俺、モテるけど恋愛できません。

娥罪 多久

序章 俺が恋愛できない理由





ベージュのワンピースを着た白井真波が遊園地の前の時計塔で待っていた。

「英介君〜。こっちだよ〜。早く早く。」

「真波ちゃん。遅れてごめんね。」

待ち合わせの10分前には着いたけどもっと前から待ってくれたのか。

天真爛漫な笑顔を見ていると、俺も思わずにやけてしまう。



「英介君とデートできるなんて嬉しいな。」

真波ちゃんは俺を見上げながら恥ずかしそうに言った。

「俺も真波ちゃんとデート出来ること楽しみだったよ。」

俺は、頬を掻きながら答える。

すると、真波ちゃんは大きな目を細めてクシャッと笑う。

「じゃあ今日は、思いっきり楽しもうね。」


ああ。その笑顔100点満点。めちゃめちゃ可愛い。こんな可愛い女の子とデートだなんて昔の俺には想像できなかっただろうな。

今日は、人生初めてのデート。思いっきり楽しむぞ。


「じゃあ、真波ちゃん。今日はどこから回ろうか。」

俺は、携帯に入れた遊園地マップを開く。すると、真波ちゃんは俺の腕を掴み、携帯を覗き込んだ。

「見せて。見せて。」



彼女に腕を掴まれた瞬間、俺は胃を直接握り潰される感覚に陥った。

視界が揺らぎ、俺は前に倒れ込んだ。腕から何か得体の知れない気持ち悪さが伝わる。


「うっ。」

(ビチャビチャビチャビチャ)

俺の足元には、今日の朝食べたものが散らばっていた。

周りに酸っぱい匂いが漂う。


「何だ。これ。」

俺は、何が起こっているか状況が掴めずにいた。

周りでは、スマホで俺を撮っている者。スタッフに

真波ちゃんは俺に駆け寄って来てくれた。みんなが注目して、恥ずかしいはずなのに。

「英介くん。大丈夫?」

心配そうな顔をしてこちらを覗き込む。そして、そっと俺の背中を摩ってくれた。

するとまた、喉から胃液が込み上げ、また嘔吐してしまった。背中からまた気持ちが悪さが伝わる。ダメだ。最悪の気分だ。



「真波ちゃん。大丈夫だから。ちょっと離れた方がいいよ。」

真波ちゃんに触られている間、胃を握り潰される感覚がずっと続いていた。

なんでなんだ。血の気が引いていくのを感じる。突き放した言い方をしてしまい、真波ちゃんは少し悲しい顔覗かせた。


俺は口を押さえながらフラフラっと立ち上がる。


「真波ちゃんごめんね。俺は、今日帰るね。体調悪くなったみたいで。」

俺は、心配そうに見つめる真波ちゃんをよそに入場口へ歩き始めた。



2年前に見た夢。あれは現実だったのか。

俺は、もう恋愛できない体になってしまったのか。


こんな事ならあんな契約しなきゃよかったな。

後の祭りだと知りながらも後悔する加藤英介だった。

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