第136話 小人族の王女とトロール


城門前で奴を待つ


トロール、鬼の中で最も大きな種族


多くいる鬼種といえば子鬼のゴブリン、豚鬼のオーク、大鬼のオーガ、そして巨鬼ともいわれるトロール



トロールは大きい


その中でもデデスガは特別だ



城壁の倍ほどもあるトロール、4つの国を滅ぼした魔王軍の幹部のデデスガ


その身は固く、傷一つつけることができず、何よりも群を抜いて大きい


一撃で城壁を破壊し、まっすぐに城を滅ぼしに行ったというのは悪夢のような伝説だ


話せるだけでもトロールの中では知性が高く、魔王に忠誠を誓っている


だが魔王の言うことしか聞かず他の魔王軍の幹部を一軍ごと屠ったほどには頭が悪い、そしてそれだけ強い



だからこんな場所に送られてきたのだろう



人間領土と魔族領土の国境は切り立った山岳という地形を挟む故に敵の軍隊はここには直接来ない、来れない


主戦場となる地には他の魔族も居るのにデデスガを送るなど危険すぎる


仮に人間の軍隊が魔王の支配領域に行くとしてもここにこの馬鹿を配置しておけば軍隊の側面をつける


だからこのあたりに送り込まれたデデスガ、いくら死んでほしくても死んでくれない真の強者



こちらに近付いて来たデデスガ



たった一歩で地面がへこみ、その振動で震えてしまう


目の前にまでやってきた山のように大きなデデスガを見て、その強烈な威圧感から背筋が冷たくなる



「それが勇者の死体か?」


「はい」


「ちっこいのによくやった!そいつらは何だ?」


「わたくし、小さくてわたくしよりも大きな勇者を運べませんでしたの、ですので旅の商人を雇いまして」



わたくしの短剣で胸を貫かれたままの元杉を板に載せて運んでもらった



「そうか?同じぐらいちっこいが・・まぁいい、よく持ってきた!」


「ありがとうございます」


「よこせ!」


「「「ははぁ!」」」



座り込んだデデスガに元杉が掴まれた


元杉を高く持ち上げ、喜色を隠そうともせずに笑っている



「これで魔王様もお喜びに・・グガァッ!!!?????」



元杉をトロールの前まで運んだ勇者一行がトロールの足を切り落とし、デデスガが倒れ込んだところを腕を切りさいた


わたくしも元杉の背中の短剣を抜いてデデスガに斬りかかる



「ごめんなさい、元杉」


「ううん、やろうか」


「はい」



死体のように動かなかった元杉を心配していた


わたくしを、わたくしたちを助けるために身を挺してまでこんな無茶をしている元杉


それもわたくしは後ろから刺したのに、致命傷を負わせたのに、ですわ


彼の仲間はわたくしを烈火のように怒り、殺されると覚悟しましたが元杉がかばってくれましたわ


剣を刺した感触も手に残る嫌なものでしたが抜いたのは更に嫌な感触でした



「ぐぅう!!?裏切ったな!ちっこい小虫共がぁっ!!」


「裏切った?仲間だと思ったことなど一度もないですわ!!!やりなさい!!」



事前に知らせておいた兵士に元杉から渡された大弩弓を使わせてトロールに打ち込ませた



「<闇の神よ!安寧を脅かす者に何も見通せぬ暗き闇を!!>」



まとわりつく暗闇をデデスガの目にまとわせ、肩を蹴って顔に近づく


短剣を右目に投げ入れるようにねじ込み、大きく振られた右腕を避け、腰から新たな武器を取り出す



「ぐぅぅ・・こんな、こん・・あ・・・・」


「わたくしの国を荒らした罪、あの世で裁かれるといいわ」



柄だけの武器、元杉の魔力が剣となって伸びる




「しにたぐっ」


ズズンっ!!!



わたくしと元杉で左右からトロールの首を切り落とし、元杉の魔力のこもった魔導剣を掲げて勝鬨をあげました

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