第8話 あなたの瞳

■あなたの瞳

◉女子高生1、2

遠くで花火が上がっている。

ナレーション(女子高生1) 私は、彼女のことを思い出した。彼女は特別何か目立つような人ではなく、ただ普通の女子高生だった。私は、彼女のことをよく知らない。それでも、どこか気になって、彼女のことをずっと目で追っていた。

●回想

◎放課後の校舎内、廊下。夕日が差し込んでいる。

女子高生1の行手を塞ぐように立つ女子高生2。

女子高生2 「ね、ねえ」

女子高生1 「(迷惑そうに)なに?」

女子高生2 (深呼吸、顔を赤く染めている)「私と……私と! 一緒に、花火を、みに行ってもらえませんか」

女子高生1 「えっ……?」

女子高生2 「あ、えっと、その。今日、学校の近くにある川の方で花火大会があるから、それを一緒に見に行ってもらえないかなって……」

女子高生1 「なんで? 私と?」

女子高生2 「私、あのあなたとお話してみたいなって。で、でもきっかけもないし、グループも違うし、だからその……」

女子高生1 「待ち伏せ?」

女子高生2 「うん……ほんっとごめん、私なんかが、迷惑だよね」

女子高生2、追い込まれていく。

女子高生1 「いいよ。私でいいなら」

女子高生2 「(笑顔で)本当に?!」

女子高生1 「まあ、暇だし……」

女子高生2 「本当?! ありがとう! じゃあ、駅の東口の方で待ってて!」

女子高生2、1の返答を聞かずに立ち去る。

◎女子高生2、1を先導するように河川敷から少し離れた高台に訪れる。少しして、花火が上がり始める。

女子高生2 「ここね、花火、すっごく綺麗に見れるんだ。この辺、屋台とかもないし結構穴場で。私、昔からここで花火見てるんだよね!」

女子高生2、花火から視線をそらすことなく女子高生1に話しかける。

女子高生1が2の方を向く。

女子高生1 「綺麗……」

女子高生1、2の瞳に写った花火を見てこぼす。


ナレーション(女子高生1) 高校二年生のたった一晩のお話。花火の音を聞くたびに、私は彼女の姿を思い出す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る