第9話 月夜の晩

■月夜の晩

◉少女(高校一年生ぐらい)、妖

◎大きめの日本家屋。月夜。

●回想

祖母(声のみ) 「月明かりの綺麗な夜は空を見上げては行けないよ……もし、お月様と目があったら、連れて行かれてしまうからね」

少女 「どういうこと?」

祖母は答えない。

●回想終わり

少女 「夜に口笛を吹いたらー、とかご飯粒を残したら、だとかと同じ類の迷信だと思ってたのに……」

縁側から少女が見上げる空には満月。

少女はしばらくボーッと見つめる。

少女 「月見団子でも持ってきたらよかったかなぁ」

妖 「なら、これでも食べる?」

少女、隣を勢いよく見る。誰もいない、何もない。

少女 「何、今の……誰? 聞いたことない声だし……」

微かに歌声が聞こえる。

妖 「十五夜お月様何見て……」

少女は歌に誘われるようにフラフラと庭におり、歩き出す。

少女 「なんだろ……なんか、知ってるような気がするんだよね」

少女 「敷地内なら、すぐ戻ってこれるだろうし、行ってみよ」

しばらくさまよう少女。

少女の前には石畳が伸びる。

少女 「あれ? こんな場所、あったっけ……」

子供の笑い声と足音が聞こえる。

少女 「私より小さい子たちはもう寝ちゃってるのに……」

少女 「なんか、不気味。戻って、おばあちゃんに聞いてみよ」

少女振り返るが、自分がいた縁側も石畳もない。

少女 「え……なんで。石段? それに、あれ……」

少女の視線の先、朱塗りの鳥居。

少女、一心不乱に石段を駆け下りる。

石段の下、妖のシルエット。

妖 「待ちぼうけたよ。ほら、行こう?」

妖、少女の手を取って鳥居をくぐる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る