スポーツとは無縁のゲーマーである春樹はふとした思いつきから渋谷へ向かい、とある喫茶店でなぜか倒れ込んできた美少女・清美と受け止めることとなった。それをきっかけにストリートダンスと出会った彼は師の導きと仲間たちとの切磋琢磨により、ダンサーとして成長していく。
ダンスと出会った春樹くん、彼のキャラとしての仕上がり具合がエピソードを展開するエンジンになっていることに注目! 例を挙げればゲーマーだけに作業(練習)は得意、でも視野の狭さが祟ってダンスに面白みが出せない点などです。
主人公に行動を強いる窮地をストーリーへ置くのが普通の構成ですけれども、この作品では春樹くんが自ら窮地へ嵌まることで不要な状況設定や説明を省き、彼のキャラクター性やアクションに集中した物語構成が成されています。このキャラクター小説としての完成度を高さ、すばらしいのひと言です!
ダンスにもっとも大切なものはなにか? それを追いかける主人公を描き抜く、熱くて厚い物語です。
(「ダンス! ダンス! ダンス!」4選/文=高橋 剛)