12ヶ月の短編集（戯曲改稿版）

第3話 卒業式の朝

■卒業式の朝

◉女子学生１、２、２友人、教授

◎大学構内、校舎内。広めの講義室。室内には番号が降られたパーテーション。入り口近くの受付で個別に番号札を渡している。

女子学生ネムそうにしながら、手元の番号と同じブースに入っていく。

◎ブース内、カーテンで区切られ、外からは見えないようになっている。カーテンの横にカゴ、ブース奥に着物一式の入ったカゴがいくつも並んでいる。その手前に、１セット並べられている。

スタッフ　おはようございます

女学生　おはようございます

スタッフ　荷物はそこのカゴに置いてもらって、服を脱いでこれを羽織ってください。

スタッフ女学生に襦袢を渡す。女学生されるがままに着付けられる。服はそのまま、荷物は持ってブースから出る。

◎講義室の外、エレベーターホール。女子学生の手元にはスマホ。メッセージの通知が来ている。

（メッセージ）女子学生２　やっほー！　そろそろ着付け終わってるよね、食堂前で合流しよ！

女子学生１　今日も変わらず、元気だなぁ。今日は……これ！

女子学生１スタンプを送信し、エレベーターに乗り込む。

◎食堂棟前広場、記念撮影をする学生のグループがいくつもいる。その中で、女子学生１に向かって手を振る袴姿の女子学生２

女子学生２　おはよー！　似合ってるじゃん！

女子学生１　おはよ！　ありがと！　そっちも似合ってるーーー！　やっぱそれにして正解だったね！

女子学生２　だね！　ね、写真撮ろうよ！

女子学生１　もちろん！　このために、これ、持ってきたんだー！

女子学生１鞄から折りたたみ式の三脚を取り出す。スマホを取り付けさまざまなポーズで撮影をする。

女子学生2の友人が集まってくる。1が撮影係に回る。2の友人、カメラを取り出す。

女子学生2友人　ねえ！　これでみんなで写真撮ろうよ！

集まっている女子学生、賛同する。

女子学生2 撮ってもらう人探さなきゃだね！

女子学生2友人　あ！　教授！　写真撮って下さーい！

遠くを歩いている人物に声をかけ、カメラを渡し連れてくる。

教授　忙しいんだが……

2友人　いいじゃないですか一枚ぐらい！

教授　ほら撮るぞー

2友人　ありがとうございまーす！

撮影後、卒業式の会場に連れ立って移動する。

◎会場内　前方にステージ、来賓などの席が並ぶ。

女子学生1、専攻が違うため友人たちと離れて1人で椅子に座っている。緊張からか、手を握ったり開いたり、落ち着かない様子。

開式のアナウンス

女子学生1 手元を見ていた顔をあげる。