第28話
あ。
そう言えばそういうひとも居た!
「一度、お便りをしてみては如何です? 子爵とは絶縁状態だそうですが、姪からの手紙はおかしくないでしょう」
そう言えばフレドリック伯父様はインドで家族を作ってそのまま居着いたんだった。
*
「そうですか!
伯父さんが居たんだったわね!
ちなみにこちらはタシュケン子爵夫人マリューカ様にお会いできたわ!
……さすがに緊張したわ。
豪邸!
優雅!
……サロン活動もなさってたわ……
というのも、お子様がいらっしゃらなかったということで、御自身は豊かな資産でもって、若い芸術家の支援をしているのですって。
もうじき貴女のお祖父様の蟄居も解けるでしょ?
そうしたらサロンの方に、子爵令嬢という形でお伺いすればいいと思うわ。
ちなみに今の私の立場は、まあそのままで、『母親から追い出された男爵の娘』ということに。
芸術関係を支援なさっている方だけあって、私のこの立場にも興味を持ってくださったわ。
で、もしかしたらスリール子爵の娘かもしれない、ということも言ったら、『確かに似ているところもあるかも』ですって。
正直本当に、私、スリール家の一員になりたいわ。
何か今は宙ぶらりんなのよね。
でも認められることがなくて、貴女の最終的な思惑通りになったなら、私は何処かのお家に働きに出ればいいだけのことだものね。
本当に、あの時アリサも皆も私に叩き込んでくれてありがたいと今でもしみじみ思うのよね。
もっと大きくなっていたら、妙なプライドが邪魔をしてお嬢様暮らしに執着したかもしれないし。
でも今だったら、まあ何とかできるここともあるか、って思えるもの。
ああ話がずれたわ。
マリューカ様のサロンにね、かつてのハイロール男爵家の一員と親友だった方が居るの。
画家で、向こうの美術を学びたい、ってことで一族についていったんですって。
で、結構長く手紙のやりとりをしていたのだけど、ある時からぴたっと止まってしまったというのね。
どうもその辺りが気になるので、夫人から渡りをつけていただいて、今度その画家の方とお会いする予定よ。
キャビンさんとも同行するつもり。
それと、そろそろそちらを良い感じで出て行く準備をしていて欲しい、とロルカ子爵側からの伝言。
受け容れる準備はできたって。
できれば、貴女が不当に追い出される方がいいと思うわ。
それをきっかけに子爵が乗り込んでくる口実になるでしょうし」
お祖父様!
本当に、時間はだんだん迫ってきていた。
毎日の仕事と、手紙のやりとりで時間を過ごしていると、二年は案外早かったこと!
あと、手紙!
なるほど、向こうの人々がどれだけ変人の一族だったとしても、全く手紙のやりとりが無かった訳ではない。
これは楽しみだ。
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