第66話 僕は君を選んだ


大学で就職活動が始まり、なれないスーツで学校に行き、質疑応答や立ち振舞い、面接など社会の常識を学ぶ



僕は一体どんな会社で何がしたいんだろう?



自分がなにかをしたいわけでもないというのはわかる


だけど周りの友達たちのように名刺をもらい、就職活動をしなければならない


迷っているとすぐに真莉愛が声をかけてくれた



「うちに入ればいーじゃん」


「でも」


「もー!春樹、最近すぐ否定から入る!」



真莉愛のお父さんは大きな会社の専務とか役員?だったはずだ


でも、そういうコネ入社っていいのか?それすらも迷ってしまう



何をしてても心が重い、息を吸うのも重みを感じ、吐く息でもう息苦しい


僕の中で一番好きだった彼女は何だったのか?何が正しくて何が悪かったのか

僕には真莉愛が横にいてくれて、仲間は慰めてくれる


こんなんじゃダメだって思う、だけど吹っ切れてない



「ご、ごめん」


「それでも私は春樹の味方だからね、で、どうする?」


「わかったよ」


「パパに伝えとくね・・春樹」



いつもこうやって流されてしまう、だけど真莉愛にしてもらったことで間違っていたことなんて一度もない



「なに?」


「大好き」


「・・・僕もだよ」



僕もだよ、そう言っただけなのに胸が、胃が痛い


最近好きでもなかったはずの酒と煙草を手放せなくなった


自分でも何で飲むのかわかんないが無いといつも悪い気分がさらに悪くなる



「そうだ春樹、明日デートしようね」


「わかった」



暑くなってきたとは言え涼しい日もある


今日も真莉愛の肌を感じて寝る、なんで僕こんな事になってるんだっけ




真莉愛と来たのは結婚式場だ


大学の近くで料理が美味しくて、みんなで盛り上がった、先輩の結婚できたことがあったからすぐにわかった



「まって」


「またない」



なぜかは分からないが僕はここに来てはいけない気がして一歩後ずさった


感情がぐちゃぐちゃで手を握ってる真莉愛の手を離しそうになった


その手を真莉愛が握りしめた



「なんで」


「これはね、春樹のためなの」



とにかく僕はなんでこんなに嫌な気持ちになってるかわかんない


でも真莉愛はお見通しだった



「春樹は優しすぎるのよ」


「え?」


「遥のこと引きずってるのはわかるよ」



言われて胸が鼓動をはじめたのがわかる


鼓膜に今血管が出来たようにドクドクとうるさい


足がガクツキ、不思議と手が震えるのがわかる



「遥は病気で仕方なかった、なのに春樹の優しさにつけこんであんな事した、春樹は間違ってない、重荷を背負わせるだけ背負わせようとしてきて無責任なのは遥だよ、春樹は優しいからさ、もう忘れたほうがいいんだよ」



言われてすんと心に染み入った


そうだ、僕が悪いんじゃない、遥が無責任なんだ


これまで冗談のようだったかもしれないけど結婚しようって言ってきたのに、なのに勝手に怪我して、勝手に病気になって、いざ死ぬってなったら僕にすがりつく?


自分勝手だよ



「だからさ、忘れるためにも、春樹のためにも、結婚、しよう?」


「真莉愛・・」


「大好きだよ春樹、私じゃ、ダメかな?」



真莉愛は思えば僕のために何でもしてくれた、大学に慣れない僕の服を見てくれて、勉強を教えてくれて、困ったら助けてくれて、もらってばかりだ


真莉愛にこうも言われたら、僕は



「そんなこと、無い」


「嬉しい!」


「優柔不断な僕だけど、真莉愛を守るんだ、僕はそう決めた」


「大好き!」



まだ重い心だがそれでも前に進まないといけない

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