第138話 小人族王と戦争


元杉たちを見送った後、わたくしは日々を走り回った


悪霊に憑かれていなかったにも関わらず国を腐敗させる汚職貴族共を一掃、悪霊対策の魔道具を使って憑かれた者共を炙り出し、憎きトロールの解体、連合軍への加入はせずに中立として声明を発表、軍事拡張、裏で魔族の情報を集めて連合軍に渡す


やることは多い、ですので弟たちにも手伝ってもらいます


働かせれば自然と頭角を現すのが誰か見えてきますし、無理なことをすれば私が切り捨てます


実際に王と言っても方針を示すだけで玉座にはいません、軍を率いて走り回る方が効率的ですわ


闇の中の移動であればわたくしよりも速く移動できるものはいない


レアナー様の御力が元杉を通してくるのでしょう、おかげでわたくしは傷つくこともなければ疲れることも殆どありません


レアナー教国が大国である理由もわかりますわ


各国からの武器を元杉に届けていく、それでもまだ壊れるようです


魔族をこの手で狩り、対魔族の政策を実施、汚職貴族の切り捨てに奔走した


我が国からも技術者を向かわせて協力して魔道具や武具を作ってもらい、それをわたくし自らの手で元杉に送り届けました


これだけは人には譲れません


たまに見れる彼の顔が嬉しくて、彼に増える傷が戦闘の激しさを教えてくれる


ただ妻としては全く見てもらえてないというか、そのあたりの兵士か何かと思われてるのかもしれません


たまに英雄のお仲間、特に女性陣に事故を装って殺されそうにもなりましたがそれはいいでしょう



王都にレアナー教神殿をつくることで神官を招聘し、私もレアナー教の【治癒】や【清浄化】のような基礎魔法を教わりました



だんだんと国は安定し、連合軍が優勢となりましたわ



国の、ひいては元杉のためになる


わたくしは小人族を率いて連合軍に正式な参加表明をし、小人族領に連合軍が駐留できるようにしました


小人族領に軍をおくことで魔族による人間領土への侵攻を軽減できるし、軍がいれば小人族にも連合軍との仲間意識ができます



もしもわたくしが死んでも弟たちの誰かが王位を継ぐことは決まっている



わたくしはあの崖で一度は死んだようなものですわ、生き返った気でやれるだけのことをやります



わたくしの王としての役目は人間領への協力と弟たちに譲る国をまともにすることだ


貴族共でも不正を続けて魔族に味方するものにはわたくしが【清浄化】を行い、それでも直りそうになければ領地没収しました


爵位も地位も名士であるかも関係はありません


苛烈と言われようがこれがわたくしのできる国への奉仕です


国が落ち着いたところでわたくしは魔王軍を裏から狩りに行きましたわ




戦争が終わり、魔王との戦いで元杉の勝利を知りました



「元杉に怪我はありませんの?!」


「レアナー様に聞いてみます」


「急ぎでお願い致しますわ!」



教会や神殿には独自の連絡手段がある


神の分体がいればすぐなのだがレアナー神殿にはまだ数人の神官がいるだけでレアナー様はいない、数日はかかるそうだ


連絡が来るまで、一日一日が心配でたまりませんでしたわ




無事であるという知らせは涙がでるほど嬉しかったですわ



勇者と魔王の物語では魔王と相打ちになったり、魔王が勝つことも少なくはない


それも今回の魔王は10人以上の勇者を討ち取った真の魔王、元杉が勝つなんて保証はどこにもなかったのです



戦争が終わり、各国に平和条約を調印しに回る


国際連合軍はまだ狩りきれていない魔王幹部を探してダンジョンの攻略や魔族の駆逐のために存続



国に帰って王位を神の加護の強い弟に譲りました



わたくしも神様からも祝福され、それからわたくしはより積極的に魔物や魔族を狩りましたわ


各地のレアナー神殿に立ち寄ると盛大な歓待を受けました


洋介聖下の嫁、小人王という立場で会うよりも嬉しがられましたわ


仮とはいえわたくしは正妻、元杉に新たな側室をどうかという書面や絵が大量にきました


部屋をまるまる一つ埋め尽くすほどの量、魔法を使って燃やそうとしたのですが予想されていたのか【儀式結界】まで使われてびくともしませんでした


それと良いことが知れました


レアナー様によると元杉は異世界に帰ったが必ず一度はこちらに帰ってくるらしいのです


運命の神に寄進して占ってもらうと<機を見逃さずに今の活動を続けていれば会える>らしい



胸が高まりましたわ



もう一度会えたら、あの人を愛そう



わたくしの命の恩も、わたくしの国の恩も返しきれるものではありません


元杉の異世界の話ではこちらの国の騎獣舎よりも小さい家に住んでいたそうです


たとえ馬小屋でもわたくしが元杉を養ってみせますわ!


白亜の城に住む王子さまと結婚するんだという子供の頃の夢は忘れていませんがどこで結婚するかよりも誰と結婚するかが大事だと思います


わたくしは元杉に慣れない手料理というものも振る舞っていたりもしたんですが愛情を込めた手料理というものを食べさせるのも悪くありません


元杉はいつも食べ始めると無表情になってましたがきっと照れ隠しですわ



弟には連絡を入れておいたし、わたくしは機というものを逃さないように活動を続けました



いつものように魔物を狩って宿に帰ると光の柱が立ったと聞きました



きっとこれですわ

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