第65話 3人のお供とホテル見学


「着きました」


そう言われて出るとどこだろここ?ホテル?


おめかしってこういうこと?何の用だろう?私はともかく洋介の格好は良いのか?最近話題すぎる魔法少女だし



「洋介、その恰好でいいの?」


「これは神官の服だからね、汚れてても破れててもどこに入っていいすぐれもの!」



それは向こうの話だろと思うけど神官の正装なら着替えさせるのもな



「どうも、本日対応させて頂く 西野 です、本日は当ホテルを見学していただき、誠にありがとうございます」



ホテルに入ると私達を待っていたようで女性のスタッフが出迎えてくれた



それとわたしたちの後ろに徳田さんとは別のスーツの人達がいて私達について来た


明らかにいかつい、スーツが似合ってない、プロレスラーに無理やりスーツを着せたかのような男


金髪でアクセが耳にいくつもついてるスーツの男


そして少し腹は出ているが筋肉質そうに見えるスキンヘッドの男


全員頭に黒い線が入っている



どう見てもやばい集団




洋介は全く気にせず、周りを興味深そうにジロジロ見ているし女神様は飛んでいってしまった



「とてもお綺麗ですね、モデルさんですか?」


「え?いえ、大学生です」


「では学生結婚ですか?」


「はい?」


「羨ましいです!私どもでできる最高の結婚式ができるようにご案内させていただきますね」


「はいぃぃぃぃ??!!!」



洋介の頭を掴んで持ち上げた私は悪くない



「痛い痛い痛い!痛いよ、ねーちゃん!?」


「だまりな?ちゃんと説明するように」


「あの、お客様?」



ついてきてた金髪のスーツの人が説明してくれた


この2人は婚約したばかりで式場を見学するために来て、まだここに決めたわけではなく今日は数か所見るように言われていてその旨連絡したはずだ、とのことだ


私も初耳なんだけど?!



「大変失礼しました、では今日は心ゆくまで当ホテルをご観覧ください、こちらの手違いで不快な思いをさせたことを謝罪します」


「い、いえ」



とりあえずこの不審な三人は洋介の関係者で洋介は私と式場が見たいということはわかった


これ、デートだ!


見に行きたいのってホテル?!いや、初めてのデートが高級そうなホテルで式場見学ってマジか!?


掴んで吊るしたままの洋介の顔が見れない、大きな人が洋介の脇を支えてるしおろしてやるか



「痛いよねーちゃん、いてっ」


「今度からちゃんと言うこと、いきなりでびっくりしたんだからね」



でこピンして許した


どういうプランがあってどんな会場があってどういう流れで式をするのか、ホテルには何人入れて、ドレスの種類はー、控室はー、披露宴はー、料理のコースはー、交通のアクセスはー、引き出物はーなどなど細かな結婚の流れを教えてもらった


結婚式ってこんなにいろんなことするんだね、もっとシンプルでいいんじゃないかな


結婚式について聞いてたら


もしかしたら春樹と来れてたのかな?



なんてよぎってしまって胸がズキッとした



何故か私よりも洋介が興味津々でスタッフさんに色々聞いていて苦笑する


いや、私と結婚したいのか想像してしまって赤面してしまった


そろそろ終わりかと思ったんだけどお詫びにホテルで昼食は無料で食べていいと言われた



私はなんとなく説明されたコース料理の中で気になっていた洋食のコースを、洋介は和食のコースになった


出された料理はどれも美しく、ステーキなんて噛んだ瞬間これまで食べたお肉じゃないって脳がバグったような感覚さえした


甘い肉汁に甘いソースが口の中でふわりと混ざり合う


いつもの塩コショウや好みのバター醤油にんにくの効いたものではない、結婚式を意識してるんだろう


思わず背筋とマナーに気を使ってしまう、洋介も美味しそうに食べている



<美味しいですぅ>



女神様の舌にもホテルの料理は合うようだ


ただ、周りの給仕さんたちがこちらをそれとなく意識していることがわかるのは少し辛いな


このレストランで食べているのが私を含めて6人だけなのにスタッフは10人はいる



これは上客と間違えられたんだと気付いた



車は高級そうな黒塗りで運転手付き、後ろの護衛は3人いる、お金持ちに見えてもおかしくはない


もしも私達がここで結婚するならホテル側は上客になるだろう



出ていくときには見送りが8人もいた

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