小人族王女の結婚


この国をどうすればまともにできるのか



この国は魔族領と人間領では魔族領寄りで更に人間領側には険しい山脈がある


元々もっと善の神々の支配領域は広大でこんな問題はなかったはずなのにな


魔族がこの国を滅ぼさないのは役に立つからだ


小人は力が弱いが手先が器用で素早く、魔力も強くて寿命も長い


身軽で間諜や暗殺者として使えて高性能な魔道具をつくることにも長けている


強い種族からすれば魅力的に見える、はずなのですが・・・



デデスガが来たところを見ると重要視はされていないかもしれませんわね



問題は元杉たちの要望と国の現状があってないことだ


元杉達はこの国を通って魔族領を迂回し、魔族の軍隊の後方を突きたい


だけど貴族たちの反応を見るのにそれは無理です


なぜならここは魔族に支配されていることに慣れてしまった者が多い国だ


嬉々として元杉たちを襲うなり魔族たちに一報入れるだろう


王も王で以前とはまるで違うほどに弱っている



一度に、一度に解決できる方法は・・・



「姫様、いい加減結婚をお考えになられては・・・」


「うるさいで・・・・それですわぁ!!」



王宮の元杉にあてがわれた部屋に行く


別の種族の来賓向けの部屋でわたくし達には天井も部屋の家具も大きい


こちらから来るというのは無作法かもしれないがまともに対応されない可能性もある


直接足を運んだ



「いまよろしいかしら?」


「どうぞ」



部屋に入り、英雄御一行の殺気がわたくしに突き刺さる


下手に動けば殺されてしまう、かもしれない


あえて空気を読まずに提案する



「わたくし、良いことを思いつきましたの!!」



英雄の皆様、特に女性からの圧で殺されそうだったが洋介はあっさり了承してくれた


政略ってわかってても命をかけて守ってくれた元杉には惹かれている、こんなに胸が高鳴ったのはいつ以来か



「魔王を殺すためなら良いよ」



そう言ってくれた


嬉しくなって気分が舞い上がって、でもすぐに少し心がいたみましたわ


提案を了承してもらい、打ち合わせをして謁見の間に案内した



「勇者の洋介聖下ですね?デデスガ討伐、誠にありがとうございます」


「いえ、勇者として当然です」



勇者御一行が王に謁見した


周りを見ると明らかに敵愾心の隠せていない貴族や騎士がいる


それはおかしい、息子を魔族に殺されたものですら憎しみの目を勇者たちに向けているのはおかしいのですわ


やはり魔族になにかされています、うまく行けばいいのですが



「我が国にできることはありますでしょうか?」


「では」


「伺いましょう」


「ヨーコとの結婚を、そしてこの国が国際連合軍に加盟することを望みます」



ヨーコルノリア・メレニ・フォプセ・ケメヌ・セセ・マリュニャロ・ガムボルト・マルディが私の名前なのだが全く覚えてもらえなかった


異世界には愛称というものがあり、仲が良ければ短く呼んだりすることがあるそうだ


ちょっと照れるが異世界の常識だし無礼さから来る怒りよりも嬉しさが湧き上がってくるので許しましたわ



「それは・・・国際連合軍への加盟は我が国にとって滅びるも同然、承服しかねますわ」


「ではヨーコとの結婚を許していただけますか?」



嬉しい言葉、だけどここまでは計画通り


前に出て元杉の横に並び立つ



「王の許しは必要ありません、愛の神レアナーよ、私と元杉との結婚を許し給え」


<承諾しますぅ、よーすけ、この杖を使うですぅ>


「はい」



元杉は王に向けて【清浄化】を放った



「ぎゃああああああ」

「ぐあああ」

「おのれぇえええええええええ」



王や貴族たちから黒い煙が散る


予想通り、何人か悪霊に憑かれ、王も呪われていたようだ



「王よ、いえ、母上、大人しく王位を譲っていただけますか?」


「・・・はい」



短剣を向ける必要はなかったのかもしれない


考えたのが王位継承と結婚だ


現体制のままではどう転んでも元杉たちへの危険は拭えない


わたくしが勇者の妻になり、更に王になれば国の旗向きが変わる、いえ、変えて見せます



小人族の神には了承を得た



戦神の加護では無いゆえに戦乱の世では民すら守れない


戦争が終わるか私が死ねば弟か妹に王位を譲ることを約束する


元々王位は欲しいものではないしかまわない


王や貴族が呪われているのは推測であったがまさかあんなにも魔の手が進んでいたとは・・・


ひとまず形だけでもわたくしが王ということとなり弟を次期国王として宰相に任じ、わたくしは小人族領を出るまでの間、元杉についていくことにした



「なにかわたくしたちに手助けできることはありませんの?」


「なら武器がほしいかな」


「武器ですの?」


「うん、僕は加護をいっぱい貰って魔力が多いから、耐えられる武器が少なくてさ、今色んな国に作ってもらってるんだ」


「なら我が国でも総力をあげますわ!」



国を出るまでわずかな間だった、だけど元杉との時間はわたくしには夢のようなひとときでした



「レアナー様、元杉、並びに英雄の皆様、本当にありがとうございました」


「うん、ヨーコも身体に気をつけてね」


「いつでもこの国にお立ち寄りくださいまし」



去っていく元杉の背をみて、私もついていきたくなった



<ふふ、貴女の気持ち、気付いてますよぉ>



いたずらのように元杉の肩から飛んできたレアナー様にそう言われた


これからも頑張ろう


元杉の、元杉たちの旅の幸運を真剣に祈りましたわ

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