第18話 どん底と暴走
もう何もかもに絶望して悪いことしか聞こえなくなっていた
投薬の結果が良くないって聞いた
来るたびに疲れ切ってどんどん顔色の悪くなる両親、たまに親戚や従兄弟も来るようになった
もう私ながくないのかな?
座って体が倒れないようにするだけ痛くて辛い
手術ができるうちに特に治りの悪い場所を切除するって賭けに出た、そこだけはどうしても投薬の効果が出ないとからしい
「頑張るのよ」
「父さんたちが待ってるからな」
うまく言葉が返せなくて頷いておく
治ったところで私に居場所なんてあるのかな?
生きる意味ってなんだろ?
昔のことをよく思い出す
隣の一家とは本当に仲が良かった
母さんと隣のおじさんおばさんは同級生で、私の父さんはその2つ歳上で3人をまとめてずっと仲が良かった
家族ぐるみで付き合いがあった
バーベキュー、登山、海、イチゴの食べ放題に芋掘り、なんでも一緒だった
あの事故が起きるまでは
私がお祭りで遊園地のチケットがあたってあげたんだ
一緒に行く予定だったんだけど私と父さんがインフルエンザで寝込んでいけなくなった
ホテルも予約していたし、かわりに隣の一家が行くことになった
そしたら洋介たちはカーブをはみ出してきたトラックにぶつかって、いなくなった・・・
おじさんとおばさんは死亡、洋介は見つからなかった
私も行くはずだった、私がチケットを渡したから
隣のおじさんおばさん、洋介だったらそれは違うって言うはず、だけど心に刺さった棘は抜けない
お墓参りには毎月行った
洋介は弟のように可愛がっていたしいつも連れ回していた
洋介は将来「ムキムキな消防士になる」なんて言ってたがあっけなく死んでしまった
人って本当にあっけなく、何も残せずに死んでしまう
そういえば洋介には私の嫁になれなんて言ってたっけ
もしも洋介が生きていたら16歳、きっと私よりも背が高くなって、走り回るの好きだったし結構筋肉質で、でもちょっと甘えてきたりしてね
もしも生きてここにいたら春樹たちのこと殴ってくれるかな
手術は途中で終わって眠ることになった
「父さん、母さん、大好き」
「私もよ、遥!」
「そうだ!きっと良くなる、良くなるから!」
泣いてる父さんと母さんは白髪が増えた
眠気に抗えずそのまま寝て
夢を見ていた
春樹が結婚届にサインして、それで私は父さんたちみたいに共働きで幸せな家庭を作って、子供が生まれて、おっきな犬をかって
春樹の帰りが遅くなって、真莉愛が春樹に手を出してることに気づいて
春樹の首筋にうっすらキスマークが残ってるのに家に帰ってきて私に向かって「愛してる」なんていいながらキスしてきて
触れた唇から胸に力が戻ってきた気がする
春樹・・じゃない!!!??
「誰だお前!!!??」
糞春樹が、糞真莉愛が
とにかく目の前のやつを殴る殴る殴る
すぐに回りの上半身裸のマッチョに取り押さえられ、キスしてきた男はいなくなっていた
母さんを押しのけて心のままに声を出す
「糞がァァァァァァァァァァァァァァァァァっっっっっっっ!!!!!!」
目の前のおっさんを殴り、外れて壁に大穴を開けた
あまりに現実感がなくて固まってしまったが夢かこれ、春樹出てこい春樹
「いたっ!?」
あれ?母さん?
母さんの声でハッとした、尻餅をついてる母さん
「え?大丈夫?母さん?」
「あんたぁ!何やってんのぉ!!!!!」
ばしんっっっ!!!
ったぁ!!?
ビンタされた?!
「夢じゃ、無い?」
「そうよ!壁!何やってんのよあんた!!!??」
「今だっ止めろ止めろ!」
よくわからないが襲いかかってくるマッチョを相手に無双した、と思う
なんかチクッとしてまた夢に戻った
春樹出てこなかったなぁ
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