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「それにしても…………大丈夫なんですか?その、誘拐されたりとか…………」
微妙な空気の中、イヴネリアはそんな心配の言葉を口にした。
「大丈夫大丈夫。冒険者ギルドの方に護ってもらってるし」
「冒険者ギルドですか?」
「うん。一か月くらい前にシェスターナに来たんだけど、まず冒険者ギルドに寄ったんだよね。そこで事情を話したらマスターが匿ってくれるってことになって、さっきの爆炎っていうのは私の冒険者としての名前みたいな感じで…………まあ色々と面倒見てもらってるってわけ」
「へえ…………」
面倒になって説明を省いたが、要はマスターの厚意で冒険者ギルドの名を挙げて私の身を守ってくれているということだ。私に手を出すということは冒険者ギルドに手を出すということを意味する状況となっているので、今のところはこれといった被害を受けたこともない。
というかそもそも、私的にはそこまでする必要があることなのかどうかも疑わしいが。私を攫ってすることと言えば遺伝子を残すくらいのことだろうが、私がアグマリエンを三つ持っているからといって子供に三つとも受け継がれる可能性はほとんどないし、二つなら1/7程度となるが、二つじゃそこまで珍しくもない。同じくアグマリエンを三つ持っている男でも用意しているなら話は別だが…………それこそ自分の遺伝子を残すためでもなく優秀な遺伝子を持つ子供を作るためだけに二人も攫うなど、私にはリスクとリターンが合っていない話にしか思えないのだ。
もちろんアグマリエンを複数持っている男自身がという話もあるが、そんな人ならば正々堂々と私に縁談を持ち掛ければいいだけだ。正直、マスターは私に対する危険を過剰に恐れていると思わずにはいられない。
と、私がそんなことを考えていると、イヴネリアがふと思い出したかのように口を開いた。
「そういえば、レク・サレムと冒険者ギルドって仲が悪いんでしたっけ。よく入学を認めてくれましたね」
「ん?そうなの?…………別に許可とかもらってないんだけど」
「そうなんですか?てっきり、そこまで大事にされているならそういう話も通しているものかと…………」
あれ…………もしかしてマズいかな?
レク・サレムと冒険者ギルドが不仲なんてこれっぽっちも知らなかったから、普通にマスターには何にも話してないし、入学試験の時にアグマリエンの話とかもしちゃってるんだけど。
「んー…………まあ一応後で報告しとこうかな?」
「はい。恐らくそうした方が…………それより、魔法器の方、もう抜け出しちゃいませんか?向こうは向こうで盛り上がってるようですし」
「あー、そうする?」
何の話をしているのかはわからないが、おおいな盛り上がりを見せている医学組。一言入れて退席しようとすると、予想外にもヴォーナが食いついてきた。
「二人でどこか行くの?」
「はい。フィルさんのご自宅へ」
「自宅!?そういうことなら私たちも連れてってよ!」
「え」
「あ、賛成です!魔法使いの方って、魔法器?ってやつを持ってるんですよね!」
「私も実物は見たことありませんね。お邪魔でなければ是非」
そんなに珍しいものなのか、ただの好奇心なのか。アニレイとコルネイも目を輝かせて賛同し、あれよあれよという間に四人を自宅に招くことになったのだった。
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