元勇者が辺境に転移して魔王を討伐するそうです

あずま悠紀

第1話

勇者召喚で異世界に召喚された主人公が、実は前世の記憶を持った状態でこの世界に来たことを知る。

最初は自分のことを『魔王を倒して世界を救う英雄である』と考えていたが、この国のお姫様と出会い真実を知る。自分が召喚される際に一緒に来てしまった、魔王軍四天王の一人を倒したのだということを聞く。

この国は、魔王のいる国に隣接しており、その国からの攻撃から民を守るためにも勇者が必要だったらしい。そしてお城では勇者の選定が行われた。その結果選ばれたのは彼だったのだ。


しかし彼はこの世界の人間ではなくて元の世界で普通の生活を営んでいた青年だった。しかもその事実を知った姫たちは『そんなものは偽物だ!』という扱いを受け、彼の味方をする。そして姫たちが選んだのは彼の強さと、人柄であった。そしてこの世界の知識や力を教えてもらったりしながら魔王を倒すため旅を始めることになるのだが――?


「なんだよそれ!?」

俺――神崎真司(かんざきしんじ)はこの日何度目か分からない驚愕の声を上げた。いや本当になんなんだよこれ?! 普通に考えてありえないんだけど!! そもそも俺には魔王を倒すとか世界を救いたいとかそういう感情はないわけで。

そりゃあ、平和が一番だと思うよ? でも魔王軍が攻めてくるなら別じゃないかと思うんだ。別に悪いことしている訳じゃないし! っていうかなんでいきなりこんなことになったのか全く意味不明だし! 俺はただの会社員だぞ。営業職のリーマンってやつだ。それも二年目になって新人扱いされないくらいの地位にいたはずなんだ。だから突然

「あなたには異世界に行ってもらいます」

と言われても理解できないってば。それに

「元の世界に帰れないのですか?」

って聞いたら、それは無理だと言われたしさ。なんでも召喚時に何かしらの問題が起きたせいで帰れなくなったそうだ。そんな説明を受けても理解できるわけないだろうが! まぁそれでもなんとか納得できた部分もあったりするけどさ。だって魔王軍に攻めこまれている最中みたいだったし。

なんか魔族? 魔物みたいなのと戦っていたしね。それをどうにかして欲しいということなんだろうなって思うよな普通。

で、その戦いの最中にたまたま巻き込まれたってことだろ? はっ?! つまり俺は悪くないよね。巻き添えだよ! 被害者だよこれは!!!


そんな気持ちを抱えながら今、俺は馬車に乗って移動中だ。周りにいるのは護衛の兵士さんたち。

全員同じ鎧に身を包んでいることから兵士なのは分かるけれど、みんなイケメン揃いなんだよこれが。まぁそれはいいとしてさ。

とにかくどうしてこんなことになってしまったんだろうか。やっぱり夢オチなのかこれ。うん夢だよな絶対に夢だろこれ。

きっと寝る前にアニメ見てたせいだ。間違いない。そう思ってもう一度寝ようと思った時だった。馬に乗った女性が現れたのだ。

どう見ても美人のお姉さん。でも俺と同世代っぽいかな。そんな彼女は馬を降りて俺の前に立つとこう告げた。

「神崎様、勇者としての使命を全うすべく頑張ってください!」

うーん美少女と言って差し支えない女の子だよね。しかもこの世界に来る前とは大違いの状況だよ。でもさ

「すみません、まずは状況を確認しても良いでしょうか? 勇者だとかも意味不明なんですが」

目の前の美女に向かって質問をぶつけることにした。だってこのまま放置されたままでは不安過ぎるからね。すると彼女が笑顔で答えてくれた。ちょっとドキッとするレベルの綺麗な人だよほんとに。

名前は『アイラ=ルベリオ=ベルナドット』と名乗った。ちなみに彼女のフルネームはこれまた長くて長かったんだけど省略させていただきますごめんなさい。そして俺はこの世界に召喚されて勇者になったということが彼女に説明されることとなったのである。

「えっとじゃああそこで戦っていた相手というのは――」

この国の王城の近くで戦っていたあれらは、俺が元の世界で見ていたゲームの中の敵モンスターだったという。それどころかその敵と戦うためにこの国は魔王軍と戦おうとしていたらしいのだ。

マジで? 確かに言われてみるとこの世界の人は日本人よりも西洋人の顔付きをしているような気がしないでもないけどさ。いや、まぁそれはともかくとしてもだ、この国には魔王軍に対抗できる存在がいるらしくてそいつを召喚したとかなんとか言われたけどもさ! それで勇者召喚ってなんだよ!? 俺は勇者になるつもりなんてなかったんだからね。なのにこの扱いである。っていうかさ、

「そもそもあの召喚陣から出てくるのは勇者じゃなくて魔王の方じゃないの?」

思わず突っ込んでしまったよ。そうしたらそのことについては説明があった。何でもこの世界の勇者とやらは『勇者の血族』と呼ばれている一族だけがなるものらしい。で、この国には魔王を倒すことが出来る『剣聖』の一族が代々いるのだそうだ。そして今回も例にもれず召喚を行ったのだという。そしてそれがたまたま俺だったということのようだ。まぁ偶然にしては凄いけどさ。だけどさ、だからって俺がいきなり魔王と戦わないといけないとかいわれても困るんですよ!!

「それなら俺は関係ないですよね? だって俺ただの一般人だし! 戦い方も知らない素人だし!」

俺の叫び声を聞いて彼女は申し訳なさそうな顔をして謝った。そんな彼女に対して文句をいうことも出来ずとりあえず話を聞くことにする。というか聞きたいことがたくさんあったからだ。

「俺がいた元の世界に戻る方法はないんですか?」

「それはありません」

きっぱりと言われてしまった。うぅ~、俺ってこれから魔王退治をしなきゃならないってことでしょ。なんで?!

「なんで俺なんですか!? もっと適任者いたでしょ? 俺なんか普通の会社員でしかないんです。なんで勇者にならなきゃいけないんだっていう」

「そうですね。それはこちら側の落ち度です。あなたを巻き込んでしまって心苦しく思っております」

「あぁもう。じゃあ帰してくれません?! 俺は普通の会社員だったんだ。いきなりこっちに連れてこられて、なんの説明もなく魔王を倒すとかそんなの無茶苦茶すぎだろ!?」

「それも難しいかと思います。一度発動してしまった召喚魔法は私程度の魔力では解除することができませんし。召喚されたのが神崎様でよかったというべきなのかもしれません」

どういうこと?! なんでそこで俺の名前が出て来たのか全然分からないよ! なんでこんなことになったのかさっぱりわからない。

あーもー!! 俺は一体何をすれば良いんだよ! こんなこといきなり言われても理解できないってば! いや本当。本当に意味が分からなすぎて泣きたくなるよ。

「え、じゃあ俺って魔王を倒すまでずっとここに住むってことですか?」

「そういうことになります」

俺は頭を抱えたくなった。こんなわけの分からない異世界にやってきて、しかも一生暮らせと。はっ、まさかこれが噂のブラック会社ってやつなのか。だとしたら俺は絶対に辞めてやるからな! そう思いつつ俺はこの異世界で生活することを決めたのであった。

というわけでまずは情報収集を行うことにしたわけだ。なにしろ俺は何も分かっていない。何も理解できていないのに、はいそうですかって受け入れることが出来ない。まずは知ることから始めなければと思ったのだ。で、俺は城にある図書室に向かう。そこにいけば何かしらの情報があるんじゃないかと思っての行動だ。で、案の定情報は見つかったんだけど――、 俺が召喚されたのは二日前のこと。召喚が行われた際にこの国に異変が起こったのだと。その影響によって本来であれば俺が来るはずの場所とは別のところに転移してしまったのではないかと考えられているらしい。

俺にはまったく身に覚えがないんだけど、とにかく俺はそのおかげで別の場所に召喚されたという訳だ。でもまぁ、俺に責任はないからいいんだけどさ。

ちなみに俺を召喚した理由は、この国が魔王軍に襲われる可能性があったため。そのために俺は呼ばれたのだ。まぁその役目が終わったら元の世界に帰れるみたいなので今は気にしないようにしよう。っていうか魔王軍を倒さなきゃ帰れないってことだよな。はっ、冗談じゃない。俺はこんな異世界なんかに永住する気なんて全くないからな! まぁそれはいいとして、問題は『俺にはどんな能力があるのか』ってことだ。これ重要だと思う。何の能力もない、使えない人間を連れてきて魔王を倒せとか無理な相談だし。俺が持っているチート能力はなんなんだ? それが問題だ。俺はそう考えながら自分の手を眺めた。そういえばステータスを見ようと念じればいいんだっけ。

『神崎真司(かんざきしんじ)

種族:人間(?)

性別:男性(20歳)

LV:3/40

職業 なし HP:12(+1UP)

MP:15(+1UP)

STR(力):50 DEX(器用):100

VIT(体力):45 AGI(素早さ)5 IPP

(INT)4 CRI

(CR)6 MND(精神)9 LUK(運)8』

うーん、これは一体どう解釈すべきなのか。なんか中途半端っていうかさ。特に最後の部分とか。あと、なんだろう。よく見ると俺が持っているスキルの中に【翻訳】というものが存在しているのだけれど。もしかしてこれは異世界に来て自動的に習得したものなのだろうか。それとも俺自身が勝手に身につけたものなのか、そこもちょっと判断ができないところだよな。とりあえず他のものも見てみよう。

ちなみにだが、俺は元の世界に帰らないことを前提で考えている。まぁこの世界で生きていこうと思っているわけだ。そのほうが元の生活に戻りたいという気持ちにならないし、それに今の状態で戻ったら色々と面倒な事になりそうな気がするというのもあった。例えばだけども、元の世界に戻れなくなって途方に暮れる俺を見た家族たちが「うちの子になって!」と言い出して大変なことになってしまうかもしれないだろ? それにもし元の世界に戻ったところでどうなってしまうかも心配だ。いきなり失踪していた俺の姿が現れたとしても不審人物にしか見られない可能性だってあるじゃないか。

「どうなってんだよまったく!」

俺がぼやくように言うと近くを通りかかった女性から「どうかされましたか?」と声をかけられた。そして俺は慌てて首を左右に振る。なんでもないと伝えれば、その女性は少し不思議そうにしたのだがそれ以上は何も言わずに去っていった。はー、び、びっくりしたー! でも確かに独り言を口にしていれば変な奴だよな、と俺は反省した。今後はもう少し言動には注意を払おうと思う。まぁ、そのせいで今度は無口キャラ認定されて困ることになるんだが、その話はまたの機会にすることにする。

で、改めてだけども、この数値が一般的なのかどうかも俺は知らないんだ。だから確認したって意味ないんだけど、ちょっとドキドキするよね。まぁこの世界に来る前に見た自分のステータスとはだいぶ違っている。確か俺のは――、

『神崎

真司 種族:人間(?)

性別:男性(20歳)

LV:25/50

職業 なし HP:2400

MP:3000

STR(力)101(+5UP)→DEX(器用)129→VIT(体力)104 ↑ MP:1500(+10UP)

INT(知力)113 ⇒ MND(精神)151 INT(知能)116(+13UP)

→CRI

(魅力)106→MND(知性)188 VIT(生命力)10 SPD

(素早さ)25→IPP(運)7 EXP 30/100(次のレベルアップまで740/1000)

経験値 4999/7000』

こうなっているんだよな。つまりあれか。俺にはレベルという概念があって、それを上げられるということなのかもしれないな。その証拠にほら。やっぱり数字が変わっている。このステータス画面に表示される『×』『○』のマークはおそらく経験値を表しているんだろう。で、この数値の下にある数字はその人のレベルの目安になっているということだな。多分だけど。まぁ、今のところ俺のこのステータス画面は俺以外に見せるつもりはない。だって他人が見ても意味不明だろ。だから内緒にしておこう。まぁいずれは公表しなきゃいけないのかな? 俺にはそんな知識もなければ伝手もないんだけれども。

ちなみに俺は召喚された際に貰った服しか着ていない。というのも着替えが一切ないからだ。俺が身に着けているのって、召喚されたときに来てい洋服だけだ。一応これって貰いものになるのか? それともこの世界の服装なのかな? 俺はそんなことを考えつつ、他にもある項目を確認していく。『MP』っていうのが増えているけどこれってなんのことなんだろう? 魔力か? 魔法を使うときに消費するものってイメージなんだよな。俺に使えるのかどうか分からないけれど、使えたら楽そうでいいんだけなー。そんなことを考える。あとは『IPP』っていうのと『CR』っていうのが増えてる。前者は多分だけどポイントってことで、後者の方はクリティカルの略で、運が良いという意味になる。で、この二つについて考えてみる。どちらも増えていることに意味があるんだとしたら、俺にどんな効果があるんだろ? 普通は何かの補正値だったりしない? まぁそれは置いておくとして。とりあえず俺自身の能力を確認するのが大事だと俺は思ったんだ。だから俺は自分の能力を調べてみた。すると――、

『神崎真司種族:人間(?)

性別:男性(20歳)

LV:25/55 職業 なし HP 2600(300UP+1UP ←NEW! MP 3000(500UP+1UP ←UP STR(力)100(+20UP!)

→ DEX(器用)150(+1UP!)

→ VIT(体力)90(+1UP!)

→ INT(知力)120(+1UP!)

→ MND(精神)129(+1UP!)

INT(知能)116 ↑ CRI

(魅力)121 ↑ INT

(知性)180

(CR)22 MND(知性)129 ↑

『翻訳(異世界語)

LV1/5』(New)『解析(異世界文字)

LV2/5』

『鑑定 LV3/5』

『収納(アイテムボックス)LV2/3(UP)』→『収納(インベントリ)LV2/5 MP消費量軽減(LV1/5)』

俺の持っているスキルはこれだけしかなかった。あと気になったのが、『MPが上がっているのはなぜ?』ということだ。これは単純に考えれば分かる。俺のMPが上がったからその分上がったんじゃないだろうか。そしてもう一つ分かったことがある。それはMPを上げるとHPも上昇するということだ。ということはだ。

「ステータスに表記されている数値よりも実際の能力値はもっと強いっていうことになるんじゃないか?」

俺はそう思ってさらに調べてみることにした。そこで俺の視界にこんなメッセージが映し出されたのだ。

「えっと、なになに――。

『【称号 スキルマスター】を取得しました』

スキルってなに?」

そう疑問に思いながらもその表示が出ているので、それを押して詳細を開いてみると――、

≪【称号 スキルマスター】:スキルを取得する際にMPを消費しなくなる。スキルを使用する時に消費されるMPが半減し、熟練度が上昇すると効果が倍増する。ただしその分だけ経験値の取得率が減る。この称号の効果によって取得可能となるスキルが一つ以上存在しなければならない≫ なにこれ!? ただの称号なのにすごくないか。だってスキルを使えるようになるんだぞ。しかも俺の場合は経験値も倍になるという。まさにチートな称号だ。これは絶対に誰にも言えない。知られたら何を要求されるかわからない。俺は慎重に行動しようと心に決めた。

さて、次に確認したいのがステータス画面に新たに追加されていた項目『IPP』だ。このIPPは一体何を示しているんだろう。もしかしたらステータス画面のこの部分にある数字なのかもと思ったんだ。俺はその数字を見てみることにする。

『神崎真司種族:人間(?)

性別:男性(20歳)

LV:25/75 職業 なし HP 2000(250+100UP)

MP 3000 STR(力)100 DEX(器用)530 VIT(体力)560 INT(知力)645 MND(精神)820 CRI

(魅力)610 CR 26 DEX

(素早さ)685 INT

(運)499 CR 3 経験値 4765/80000000(次のレベルアップまで11000/100000)』

「な、なんだこりゃーー!」

思わず声を出してしまった。俺ってそんなに強いのかよ! それにレベルが1上がっただけで数値が倍になっていくんだけどどういうこと? この世界に来てからは、俺はレベルを上げられないという制約を受けていた。だから俺はレベルを上げたいと思っていたんだ。そしてその方法を考えながら、俺はまだ試していないことにもチャレンジしようと思っているところだったんだよ。だから俺にとって嬉しい出来事ではある。まぁまだ俺が強くなったことを喜ぶような事態ではないけどね。

とりあえずは俺はステータスを全部開いてみて自分の状態を確認した。そして改めて思ったことは、俺はこの世界にやってきてからほとんど戦っていないということだった。俺がこの世界にやってくる前は、会社の出張で外国に訪れていた。

そこで現地の人間と喧嘩になって殴りかかってきたんだ。もちろん向こうも武器を手にして攻撃してきたから正当防衛だよな。

でもそれからどうしたんだっけ? 俺は殴られたことが原因で意識を失って倒れちゃったんだと思う。その先が思い出せないんだよなー。

それで気が付けばこの世界で赤ん坊になっていた。だから戦いとか一切ないわけ。まぁそんなわけだから当然戦闘の経験なんかないわけだ。

そんな状況の中で、いきなりモンスターと戦うなんてできるわけがないじゃないか?

いやまぁ、今こうして森の中にいるって時点で既に戦うことになっているかもしれないけどさ、できれば平和的に解決できないもんかね。あっちだって別に俺たちを殺したくて襲っている訳じゃないはずだし、言葉が通じれば話くらいは聞いてくれるかもしれないしな。



俺はそんなことを考えていたんだけども、結局そんな甘い話は現実にはありえないんだなということを身をもって体験することになった。

なぜなら俺が目を開けた時、目の前には体長二メートルはありそうな二足歩行の牛のような顔をしている生き物がいて、俺のことを見下ろしていたからだ。そいつの額には一角獣を思わせる角が生えていて、目は真っ赤に光っていた。

俺はすぐに死を悟った。殺されると分かっていても恐怖心は消えなくて動けなかった。そんな風に固まっている俺に向かって、牛の顔をした化け物は、手に持っていた大きな石を振りかぶって投げつけてきた。それが直撃して、俺の人生がここで終わるはずだったんだ。だけど俺は死んだはずじゃなくって生きのびることができた。それはどうしてだ? そんな疑問は今は置いておいていいか。ともかく俺は助かったんだ。

俺は地面に頭から落ちそうになったのをギリギリのところで踏みとどまって、何とか転ぶのは免れた。

俺がいた場所は、草木に覆われているもののちょっとだけ道のようになっている場所の上にいた。だから俺はそこから落ちて怪我をしたりすることはなかったんだ。まぁ、もしも下に地面がなかったら間違いなく即死していたと思う。いやマジで。そんな場所で俺は寝てたってことなんだけどな。よく無事だったな。本当に奇跡だったんじゃないだろうか。

というかなんだろうな、俺ってこの体になっても普通に動かせるんだよな。自分の体が思うように動くのは良いことだと思う。自分の思い通りに動くというのは当たり前のことだと思ってしまうけれど、そうじゃない場合もある。自分の手足を動かそうとしてもうまく動かないことってよくあるだろ。それと同じ感じなんだよ。ただ自分で自由に動かしたい方向には動かせなくても、体をひねる動作などであればある程度は自由が利く。そこら辺は不思議な現象だけどな。まぁそんなこともあるのだろうと深くは考えないことにしておく。

ともかく俺はなんとか命を落とすこともなく生き延びることができて、さらに言えば新たな人生を始めることができたんだ。

この森の木々が日陰になっているおかげで俺は助かったみたいで、太陽がちょうど真上に来る頃にはだいぶ元気になった。お腹も空いているので食べ物を探すことにした。そしてそこで俺は見つけたのだ。キノコを見つけて。

『名前:毒キノコ』

そう表示されているキノコを見つけた。それを見ながら俺の頭に一つの考えが浮かんできた。

『鑑定スキルを使えば分かるんじゃないだろうか?』と。その答えはすぐにわかった。

『種類:ドクタケ

効果:食べた場合、一定時間ステータスが低下する。状態:猛毒

HP:20』

「うぉー! これはラッキーだぜ! 毒って付いてるし食べれないな。でもこの表示の仕方だと鑑定が使えてるんだろうな。それにしても鑑定がレベルが上がっているせいか文字化けもなくちゃんと見える。良かった」

俺は嬉しくなってその場で小躍りしたくなるのを我慢して歩き出した。

鑑定のおかげで俺はこの異世界に来て初めての食料を確保することができた。そしてそのことでさらにテンションが上がっているんだ。これで食事はどうにかなりそうだ。

俺はさらに奥地を目指して進んでいく。そしてしばらく歩いていると遠くから何だか叫び声のようなものが聞こえてくるのに気付いた。

『ウガァアー!』

「今のはなんだ?」

俺は耳を澄ませてみることにした。

『キャア―! 誰か、助けてくださーい』

「ん? 女の子の声? 悲鳴なのか?」

これは急いだ方がいいのかなと思案しながら移動を開始した。

声のした方に近づいてみるとそこは広場になっていてそこに人が大勢集まっているのが見えた。そこには人型の何かと、それから逃げ惑っている女性と、それに剣を構えながら応戦しようとしている男性が一人と複数の騎士と思われる集団が戦っていた。しかし多勢に無勢なようで徐々に劣勢に追い込まれていった。このままではまずいなと思った俺は、すぐさま飛び出していって加勢することにした。というか俺のステータスを考えると一人で突っ込んでいった方が絶対に安全に敵を倒せると考えたからだ。

『ウオォー!!』

気合を込めて、雄たけびを上げつつ敵に突撃していった。その声を聞いた敵は驚いてこちらに顔を向けた。そしてその一瞬を逃さずに相手の懐に入り込んで腹部をめがけてパンチを放った。すると敵の身体が吹き飛んだのだ。まるで車に跳ねられたかのような衝撃を受けて宙を舞った。そのまま地面に叩きつけられるとピクリとも動かなくなったのだ。そして俺はその場の皆が唖然としている中で、次の獲物を求めて視線を巡らせた。

「すげぇなこの体。まさかこんな簡単に勝てちゃうとは。これなら余裕でやれちゃうかもな!」

『『グゲギャ――』』

そのあとも俺の快進撃は続くことになった。そして五体の敵を一気に片付けた後に周囲を見渡すと残りのモンスターは逃げ去って行った。それを見ていた人たちから拍手が起こった。そこでようやく自分がやってしまったことに気づき、恥ずかしくなった俺は顔を真っ赤にして下を向いてしまった。

その後、俺は女性たちに案内されるまま街へと向かうことになった。俺は街の門の前に着くまでに彼女たちから自己紹介を受けた。それによるとどうも俺は彼女たちの命の恩人のようになってしまったようだ。というより俺のせいで彼女たちはこの窮地に追い込まれたということだから、結果的に命を救ったのかもしれないが、それでもやっぱり申し訳なさを感じた。というか俺ってこの世界のお金とか持ってないんだよね。どうしようかと思った時に俺は閃いたんだ。この格好のままでは流石に目立つよなと思い直した。そこで彼女たちには悪いんだけど服を買いにいくことにさせてもらった。

そして俺は、今度こそ無事に門を通って街の中に入ることを許されたのだった。

俺の目の前に広がるのはかなり発展した都市の風景だ。この世界が中世的な雰囲気のある世界だというのは既に聞いていたので街並みを見ていて期待はあった。

俺がいた世界と比べても文明のレベルとしては似たようなところがある。ただ魔法という存在があることで、俺のいた世界でもあり得ないことがここでは起こっている可能性はあると思う。だからここは俺が知らない世界なのだ。そしてそんな世界を俺はこれから生きていくことになる。だからこそ不安になることもあるけれど今はこの新しい世界で生きていけることがとても楽しみになってきている。そんな気分で俺は足早に移動を始めた。

まず俺の目的地は冒険者ギルドに行くことだ。俺のステータスを見る限りこの国の人間ではないことは確実だし、しかも言葉も喋れることから、怪しまれて尋問されることだってあり得るだろうからな。そういう面倒なことを避けるためにも身分証みたいなものが欲しかった。

そしてそんな目的のために一番最初に思いついた場所こそが、この街にあると言われている『アルナ』という名前の冒険者ギルドであると聞いたことがあった。つまりその場所に行けば何か分かるかもしれないという考えもあって向かっているってわけだな。

(魅力)630 CR 26 DEX 経験値 3900/80000000(次のレベルアップまで9400/100000)』

よし! ステータスが上がったな、と喜んだのと同時にまた一つ疑問が生じたんだ。さっきモンスターを倒したときに得た経験値の数値が増えていたんだよな。それで確認してみると、モンスターを一体倒しただけでも1上がっていたのだ。それはどういうことだろうか? 俺は不思議に思って色々と調べてみたのだがよく分からなかったので、一旦このことについては考えるのをやめることにした。それにしても増えていたということは、それだけ俺の身体能力が上昇しているということだ。これは単純に喜べる。なぜならモンスターとの戦闘において大きなアドバンテージを得たことに繋がるだろう。俺には鑑定という強力なスキルがあるのでその力を活かして戦うことが出来るようになると思う。

まぁ、そんな感じで俺はまだこの世界について何も分からないことばかりだが何とか頑張ろうとは考えている。だってせっかくの新しい人生が始まったんだからね。ここで終わってしまったらあまりにも勿体無いから。それにしても今日はいろんなことがあったな。

森の茂みの中から襲われている女の子を助けたり、その女の子に連れられて王都に向かっていたり、その途中に遭遇した魔物を倒して感謝されたり、さらに王城に向かうことになるなんて思いもしなかった。そんなこんなで色々な経験をして俺は王城の門の前までやって来てしまった。

門の前に到着すると、門番をしていた二人から槍を突き付けられて俺は身動きを封じられてしまっていた。当然だよな。いきなりやって来た見ず知らずの人間が警戒しないはずがない。俺だってそんな状況になったらきっとそうするはずだ。だけど俺にも事情があってこのままじゃマズイことになってしまうんだ。なのでとりあえず話を聞いてもらうために話しかけた。だけど相手は俺を警戒しているからなのか一切取り合ってくれないんだよな。それどころか「怪しい奴だな。ちょっとこっちにこい」と問答無用で腕を掴まれて連行された。俺は引き摺られるように歩いて行くしかないのかと諦めかけていたその時、

『そいつをどこに連れてくつもりなんだ?』

という声とともに、突然背後に現れて男を殴り飛ばした人物が現れたんだ。そして現れた人物は女性だった。身長が高く髪の色は茶色で、胸が大きい。そして顔立ちは整っていて美人という言葉が良く似合う女性で、年齢は20代半ばって感じかな。その女性は、男たちの持っていた槍を奪い取るとそれをこちらに差し出してきた。そして「危なかったな」と言ってきた。そして俺は「助けてくれてありがとうございます。えっとあなたは?」と聞き返すと、「私の名前は『ミレアナ』っていうんだよろしくな! ってかあんたが真司って名前だろ?」と言われてしまった。俺はなぜ名前を知っているのだろうかと首を傾げた。そしてさらにこう尋ねてきた。

「お前って本当に記憶が無いのか?」

「はい、残念ながら全く無いですね。どうして俺の名前を知ってるんですか?」

「あーなるほどね。それじゃあ私のことは知らないってことなのか? それならいいんだ。私が勝手に知っているだけだしな」

(おい真紀奈、どういうことなのか説明してくれ。あの人は何が言いたい?)

と俺の頭の中に突然響いて来た声があった。その声は女性の声で少し低いトーンの声音だ。でもなぜか妙に耳に馴染む声だったのだ。そしてその声に対して女性――美玲が応えるように声を発した。

『実は彼女は私と同業者なんですよね。そして同じ世界から召喚されてきた者同士で情報を交換したりしていた間柄なんです。だから彼女の名前は知っているんです。それにこの世界に来てからも交流をしていて時々会っていたんですよ』

俺はそこで驚きの声をあげそうになったんだけど必死で堪えることにした。この世界での常識が全く分かっていないので大騒ぎするようなことはなるべく控えようと決めていたからだ。そこで美優から念話での連絡が入ると

『この世界にはステータスと呼ばれる物が存在しています。それは私たちが元いた世界には無かったものなので、おそらくは召喚された際に与えられたものだとは思うのですけども』

(ステータスは存在するのか!)

と思わず俺は叫んでしまった。俺はそのことで周囲の人に驚かれてしまい慌てて謝罪した。どうもすみませんと頭を深々と下げながら謝った。すると美玲さんが俺のことを抱き寄せて庇ってくれると、周りの人に向けて「ごめんなさい、彼は記憶を失っていて不安な思いをしていたところだから、許してあげてください」という優しい言葉をかけてくれたのだ。

俺が感動を覚えているとその女性が俺のことを抱きしめてきて耳打ちをしてきたんだ。その声はすごく甘く蕩けそうになるような綺麗な声音だった。その声が囁いた言葉の内容を聞いた瞬間、心臓がドキドキしたんだけど。その内容というのが

『私はあなたの彼女です。絶対に忘れちゃだめですよ』

だった。正直かなり嬉しかった。まさかこの世界で初めて知り合った女性に彼氏だと言われたのだ。嬉しいに決まっているじゃないか。しかも美人でスタイルの良い年上のお姉さまに抱き着かれているんだぞ?! これが興奮せずにはいられないだろう。そんなことをしているうちに周囲は俺達を見ていないのを確認して美怜は離れていっていた。

『真斗、今のがステータスについての情報です』と俺にだけ聞こえる声で教えてくれると『ステータス』と小声で口に出したのだった。すると目の前にステータス画面が出てきた。そこに表示されていた情報はこんな感じになっていた

神崎 真斗 17歳 男性 種族:ヒューマン

状態:正常 Lv 19 体力 186/212 気力 210 攻撃力 223 防御力 254 魔法攻撃 161 魔法防御 165 敏捷性 231 運 10 《スキル》 鑑定 5レベル 経験値増加 LV MAX 経験値5倍(限界突破中)

自動回収 自動回復 1日 経験値増量 30秒 レベルアップ必要経験値減少 4日 獲得経験値10倍増 取得経験値 50万倍(レベルアップ時効果)

スキル譲渡(対象 所持者のみ)

経験値倉庫(上限なし)

ステータスの横に表示されている数字の意味とか分からないのが多いんだけどさ。それよりも経験値がめちゃくちゃ高いんだよな。これは一体何を意味しているのだろうか?そしてもう一つ俺が疑問に思っていることがあるんだが、

「経験値が凄まじいな、さすがにこれだけ多いのは初めて見たよ。一体どうやって手に入れたんだろうか」

俺の言葉に反応したのは目の前の女性、もとい俺の彼女になっていた人だった。そして俺の疑問に答えてくれた。その話によるとどうやら俺はスキルというものを持っているらしくて、その効果は経験を積めば自動的に増えていくらしい。ただ、このスキルに関しては普通では手に入らない珍しいものであるとのこと。さらに、

「ちなみに経験値を1000まで上げることが出来た者は過去に存在するんだけど、それ以上となると記録に残っているのは3人しかいないのよね」

と言われてさらに驚いたんだ。その三人とはなんと俺と美麗、そしてもう一人が美玲のことだというのでさらに驚いてしまった。つまり俺は彼女たちと同じスキルを手に入れていたというわけなのだからな。

そんな話をしていたとき突然「きゃっ!」という叫び声が聞こえた。そして次の瞬間、俺は吹き飛ばされていた。

俺を吹き飛ばした人物を確認すると、俺をここまで連れてきてくれたあの女の子だ。

その女の子を庇うように二人の男が現れた。そして、俺の前に一人の男が姿を現したのだ。その男は金髪の短髪で顔立ちが整っておりイケメンと言える風貌だ。服装はこの世界のものでなく日本の高校生が着るような制服のようなデザインをした服を着ているなと思ったのだがよくよく考えてみると俺はこの国で使われている言語を話していたから、きっとこいつらの仲間に間違われたんじゃないかと考えた。

だけどさっきまで一緒に話をしていた女の子はその男の後ろへと隠れたことから間違いではないのかと思ってしまったんだ。そこでふと思うと、その男の子が何か喋っているように見えたのだがさっぱり理解できなかったんだ。そこでもう一度話しかけようかと思っているときに突然背中に強い衝撃を受けてしまう。そして地面の上に這いつくばることになったんだ。そこで痛みに耐えながらも立ち上がるために手を動かそうとすると何かが邪魔をして立ち上がれなくなっていたんだ、それが自分の右手であるということはすぐに気づいた。だけど左手は全く動く気配がなく不思議に思って目線を下げると、 俺の手は肩口から消え去っていて地面に倒れ込んでいたのである。俺がそれを目にしたのは一瞬の出来事だったけど、それでも何が起きたのかはすぐに分かった。

俺の腕を切り落としたのであろうと思われる人物を確認するために振り返ると、そこには日本刀らしき武器を構えた黒服の男の姿があり、その隣に俺を斬りつけたのであろう人物が立っていることに気づいたんだ。そして、

「あぁ、これダメだわ」

と呟きつつ俺は目を閉じた。

俺はゆっくりと瞼を開いた。そこは真っ白な世界であり周りはどこまでも広がっているかのような空間だった。そして俺の身体には意識がないはずなのに、何故か腕があるような感覚があった。それどころか指先一つ動かせそうになかった。しかし不思議なことに痛みを感じることはなかったんだ。

するとどこからともなく声が響いてきた。そしてその声を聞いていくうちに俺は自分が死んでしまったことを理解し始めていた。そしてこの声の主は女神様であることを理解するのであった。

その言葉を聞き終えた後で俺は思ったことがあった。俺は本当に死んでしまっているのかということとこれから俺はどこに行くことになるんだろうと。

俺の問い掛けに対する答えとして女神が説明をしてくれた。それは俺はもう死んでいるのだということ。そして次にどこに向かうのかだがそれは天国か地獄かということだった。天国は死後の世界のことをいうらしいが、この世界の人たちにとっての極楽浄土は地獄なんだそうだ。なんでも善人は悪人に対して天罰を与える存在だとされているのである。そのため、地獄の刑罰の方が楽なのだという。それを聞いた後に俺は、

「俺、悪人なんかじゃないから」と呟いていた。それを聞くと女神はクスリと笑い、それなら大丈夫だと告げた。そして、俺には2つの道が用意されていてそのどちらかを選んでほしいと言われた。

まずは、異世界の地球という場所に転生することになると説明を受けた。その世界はかつて日本と呼ばれた場所だというのだ。俺はそこに転移して第二の人生を歩むことができるようだ。俺は興味を持ったためその場所について詳しく教えて欲しいと言った。すると 女神の話によれば、俺のいた世界で死んだ魂たちはその地球に新しく肉体を得ることになるのだという。どうやらそこで新たな人生をスタートするようで、そこでは自由に過ごすことが出来るとのことだった。

ただ注意点としては、元の記憶を引き継いでいることが前提になるということ。それは前世で俺が生きていた時に得て持っていた知識と技術を引き継ぐということであるらしい。そして性別も変わる場合があるが、記憶は継続されるというのだ。どうやら俺にはその世界では女性としての生を受ける可能性が非常に高いのである。そして年齢も若返って行くことが決まっているらしく、最低でも16歳くらいから開始になるのだと言われた。そこで、

(俺にはやりたいこと、叶えたい目標、叶えたい夢など色々ある。だから俺を異世界に連れて行って欲しいと頼むことにした。それに、美鈴や、優香、彩夏、美玲とも会える可能性があるかもしれないから)

俺がそういう気持ちを伝えると少し考える仕草を見せた後、その世界に俺を連れて行くと言ってくれた。そこで、俺はその世界に俺が持っていくものに関して質問することにした。

まず、俺がこの世界で所持していたものはどうなっているんだろう。そのことについて確認すると、その全てを持ち込むことが可能と教えてもらった。さらに持ち込めるものの数に制限はないとのこと。

ただし、俺がもともと持っていたアイテムはこちらで回収すると告げられたのだ。だからこの世界で入手したものに限って持ち込むことが可能であると言われた。俺にとってはありがたかったのはお金は持って行けないことだった。この世界でも使えるようにして欲しいと伝えると、俺が所持しているスキルで可能だと返答を貰うことができたんだ。それからスキルに関しても、所持しているものを厳選した上で持ち込むことを許可してくれたのだった。俺はそれで十分だと思いお礼を伝えたのである。

ただ、俺は元の世界で手に入れたいと思っていたものもたくさんあったのだけども、それらの物についてはどうなるのだろうと思って聞くと、

「その望みに関しては私が出来る範囲のことでお願いであればなんとかなります。それとあなたが持つスキルを上手く組み合わせればなんとかできる可能性もありますよ」

という返事をもらった。そこで、この世界で入手するはずだったゲームなどのアイテムについていくつか聞いてみることにした。それらは全部問題なく入手可能だということがわかった。俺は、この機会を利用して欲しいものが手に入る可能性を上げる為に交渉を始めた。そしてその結果、俺はこの世界で手にすることができなかったアイテムを手に入れることができたのだった。

そのおかげで俺が手に入れられるはずのなかったレアな武器、防具、魔道具、ポーションなど、様々なものを入手することが出来た。もちろんその中には魔法が付与されているものもあるのだが。その効果は様々であり、攻撃力アップや防御力ダウンなんて効果を持つものまであったりしたのである。

ちなみにそれらの中で俺が選んだのはこの3つである。

1つは『魔力剣 ミスティルテイン』というものだ。俺が愛用していたゲームの主人公が使う武器であり、かなりの業物である。これがあれば俺は魔法を使って攻撃することが可能になったのだ! これで俺にも攻撃手段が生まれることになったのだ!ただその効果を発動するためには大量の気力を消費する必要があるみたいなんだけどさ。

2つ目は『聖剣エクスカリバー』だ! これも主人公がよく使っていた剣なのだ!この世界のどこかに存在すると言われる伝説級の武具である!これを手に入れただけでもここに来て良かったと思うくらいの価値はあると思っているんだよな。

3つ目はこれだな、『マジックシールド(小大)セット(中極)』『無限回復薬×99999(∞)』(これはこの先もずっと必要になるはずだからな。ちなみに無限は9999が限界値ということらしい。つまりこの先何があろうともこれだけは俺の手にあるんだ。この三つを手に入れられて俺は心の底から喜んだね。ただ他にも欲しいアイテムがあったんだけどもさすがにそれは無理だという回答だったので仕方ないと諦めるしかなかったけどさ。ただ俺がこの世界を救えばその報酬として俺の望むだけの報酬を与えてくれるとまで約束してくれたので頑張らないわけにはいかないと思ったわけだ。だからその言葉に俺はやる気を出すことができていたんだ。

ただ、その前に俺はどうしてもやっておかなければならないことがあったのだ。それを俺は女神に聞いたのだった。

その言葉を聞いた瞬間に俺は目を大きく見開いてしまった。まさかそのスキルも一緒に習得してくれると言うとは思わなかったからだ。だけどよく考えてみるとこのスキルは非常に有用であることに気づく。このスキルをうまく活用することで俺はチートスキルをいくつも手に入れることができるようになったのである。

俺は女神に感謝の言葉を告げるのと同時に必ずこの世界の人達を守って見せると誓うのであった。

そんなこんなで俺は女神様に連れられて、この世界とは別の地球と呼ばれる場所へと向かっていたのだった。この世界は俺の暮らしていた日本と呼ばれている場所で、地球という世界の中でも特別な場所とされているらしい。そしてそこには多くのダンジョンが存在しており、そこで得たアイテムが人々を助けているというのだ。そこで女神はその地球に、俺が望んでいた能力を持った人を1人だけ送ってあげると言ったのである。俺はそこで俺は美鈴にその役を任せようと思った。彼女以外に適任はいないと考えたのだ。だけど、

「あの、私は普通の人間ですけど、それでも大丈夫なんですか?」

美鈴はそう言うのであった。だけど、彼女はとても強い人だと思うし何よりその美貌とスタイル、性格まで含めると、その能力はまさに女神のような人であると言えるだろうから、「はい、大丈夫ですよ。むしろあなたの力がきっと役に立てる時が来るでしょうから、ぜひ引き受けてくれませんか」

俺はそういうのであった。俺がそう告げると、

「わっ、分かりました!」

と言って俺の前に立ち手を前に差し出したのである。

俺がその手を握ると一瞬眩しい光を放ち始めた。そして光が消えたときには彼女の姿が俺の目の前から消えてしまっていたのである。おそらく無事に向こうの世界に転送されたに違いないと思っている。というか俺も既にその世界に送り込まれてしまったというわけである。その世界のことを女神様からは、異世界という言い方をしているだけであって厳密には異なるという説明を受けた。なので、元いた場所とは全くの別世界という認識をするようにと伝えられたのだった。

その説明を聞いている途中で、 女神の声が直接頭に響いてきた。その声で女神が言ってきたのは俺が元々この世界の人間じゃないということを説明してくれたのである。そして、今度俺をこの世界の地球の方に召喚するという話を聞いて、そこで初めて俺が別の世界の地球という場所からやってきたのだという事実を知ったのだ。

そして俺は自分がどうしてこの世界の人間ではないのかの説明を聞くこととなった。まずは俺は死んだということから話が始まった。俺はトラックにはねられ、即死状態だったというのである。それを聞くと、

(俺はトラックにはねられたのか?)

と疑問を抱くと、それに対して女神がすぐに、

「その記憶を封印します」

と言い出したのだった。

すると俺は突然意識を失ったかのように倒れそうになったのだった。俺はそれを見て焦ったが、次の瞬間には俺は目を覚まして立ち上がったのだ。それを見ると俺はほっとしたのだが女神の表情が真剣な感じになっていたことに気がついた。その表情で、俺は俺がまだ死んでないことに気づいたのだった。女神がいうには死んだので俺は肉体を失って魂だけで存在する状態になっているという。そこで俺がどういう存在なのか説明を受けた。

どうやら魂というのはこの世でもっとも重要な存在らしいのだ。この魂がなければ肉体を持たない存在でこの世界に存在することはできないと言われているというのである。魂が肉体に引き寄せられているからである。そのため肉体が失われて魂が肉体に宿ることができない場合、肉体を持っていた存在が肉体のない魂となる。それが俺らしいのである。

そこで俺はあることを尋ねた。それはなぜ俺の持っていたアイテムや俺自身の装備や武器などを異世界に持ち込めることができたのかという質問である。普通ならそれは不可能であるはずであるのにもかかわらず可能であるということはおかしいと俺でも分かる。だから俺が聞くと、

「まず、私と貴方との繋がりを一時的に強めることで魂をこの世につなぎとめているから可能なのです」とのことだった。俺はそれを聞くと、俺にはそういう特殊な力がありそうな気もしてきたのだった。そしてその力を持っていることが重要であり、俺はそのスキルが発動した状態で死んでいるため、俺の肉体がなくなってもなお俺は生き続けているということになるらしい。そこで女神は言ったのだった。俺が本来死ぬはずだった日、つまり俺が死んだ日の翌日に再びこの世界に俺を呼び戻すと。そして、その日にこの世界に呼び戻せばその瞬間に元の体に戻り、元の生活をすることができるだろうと女神は告げたのである。だから俺はそのことを信じることにしたのだった。それに俺自身その力を体感していたからだ。このスキルがある限り俺の体が朽ち果てるまで俺は永遠にこの世界にいることが可能だからである。

ただ、俺の持っているアイテムや武器などはこの世界には存在しない。それはなぜか? その理由も説明を受けた。この世界には魔法が存在している。魔法とは神によって与えられているものであり、その魔法の力は絶大で、その世界の理を変えることもできるらしい。だけどもその魔法の力を持ってしても、この世界で作ることの出来ないアイテムや武具が存在するとのこと。そういったアイテム、例えば魔法付与の武具、アイテムボックスなどは持ち込むことが不可能だということだ。さらにスキルも同じ理由らしく俺の持つスキルをこの世界でも再現できる可能性はないとのこと。まぁ俺はそんなのどうだって良い。俺のこの力で大切な仲間を守ることさえできればそれでいいと思っているからな。あとは、この世界の人々にスキルを与えて助けていくことが出来ればそれで満足なのだ。

ただ、アイテムの持ち込みに関して、 アイテムは持ち込み可能。ただし、それはアイテムポーチなどのアイテムポーチに入れられる量のみに限られるということだった。それ以上となるとポーチに入ることができないので、それは俺自身が持っていないといけないということだった。

また俺自身はそのアイテムを使うことはできず、ただその効果が分かっているというだけであった。この世界では俺は使えないというのだ。だけどそれは俺がもともと住んでいた地球には魔法というものが存在しないためであると説明された。だからこの世界で俺に出来ることがあるとすれば、この世界で手に入れられるはずのなかった魔法を付与することのできる武器を使うことくらいだろう。そしてそれはスキルの効果もあってかなり有能になるはずなのだ。しかも俺はその力を使えばチートスキルを大量に手に入れることも可能になるかもしれないと女神様から説明を受けている。だからそれを有効活用することで、この世界の人達を救うことができると思っている。

まあ俺が今考えていることをすべて女神様に告げたら、

「分かりました。ではまず神崎さんを私が召喚をした地球に送りますね。そこであなたは勇者として人々のために頑張ってくださいね」と言われ、そして俺の視界は再び真っ白になってしまったのである。そうして俺の意識がだんだん遠のいて行き俺はそのまま気絶してしまったのだ。ただ、そんな状態の時に、ふっと声が聞こえてきた気がしたのである。そして女神の声が俺の頭の中に響き渡ったのだ――

その声を聞いた俺は、ゆっくりと目を開いたのだった。

目を開けた俺が最初に見た光景は森の中にある木でできた家の中で眠っていたという事であった。

俺はベッドから起き上がるとその家に唯一存在していたドアを開き外に出てみる。その家の外見を見た感じだとレンガで作られた壁で作られていて大きな窓があって開放的なつくりとなっていたようだ。中に入ってみるとそこにはキッチンとリビングがあったので中に入るととりあえず冷蔵庫を開けてみることにしたのである。中に入っていた食材を見る限りではそれほど豊富ではなかった。しかし俺のスキルの『鑑定』を発動させる。すると、『名称』と『効果』と『値段』が俺の頭の中に直接流れ込んできたのだった。その結果、その材料が俺の想像通りであることがわかった。なので早速その料理を作り始めることにした。

俺はこの世界のことについていろいろ調べる必要があると思っていた。

俺の所持品についてはあの空間に置いてきてしまっているのでもう手元にはないのである。だからこそ俺には何の力もない状況だった。なので俺としては少しでもこの世界のことを知っておきたかったのだ。そうすることで、もし今後この異世界に来ることがあった時、事前に準備をしておいてこの世界の人達を助けることができるようになる。そして最終的には、元の世界に戻った時、女神様に言われたように、異世界を救って英雄になるという目標を達成するために、そのために必要な知識を仕入れておく必要があると考えていたのだ。そしてそのためにも俺はこの世界で何が出来るのかを確認すべくその作業に没頭していった。そんなことをしているうちに時間が過ぎていったがそれでも気にすることなく俺は行動し続けて、ようやく完成した時にはすっかり夜になってしまっていた。だけど出来上がったものを味見してみるととても美味しく仕上がっていた。

そんなこんなで作った晩ご飯は簡単に食べることが出来るカレーであった。それを食べる前に俺は自分のステータスを確認しようと『ステータスオープン!』と心の底から願うような気持ちで念じたのである。すると突然半透明の画面が表示されたのだ。そこには文字が書いてあったのだった。俺はその内容を確認すると驚きを隠すことができなかったのである。

『神崎真司 レベル1 HP10MP30

攻撃2 守備3 魔攻4 魔防5 速さ6 固有技能:アイテム収納 詳細情報』と表示されていたのだった。

その文字を読んだ瞬間俺は思わずニヤけてしまう。そして、

(やっぱり俺は異世界に来たんだ)

と実感したのだった。そしてこの世界のことを知る上で俺はどうしてもこの世界の人に会いたいと改めて思うようになったのである。その人たちに会うことができればこの世界の情報を得るだけでなく元の世界に帰るヒントを得ることができるかもしれないと考えたのだ。そして、その世界は俺が本来住むべき場所なのである。

そして次にアイテムについて考えてみた。アイテムは異世界に持ってきた物に関しては自由に取り出すことが可能となっているようである。だがこの世界の人間が作ったものはどうなるか分からず、それがこの世界のアイテム扱いになるのかどうか不明であるため、試してみたところで分からないと思ったのである。それに下手に使用をしてしまうことで変なトラブルに巻き込まれることも十分に考えられるからである。特に俺の場合はスキルの影響で、他の人が使うことが出来ないアイテムを使ってしまうと大変なことになると思うから慎重に行動する必要があった。そんなことを考えていると、ふいに俺はこの家の外に出るのが怖くなってきたのである。

(ここって森の中だよな? ということはモンスターが襲ってくる可能性もあるわけだし..)

(でも俺の能力でどうにかならないかな?)

(俺の力で倒せないようなモンスターが出てきた場合は逃げるしかないよな。そうなるとこの家の中に引きこもっているのが無難だな。まぁ食料は十分あるみたいだから問題はないはずだ。水だってこの家の近くに綺麗な川が流れていたのが見えたから大丈夫だろうし、トイレとかお風呂もちゃんとある。この部屋だって結構大きいのが二つあるんだからさ)

そう思いながらも一応、安全を確かめる意味も含めて、俺は部屋の中を見回していく。どうやらここは本当に誰も使っていない小屋であることが分かったのである。俺以外に人の気配が感じられないのが分かるのだ。だからと言って俺が安心することはできないけど、今は一人で考え事をしていたかったのである。それにしてもこの家の中が静まり返っていてなんだか寂しい気分になっていた。俺はそんな感情を振り払うかのように首を振った。そしてこれからのことに思いを巡らせていく。

(まぁ今日はこの辺りにしておいた方がいいかもしれんな。とりあえず明日に備えて、もう寝ることにするわ。とりあえず、俺に今できることはこれだけだな。俺には魔法みたいな能力は使えなかった。でもまぁいいだろう。だってまだ俺の人生が始まったばかりなんだから。まだまだ俺はこの世界を冒険していないんだしさ)

俺がそう思って立ち上がろうとしたその時だった。俺の背後に何者かがいるのを感じたのだった。そしてその瞬間に何か鋭いもので切りつけられる感触が俺を襲う。しかし俺の持っているスキルの一つであるアイテム収納のおかげでその攻撃を防御することができたのだった。その俺を攻撃した相手は後ろに飛び退いた。俺はすかさず立ち上がり振り返ってその姿を確認したのだが、目の前に立っている人物を見て俺は驚いた。そこに立っていたのは、この世界の住人ではなく、女神さまが俺を召喚したときに使った祭壇にいた女神の一人だったのだ。俺の知っている人だった。女神の名前はアメリア様である。年齢は20代前半というところだろうか。彼女は俺の顔を見ると、

「どうして私の攻撃を防ぐことができたのです?」と問いかけてくる。

俺はそれに対して正直に応えようとしたのである。

だけどそれよりも先に彼女の言葉が続く。

「私の名前はソフィア。女神の中でも回復魔法のスペシャリストと呼ばれているの」と自慢するように言ってきたのである。そして俺に対してさらに言葉を紡いでくる。どうも、自分の能力について話したいようだけど俺は別に聞きたくなかったので俺は自分のことだけを言うことにしたのである。まぁ、俺としては自分のスキルで防いだだけで、それ以外のことは知らないと言いたい。そしてその事実を俺の口から言った。そのせいで彼女に不審がられたがそれでも構わない。

俺はとにかく早く元の世界に帰りたかったのだ。そのために俺はこの世界での勇者になる必要があるのだと思っているからだ。だからこそこの異世界のことについてはなるべく触れたくない。それにこの世界でのことを深く知ってしまったらきっと俺の望まない結果になってしまうだろうと思っているのだ。俺はこの世界に来てまだ間もない。俺にとって、この世界は、この世界で生き抜くために必要な情報をまったく得ていない状況にあるのだ。だからまずこの世界のことを知ってからじゃないと動けないのだ。だから余計なことはあまりしないで、すぐに元の世界に戻りたいというのが俺の考えなのだ。そして俺の話を聞いてくれそうな女神は、あの女神たちの中ではアメリア様が一番話をしてくれそうな気がすると思っている。なぜならこの人は見た目の感じでかなり若そうである。その分気さくな雰囲気を出しているという感じなのだ。だからまず俺は彼女とコミュニケーションを取ろうと考えていた。まぁその前にいろいろ聞いてみる必要があるんだけどね。とりあえずこの世界のことがどういうものなのかを知る必要もあるからね。そんな感じで俺は、いろいろ確認したいことがあり、いろいろ質問をした。だけどその度に、女神の表情が段々と変わっていった。そしてついに爆発したのである。

「あー!! もうなんなんですかね! 勇者ってそんな簡単に来れるもんですか!? そんなはずがないですよ。なのに、そんなのありえるわけないでしょう!」と言われてしまったのだ。

俺としてはちょっとイラっとしたので俺なりに言い返したのだった。そうしたことでこの女神ともある程度話すことが出来そうだと思って、俺は、少し落ち着いたのである。すると今度は俺の言葉に反応して、「あなたって何者なのよ? あなたを召喚したのはあの魔王を倒した伝説の女神様ですからね。それをどうやって召喚をできたというのでしょうか? あなたに教えてください。それとあなたのステータスをもう一度確認させてもらいますね」と言ってきたのだった。なので俺は自分のステータスを見せる。すると、やはり俺が思ったとおりの反応だった。俺のステータスを見る限りこの女神はかなり驚いていた。俺自身もこの数値には驚くしかなかったのである。

『名前:神崎真司

職業:異世界転移

年齢:15

レベル:1

体力:1

魔力:100万以上∞(無限大)

物理攻撃力:500

守備力:1

魔攻力:5億

魔防力:1000兆以上

速さ :25京 詳細情報』

これを見た女神はすぐに驚きの声を上げたのである。そしてこの俺の固有技能であるアイテム収納に目を留めていた。そのことで俺はあることを思いついた。

(そうだ、ここでスキルの収納が役に立つんじゃないだろうか。俺の収納はスキル扱いになってこの世界の人たちにも使えるようになるのかどうかを確認できるのではないのか?)とそう考えたのだ。

俺はそれを確かめるべく行動を開始したのである。そして実際に試してみると確かに俺の持っていたスマホとこの家に置いてあった包丁やナイフ、フォークなどの食器類をアイテムストレージのスキルで回収してみることが出来たのだ。

その結果俺はこのアイテムを収納することが可能だということが分かった。そしてそれを知った女神アメリアはさらに驚いた顔になっていたのだった。

俺はそのことを試してみたいと思っていたので、女神が驚いている最中にもかかわらずに試してしまったのだ。そしたらあっさりできてしまったのである。

俺はアイテムをアイテム収納で回収すると目の前で呆然とした表情になっている彼女を見ながらこう呟いていた。

(うん、これで俺もアイテムが取り出せることがわかったわけだ。そしてこのスキルの有用性もはっきり分かった)

そしてその後、俺はアイテムを収納して取り出すということをやって見せることによって、アイテムの収納がこの世界でも可能であることを証明したのだった。それによって俺はこの異世界でも元の世界と同じようにアイテムを取り出すことができるようになったわけだ。

こうして俺は、この世界での初めての仲間を手に入れたのだった。

俺はその女神のことについて詳しく話を聞きたいと彼女にお願いをしてみたのだ。すると意外と彼女は素直に受け入れてくれてくれたのである。それで、彼女のことを聞くことにしたのだがそこでとんでもない事実を聞かされたのだ。それは、このソフィア様こそが魔王討伐の伝説を持つ、女神の中で最強と言われる方であると判明したのだ。しかもこの世界の創造神から、この世界を守って欲しいと言われていると告げてきた。そしてその報酬として特別な加護を与えられているのだという。そんな重要な話をしてくれた彼女にお礼として俺はアイテムボックスの中からいろいろな物を取り出そうとしていたのである。しかしここで俺が予想していなかった出来事が起きたのである。なんとその女神は俺のスキル収納の中身を見たいという欲求に駆られたらしく勝手に開けてしまったのだった。そして俺のアイテム収納に収まっていた数々のアイテムを興味深そうに見始めた。その様子は俺の目から見て、子供が初めて見た物を親に質問している姿によく似ていたのである。俺はとりあえずこの女神に好きなだけ見てもらうことにし、その間に何か良いものはないかと俺は探すことにした。

俺はしばらく、部屋の中を歩き回りながら物を探していた。だが、なかなかこれといった物が見つからない。そして俺が部屋の中に飾られていた装飾品を手に取って見ている時だった。女神がその装飾に手を伸ばしたのだ。その時に俺の頭に衝撃が走った。

(あっ、もしかして女神に触られるとマズいのかもしれないぞ?)そう思った俺だった。だが既に女神は俺が持っている装飾品に触れてしまっているのだ。そのことで俺は焦りを感じたのだった。

(どうしよう、女神に触られている。なんか俺の体が発光を始めたような感じがするけど大丈夫かな?)俺はそう思いながらも冷静な声で、女神に向かって「もう触っても大丈夫だよ」と言ってみたのだ。

すると、女神はその装飾品を俺の手から受け取り、まじまじと観察していたのである。俺もそんな彼女の姿を見ていてふとあることに気づいたのであった。そして俺はそのことを確認するために女神に話しかけたのである。

「君の名前はなんていうの?」

俺は女神に対してそんなことを尋ねていた。だってこの人が本当に女神なら俺の名前を知っていたはずだと思ったから。それに俺は今さらこの人の本当の名前を聞かなくてもわかるんだけど、一応の確認で聞いてみようと考えていたのだ。すると案の定俺の想像通り、その答えを返してくる。

俺はこの世界に来る前から自分の名前が分かっていた。しかしこの世界の人たちは俺の名前を知らないはずだった。だってこの世界の人には俺の名前がわからないようになっているんだからね。だけど女神は違う。だから聞いてみることにしたのである。するとやっぱり俺の思った通りの反応が返ってくるのだった。俺はその事実を確認すると、この世界の人たちが知っている俺の苗字を女神に伝えたのである。

女神はその名前を聞くと、

「あなた、日本人なのね」と、俺にそう聞いてきた。その問いかけに対し、俺は何も言わず首を傾げることで、彼女の質問に対して、俺の意思を表そうとした。俺はまだ彼女の言葉が本当だと思えなかったからだ。もしかすれば彼女が適当にでっち上げた偽者ではないかと考えたのである。だけど俺はその言葉を聞いてもあまり驚かなかった。なぜなら俺が今まで生活してきた場所はこの世界の日本ではなく、地球の日本だったからだ。だからこの世界では俺が日本人であることを証明するものはなかった。そしてこの世界で日本人の証明をしようとしてもできなかっただろうと思っているからだ。それに俺は自分がこの世界に召喚された時点で、俺はすでにこの世界にとっての異物であると感じてしまっていたのだ。だからこの世界に来てから俺はできるだけこの世界で目立とうとは考えないように心掛けていたのである。俺は目立たないようにして元の世界に戻れるまでひっそりと生きていこうと心に誓っていたのだ。だからこそ、この女神は俺の事をこの世界に来たばかりなのにどうして自分の国での生活のことを熟知しているのだというような視線を送ってきたのだと思っているのだ。そしてその疑いが晴れるまでの間、この女神に下手なことを言わないほうがいいと思っているのである。だからこそ俺は女神の質問に対しても、その言葉をただ否定せず無反応でやり過ごすことで乗り切ろうと考えている。そして俺のその行動を見て女神も察したようでこれ以上この話を掘り下げるようなことはしてこなかったのである。

俺は、アイテム収納の中に入っていた装飾品を、この世界にある物と交換しないか提案してみることにした。というのも、俺はこれらのアクセサリーをこの女神が身につけたところがどうしても見たいと思ってしまったからである。そして、そんな俺の考えはうまくいき、女神にとても似合う髪飾りをプレゼントできた。それを付けてみた女神は大喜びをしてくれたのだ。そのおかげで、女神の俺に対する不信感のようなものが完全になくなったようである。そんなこともあって、女神の俺への警戒心はすっかり解け、この女神と打ち明けることができたのだ。その結果いろいろ聞くことができたわけなのだ。

そしていろいろ話を聞いていくうちにこの世界のことがだんだん分かってきていた。俺としては女神の話を聞きながら俺は俺なりにこの世界をある程度理解していくことができていたのである。

俺としては女神からいろいろなことを聞いていたので、ある程度この世界でのことを理解し始めていたのである。それで、ある程度この異世界での常識というものについてわかったことがあったのだ。そしてそれは俺にとって嬉しい情報だった。

俺はこの異世界においてのステータスが俺の前世での世界と同じだという事を知ったのだ。つまりこの異世界でステータスを確認してみても、俺の元居た世界と同じように表示されるのだった。これはかなり有難いことであった。だって俺にはアイテムボックスやスキル収納という能力があるわけで、俺の戦闘能力はこの世界でも高いということが確定できるからである。そうでなければわざわざ異世界にまで来る意味はないと思った。

まあ、俺は元の世界に戻るためにこの異世界にいるわけだしね。この異世界に来るための魔法陣みたいなものがあったけど、俺はそんなものは無視して普通に帰ったのである。なぜかって? それは簡単な理由だ。

俺の家族がこの世界で元気にしていると知ったから、俺は家族に会う為に戻ってきたのだ。俺が帰らなかったせいで、元の世界が俺がいなくなって大騒ぎになっているのならば、俺は俺の家族をほっておくことが出来なかったのだ。俺は家族の事が大好きで仕方がなかった。だからこの世界のことよりも家族のことを優先してしまったのだ。そしてそれが今の俺の行動理念になっている。

だから俺は女神アメリア様から聞いた話によって、俺の戦闘能力が他の人たちよりも高いことが分かった時はかなり喜んでいたのである。だって俺が戦うだけでみんなを危険に巻き込むことがないのかもしれないと分かったのだから。これで少しは気持ち的に楽になると思う。

そしてそのあと俺は女神アメリアからこの世界における身分証明書的なカードを受け取ったのだ。そのカードを俺は早速使ってみようと思い試しに使ってみようとしたのである。しかし使い方がわかんないので女神に聞いてみると、彼女はすぐに教えてくれたのだ。しかも使い方が結構簡単だった。それを聞いた時に俺はあまり複雑な機能ではないことを知り安心していたのだった。そんな感じで無事にこの異世界で使用するための通行手形を手に入れたわけだ。これで、今後この世界で困ることがあっても問題なく活動することができそうである。そしてそれを確認した俺はこれからこの異世界の探索をしてみることに決めたのだ。そこで何か面白そうなことがないか探すつもりだ! こうして俺の冒険は幕を開けることとなったのだ。

俺は女神様からもらった通行許可書を使い冒険者登録をした。そのついでに身分証明書も発行してもらったのである。

それから、冒険者になったことで俺はいろいろな情報をゲットすることが出来た。

なんと、俺はなんとこの世界に来てまだ1日も経っていないにも関わらず既にFランクまで昇格していたようだ。

それで、なんとこの世界では既にギルドが存在しており、そこにいる受付嬢が言うにはこの世界では基本的にギルドに登録しないと依頼を受けることができないとのこと。

だから俺は、この世界で活動する上でまず最初にギルドへ行こうと思ったのであった。

しかし俺はまだギルドへ行く前にやりたいことがありそれを済ませることにしたのだ。それはアイテムボックスの中にある物を売ったり交換したりする為だった。そうすることで、手持ち資金を増やしたかったのである。そしてその金で俺は武器を購入したのであった。その購入先が俺が入った店は武具屋である。俺はその店で自分に合う剣をいくつか購入したのだ。それと、俺には女神に貰ったアイテムボックスとスキル収納の能力があるので、荷物にならなくていいと気づいたのである。そして俺は、その店の店主さんに頼み込んでこのアイテムバッグを借り受けることに成功していた。なんでも俺にあげるつもりで用意してくれていたらしいのだ。そして俺はこの世界で生きていくために必要な装備をそろえることに成功したのである。そして最後に服も新調することにした。俺はこの世界の人にとっては目立ち過ぎる外見をしているので少しでも印象を変えるようにしようと考えていたのだ。

そしてそれらの買い物を終えて俺はやっとのことで街を出ることができた。

ちなみにこの世界に来てから俺は誰にも会わずにずっと森の中で生活してきた。というのも俺は自分の姿形が目立つ容姿であることを自覚しているので、目立つ行動をしないほうが無難だと思っていたからだ。だから俺は自分の姿を隠せる森の中で生活をすることを選択したのである。

でもこの世界には魔物が存在している。だからその危険な魔の森を俺のような一般人が出歩けるはずもないと思ったのであった。だが俺はその森にいても何も起きなかったので、もう安全だと確認することができた。そして俺がもう大丈夫だろうとそう思ってその森から出て行ったのだ。

そしてその途中でゴブリンに出会ったのだが、俺は自分の実力を計るために、一人でその魔物と戦ってみることにしたのである。すると意外にもあっさりと倒せてしまったのだ。しかも俺の持っていた刀で一振りしただけでゴブリンは消滅したのである。俺はそのことに驚いてしまったのだ。だからその後に続けてもう一体同じゴブリンが現れた時はどうなるかと不安になった。

だけどその心配はいらなかった。なぜなら俺は俺の予想を遥かに超えるくらい強くなっていたのだ。それもたった二体のモンスターを倒すだけでもうすでに俺の実力は他の人とは明らかにかけ離れているレベルになっていた。それに気が付いた俺は、嬉しくなってそのままその調子で他の魔物を探してみたのである。するとやはり、その辺りには強力な敵はいなく、俺が簡単に対処できたことからも、この世界のレベルが低いのだろうという推測が立った。まぁ、そもそも俺が強すぎるだけかもしれないけどね。それにしてもこんな強い奴がいきなり現れたら周りの人もきっと驚くよな。だから俺はもっと人のいないところで鍛錬を積む必要があると考えたのだ。そしてそのために俺は今現在、街から離れた場所を目指して歩いている最中なのだった。

ただ、その途中である異変に気付いたのだ。

それは、今まで見たことのない植物を見つけたのである。その植物の見た目は俺の前世の世界で言うところのキノコだったのだ。だけどこの世界では、俺は今までこのような形の物は見たことがなかった。なのでそのことについて俺は疑問を抱いたのである。それにその形はどこか前世にあった毒キノコに酷似していた。そして、俺の脳裏にこの世界では毒を持った植物も存在するのかと思ってしまったのだ。そして俺は、この世界の動植物にはとても警戒心を抱いて行動しようと心に決めていた。なぜなら、もし仮にこの世界の毒を持っていたり、この世界特有の魔法を使用するような存在に遭遇した時に、俺のステータスの高さが邪魔をする可能性があると思ったのだ。だからこそ俺は慎重に行動しようと決めたのである。そして俺がしばらく歩いていたその時だった。突如俺の背後に強大な殺気が出現したのだ。俺は反射的にその方向に振り返るとそこには大きなドラゴンがいたのである。

≪【種族】レッサーデーモン Lv590 HP 50/6080 MP 6800≫ 俺がその巨大な魔物の姿を確認すると同時に目の前にいる怪物から恐ろしい魔力を感知してしまった。しかもこの気配の強さ、尋常ではないと感じた俺は一瞬体が硬直して動けなかったのである。その俺にその怪物が襲いかかろうとした瞬間だった。突然俺の前に光の柱が立ち昇ったのだ。その光の粒子はどんどん収束していきその光の先にはあの女神様が現れていたのである。そして俺を護ってくれたのは彼女しかいない。俺をこの異世界に連れてきてくれた女神アメリア様しか俺に味方はいなかったのだ。だから俺は彼女が俺を救ってくれたと理解する。

「女神様」

俺がそうつぶやくと女神は笑顔で俺に微笑んでくれた。

俺はその優しい女神の表情を見て安心していた。しかし彼女はその笑顔とは裏腹に俺の事を睨んでいるように見えたのだ。なぜ? と不思議に思った俺は女神様に尋ねてみることにしたのである。俺には全く理由がわからず、その理由を尋ねるしかないのだ。

そして俺の問いに答えてくれた女神様の返答はこの異世界について俺に衝撃的な真実を教えてくれたのである。

それはこの世界には魔王が存在しており、しかもそいつが他の世界に侵攻しようとしているという話だ。そして、それを未然に防ぐために俺が選ばれたのであると教えてくれたのである。

そしてその事実を俺は受け入れたのだ。ただ、そんなこと急に言われたとしても正直実感などできるはずもなかった。

俺は別に自分が特別な人間だなんて思ってはいない。

俺なんかがそんなとんでもない使命を果たす事ができるとは思えなかったのだ。

だけどその気持ちを表に出すことなく俺は平静を保ったままでいる。そんな俺を見た女神様は安心している様子だったが、なぜか残念そうな顔をしていた。一体俺が何を失敗したと言うんだろう。全くもって分からない。そして、その後に俺はスキルマスターの称号の効果によって俺が取得可能なスキルをリストアップしてくれると言われたので、スキルブックを受け取っていたのである。そのスキルブックの中には大量のスキルが載っていてかなり驚いたのであった。

その日は、俺がこの世界で生きる為に必要なものを購入した後だったこともあって特にやることがない俺は、このまま森の中で野宿をして明日に備えてゆっくり寝ようと思ったのだ。そんなわけで、早速テントの準備を始めることにする。俺がこの異世界に来て最初にやったことの一つにこの世界で使用する為に道具を買うというものがあった。だから今日購入したのもその品の一部になるわけだ。俺の場合、この世界にやって来た時から所持金に結構余裕がありそれを使った。というのも、女神様が俺の所持金が十分あるからと教えてくれたからでもある。そのおかげで俺はこうしてこの異世界で快適に過ごせているのだ。まぁ、そのお陰で他の人からは奇異の目で見られるわけだけど。

俺はテントを張る前にアイテムボックスから取り出した食材で食事をする事にした。そして俺はこの世界の食文化を知る事ができたのである。というのも俺はこれまでずっと一人で過ごしていたので食事も自分で作っていたのだった。でもこの世界に来てからは違う。なぜなら女神様が料理スキルを持っているのと持っていない人とがいることを告げてくれ、更にはその使い方まで親切に教えてくれたのだ。そして俺はそのアドバイスをありがたく受け取ると、早速調理に取り掛かることにした。俺は、この世界に来て最初に購入したナイフを取り出し、それを野菜を刻むように使用する。

そうしてまずは鍋を用意すると、アイテムボックスの中に残っていた水を全て使い切ってしまう。そして次に、この世界でも食べられているという、じゃがいものような根っこのようなよくわからないものをすり潰して煮込む。そうするととても美味しいスープが出来上がるのだ。それを俺は食べてからまたすぐに次の作業に移る事にしたのである。それは薪を集めに行くことだった。実は俺はまだ薪を手に入れていないし、まだ買っていないからだった。そこで俺はその調達の為に外に出たというわけである。ちなみにこの森の周辺には魔物が存在していて、しかもそれが強力なのが多い。だからこそ魔物を討伐したりしながら森の奥の方に入っていった。すると案の定俺の前に現れるのはスライムやゴブリンなどの雑魚ばかりだった。だが、俺はその程度の敵に苦戦するようなことはもうなくなっていた。そしてあっさりと倒し切ると次にはオークが出現したのである。それも五体同時にだ。さすがに俺もこの数を相手に一人で勝てる自信はなかった。だが俺は焦ることなく冷静に対応していくとあっさりとその全てを一人で倒していたのであった。もちろんその後は、ドロップ品として魔物が落とした魔石を回収した。俺はそれらの作業を終えると、今度は木を切ることにした。それも剣を使うわけではなく素手でだ。だが俺のステータスならばそんな苦労はいらないだろう。

俺は木に触れるだけでその木をへし折ることができたのだ。この世界の木の強度を俺は改めて知ることになる。だから俺にとってこの森の木は大した問題ではなかった。俺はそれからは木を切り倒してその切り株を魔法で作った炎を使って焼いた。これは俺なりに考えがあってのことだ。俺は火属性のスキルを所持していた。だからこの森の中で焚き火をした所で燃え広がるようなことはなかったのである。それに俺はこの森から出ればいくらでも同じ様な環境を作ることができると考えていたのである。だから俺としてはそこまで心配はしていなかった。まぁその分食料の確保が難しくなってくるんだけどね。まぁそれはなんとかなるんじゃないかなと思っている。なぜなら俺には【無限鞄】という超レアな収納系スキルを女神様にもらったからである。だから俺はいつでもどこでもこの世界のあらゆる物を保管することができていたのだった。そのせいで俺はこの世界の全ての街に行ってみたいと思っていたりする。ただそのためには俺自身のレベルを上げないとダメだという結論に至っていて今は行動に移してはいないのである。レベルさえ上がれば【鑑定】系の技能を使えるようになるはずだ。それでこの世界の情報を手に入れることができれば街にも安全に入店することが出来ると思うんだよ。それに、お金を稼ぐ手段も見つけることができるかもしれない。とにかく今の俺はレベルを上げて強くなるしかないのである。

そして翌日になると俺は街を目指して歩いていくことに決めていた。この辺りの魔物ならもう敵じゃないからである。それにもし俺よりもレベルの高い敵が出てきても、俺には全くと言っていいほど不安がなかった。なぜなら俺は既に【限界突破】という最強の能力を習得しているからなのだ。これのおかげで俺はどんなにレベルの差があっても全く負けることが無いだろうと考えている。「うわ、マジか。」

そんなこんなで歩いている俺の目の前に現れた光景。それはなんと大量のアンデットがこの先にいるはずの道を完全にふさいでいるのが確認できたのである。そして俺は自分の目を疑ったのだ。なぜなら、そこには大量の骸骨戦士(スケルトン)がこちらに向かって走って来ようとしていたからだ。どうやらこの先でなにか戦闘が起きているようだな。そして、それを好機と判断したこの国の騎士団が魔物を討伐する為に動き出しているんだろうな。でも俺が今ここでこの大量の敵を相手するわけにもいかないのである。なにしろ俺は勇者ではないのだから。そんなことをしたら面倒なことにしかならないと思った俺はその集団を迂回するようにして進もうとした。だけど、その瞬間俺は嫌なものを感じてしまったのである。その気配の主はこの国にいる騎士のものだったのだ。

だけど、俺はその時その気配に気を取られてしまい、少しばかり警戒心を失っていた。その結果、その騎士の気配の他にも複数の気配が近寄ってきている事に気付き遅れをとったのだった。

俺は咄嵯にその場から回避しようとした。だが俺は完全に出遅れてしまうと相手の攻撃を避けることが出来なかった。そして攻撃を受けた俺は吹っ飛んでしまったのである。しかもその攻撃を受けると体が麻痺してしまったのであった。俺はその感覚に戸惑いを隠せない。一体何が起きたのかわからないでいたが、俺が吹き飛ばされて地面へと叩きつけられると、周りを囲まれてしまっていたのである。しかも俺は地面に倒れこんで動けないままでいる。その状態はまさしく袋の鼠であった。しかも俺を取り囲むように出現した奴らは、全員この世界の騎士の格好をしていたのである。そして、そんな彼らの表情はどこか楽しげだった。そしてその表情はまさに悪鬼の表情だった。そして彼らは一斉に俺に襲いかかってきたのである。俺は、その攻撃をかわそうと体を動かし何とか避けようとするも完全には避けきれなかったのである。

俺はそんな状況の中で、この場をどうやって切り抜けるかを必死に考えていた。なぜなら俺はこの状況でこの世界の人間と戦うことを避けたかったのだ。俺がそんなことを考えていると、一人の少女が現れたのである。その女の子は俺を庇って俺を守るようにして現れた。そして俺は、彼女の姿を見て驚いたのだ。

だってそこにいたのが昨日の美人の女神様だったのである。俺はそんな女神様の行動に対して感謝していた。だがしかし状況は良くないのも確かである。俺がこの状況を打破する方法を考えていた時だった。

「ふぅ。やっぱりあなたでしたのですね、ユウキさん?」

彼女はそう言い放つと俺の名前を呼んできたのだ。俺はその言葉を聞いた時にまさか?! と思って女神様の方を振り返って見るとやはりあの綺麗で優しい笑顔を浮かべる女神様がいた。俺はこの世界で知り合いと呼べる人は彼女しかいないわけで。だから俺の名前を知っているとすれば、彼女が俺のことを話したという事以外あり得ないのである。でも一体どういう事なんだ。なぜ俺は彼女に命を狙われたのだろうか。その理由が分からなかった。

俺がそんな事を考えていると目の前にいた美少女は俺に攻撃を仕掛けようとしてきた。その攻撃が放たれようとした刹那だった。その剣先が俺に当たる寸前でピタリと止まったのだ。俺は思わずその様子を見ていることしかできなかった。そしてその剣の持ち主が口を開くと衝撃の言葉を発したのである。その声の主はもちろん女神様だった。

「あらあら。ユウトさんになんてことするのですか、アリサ?」

その女神様が口にした言葉の意味が俺には理解出来なかったのである。どうしてこの子が俺に攻撃をしようとしていた女神様の行動を止めたのかという理由が全く思い浮かばないのである。俺がその事実を理解するのはもう少し後の事になるのだけど。そして俺は混乱したままでその状況を見ていることしかできないでいたのであった。

俺は女神様と女神様の従魔だという女と男の姿を見ながら思考回路が完全にショートしてしまっているのを感じていた。そしてこの二人が何者かという疑問に俺は直面することになったのである。そもそも俺はこの世界に転移させられてきたのだ。女神様から貰ったのは【無限鞄】だけだった。他には何も貰っていなかったのだ。しかも、なぜかその無限鞄は普通の物ではなく【神器】だと鑑定されていたのだ。そんなものをくれた時点で何かを俺にさせたかったという事は間違いないはずなのだ。なのにこの二人は俺を邪魔するような感じなのがよくわからなかったのである。まぁ理由は分からないけどね。

そして今の状況を見る限り、その俺を攻撃した相手が女神様なのかどうかを確認する術を俺は持ち合わせていなかった。なぜなら攻撃される直前に女神様は、その攻撃を防いだのだ。それは間違いなく俺が見たのと同じ現象だったのである。だから俺は目の前の二人に視線を戻すと観察してみることにした。まずは女神様だと思われる方からだった。そしてこの女性を見ているうちに分かった事がある。その女性はかなりの美貌の持ち主でありかなり強いという事がわかったのである。そしてその強さも俺では想像もつかない程の圧倒的な強さを誇っていたのだった。それを見て、俺には勝ち目がないなと思い諦めてしまったのである。だが、そこで俺はその女神様に守られている男の方はどうかと考えてしまったのであった。そこで、今度は男の方を見たのだが。彼は女とは正反対の人物だという事に気がついていた。彼はどう見ても俺よりもレベルが低い存在にしか思えなかったのである。俺はこの二人のことを詳しく知るために【解析】を発動していたのである。その結果俺は、目の前の人物がとんでもない存在であると知ったのであった。名前

:レイフ

(職業)

剣士 レベル 1 体力 10 MP 310 攻撃 9 防御 8(+1UP! 素早さ 80 魔力 570+40 運 620+590 固有技能 聖属性耐性強化III 全ステータスアップ 経験値倍加 技能 身体制御IV 剣術LV9(2UP! 盾剣術VII 風属性魔法VI 火属性魔法II 水属性魔法 光属性魔法 空間属性魔法 生活魔法 VIT上昇(小)

MND上昇 HP自動回復量増加 III SEN超成長補正 VP自然回服量増大V SP獲得量倍増 II PSY超強化 I LUC幸運補正極大 I)

という表示が出てきたのである。この数値の高さには驚かされてしまったのである。俺の場合は【無限鞄】の中身に入っているスキルのおかげで全ての能力が底上げされている状態だったからなのかもしれないが。この世界の平均の能力を考えるとその能力値は高すぎるのではないかと思ってしまったのだ。そしてその能力は明らかに俺を上回っていることがはっきりしてしまった。だから、こんなにもレベルの高い相手と戦っても俺が勝てる可能性はほぼ無いに等しいのである。俺はそのことを認識するともう戦う意思を持とうとも考えないようにしていた。

次に、その女の人について見てみるとその人の能力についても判明したのである。名前は、アリンナと言う名前のようだ。種族 ハーフエルフという表示になっていた。年齢は俺より3つ年上の23歳ということが分かって、その容姿がとんでもないものだったのである。髪の色が水色のような淡い青色をしており、肌は真っ白で、まるで透き通るような色をしている。そして、瞳の色は薄いブルーだった。身長は160センチほどでスタイル抜群な上に顔もかなり整っていた。それにこの世界でもかなりの美女であることは間違いないと思っていた。そしてこの世界での美人というのは地球でいうとハリウッドスター並の美しさなのだろうなと思うくらいだったのである。ただ、残念なのは耳が尖っているのでそれがなければこの世界基準で見れば、人間族にみえるのだが。でも、俺が見る限り彼女は純粋な人間族のように見えたのである。

そして俺はこの人がハーフなのかと確認しようと思って聞いてみたら、どうやらハーフではないみたいだ。そして俺が気になったのは彼女が俺に向かって「どうしてこの人に手を出そうとしたのでしょうか」と、言ったことだ。その質問の意味が良くわからない。俺にそんな事を言っても俺にはなんにも出来ないからである。しかも俺を敵として狙ってきたくせによく言うよと呆れてしまっていた。だから俺はもうそんな事はどうでもいいと思ったから、適当にあしらうことにしていたのである。

「あの~ちょっと意味が分からないんですが。それよりも早くここから出してくれませんか?」

「そうですわね。あなたにはまだこの世界の事を説明しておりませんでしたものね。いいでしょう説明いたします。ユウキさんはこの世界とは別の世界からやってきたのですよ。この世界とあなたの住んでいた世界とはかなり離れているのですが、たまたまあなたがここに召喚されましたの。それで私が助けたんですよ。私は、この世界を守護している存在の一人なのです。あぁそれから。ユウトさんの事はお友達のアセナが、あなたにお願いをしたのだと理解しておいてくださいね。ユウトさんはこれから魔王を倒していただきますのでそのつもりでいて欲しいと思いますの。私達の世界を守るためにユウトさんは必要になるのです。それとユウトさんは私達と一緒にこの世界の王になっていただきたいと思っているのですよ。そして、その事をユウトさんに認めてもらいたいと思っています。そのための準備はちゃんとしておりますから安心してください。ユウトさんがこちらで生活するための準備はもう出来ておりますので後は私の眷属達がやってくれると思います。よろしく頼みますよユウキ君?」

と、いきなりとんでもない話をぶち込んでくるのだ。だから俺はこの話を聞いていて、何を馬鹿なことを言っているんだこいつと思ってしまったのである。だってそうだろ? 俺がいた場所はダンジョンの中のはずなのだから、その話が本当ならなぜこの場所にいるのかという話になってしまうのは明白な事実であったからだ。でも俺は確かにここで眠っていたはずだという事は間違いない事実だったわけだしなぁと困り果てていたのである。

そこでふとあることが頭に過ってこの場を逃げ出す事を決意したのだ。そう【神器】の力を使ってこの場所から抜け出そうとしたのだが。俺の体はその場所から動かなかったのである。それはまるで金縛りにあったかのような感覚で動く事ができなかったのだった。俺は焦った。まさかこの程度の結界みたいなものに阻まれてしまうなんてと驚いてしまっていたのである。そして俺の考えは完全に読まれてしまっているのだろうか、女神様の従魔である男が俺の前に立ちはだかっていたのである。そして男は口を開くと俺を嘲笑うような表情で言葉を投げかけてきたのだ。

「お前如きが俺達の前から逃げられると思うなよ?」

その男の声が聞こえると俺は恐怖に怯えることしか出来なかったのである。俺にできることと言えば少しでも時間を稼ぎたかったのもあって「ここは一体どこなんだよ?」とか、「あんたら何者なんだよ!」などと、時間を稼ぐための言葉を吐いていたのである。そしてその間に必死でこの状況からの脱出方法を考えてみていたのだが。結局思いつくことはなかった。俺はこの瞬間に完全に詰んでしまっているということを実感していた。この二人がどれほどの強さを持っているのかという情報が何もない状態でこの二人から逃げる術がないと判断したのだ。だからこそこの二人が何か動きを見せないか警戒していたのである。そしてその時俺の目に入って来たのは【解析】だったのだ。俺はこの二人から距離を取るために全力の力を込めることにした。

名前 レイフ 職業 勇者(職業LV9 聖剣士 体力 +500)

レベル 1 体力 15(+1UP! 攻撃力 10(+1UP! 防御力 8(+1UP! 素早さ 60(+1UP! 魔力580(+1UP! 攻撃 950(+1UP! 防御 830(+1UP! 運 680(+1UP! 称号 神の代行者 全ステータス+100 全ステータス補正(小)

VP自然回復速度増大III スキル 身体制御IV 剣聖IV 槍聖IV 弓術V 盾剣術VII 風属性魔法IV 火属性魔法IV 水属性魔法V 光属性魔法V 生活魔法 VP自然回復力増大III MND超成長補正 経験値倍加 II PSY超強化I LUC幸運補正極大 I S級鑑定II

(NEW!!)

LUC超成長補正 III LUC幸運超成長付与 HP自動回復量増加 III SEN超成長 EXレベル限界突破 III SP獲得量倍増 III 特殊 HP再生能力(大)

技能 限界突破(MAX)

体力+400 敏捷+200 攻撃+1000 運+800 聖耐性+300 状態 精神耐性(極上+5UP!)

ステータス画面に表示されている【体力】が1万を超えている事に驚愕してしまう。それにこのステータス画面の職業のところに、《 勇者 》って表示が出ている。これがあのチート級の職業なのかと思い知らされることになった。しかし、この二人のステータスが高すぎる。そしてスキルも凄かったのである。俺の場合は【SP】と【HP】の自然回復量が尋常じゃなかった。それが【スキル】で強化されているということなんだろうなと思った。

そして俺はあることを考えついていた。この人達から逃げる手段はないけど俺が死ねばこの二人はこの世界に戻ってこれるのではないかと考えたのだ。俺は、この世界で死ぬことは確定してしまった訳だが、それでもまだ俺にできることがあるのではないかと考え、まずはこのスキルの熟練度を上げてしまおうと思っていた。俺が今持っているのは【SP】の技能だけなのである。【経験値倍加】は熟練度レベル2なのでそこまで上げていないので今は使えなかった。そして俺のこの世界に来るまでの所持金が、3千ゴールドと俺が今まで持っていた物とアイテムボックスに入っていたお金と武器が、一振りのショートソードと短刀だけだった。その金額を見て愕然としたのだ。俺の持っている全ての財産を合わせても、この人数が暮らすにしてはかなりの日数を過ごすことができないのである。

俺がこれからの自分の未来に絶望感を覚えていたとき、目の前の二人に異変が起こったのである。

『おい!貴様たちどういうつもりだ!』


と。一人の声が聞こえた。そしてその男の前には黒い人型のなにかを俺は見た。その黒装束が手を振りかざすと。俺の体は突然動けなくなっていた状態から開放されていたのである。俺はその瞬間からこのチャンスを逃さないようにその場から逃げだしたのだった。すると俺の後を追うようにしてその黒い影が迫ってきていたので、俺が逃げた方角とは別の方向に向かって走った。その先には木々が生い茂っていてその森の中に身を隠すことに決めたのだ。俺はその時に背後に誰かの視線を感じていた。俺を確実に追跡してきている者が一人いることを俺は感じていたのである。俺はこのままでは完全に逃げ切れることが出来ないと感じて、覚悟を決めた。

「おい、出てこいよ!」

俺がそう言葉を発すると俺の前方の木の上から声が聞こえてきた。

「お主の負けだ。大人しく我々に捕まれ」

「いや、だから嫌だっていっているじゃないかよ。あんたらがこの国の人間なのかそれとも他の国からこの国に来ている者なのかも分からないんだぞ。俺をどうする気なんだよ」

「我らは、この国で召喚された者なのだ。だからお主には危害を加えようと思っているわけではない。むしろお主を我が国に連れて帰りたいと思っているのだ」

「それはつまり。俺に利用価値があるからという事でいいのか?」

「まぁそう捉えても構わん」なんか怪しい話だよな。普通こんな得体の知れない相手に簡単に付いて行くわけがないだろう。しかも、そんな事をいきなり言われたら誰だって怪しむのは当然の話である。ただここで断る理由もなかったのだ。ここで断ったところでこの連中は俺を追いかけ続けるに決まっているからだ。俺にはそんな事を考える余裕は正直なかったのだが。この二人が俺を殺すようなことをしないのなら、とりあえず一緒に行動するしかないと思ったのである。俺にとってその選択をするしか選択肢がなかったのだった。

ただ一つ心配なのは俺のステータスとSPの自然回復力が異常なほどに上がっていたからだ。俺はまだそのことに気がついてはいなかった。俺にはSPのスキルの熟練度のことがよくわかっていなかったのだ。俺は【SP自動回復速度上昇】とSPの回復速度がおかしいのが分かっていなかったのだ。そして俺は【S級鑑定】のレベルを上げれば分かるのかな?とか思い始めていたのであった。

俺はそれからこの二人と一緒に行動をともにすることにした。もちろん警戒はしていたのだけれど、俺のこの体から感じる強さとこの二人が俺よりも格上の存在だということは理解できていたのである。そして、俺についてきてくれと頼んでみると。

この二人の内の一人が同行することを許可してくれたのである。そして、この森で暮らしているらしい。俺をこの場に留めるためにこの男と女を呼んできた奴らが。俺達を監視していたというのだ。そしてその男はこう言ってきた。

「我々は魔王を討伐するために行動している組織に属している。その組織の本部まで来てもらえるか?」

「分かった。俺はお前たちを信用することにするよ。俺が知っている情報を全て教えてやるよ。その代わりに俺の命が危なくなると判断した場合は俺は全力で逃げる。その時は俺の事など気にせずに追っ手を俺に向けて攻撃しても構わない。お前たちが俺のことを殺せばこいつらはもうここに俺がいることを知ることができなくなるだろうからな。それともう一つだけ確認させて欲しい。この世界にはダンジョンはあるのか?」

「うむ。その事なら大丈夫だ。我々と共に来てくれるのであればすぐにその場所に案内しよう。ただしそこの二人にも協力して貰うことにもなる。そしてそこには、強力な魔物が出現するのでかなり危険なのだがそれでも良いのか?」

「あぁ俺は別にかまわないぜ。それで俺は何すればいいんだ?」

「そうだな。とりあえず我々の組織に所属しているメンバーとなって欲しい。あとのことはまた説明することになると思うが」

と。男がそう言ったので。俺は少しだけ考える。この二人が何者かが分からないのである。ただその答えはすぐに出た。【解析】を使ったのだ。そして二人の正体について知ってしまったのである。その結果俺は、この人達に逆らってもいいことはないのだと。それにこの世界では、俺が持っている知識や能力がどれだけ役に立つのか分からなかったのも事実だった。この世界での知識については全くといってよい程に無かったのだから。

「俺は別にこの世界のことについてそこまで詳しい訳ではないが。一応その組織は俺の敵ではないと認識していいんだよな?俺にとってはそっちの方が重要だから」

俺が真剣な顔でそう言うと。目の前にいる男はこう言って来た。

「お主の味方になってくれることに関しては、安心してくれて問題無い。この世界にきて初めて出会えた同じ世界の住人なのだから。我々もこの世界で困っていたところだったのでね。このタイミングでお主とこうして会うことができて本当に良かったと思っておる。この世界に来ることができたのは神の導きとでもいうのだろうか。私とこの子はこの世界での役目を与えられたのだと思う。ただこの世界で何をしたら良いか悩んでいたところでもあったのだ。お主と出会ってよかった。私はこの世界をより平和なものにしたいのだ。そのためのお主に協力をしてもらいたいと思っている。この世界で生き残るために必要なスキルは【勇者】の称号を持っている者は全員覚える事ができるはずだ。あとは自分で努力して習得することが必要にはなるが」

「まぁ俺は【勇者】の職業じゃないけどな!それはまぁいいとして、俺が元の世界に帰る方法があるとしたらそれはどこにあるんだ?」

「その事は私が答えよう」俺の隣にいた女性が口を開いたのだ。この人は先ほどの二人とは違ってフードを被っておらずその容姿が露になっていた。俺と同じ黒髪黒目で身長も俺とほぼ同じくらいだ。多分年齢も同じなんだろうなと俺は思ったのである。この人もやっぱり美少女なんだなと思った。年齢は見た目からして17歳~18歳の間といったところか?ちなみにこの女性はさっきの黒い影の男とは違い、ちゃんとした格好をしている。そしてその服装はなんと巫女装束みたいなものを着用しているのである。この人の名前と職業を聞いてみることにする。

「私の名はリリカだ。職業は【僧侶】をしていて魔法を使うことができる。お主はこの世界で何か特殊なスキルを習得したのではないのか?それが【魔法熟練】とかそういった類のものだと思われる。【魔法剣士】とかも魔法剣を使用するためには、その系統に特化した訓練をしなければならない。その様なスキルは持ってはおらぬのか?この世界の魔法は、魔力さえあれば発動することは可能だと聞いている。お主もおそらくそのはずであろう」

俺が何か特別な力を身に付けているってことなのかなと俺は思った。そう言われてみると確かに俺はMPが増えていたしSPの最大値が上がっていた。これはやはりそういうことだったのか? 俺は自分の身に起きていることを不思議に思いながらもとりあえず今はそんな事よりも重要な話を優先したほうがいいと判断して。まずは自分の身の安全の確保が大事だと思ったのだ。だからこの質問に素直に答えることにしたのだった。すると彼女は「ならば」と口に出して、それから言葉を続ける。

「【魔法耐性(中)】というスキルがあるのを知っているかな?」と。

「いや、そんな名前の聞いたことがないんだけど」

「それではステータスを見せてくれないかな?」

「ステータスオープン!」

俺は彼女に言われた通りにステータスを見せるためにそう言葉を発して。自分のステータス画面を確認する。そうすると、ステータスに『魔法抵抗上昇』というものが表示されていることに気づいたのである。これこそが彼女がいっていた、この世界でも習得できると噂の特殊系のステータスであるのだと理解できた。ただそれを俺は今すぐ習得しなくてもいいのではないかと。俺はそう思っていたのだ。なぜなら俺の【解析者】で見ることができないからである。つまりこの【解析者】レベルがまだ足りないのではないかと考えていたのだった。

だから俺は【解析者】を使ってこのステータスについて【鑑定】を行ったのだ。【魔法属性】のところが『風』『水』『土』『火』となっており、そしてそこにそれぞれ『中級回復魔法(小回復効果』が付与されているという文字が表示されていた。そして俺はこの文面を見て驚愕したのである。

「なんだよ。この数値の高さは!こんなにすごいとは予想外すぎる」

と。この数値をみただけでこの国の戦力の強さというか。そんなものが理解できるほどだった。

そして、俺は彼女のステータスを確認してみたのである。

「俺にできることがあれば協力させて頂きます。ただ俺にも守るべき仲間が居るので、この国を裏切って俺に敵対行動をしてくる奴らが居たら俺は全力で戦わせて貰いますよ。それは分かっておいて下さいね。それで俺にどんな用件があってこの森に来たんですか?」

「実はお主に頼みたいことがいくつかあるのだ。だが、それはこの森を抜けてからで構わない。まずはお主にこの森の中で生活していくための拠点を提供しようと思っていて。そしてこの拠点を拠点として使っていくつもりである。そのために、ここを住処にしている者たちがいるのだが。その者達の了承を得たいので付いて来て欲しいのだ」

「えっと。俺はここに留まっておきたかったんですが、俺の力が必要になるような事態が発生しているということですか?」

俺がそう聞くと二人は顔を見合わせて、それから俺にこう言って来たのである。「この国は魔王軍に侵攻されていて危機的状況に陥っていることを伝えなければならないのだ。だから私たちはお主と一緒に行動しなければいけないのだ。それにこの場所は安全で、魔王軍がここに近寄ることもできないようになっている。そして私達はその仕事を終わらせればこの国から脱出することもできる」

「脱出してもいいんですか?あなた達の組織に所属しているということはこの世界ではそれなりの身分になっているんでしょう?」

「そうだが問題はない。ただ私達がこの森を出ていくときには、必ず同行者が一人必要になる。それも魔王軍と戦ってくれる強い人物でなければだめなのだ。その条件を満たしてくれているのはこの世界にはまだ存在していないのだ。この森の守護者をしていたエルフは高齢であり。あと数十年は生きることが出来ると思う。それにこの土地から離れることが嫌らしく、私達に力を貸すことには難色を示しているのだ。お主はその資格を有しているのだよ」

「へーそうなんだ。まぁ俺は別に構わないですけど。この世界から脱出する方法と俺が元の世界に戻る方法を早く見つけて欲しいものですよね。俺は元の世界に帰れるのならその手助けをしても別に問題は無いと思っているので。この世界の人たちにどう思われても別に俺は気になりませんから。だから気にしないで欲しいんですよ」

「あぁそうだな。私たちが気にすることではなかったかもしれないな。ただこの国をこのまま放置するわけにもいかないのだ。魔族の王が動き始めたという報告を受けているのだしな。その王の名前は【ロードオブダーク】といい、暗黒神を復活させようとしているらしい。そして我々が仕える王は魔王を倒すことで世界を救うと本気で信じていて、そしてその準備を行っているようだ」

「ま、まさかその魔王って俺達と同じように【異世界転移】してるっていうことはないよな?」

と。俺は不安になってそう質問してみた。もしそうであるとしたら、俺以外にもこの世界に飛ばされてきている人が存在する可能性が高くなり非常に不味いなと思っていたからだ。しかし彼女からはそのような回答が返ってきたのだ。

「いやそれはないと思うぞ。この世界の【異世界転移者】の数がどれくらい存在するのか分からないからな。それにその可能性もあるかもしれぬ。この世界の魔王のことは知っているか?」

「この世界にいる魔物の頂点に君臨するような存在だということは分かるけど」

「そうだ。その通りだ。そして、この世界にやってくる前の記憶を持っているものはいない。私もそうだが。ただ私達がこの世界に連れてこられた理由を説明されていたので、なぜ我々が選ばれたのかは理解しているつもりだ。その目的を遂行して、元の世界をこの手で救うことにしようと私は決めている。それが我々に与えられた役目だと思うのだ。私もこの世界で多くの人々と出会うことが出来たので、その気持ちは一層強くなっているのだ。お主も同じように思ってくれているのではないだろうか?」

「俺も同じ気持ちですよ。この世界にやってきた目的は違うけど。でも、この世界を救うために協力してくれる人が一人でも多く増えればいいなって思うのは同じだと思います」

俺は真剣な表情で彼女の目を見ながら。本心を口にした。そうすると目の前に立っている彼女は嬉しそうに笑ってくれたのであった。

「ありがとうお主。そのように思ってくれる人間が多く存在していることを、この世界の創造神様も望んでいると我々は考えているのだ。だから我々も頑張っておる」

そんな話をしながら、俺たち三人は【魔法結界】を発動したまま森の中の開けた場所へと歩いていったのである。そしてそこには一軒の家が存在した。俺は思わず感嘆の声を上げたのだ。その家はとても質素な作りだった。屋根が赤色の木材を使ったもので壁が灰色で塗られており、そして扉が木で作られている。

「凄く綺麗なログハウスだな。それに立派な家だ。これを貴方方が作っているのですか?」

俺は素直に感想を述べて。二人を称賛することにした。そして俺の問いに彼女たちが「そうだ」と答える。それから俺は【アイテムボックス】から食材を取り出そうとしたが、この家の中に何もないことに気づく。なので、二人に対して。俺は食材を提供するから調理して欲しいと頼むことにする。この世界でどのような料理が出るのか確認したいと考えたからだった。ちなみにメニューは肉と野菜スープにパンを二人とも頼んでいた。俺はそれを承諾し。そして俺も食事をすることに決める。

食事中はお互いに自己紹介を行うことにしたのだ。そうすることでこれからお互いの名前を知っておいて、名前を呼び合うときに呼び忘れることが無いようにするためである。俺は最初に自分の名前を名乗ろうと思ったのだが。リリカと名乗った少女の名前を聞いて違和感を感じた。

「あのリリカさんは苗字とかあるんですか? そうすると貴族みたいなものなのかな」

「そうだな。私の場合は、この森に住んでいた一族の末裔ということになるな」

そうリリカが口に出した時である! 俺の隣に座っている影の薄い黒髪の女性が「ちょっと待て! どういうことだ」と口を挟んできたのだ。すると彼女は俺に質問をしてきたのである。それは「貴様がこの娘の正体を看破したということか?」という疑問を含んだものだった。俺は少し警戒されているのかなと感じながら「いやそうじゃなくて。普通にこの国の言葉で喋っていたので」と答えることにした。俺の言葉を聞いた女性は「あーそういうことね。この子は私の眷属なんだ。だから私が教えた言葉を話せるようになったってこと。それとこの国に住んでいる人間で私達の言葉を理解する人は、この子の一族だけしかいないはずよ。この子が話したことは間違いがないと思うわ」と説明してくれたのだ。

俺はそれを聞き、なるほどと納得した。

確かに俺の【解析者】はチート能力だけど。流石にそこまで便利じゃない。そう思っていた。だからそのチート能力を試そうとして【解析者】の能力を使用して、彼女の種族を確かめようとしたのだ。そして【解析】を実行したのだが、なぜか『詳細』の表示項目が存在しなかった。そのため俺は自分の【スキルマスター】の熟練度が足りないのではないかと思い。この場では使わないことに決めたのである。それから俺のことを不思議そうに見ている彼女の存在について質問を行った。すると「あぁ私の紹介がまだでしたね。この子はルナというの。仲良くしてあげてくださいね。あっちで寝ているのがサツキというんです。よろしくお願いしますね。あなたの名前は?」と言われてしまった。そのあと俺は、この家にお世話になるので俺の方からも自己紹介することにした。

「俺は佐藤 一輝と言います。この世界で召喚されて、今は元の世界に帰るために旅をしているところです」

「やっぱりそうなのね。なんとなくだけどあなたとは縁がある気がすると思っていたんだけど」

俺の話を聞くと彼女は驚いた様子もなく。そして意味深な発言を繰り返したのだ。そのことについて、俺は質問しようとしたのだ。だが俺が声を上げる前に。彼女は言葉を続けてくる。

「あなたのことを知っている理由は簡単よ。わたしもあなたと似たような境遇でこちらに来てしまっているから。でもあなたとは違ってわたしのことは、この世界での使命が終わった時に全て思い出すことになると思うから、それまで秘密にしておいてね」

「分かりました。その時が来たら教えて下さい」

「うんいいわよ」

それから俺とリリカの会話は終了したのである。そして、それからは【魔法結界】が解除される。そのタイミングで俺はリリカと二人で外に出ていくことになった。そこで俺は改めて彼女と対面することになった。その彼女は俺と同じ年齢くらいの外見をしていた。背丈は高くて160cm後半ぐらいはあるように見える。顔の造形は非常に整っており、長い耳が特徴的な美形の女の子だと感じることが出来た。髪は茶色に近い金色をした髪をしているのが特徴的だなと思えるところだろうか。そして俺は彼女をマジマジと見てしまう。それは彼女の服装のせいだと言える。この世界に来てから初めて女性らしい服を着た人を見かけたなと感じたからだ。

俺は彼女の格好を見て、この世界の一般的な服はどんな物なのかを考えてみたりする。この世界には、中世ヨーロッパのような街並みが広がっているからなと俺は考えていた。

そんなことを考えていたら彼女は「どうかしましたか? もしかしてこの世界の衣服が変で、驚いていますか」といって来たのだ。なので俺は「いやそうではなく。この世界の普通の服はどういうものかと思って見てたんだよ」と言ってごまかすことにしていた。その回答に彼女も「そっか、そうですよね。今まで出会った人たちの中で、同じような反応を示した人たちがたくさんいたんですよ。それで私はいつも困ってしまい、その度に笑われてしまっていたのですが。お兄さんは私のように、あまり驚かないみたいですね」と言われたのである。俺は内心でしまったと思いながらも、どう言い訳したら良いのか必死になって考えることになった。その行動は、俺の顔色がかなり変わっていたことだろう。

そうするとリリカさんが「何か隠し事があるのですか?」と鋭い質問を投げかけてくる。俺は焦って。

どうする?! と頭をフル回転させて考えることにしたのだ。

俺は異世界からの【転移者】だということを隠すべきかどうか迷う。しかし、その事実を隠したままでは色々と面倒なことになってしまうかもしれないと思ったのである。なので、まずはそのあたりから話を始めることにしたのだ。俺は彼女からこの世界に来る前の話を聞いていたので、同じように俺が前世の記憶を持ったままでこの世界にやってきているという説明をすることにする。

俺の話をリリカは最後までしっかりと聞いてくれたのであった。そして、彼女はその俺の言葉に対して「信じます。その話が本当なら、この世界は救わなければならないことになりますよね。でも私達はこの世界に来たばかりで、まだまだ力不足です。でも、それでもできることがあるはずです。私はそのために頑張りたい」という決意表明のようなものを行ってくれたのである。そして続けて「それにお主は、私達が知っている者によく似ていて、だから余計に放っておけないということもあるんだ。ただお主の力になりたい。それだけは分かってほしい」と言ってきたのであった。

俺は彼女のその態度と言葉を受けて。

本当にありがたいと思えたのだ。だから感謝の意味も込めて「リリカありがとう」とお礼を言うことにする。すると、彼女は嬉しそうに「気を使わなくてもよいぞ」と照れ笑いを浮かべて言ったのであった。その笑顔を見た俺はドキッとする。俺はこの世界で初めての感覚を味わうことになってしまったのだ。そう俺はこのリリカさんを好きになってしまいそうになっていることに気づいた。この世界に来るまで、俺の周囲には女性が居なかったのだ。だからこそ俺の心に彼女が魅力的だという認識が生まれていた。そうすると、どうしても意識してしまう。

それから俺とリリカとルナの三人は【魔法結界】を発動して森の中を進んでいくことにしたのである。

森の中を進んでいる最中に、俺はリリカにこの森を抜けられる最短ルートを確認しておくことにした。その道を教えてもらうためだ。すると彼女は、森の中にある小道を真っ直ぐに進んで行くと、開けた場所があってそこから先は海が見えたと言うのだ。なので、そこまでの道案内はしてくれるそうだ。それからしばらく歩いた先には洞窟が存在していると、彼女は口にしたのである。そしてその場所は、この世界にやってきた勇者を出迎える場所であるとのことだった。つまり、この場所は神聖な場所ということになるのだ。だからこの森に住む種族以外の人間は絶対に近づけてはいけないという掟が存在する。そして俺を連行してきた二人のエルフ族の女達も、その洞窟の入り口で見張りをしていたというのだ。俺はそんな場所になぜ俺を連れて行ったのか疑問に思ったが、それは今となっては何が理由でそうされていたのか分からなくなっていたので、その話はもう終わりにしようと思ったのである。そして俺が「そういえば。さっき言っていた俺の知っている人とは誰のことなの?」と質問した。

するとリリカが「私の姉さんだよ」と答えたのである。それを聞いた俺は、「え? そうなの? それじゃ俺と同年代で、俺の知り合いにも該当する人物が一人いるんだよ。それが君の姉だったとは」と答えておいた。その答えにルナが「それってどういうことなの? まさか、あんたがここにいる理由と関係があったりするわけじゃないわよね」という。それに対して俺は返答に戸惑ったのだ。なぜならば俺自身もどうして自分がこの場にいる理由を知らないからだ。だから正直に答えることにしたのだ。

「その可能性は否定できないかな」

俺がその言葉を口にした瞬間に彼女は少し考える素振りを見せてくれたのだが。それからはそれ以上は何も言わなくなったのであった。その後で【解析者】の能力を使用することにした。

名前

:リリカ=ラフィーネ

年齢:15

性別;女性 LV:25 職業 魔獣使い 種族 ハイエルフ族 HP 2100(500UP)

魔力 5700/7200 SP 200

(100Up+50)

STR 12000 VIT 10000 DEX 1500 AGI 30000 MND 3500 INT 2500 LUC 300 特徴能力

『精霊契約』

スキル一覧 なし 称号

『勇者の導き手』

備考

『魔法結界』『全属性魔法』使用可能 【魔法】『水球』、『炎弾』

『風槍』

【特殊技能】『魔法解析』発動 【解析結果】『魔法解析』

【魔法解説】

『魔法結界』使用者を中心とした半径5m以内の敵を弾き飛ばす。また魔法による障壁を展開する。魔法により発生した攻撃は魔法結界に触れた段階で消滅する。物理耐性無効

『全属性魔法』全ての系統の魔法を使用することが可能になる。ただし使用できるのは火、水、木、土、金、雷のみ 俺の持つ能力と同じ系統で、しかもこの世界の人間では使用不可能なものまであるということが判明した。だがそのことは、あくまでも【魔法分析士】が鑑定した結果なので信憑性が薄いと俺は判断する。だがこの情報は間違いなく役に立つのではないだろうかと考える。そう思いつつ。その情報を有効活用するために、この世界の人間がどうやって魔法を使っているのかを観察することにしたのである。そして【スキルマスター】を使ってみることにした。そうすると俺が【解析】したときには、俺自身が覚えたことのない魔法が【自動再生】の派生技能である『再現』で使えるようになった。そこで俺は早速試し打ちをしてみることにしたのである。そしてリリカに【水球】を放ってもらった。その結果俺は見事にそれをコピーすることができたのである。それから今度は、【水球】を使った攻撃を自分でやってみる。するとこれも見事に成功した。やはり【スキル】というのはチート級の効果を発揮するようだ。

俺がリリカから貰った【魔法の杖】と【水球】を使いながらそんなことを考えていた。そうすればリリカは、そんな様子を黙って見ていたが、俺の魔法が普通ではあり得ない現象を起こしていたので驚いてしまう。しかし彼女はすぐに冷静になり俺に声をかけてきたのであった。

「すごいわね。どうやらお兄さんは、本当に私と同じ世界から来た人らしいわね。その歳でそんな凄い威力の魔法の行使が可能だとは驚きだよ。それと私の名前も教えておこうかしら。私の名前は、ライア=ラフィーネっていうんだよ。あなたはなんていうのか聞いても良い?」

という感じで話しかけて来た。だから俺は彼女に答えることにする。そしてお互いの自己紹介を行うことになった。彼女の方から話を聞くと、彼女はこの森に存在する一族の末裔であり、この世界にやって来るという【勇者】を導く存在だということを教えてもらったのである。そうするとリリカは「これからは私も出来るだけあなたの力になれるように頑張るつもり」と言ってきたので。俺はその言葉に感謝の気持ちを伝えておくことにする。そしてお互いに名前を呼んで挨拶を交わした。そうすることで彼女と俺は友達同士になることができたのである。

それから俺達は目的地へと向かい始める。俺達はしばらく歩くが特に問題もなく進み続けることが出来た。しかし途中でリリカが言う。どうやら道案内のために先に進んでいた二人が戻らないといけなくなったのだという。その話を聞いていたルナが。リリカが持っていた通信用のマジックアイテムを預かり何かを話していたのだ。それから俺とリリカに対して、一緒に来るように指示を出して来たのである。俺はもちろんそれに従いついていくことにしたのだ。

それからしばらくしてルナが俺たちの所に戻ってきた。そしてルナは、そのことについての説明を始めたのである。どうも、さっきの二人から連絡が来たようで、その報告を聞いてルナはすぐに戻ってこいと言ったらしい。その話の内容によると、先に行ったエルフ族の二人は何かに捕らわれてしまったようなのだ。そして俺達には急いで来て欲しいとのことだったので、仕方なく引き返すことにした。

その話を聞いたリリカが「お主達は仲間を見捨てるようなことはできないのか?」と尋ねてくる。俺はそれに対して「確かに助けられるならそうしたいところだけど。俺が行っても役に立たないかもしれない。でも、もしもの場合を考えて行くしかないと思う」と答えた。リリカはその答えに「なるほどな。分かった」と一言口にした後、真剣な表情を向けてきた。その顔を見た俺の体に力が入る。何が起きるのか想像ができないのだ。だから身構えてしまう。そうしているとリリカが口を開く。

「私が案内をしよう」

そう言って彼女は走り出したのだ。俺はそのあとを追いかけることになった。そして彼女は振り返って叫ぶ。「ついてこれるか?」と。そう聞かれたので俺は全力疾走で追いかけることを選択した。すると彼女は驚いたようだったが、それでもそのまま俺のペースに合わせて付いてくることに成功する。それを確認した俺はスピードを更に上げた。その行動が彼女をさらに驚かせたようである。それでもなんとかリリカは俺に食らいついてきた。それから少しの間、俺は森の中を走り続けた。そしてついにその場所までたどり着くことに成功したのである。

そこには俺が想像していたよりも遥かに酷い光景が広がっていて、俺が知っている人達が捕らえられている様子が目に飛び込んできたのだ。その中には見知ったクラスメイトの顔もあったのである。それからリリカは【全回復】の呪文を唱えたのだ。するとその瞬間に囚われている者達の怪我は全て癒されたのである。その様子を見たルナが驚いていた。俺は、なぜそんなことが可能なのかと、不思議に思っていたのだが。よく考えたら、その疑問はこの世界でも同じだったんだなと思い直す。だってこの世界の人間は誰も知らない魔法が当たり前のように存在する世界なのだ。ならば、この世界の住人ではない俺の知らないことがあっても当然だったのだ。そのことを改めて思い出させられた。だから俺はその事実を受け入れてから「これは一体どういうことなんだ? なぜこの人たちはこんなところにいるのか」と尋ねる。

そして俺はリリカの話を聞く。彼女達がエルフ族の里に向かって進んでいる途中、エルフ族の集団に襲われて、彼女たちの部隊が窮地に追い込まれたのだという。それで何とか応戦したものの、数が多すぎて全員を救うことはできなかった。その時に、エルフ族の一人が「助けてくれ」と叫んでいたというのだ。そうするとエルフ族の女が「今から勇者召喚の儀を始めるので、もう少し待っていて欲しい」と答えたそうなのである。それを聞いたリリカが。

「勇者? 勇者だと! どういうことだ?勇者はあの者たちで全てだろう?」

と口にしたのであった。リリカの言葉を聞いたルナが俺のことを睨む。その視線を受けて俺は「え? なんで俺が勇者って分かるの?」と答えると、ルナはため息をつきながら。

「このタイミングで言うのが遅すぎるのよ」

と口にしたのである。その言葉の意味がよく分からない。だが俺がこの世界にやってきた原因に関係することなのではと思ってしまったのであった。だから俺は「それは俺に関係していることなのか?」と尋ねた。

するとルナは「そういうことよ。とりあえず勇者である証拠として見せてもらうわ」

そう言った後に彼女は【ステータスプレート】を要求してきたのである。そして俺の手元から奪うようにして自分の手に持っていった。俺はどうしてそんなものを要求するのか分からなかったが、とにかく言われるがままに渡すことにしたのである。するとルナは「これが私の【鑑定】の能力。そしてこれが【スキル】の欄にある【能力解析】の【技能解析】の効果によって解析できた、【能力解析】の派生技能【全知】の発動の結果を出力したものよ。まず、あなたは【全属性魔法】という特殊技能を持っているわ。この世界の人間で、その技能を持ってるのは一人しかいないわ。それが【全属性魔法】を所持していた勇者なの。そのことからしてあなたが勇者である可能性は極めて高いわね。しかも【魔法結界】も習得できるのよね。この二つの特殊技能が、この世界で発現することは絶対にありえないものだから。それにしてもレベル25か。私より3つ下なのにすごい数値だ。本当に勇者なのね」と言うのであった。そしてその言葉を聞き俺は驚いた。なぜなら俺は、この世界に来たことで能力が半減してしまっているからである。だから俺がその説明を行った。すると、それについてリリカが補足するように話を始めたのである。

「お主。この世界にやってくる際に肉体に変化が生じているらしいぞ。私もそう言われたことがある」

その発言は俺にとっては衝撃的なものだったので。思わず固まってしまった。まさかそんなことになっているとは思わなかったからだ。そういえば俺に何か変化があったことは間違いがない。だけどそのことについて深く考えていなかったし。【スキルマスター】というスキルを手に入れてから【解析】の技能を使いまくっていたので気にもしていなかったのである。そして【鑑定】を使えばいいだけのことだと考えてしまい、確認することを怠ってしまったのだ。しかしリリカの話を詳しく聞くと。

俺以外にも、この世界に来て変化した人はいるようだ。俺が元いた場所にいた人たちが全員いなくなったということではなく、俺と同じように突然現れた人が数人いたようなのだ。ただその人達が誰だったかという情報は伝わっていないらしく。リリカが覚えている情報はこれだけだという。そう考えると俺ってかなり珍しいパターンなのだろうか? 俺はそのことに気がついて聞いてみたところ。どうやら俺が初めてこの世界に現れた人になるらしいのだ。そして、そんなことを気にしている俺を見てリリカが話しかけてきたのである。

「それは、もう過ぎた事だ。私達が出来ることを考えるほうが大切だとは思わないか?」と言われて俺は少し気持ちが楽になった。それから彼女は、この世界に起こっている問題について俺に尋ねてきたのである。そして俺はその質問に対して「確かにそうだな。今はこれからのことを考えた方が良い」と答えたのである。その言葉を耳にしたリリカが「ふっ」と笑みを浮かべてから「どうやら、お主にはまだ、こちら側の考え方の方が合っていそうだな」と言ったので俺は苦笑いをした。だって、こっちの世界のやり方に慣れる方が大事だと思うからさ。そう考えているとルナが、俺の方を向いて「それよりも私達の現状を確認しておく必要があるわ」と言ってきたので、俺はそれに同意しておくことにしたのである。

それから俺達は話し合いをして今後の方針を決めたのである。俺としては元の場所に戻りたいと思っていた。でもルナから、「あちらに戻る手段はない」と言われたのだ。そのことについてリリカに尋ねると、リリカは首を横に振り。そしてルナが答える前に口を開いた。「この世界には戻るための魔法やアイテムが存在しない。それが存在するとしたら、過去に勇者たちが持ち込んだ品だけだと私は考えている」という言葉を口にしてきたのである。俺はその言葉を聞いて、やはりこの世界から脱出することはできないのかと思い知らされることになった。だから気持ちが重くなるが俺は前向きに考えてみることにする。もし仮に元の場所に帰れないのだとしても、別の土地に行くことは可能だろうと考えたのだ。そこで俺は、リリカとルナにそのことを提案することにした。

「もしかすると、別の場所に行けば、帰れる方法があるかもしれない。だから他の国に行きたいと俺の本心を伝えることにしたのである。するとルナは。「それも一理あるけど、今の段階で、どこの国に行っても危険は避けられないわよ。それでいいなら止めないけど。それでも行くっていうの?」と答えてくる。

それに対して俺は少し悩んだ後、リリカに相談することに決めた。するとリリカも、その方法については賛成してくれた。そして「では、どの国にしようと思っているんだ?」と俺に対して訪ねてくるので俺は「できれば人間のいない所に行きたいと考えている」と伝えたのである。俺のその発言をした途端に二人の表情が変わる。そして二人はお互いを見つめあったあと再びこちらを見てきてこう言ったのだ。

「なるほど。お前の考えが読めてきたぞ。つまり【全知】で検索をかけた結果が。魔族の国で召喚されたという勇者たちの存在に辿り着いたわけだな。ならばその考えは正しいと言える」

とリリカは俺の目を見据えながら言うのであった。

そして俺達は今、その目的地に向けて移動中なのである。ちなみに、今現在馬車に揺られながら向かっている場所は『アーシュライン王国』と呼ばれている国のようで、その場所にたどり着くためにも少し遠回りすることになるのだが、どうしても寄り道をするしかない状況になってしまったのだ。というのも俺とリリカの会話がきっかけとなっている。

「そう言えば勇者たちについて、詳しい情報を仕入れることができなかったな」とリリカが言い始めたのだ。「どういう意味だ?」と俺は聞き返すと「そのままの意味だ。私たちに伝わっている情報が極端に少なかった。その事実に思い至らなかった私が馬鹿だった」と答えたのである。「まぁそれは仕方がないことじゃない? リリカさんだって忙しかったんだし」

ルナの言葉を受けてリリカが「そう言ってもらえると嬉しい」と笑顔を見せる。その様子は今までの凛々しい顔と違っていて、とてもかわいかったのである。そんな風に感じてしまう俺だったのだ。そのあとリリカはルナに向かって「しかしルナ殿は勇者と会っているのではないか? 実際に話していたのを何度か見かけたが」と言い出す。

その言葉を聞いたルナは顔を曇らせてから「まーね。勇者に付いては私が一番詳しいはずよ」と言う。そんな言葉を受け、ルナに向かって「詳しく話して欲しい。今のうちに情報は揃えておきたいのだ。もしも勇者が現れたとき対処するためには、少しでも多くの情報が必要になるからな」とリリカは真面目な声で語りかけたのであった。そしてルナは勇者の事を俺とリリカに伝えた。そして彼女達が勇者たちと出くわしたのは、とあるダンジョンの中でだったというのである。その話は、この世界にやってきた勇者がダンジョンの中に放り込まれたところから始まっていた。俺がこの世界に来たときに見た勇者のステータスを思い出しつつ、彼女たちの話に耳を傾けていたのである。するとルナから驚くべき言葉が出てきた。

その言葉とは。

――【全言語理解】の派生技能【スキル解析】の技能で確認して分かったことだけど、【勇者】の技能の【能力隠蔽】という技能を発動させていて、レベルを50にしてステータスの数値を下げているらしい。そして【スキルマスター】の派生技能【全能力向上】という、レベルを上昇させる能力の技能をレベルを20まで上げた状態を維持してるみたいなのよね。それでリリカの話から判断すると。リリカが出会った時に会ったという勇者が【スキルマスター】を持っていたみたいだし、この勇者と一緒のときにリリカが【鑑定】で勇者を調べたのよね。

それで【勇者】という技能を持っていることがわかったから。【全能力低下】と【スキル封印】と【全能力増強】の三つを所持していると思う。それにこの【全能力下降】と【全能力を強化】が勇者の持つ固有技能の技能だとしたら。リリカが遭遇したという勇者も、勇者としての固有の能力を有していた可能性が高くなるわね」と言う内容である。

その話をリリカが真剣な表情をしながら聞いていた。そして俺も彼女の話を聞いたうえで思うことがあった。それは、リリカと出会った時のあの勇者の態度に、違和感を感じていたのだ。

そのことについて俺なりの推測だが。勇者はおそらく、自分だけがこの世界に来たと思っていた可能性が高いと考えている。俺の時だってそうだったし、きっと同じようなケースだと思う。ただ、そうだったとして、俺達とリリカの違いは何なのかと言えば。彼女はレベルを上げれば【魔力感知】と【危機察知】という二つの技能を手に入れられるので、それを知っていたということになる。その点を踏まえて考えてみると。彼女は自分のレベルを上げるため。仲間と協力することを選択したということなのではないだろうか? だから俺達のことを無視していたし。レベルの高い相手と戦うことも選択できなかったんじゃないかな? という予測をしている。そんなことを考えているとリリカが「なるほどな」と口にして「ルナ殿は凄いな」と感想を述べたのである。そしてルナが、リリカから俺に視線を移すと、今度はリリカに向かって話しはじめたのだ。

「それと【鑑定】を使ったときに。鑑定のレベルが高いほど、鑑定結果が偽装された場合。鑑定の結果が、本当の姿とは違って見える可能性がある。例えばリリカのステータスの種族の部分とか。あれは多分、魔人族のように見えるわ」と説明するのであった。そしてルナの話を最後まで聞いたリリカが「やはりか」と言ってうなずくと。

それから「確かに私には、【魔族の血が流れており。魔王の血族の末裔】と書かれているのが確認できる」とリリカは言葉を続けたのである。それを見た俺は。「もしかすると。その偽装している内容が。何かの拍子に解除される可能性もあるってことだな?」と言ってみたのだ。

するとリリカは俺に顔を向けてから。少し考えてから答えた。

「それは、あり得るな。だがそれを確認する方法がない」

俺はその言葉を耳にしたとき。

俺は「そういえば」と思い出して、リリカに対して「ステータスを他人にも確認できるようにしてくれないかな? 俺達の仲間になってくれた人に、俺たちがどれだけの力を持っているのかを知ってもらうのは大切だと思うからさ」と言ってみたのである。その発言に対してリリカは。「それはいい案だと思う」と口にしたあとに、

「確かにお前達の力を知ることが大事だ」とつぶやいたのである。そしてルナも俺の意見に賛成してくれたようなのだ。そして俺達は馬車の中でリリカが新しく作ったスキルでステータスの確認をしてみることにした。その作業は、リリカが新しく作ったスキルを俺とルナは【解析】の派生技能で使えるように設定してもらったのだ。その結果が、このようになる。

――名前 【リリカ】

職業 【剣士】

性別 女 【年齢 16歳】【Lv 10】

――ステータス 【生命】1080 【魔素量】670 【魔防】860 【耐久力】950 【攻撃力】1000 【運】40 〈魔法〉【土魔法 Lv3 LV2】【雷魔法 LV4 LV1】【火魔法 LV5 LV1】

――特殊技能

『魔法剣』【身体硬化魔法 LV3 】

『気配感知』【危機回避魔法 LV7】

『危険感知』【回復魔法 LV3 LV2】

『全身体能力増強』【状態異常付与魔法 LV5 LV1】【体力回復促進 LV2 】

『魔力吸収』

『剣術強化 LVMAX』

称号 【勇者 】(ユニークスキル)

説明

勇者の称号を持ち、すべての能力が上昇する 効果 :全ての行動に補正が掛かる

――勇者について

効果 :成長にプラスの効果が得られる

効果 :50歳までにレベルが一定値に達していなければ死亡してしまう 【勇者】の技能を持っていなくとも。レベル50に到達することは可能 リリカの説明を改めて聞き終えた俺は「この世界で生きるためには、まずレベル50を目指すのが基本となるってわけだな」と言った。するとリリカは俺のその言葉を聞くと「そのとおりだ」と答えたのである。そして俺の質問を受けてリリカが「ちなみに私の今の強さなら、この辺りにいる魔物くらいであれば。簡単に蹴散らすことができる」と答えたのだ。「へぇそうなんだ」と答えるとリリカは「しかし勇者が現れないとは限らない」と答えたのである。その発言をしたリリカの顔が、一瞬だけど悲し気に見えたのが印象的だった。

「そうか、わかった」とリリカが言ったところで、俺は馬車を操っている御者に、ある頼みごとをすることにしたのだ。それは俺達の拠点になっている場所があるんだけど。その場所の近くに、薬草がたくさん生えている草原があるので、そこに立ち寄って欲しいという事だった。その言葉を受けて御者は。「かしこまりました」と答えたあとに、そのお願いを引き受けてくれたのである。その返事を聞いて俺が笑顔を浮かべたとき。

馬車は速度を落としてその目的の場所にゆっくりと向かっていったのであった。するとしばらくして、馬車が止まる。どうやら到着したようだな。俺は「ありがとうございました」と御者に向かってお礼の言葉を口にしてから馬車から降りたのである。そして俺に続いてルナとリリカも降りてきた。するとそこには、小さな集落があった。この世界にきてはじめて見た、人と出会えたことに感動を覚える俺。そしてこの場所は、どうやら人が生活している場所のようだったのだ。しかし周りにある建物に違和感を感じた。なぜならその建物はすべて木造の建物ばかりで、レンガなどの石を使って建てられている家が無かったからである。その光景を見て。

ここが異世界だということを思い知らされてしまった。

俺の目の前に広がるこの風景はまるで、中世時代のヨーロッパの村に来たみたいな気分にさせられる。

そんなことを考えていると。御者が俺に近づいてきた。彼は俺の前で頭を下げると、「ここは村の集会所になります」と言ってくれる。俺はそんな彼の対応に嬉しさを覚えていたのだ。そんな彼に対して俺はお礼の気持ちを込めて。お金の入った袋を手渡したのだった。

その金額を彼が受けとったとき「これだけあれば十分でしょう」と微笑みながら言ってくれている彼に俺は心の中でお辞儀をしながら感謝していた。俺はその後で。ここにやってきた理由を説明しようと前に進み出たのだ。その時のことだった。後ろから「ちょっと待ってほしい」と言う声とともに、足音が聞こえたので振り向くと、そこには白髪の男性が立っていたのである。そしてその男性を見るなり俺は思ったことがあった。

(あっこの人の服装。リリカとそっくりじゃないか! やっぱりこの人も魔族なんだな)と思う俺がいたのである。それから俺の側に歩いてくるとその人は俺に話しかけてくる。その表情は優し気な感じで「私はここで村長をしている者で」と言うと、その男は、自己紹介を始めてくれる。

「はじめまして。あなたは冒険者の方でしょうか?」と言うと続けてこう言葉を続けた。

「申し訳ないのですが、あなたのことを教えてください」と。俺はそれを聞いたときに、その人には正直に話すべきだと思ったので、俺はリリカと出会った経緯と、リリカと一緒に魔王を倒すために旅に出たいということを話したのである。するとその人物は、少し考えたようなそぶりを見せてから。「わかりました。とりあえずこちらに来ていただけますか? そこで話を伺いますので」と言って俺に着いて来るように指示をした。その指示に従う俺。そんな時だった。俺はリリカとルナに対して、先に行っておいてくれと言って、後から行くと伝えたのである。そしてルナ達は先にその集会所に向かわせたのであった。

それから俺とリリカに似た魔族の男性は、しばらく歩くと、一軒の家の前にたどり着いたのである。中に入る俺達に、一人の女性が「おかえりなさい!」と出迎えの言葉を俺達に向けてくれた。そして俺達二人を見た女性は驚いたような顔をしている。「あれ!?どうして勇者さんがいるんですかね」と驚きの声を上げているのだ。それに対して俺もリリカも困り顔になるしかなかった。

そして女性の反応を見たリリカは、「私が事情を説明するからお前たちは外で待っていてくれ」と言うと女性を引き連れて外に出ていったのだ。俺は、リリカが出て行った後で家の外に向かうことにしたのだが。その途中で、玄関付近で椅子に座っている二人の人物を発見したのだ。その二人が誰なのかを確認するために俺は近寄ると二人は会話を始めるのであった。

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ルクス視点 俺はこの世界に来て始めて人間と話すことが出来たことに喜びを感じていた。そしてその人物が俺に声を掛けてくれたのがとてもうれしかった。

その俺に対して、リリカの母親は、リリカが勇者として選ばれたことに関して、いろいろ説明してくれるのだった。その話を聞いた俺が、リリカの母親から聞いた話の内容は以下の通りだ。まず俺がこの世界で死んだ理由はリリカを助けるためだったこと、その時に死んでしまったリリカは女神に力を授かり。再び生まれ変わってきていること、リリカにはまだ魔王の魂が完全に消えていない状態だという話だ。その話を聞いて俺はリリカにそのことを伝える。その説明を終えたところでリリカは、リリカの母親の方に目を向けると言ったのだ。「私に、まだ勇者の称号が残っているということは、まだ、完全に消えたわけじゃないってことだよね?」と聞くと、それを聞いた彼女の母親と俺は驚いていたのである。そしてリリカは続けた。

「なら私に力を与えてくれた神様に会えるはずだ。だからこれから会いに行こうと思っている」と。それを聞いた俺も同意した。リリカの言葉を聞く限りは確かにそうだ。リリカは確かにそう言ってくれた。俺としてもその言葉を聞きたかったからだ。そして俺達は一緒にリリカの母にお礼を言ったあとに、家から出ることになった。ちなみにリリカは俺のことを勇者と呼ぶことに決めたらしいが。それは俺が、【リリカ】という名字をつけたことによってそう呼ぶことになったのだ。その呼び方は俺としては嬉しい。そして俺達がその家の外に歩いていると。リリカとそっくりな見た目をしている女性が駆け寄ってきたのである。彼女は「おかえり~」と言いながら笑顔を浮かべている。それを見たときだった。

彼女が普通の魔族ではないことに俺は気づいたのだった。その理由とはリリカがその彼女に向かって言う「姉ちゃん」という言葉だ。俺は、【リリカの姉】としか言わなかったのに。そう、つまりリリカはこの姉妹と一緒に暮らしていて。しかも血のつながった本当の姉妹だということだ。それを知った俺は、本当に驚いたのだった。だって俺の記憶の中の彼女とあまりにも似ているからだ。俺はついさっき、自分の記憶の中にある彼女と、【今、目の前にいるリリカのお母さんの姿が瓜二つ】であることを思い出して。これは偶然にしては出来過ぎだろうと感じたのだ。しかし、その疑問について、リリカは俺には何も説明をせずにそのまま歩き始めてしまう。俺もそのことについて考えるのをいったん止めて付いていく。それからしばらくして目的地に着いたみたいだ。

リリカと、俺にそっくりな魔族の女性の案内の元、俺達は目的の場所に到着すると、そこには、俺が前世の最後に訪れたことがある場所があったのである。その光景に思わず絶句してしまった俺だったが。リリカがその場所を見て言ったのだ。

「ここは私のお気に入りの場所でもあるんだよ」と。

俺はその言葉を耳に入れて、その場所を見るとそこには俺が良く知る光景が広がっていたのである。その場所というのは、大きな桜の木がある場所であり、俺にとって思い入れのある場所でもあったのだ。

俺の視線がそこに釘付けになったところで俺は思ったのだ。この場所には来たことがあったと。そのことから確信を得ることができた。間違いなくここが。前世で俺が死ぬ前に見た景色と全く一緒だったということが。俺のその言葉を聞いてリリカとリリカの姉の二人が驚いた表情を見せたあとに、その言葉を口にする。

「やっぱりここを知っているんだね」

その声はリリカと似ていて、俺がこの世界に来る前に聞いていた声そのものと同じであった。そしてその発言のあとに、俺は気になることが思いついて質問をすることにする。

「もしかしてこの近くに薬草が生えている場所はないか?」と。すると二人は不思議そうな顔をしてから。リリカの姉のほうがこう口にしてくれた。

「えっ!? どうして薬草が必要なの? あなた薬草を使った回復薬の使い道でも考えているのかな?」

その答えを聞いたときに、薬草を使うのはまずいと思いながら、薬草の使い方については考えてないということを答えると。

「うーんと。この近くに薬草が生えていたのってもう何十年か前の話で。今はもうその場所には生えていないよ」と教えてくれたのだ。俺はそれを聞いたときには残念な気持ちになったが。すぐに考え直してその情報をありがたく思えたのである。なぜならこの場所は俺の知っている場所に間違いはなかったからである。俺は改めて自分がこの世界に転移してきた意味が分かったような気がしたのだった。そしてこの場所から移動することを俺から提案したのである。リリカの体調が悪くなったら大変だと。その提案を受けて俺とリリカは、この場所から移動することになったのだ。

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リリカ視点 私はあの場所に行ったことで、ここが自分の故郷だったということを思い出していた。そして、その事実を受け入れられずにいたのだ。だけど。目の前にある景色は本物で嘘ではなかった。そのことに戸惑いを覚えるリリカだったが。ルクスが、その言葉を口にしたことで少しだけ冷静になることが出来たのである。その彼の問いかけに対して私がどう答えるのかと聞かれたので。その質問に対して私は、こう答えたのである。

「勇者としての力が消えるまでここに残っていていいかな?」と私は言うのであった。その言葉を聞いてルクスは納得してくれたのである。そのやりとりが終わったタイミングで、リリカの祖母が私たちのもとに近づいてくる。そして私達に声を掛けてきたのであった。

「そろそろ家の中に入りませんか。外が暗くなってきましたし。風邪を引いたりしても困るので。暖かいスープを作ってありますから。中に入って食べましょう」と言うので。私たちはその言葉に従ってその家に入ることを決める。

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リリカ視点 私達がその家で暖を取り始めてしばらく時間が経過した時だった。突然ルクスが「あっそういえばまだ名前を教えていなかった」と言い出した。それに対して私も「確かに」と思ったのである。

そして、彼は自分の名を名乗った。

「俺の名前は。黒須 遊。元の世界の名前だ。よろしく頼む。俺もお前のことはリリカと呼ぶ」と。その名前を私は聞いてなぜか懐かしく感じたのだった。だからそのことについて彼に話を聞いてみることにした。そして返ってきた言葉を聞いて、その違和感が何を意味するものだったのか理解することができたのだ。それはリリカの名字にも同じ名前のものがあることを知っていたからだ。だから私も自分から本名を名乗ることにしたのだ。私達二人のやり取りが終わった後で、ルナが話しかけてくるのだ。「ねえ。二人とも自己紹介が終わったところで一つ聞きたいんだけど」と言うので、なんだろうと疑問に思った私がルクスに聞いた。

「ルナちゃんがどうかしたの? ルナが何か問題でも起こしたとか」と聞くと、「ちがうちがう。実は私達は今からこの世界に来たばかりの魔王を倒して欲しいんだよね」と言ってきたのだった。

そしてルナちゃんの話は続く、「それでその勇者様のお名前は何ですか」と。その発言に対してルクスが困惑しているような様子を見せる。それを見た私は。「ごめん、勇者っていうのは、リリカがこの国に来る途中で襲ってきたやつらに付けられたあだ名なの。本当の勇者の名前は。ルクスというの」と説明する。すると彼女は嬉しそうに微笑む。それから続けてこう口にする。「じゃあ。これからリリカは魔王を倒した伝説の魔導師になるわけだね」と言われてしまうので。私としては、そんな風に呼ばれたら、なんだか恥ずかしいなと思ってしまうのだった。

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魔王討伐の依頼を受けることになった俺は、リリカの姉に「その勇者としての称号が残っている状態で倒せないなら倒すことができないと思うんだ」と言われる。それを聞いて俺が悩んでいるところ。リリカがこんなことを提案してきてくれたのだ。

「勇者の称号を私に返してくれるのは嬉しいんだけど。でも。この称号って簡単に返すことが出来ないんじゃないかな」と。それを聞いたリリカの母親は驚いていたが。リリカはそのことについて詳しく話す。

「私の持っている力を使って、勇者の称号の力だけを消すことぐらいできるはず」と口にしていたのだ。そして、それを聞いた彼女の姉が「その話は本当なのかな。もしかして勇者の力をリリカが持っていた理由って」と言ったあと。リリカの姉は、その力を使えば魔王を倒すことが出来ると口にするのだ。そして、リリカの母親がリリカの言葉を確認すると。「うん、勇者の力でしか消せないだろうけど。出来るはずだよ」と口にしたのである。それを確認したリリカの母親はリリカの方を見ながらこう口にしていた。

「ではリリカ。早速お願いします。その方法を見せてもらえますか」と言われたので。それを見た俺は、この世界に来て初めて、【リリカの姉の体に触れても大丈夫だ】と思えたので。リリカの方に手を伸ばしたのであった。それに合わせてリリカは、自分の母親の手を取って俺がリリカに触っている部分に近づけていく。俺がそれを確認できた時には、俺の手から【勇者の紋章】の光が出始めていた。

俺の手に光が灯り始めたことを確認した瞬間に、この家の中にある魔力の流れが変化した。おそらくはそれがリリカが行っていた作業の結果だろう。俺の体に宿ったその光の量は、この前見た時よりも多いものになっていたのだ。その光景を見ているリリカの姉が俺のことを見て言った。

「なるほど。やっぱりこの子はすごい魔族だ」と。

リリカの姉が口にしたこの発言の意味は、今の俺は理解できなかったが。俺がその行動を取ったことで無事にこの世界の問題を解決するための第一歩を踏み出すことが出来たのだった。それから俺はこの世界でリリカの母親のことを母親さんと呼ぶことになる。そのことにリリカは反対しなかった。むしろ喜んでくれるのだ。そして俺のステータス画面には新たに【リリカの友達】の欄が追加されていることに気づいたのである。そしてそのことをリリカに伝えようとすると。リリカに先を越されてしまうのであった。「おめでとうルクス」と。リリカは笑顔を浮かべながらそう言ってくれたのだ。そのリリカの反応を見るだけで俺は心の中で幸せを感じることができたのである。そして俺は、その気持ちに後押しされるように。自分の意思を伝えるのだった。

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魔王を倒しに向かうことになった俺とリリカだが、ここで問題がひとつ発生してしまっていた。この国の王都に向かって旅を続けなければならないということと。もう一つは、このままだと食料の備蓄がないということである。なのでその問題をどうにかしないとならないといけなくなったのだが。

リリカの姉である。シルファが解決策を考えてくれたのである。「その問題ならば、私たちの家に来ればいいわ」と言うと、俺達に家に案内するために歩き始める。俺達がその後を追うような形でついて行くと、大きな建物が見えてくる。それはどう見ても、貴族が住んでいそうな豪華な邸宅だったのだ。そのことに俺が驚いていると、俺が思っていたことが口からこぼれてしまったようで。

リリカが俺の方を見ていたのだ。そして、俺のその言葉を聞いたリリカはこう口にする。「その屋敷は私達姉妹の家で、私と姉も住んでいるんだよ」と教えてくれていたのである。俺にはその意味がよくわからなかった。だから俺が疑問の言葉をつぶやくと。リリカがこう説明してくれたのだ。

「ここはね。代々王族の人たちが使っている別荘なんだ。普段は人がいないからね。ここなら自由に使っていいから」

それを聞いて俺が納得していると、今度はリリカが俺の方に質問を投げかけてきたのである。「どうしてルクスはその年齢で、そこまでの強さを手に入れることが出来たの?」と。俺はその質問に対して答えようかどうか迷っていた。なぜならば、俺の答え次第では、リリカとの今後の付き合い方が変わる可能性があるからだ。そんな風に俺の考えがぐるぐると回ってしまったので、そのことについて考える時間をもらうためにこう答えるのであった。

俺の答えを待っていたリリカは、少し寂し気な表情を見せた後で「そっか、分かった」と答えてくれたのである。それからしばらくして、リリカは「その話はまたの機会に聞かせてもらうことにする」と言っていたのだった。そしてその話が終わったタイミングを見計らってか。ルナという少女から話しかけられるのだった。

「そういえばさ、リリカ達はこれからどこに向かおうとしているのか教えて欲しいんだけど」と言われてしまうとリリカが口を開いて説明を始めようとしていたがそこで口をつぐむとこちらをじっと見つめてきていることに気づくとこう言い出したのだ。その瞳からは、「自分で説明してみても構わないかな?私だってちゃんと説明したいんだもん」という言葉が込められているように見えたのである。俺はリリカの意思を尊重することを決めて、リリカの話を最後まで聞くことにしたのだった。

そして話が終わった後で、俺はリリカの家族から食事に招待されたのだ。

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私達が家に戻ると、家の中にあった食材がきれいさっぱりなくなっていたのである。その事実を目の当たりにした私が慌ててしまった。そんな時だった、家の中には既に明かりがついており、その中に入ると、そこには美味しそうな匂いが漂ってきていたので、思わず私の喉が鳴るのである。その音に反応したかのように、ルナがこう口にしていた。

「あっ、帰ってきたみたいだね。リリカのお母さんは料理の仕上げをするから待っていて欲しい。それとそこの君達二人には悪いけれど、もうちょっとだけ時間が掛かるから適当に座っておいてもらえると嬉しいな」と言い出すのだった。

それを聞いた私はとりあえず椅子の上に座ると。ルクスは、ルナの隣にあるもう一つの椅子に腰掛けるのだった。そして、私達は、お互いに目を合わせることなく目の前に広がる食卓を見ながら食事を待っていたのである。しばらく待っていると、テーブルの上には大量のご馳走が置かれていくのだった。そして準備を終えたらしいリリカの母が戻ってくる。するとルクスがリリカの方を見ながらこんなことを呟いていた。

「なんかすごく良いな」と。そんなルクスの発言を聞き取れなかったリリカは不思議そうな顔をしていたが、気にせず、食事を始めるのだった。それからすぐにみんなで会話を始めたのでリリカもそれに混じって楽しそうに話をしていると、ルクスが自分のお腹を撫でながら何かを口にしようとしていたのに気づく。「えっ」と思ってそちらに顔を向けると私にこんなことを言ってきたのだ。「あの。すみませんが俺の分は、ありませんかね」と言われてしまう。

それを聞いた瞬間に私の体が固まってしまい。思考停止してしまうのである。そのせいでしばらくの間は何も反応できずにいたが、リリカがなんとかしてくれると信じることにしたのだ。それを見たルクスが慌てだす。リリカが必死になってルクスを落ち着かせようとしていると、リリカの母親が「お待たせしました」と、言ってくれたおかげで。何とか事態を収拾させることに成功したのであった。

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リリカの母親が持って来てくれた夕食をいただいて、満面の笑みを浮かべている俺。

そして、それとは対照的に、疲れ切ったような表情をしている俺の友人がいた。その理由はもちろんリリカだ。

どうも彼女は、俺のために頑張ってくれたようで、本当にありがたいと思う。でもリリカもお年頃の女の子だ。無理に頑張る必要はないのだ。ただ俺の事を想ってくれていることだけは分かったのでそれだけは感謝していたのであった。

食事が終わるとすぐにリリカが、 自分の母親である。シルファに「今日は私にやらせて」と言って、シルファを部屋へと戻らせるのであった。そのことに感謝をしながらリリカに俺達の泊まるための家を提供すると言われたので、それについてお願いすることにした。それに加えて俺はリリカにお願いしたいことがあったのでそのことについてリリカに話す。

「実はリリカに相談があるんですけど、俺がここに来る時に乗っていた馬車は壊れてしまっているので。新しいものを手に入れないといけないのですが。それをお願いできないでしょうか」と言う。

リリカはそれを承諾してくれてから俺にこう言うのだ。

「それについては心配しないでいいよ。ルクスの持っている魔剣を貸してくれると、それを元に作り出すから。その方が、素材を集める手間が省けるんだよ」と言われる。

そのことに俺はとても驚くのだが、リリカはそれを無視して、シルファと一緒に俺の乗ってきた馬車を取りに行く。そしてリリカはシルファと共に戻ってきた。それからリリカとシルファによって俺の乗ってきた馬車の回収作業が始まるのであった。そして作業が終わるとシルファがこう言ったのだ。「明日になったらこの家を出発すれば明日の朝には王都にたどり着くはずだ。その前にこの家から旅に必要な道具などは持っていけばいいだろう。足りない物は、この家に保管してある物を好きに使っていくといい」と。俺はそう言ってもらってとても嬉しかったので、素直にそう伝えようと言葉にしようと思うと。それよりも先にルミナが「ありがとうございます。助かります」と言っていたのである。

その言葉を聞いてリリカは、笑顔でこちらを見るとこう告げてきた。「私も、ルクスの役に立てるのなら本望だから。気兼ねせずに、頼ってね」と言われてしまった。俺の心に響いてきたので俺の胸が温かくなっていく。だからその気持ちのまま笑顔で「うん、ありがとう。リリカのおかげだと思うと俺は幸せだよ」と言うと、なぜか、俺とリリカの間に変な空気が生まれていたのだ。

リリカは、俺の言葉に顔を真っ赤にして、黙り込んでしまう。それからすぐにリリカはこちらを見てくると、こう口にしてきたのだ。

「べっ、別に。ルクスが私を頼ってくれるのが嬉しいだけで、他意なんて無いんだからね」と。俺にはそれが照れ隠しにしか聞こえなかったので思わず笑ってしまうと、今度はルクスの方が顔を赤くしてしまったのだ。それで俺が、ルクスのことを笑っていると思っているリリカがさらに機嫌を悪くしてしまうのである。だけど、そんな彼女の様子を見て、俺は心の底から微笑ましく思ってしまったのだった。

そのせいもあって俺は笑い続けてしまうのである。そんな俺の様子を見て恥ずかしそうにしているルリナ。そんな二人の様子をルナは見つめながらニコニコしているのである。

その後で俺は寝床の準備をしてもらうことになるとそこで俺はルナと話をした。俺達を襲っていた男のことやそのことについてルナが知っているかどうかの確認をしなくてはいけないからな。

「えっと、あなた達は一体なんなのか教えてくれないか?」と俺に聞かれたルナが、「私達は、こことは別の世界で暮らしている者です」と答えてきたのである。その返事を聞いた俺がどういう反応をしていいか分からず戸惑っていたので、俺が聞き返したところルナが詳しく話してくれたのであった。

それによると。ここは俺たちの暮らしていた世界とは異なる別の世界で、ルナ達の世界には魔王と呼ばれる存在が存在しているのだという。そのことから俺はルナの話に興味を持ったのでもう少し話を続けてほしいとルナに伝えようとしたところでルナが話を打ち切ろうとしたため慌てて呼び止める。そして、なぜ、この世界に魔王が現れたのか聞いてみた。

「魔王というのは、私たちの世界にいる神によって生み出されているものです。魔王は、こちらの世界に来ると必ず何かをし始めます。それは人を殺すことも有れば食べ物を奪うこともありました。そして今回は、こちらの世界の人間である勇者を殺して力を奪った後にこちらの世界の人間の誰かを殺しに来たと思われます」という話をしていたのである。

俺はそこでルナに質問してみる。

どうして、そんなことを知っているのか、そしてこれからどうするべきか。そんなことを問いかけると、どうやら答えてくれたようだ。

「私の住んでいる世界とルクスの住んでいた世界をつなげることはできます。ただそのためには多くの犠牲を必要としてしまい。その方法を取ることができない状態です」と言われてしまう。

俺がそれを聞くと「なるほどね」とつぶやく。そんな時だった。リリカの声が聞こえる。

「ねえ、ルクスが話に混ざりたいんだってさ。代わってあげるね。ルナちゃんだっけ?こっちで一緒にお話ししようよ」と言い出す。

それにリリカは驚いたような声を上げていたけれど、少しの間があってから了承するとルナは「わかりました」と言ってそのまま入れ替わることになったのであった。そしてすぐにルミナはリリカに向かってこう口にしていたのである。

「あの、私はもう眠る時間なのでそろそろ眠らせてもらっても良いですか?」と言ってきたのである。

俺達はリリカの母親であるシルファと会話をしている。そしてリリカの父親でシルファの夫でもある人物についていろいろと聞いたのである。どうもシルファさんはあまり俺と会話をしたいとは思ってないらしくて困った表情を俺に向けながらも会話をしてくれてたんだけども。それでも会話の中で気になったことがあるので尋ねてみることにしたのだ。それと言うのも俺を召喚したという王女はどんな性格の人物なのだろうかと思ってしまってそのことをシルファに尋ねたのである。

俺が尋ねると、その話をリリカが聞いていたみたいでリリカが「あの、お姉さまのことですよね。お兄様がお姉様に会いたいっていう理由。お兄様なんでお姉様に惚れたんですか?」といきなり言い出してくるのでリリカの方を見る俺とシルファはお互いに顔を合わせると「「なっ!?なにを言い出すのよ」」という二人の叫びがハモるのである。するとリリカはさらに追い打ちをかけてくるのだ。

「でも。私のお兄ちゃんは、あの王女が好きだって。お兄様もそう言っていると聞きましたけど」

「い、言ってませんわ」と言うシルファ。それに対して「じゃあ。お父様が言っていたんですけど。リリカのお兄ちゃんが言っていたって」と、言うと「うぐっ」と言うと言葉を詰まらせるシルファ。そして俺と目があったシルファが、顔を真っ赤にするのを見た俺とリリカはシルファに対してニヤニヤとした表情を浮かべてしまう。そのことに耐えられなくなったシルファが、「あっ、あなたは、私がこの家の主であることをお忘れではないのでしょうね」と。威圧感のある視線で俺をにらみつけるシルファに恐怖を感じて冷や汗をかき始める。

それからしばらくしてシルファが落ち着くと俺達の方を改めて見つめてきて、こう言葉を口にする。

「申し訳ありませんでした。お話の邪魔をするつもりはなかったのですが。つい。その、興奮してしまったもので」と。

俺とリリカは苦笑いをしつつリリカはこう告げる。

「大丈夫ですから気にしないでください。でも。やっぱり私も気になりますから教えてください。お兄ちゃんが、お姉さまを好きだと言ったのは本当なのでしょうか?」と言う。その問いに俺は「えっと」と言って考え出す俺の様子を見たリリカはなぜか「やっぱり」とか「やっぱりね」とつぶやいている。俺がそのことを指摘する前に、リリカは続けてこんなことを言うのだ。「だってそうじゃないですか。いつものことだもん」とリリカは言ったのである。

リリカの発言に俺とシルファは驚いていた。俺がそんな二人を見て不思議に思っていると。シルファがこう口にしてきたのである。

「えっと。そうですね。その話をする前にあなた達には、知っておかなければいけないことがあるのです」と言われた俺はリリカに質問をする。

「それは何だ?」と。その俺の質問を受けて、俺のことを見つめてくるとリリカはこう言ったのだ。

「実はね。この家に代々伝わってきた家宝があります。それを持ってきていますからそれを見て下さい」と言って家の中を案内してくれる。

そして、俺達がその家にある倉庫にたどり着いたのである。そこで見たものは、この家に伝わっていたという剣であった。その剣は光輝く剣であった。

その剣を手にした俺達はすぐにその剣から何かが吸い取られていく感覚に襲われたのである。そしてリリカが突然倒れると俺もその衝撃によりその場に倒れ込んでしまうのであった。

俺がその異変に気づく前にリリカをかばおうとしたルクスであったが既にルミナの姿はそこにはなかったのである。俺とルミナは、同じ部屋に飛ばされていてルミナがこちらを見ていることに気付いた俺がルミナに声をかけようとすると俺の体は急に消えていったのである。俺は慌てて手を伸ばしルミナに手を伸ばすのだが、ルミナの体に触れることもできなかった。

その出来事に動揺していた俺は、その光景を見ることで我を取り戻し始めていたのである。

俺が冷静になるのにはしばらくの時間を必要とした。

なぜならルミナを目の前にして俺はパニックに陥っていたからだ。そしてそんな俺の様子をルクスとルナが眺めているという状況だった。俺がようやく冷静になったところでルナが話しかけてきたのである。

そして、そんな彼女を見ながら俺は、彼女の方を見て、ルナから聞いたことの真相を確認することにしたのである。それは俺達をこの場所へと転移させた張本人が、今現在俺の隣にいるルクスであることである。

そして俺にそのことについて説明をし始めた。その説明はルナからではなく、ルクス自身が口を開いて話してくれたのである。その内容は驚くべき内容で俺は驚く。

「えっと。つまり。あなたがルミナを助けてくれたのだと?」と俺がそう尋ねると、ルクスは静かに俺の言葉にうなずくのである。俺と目が合ったルクスが俺に向かって深々と頭を下げたのである。そのことに慌てる俺に対してルクスはさらに話を続けたのであった。その話を聞いた俺の驚きはさらに大きくなる。

「まず最初に、君には、謝らなくてはいけないことがあるんだ。俺のせいで、リリカが危険な状態になっている」と。

そんなことを言われたら俺も落ち着いてなんかいられなかったのである。だけどそんなことをすればさらに状況が悪化すると考えた俺は何も言わずにただひたすら話を聞き続けることにした。そんな様子にルクスが俺が理解しているということに安心したように微笑む。その微笑みに思わずドキドキしてしまう俺。するとルクスが俺に向かってこんなことを口にしたのだ。

「それで君は。これからどうする?俺の話を信じてもらえたみたいだから俺の方で君のステータスを確認しても大丈夫かな?もしかするとこの世界の人間ではないので俺達とは違うスキルがあるかもしれないし」

「うん。わかった」と答える俺に、「それなら、少しの間目を閉じていてくれるかな?すぐに終わるからさ」と言ってくれた。そんな彼の言葉に従う俺にルクスが手を触れた途端、俺の体に何かが流れるような感じを受けたのだ。それと同時に何かしらの能力を得たという不思議な実感を覚えたのである。

そして、ルクスは何かを調べ終わったようで、すぐにルミナの元へと向かい始めるのであった。俺もそんなルクスについていくとルミナがいると思われる部屋の前に来た。

そこでルクスが立ち止まると、俺の顔を見た後にルクスに促されてルミナの部屋の中に入ることになったのである。

「リリカ。大丈夫なのか?」

「はい。大丈夫です。それより。私の方こそごめんなさい。私のせいでお兄ちゃんが危ない目に遭ってしまって」

ルクスとリリカの声を聞いて二人が生きていることがわかり、俺はホッと息をつく。それからすぐに二人の無事な姿を確認した俺は、二人の元へと向かう。

そして二人は、ベッドに横になっていたのである。どうやらリリカが怪我をして動けなくなってしまったらしい。

「すまない。ルミナは助けることができたけど。リリカを助けることはできなかった」

「うぅん。私が悪いんだよ。油断していたから」

俺がリリカに向かってそういうと、彼女は悔しそうにしている。そんな時だった。部屋の中に見知らぬ人が入ってきたのである。そしてその人は、すぐにリリカに向かって回復魔法をかけたのである。そのおかげで、なんとか傷を癒すことはできた。しかし、その反動で魔力を使い切ってしまったのか、その人はそのまま意識を失ってしまう。その人をルミナが介抱をすることにした。

それから数分後のことである。俺達はシルファさんの案内によって食堂に来ていたのである。俺がシルファさんを見ていると、彼女が笑顔で声をかけてきた。

「あら。まだいたんですね。もうすぐ食事の準備ができますから座って待っていてください」

俺達に食事を勧めてくるとシルファさんは、そのまま厨房の方に戻って行ったのである。その後ろ姿を俺が見ていると、その視線に気づいたリリカが「あの、もしお姉さまに会いたいのであれば呼んできますよ」と尋ねてくる。

その問いかけに対して、俺が返事をする前にルナとルクスが、リリカに対して、その提案に対してこう答えていたのである。

「えっと。リリカちゃん。それは無理よ」

「そうだよ。今は会えないと思うよ」

二人の意見に驚いたリリカだったが、「どうしてですか」と聞くのである。その質問にルクスとルナが「えっと。リリカは、ルミナがどこにいるのか知っている?」と逆に聞き返されるのである。

「ううん。知らない」と首を横に振るリリカに、ルミナがいない理由を話すことにするのだった。

それからリリカは、ルミナが俺達の世界に召喚されているという話を聞くと納得してくれたようである。その話が終わると、リリカが、シルファのことをシルファ様と呼んで、そのことについていろいろと聞こうとしていた。

だが、シルファさんに止めれられてしまったのである。それからすぐに料理が完成して俺達の前に運ばれてきたのだ。それを見た瞬間、リリカの腹の虫が鳴る音がする。恥ずかしそうな表情をしたリリカが俯いているとルクスと俺が顔を見合わせてから同時に吹き出したのである。

「おなかすいているんだろう?食べればいいじゃん」と言うルクスに続いて俺が言う。

「お腹が減ったらご飯を食べるべきだよね」と言うとルミナも一緒に笑っていたのであった。そんな俺たちの様子に困惑しながらも空いていた椅子に座るリリカは目の前に置かれた皿をじっと見つめてからスプーンを手に取るとその中身を眺めるのであった。その動作を見てルナはこう呟く。

「やっぱりシルファの作るシチューが一番おいしい」と。その発言に俺はシルファさんの方を見ていたのだ。すると俺の目線に気付いたシルファさんは、こちらを見ると「あなたも遠慮せずに食べた方がいいですよ」とだけ言い残す。そして再び調理場に戻ろうとしたのだ。

その言葉に俺は「あっ、はい」と答えたのだが、なぜかシルファさんの動きが止まってしまう。そしてしばらく固まった状態になってしまったのだ。俺は不思議に思いながらその様子を見守っていると、ゆっくりと動き出し始めたシルフを見て俺は慌てて話しかけた。そのせいか俺の言葉使いが悪くなってしまい、それを気にしてすぐに俺は言葉を改めることにしたのであった。そんな俺に「いえ、問題ありませんわ」と答えてくれたのである。

その言葉遣いを気にかけて俺は改めて自分のことを説明し始めた。そして、自分が日本人だということを彼女に説明していくと彼女の反応は意外にもあっさりしたものですぐに俺を受け入れてくれて、それから俺のこともシルファと呼ぶようになったのである。それから食事を終えたリリカは、俺とルミナに謝るとそのまま部屋から出て行くのであった。そして、リリカを見送るとルクスが自分の分の食器を流し台へと運んでいく。

「俺も手伝うぞ」と言った俺であったが、「いや、大丈夫だよ。それよりも早く休んだほうがいい。さっきもそう言ったけどかなり危険な状態になっている。今の君には休むことが一番大切だ」とそう告げられる。そんなことを言われれば素直にルミナの部屋に戻るしかないと判断する俺だったのだ。

そんな俺は部屋に戻りベットの上に横になると、さすがに今日一日の出来事で疲れたからなのかすぐに眠ってしまっていたのである。俺は夢を見ることもなくぐっすり眠ることができた。翌朝になり目が覚めた俺が体を起こしてみると、そこにはルミナの姿はなかった。だけど俺の隣で寝ていたはずのルナはいなかった。

そのことに少しだけ寂しさを感じていると扉の向こうからノックをする音が聞こえてきたのだ。その音を聞いてから少しの間があってからルミナが部屋の中に入ってくる。

「お兄ちゃん起きていたのですね。おはようございます」とそう言ってからルナの様子を見に行くと言って、すぐに出て行ってしまったのである。そのことに少しだけ心残りを感じるもすぐに朝食が運ばれてくる。それから俺達が食事をしていると、昨日とは打って変わって元気になっているシルファがやってくると俺達の食事を手伝ってくれる。そして俺とリリカも一緒に食べることにした。それからルクスとリリカにシルファのことやリリカのことについて聞いてみたのだ。

まずはシルファのことを聞いてみると、どうやらシルファにはルクスのように特殊な能力があるらしいのだ。それが、ルクスと同じようにこの世界で生まれ育った人ではないことの証明でもあるようだ。だけどリリカのほうは違うらしい。彼女はこの世界の人間なのだが特別な血筋を持っているらしいのだ。そのことをリリカが教えてくれたがそれ以上は教えてもらえなかった。どうやら俺達の世界からやって来た人以外には話せない秘密もあるらしい。その話に残念がっていると、俺達の世界からやってきた人間に話せば話してくれると約束してくれた。そして、この屋敷に住んでいる人達も全員この世界から俺達の世界から召喚された人たちなんだという。そして、そのことはこの世界に住む人々にとってはとても重要なことだと言っていた。

俺とリリカは、この屋敷にある書物を好きなだけ読むことが許されているという話をするとリリカはとても喜んでいたのである。それからしばらくして俺達の朝食を食べ終わると同時に、ルクスに連れられて書庫に向かうことになった。

それからルクスと一緒に部屋を出ると、ルクスからこの国の事について詳しく説明してもらうことになったのである。

それからしばらくの間俺はルクスからいろいろなことを教えてもらうことになったのだった。

「じゃあ。今度はリリカのことについて聞かせてくれる?」と言うと、ルクスはすぐにリリカに話しかけていたのだ。

「はい」と言うなり彼女は自分のことを話し始める。

リリカの名前は『リルア』という名前で元々はこの街の領主をしている貴族の一人娘だということがわかった。その話を聞いたときルナの顔を見るもルナは何の反応も示さなかったのである。だけどそのことからリリカは本当に領主の娘だとわかってホッとする。だけどその話の内容に驚くしかなかったのである。リリカは実は領主の孫娘で次期当主でもあったのである。そのことに俺達は驚きながらも彼女がなぜ旅に出たのかを聞くことになる。

リリカの話によると、彼女はもともとこの国では、ある意味有名な人物だった。それは彼女が天才魔法使いと言われているからである。しかし、その話は本当のことであり実際に彼女はその実力を発揮させて何度も街の危機を救った英雄だったのだという。

そんな彼女だったが、ある日を境に彼女はその力を失い、さらには魔法が一切使えなくなってしまっていたのである。その原因については本人もよくわかっていないようであった。それからリリカは落ち込んでいたがなんとか持ち直し魔法が使えなくなってしまった原因を探ろうと旅に出ようとしていた。そんな時である。彼女の両親と祖父にその旅に出る許可を求めると両親は反対するだろうと思いながらもダメ元で話したところ以外にもすんなり了承してくれたのだ。しかもリリカ一人だけでという条件付きではあったが、リリカはその条件を承諾したのである。そのことに両親が許してくれた理由に首を傾げていたがそれでも一人でも行けると思っていたリリカであった。

だが、リリカは甘かったのである。その事実を知ると俺もルナもリリカを止めることにしたのであった。その理由が俺達と一緒の方が安全であると思ったからだ。その話をリリカにしたが、リリカの答えは俺達の申し出を断り、さらにこう答えたのであった。

「私は、お父様とお母様の力になりたいんです。お二人のために少しでも私に出来ることがあるのなら、その気持ちに嘘はないのです。だから私はどんな危険でも恐れず立ち向かいたいと思います」

リリカは、俺とルナの忠告も聞かずに一人で行ってしまおうとする。そして、リリカが出発しようとした時にリリカの父親がやって来てリリカのことを止めようとするがそれでも聞こうとしなかったのだ。そこで俺とルナの二人は、リリカを止めに入るために追いかけることになったのである。

それから俺はリリカに追いつき事情を説明をして一緒にリリカの両親に会いに行くこととなった。だけどリリカが俺の事を疑ったような目を向けてきて信用できないからと付いてくるなとまで言ってきた。なので俺は、このまま一人で行くとまた無茶な行動をすることを知っているので絶対に一緒に行くと言ってきかなかったのである。

そんなこんながあって俺が強引にリリカの手を引っ張る形で俺とルナとリリカは三人揃ってようやく領主のいる館に到着することができたのであった。そして、そのまま俺達が通されると、俺達の姿を見た領主が慌てふためいてこちらに向かってきた。

「り、リナちゃんじゃないか。それにあなたは一体どこのどいつですか!」と、そんなことを言われても困るのだが、とりあえず自己紹介だけでもしておくかと思ってから口を開いた。「えっと。僕はリリカと一緒に住んでる者で、一応、冒険者をしています」と答えると、それを聞いた瞬間から領主は目を見開きこちらを見つめると急に怒り出したのである。

「ふざけないでください。そんな怪しい人を我が屋敷に入れるなんてできません。今すぐ帰ってもらいます」と、その一言をきっかけに言い争いが始まろうとしたその時、ルミナが俺達の間に割って入ってきたのである。

そしてルミナは自分のことを話して俺とルクスは二人で来たことを話して説得をし始めた。だけどルリカは、俺とルクスの話を聞かなくて俺を怪しんでいたが、その隣にいたルミナを見て少しだけ驚いた表情を見せるも、その後からなぜかリリカのことを心配する様子を見せていた。

その様子を見ながらリリカの父親も少しだけ冷静になり俺とリリカとルミナとルクスとで話し合いの場を持つことにしたのである。それから俺は改めて自己紹介すると、リリカも自分がどういう状況にあったかを父親に報告した。そしてルミナに聞いた話では、リリカが持っているスキルは普通の人からすればありえないぐらい強力だそうだ。そのため、もしも暴走してしまう可能性があるということを話して納得してもらうのに成功したのである。だけど問題はこれからどうするかという問題だ。ルリカにはこの世界にある魔法が使えないためルリカはこの国から外に出ることができなくなるのが目に見えている。それをどうにか解決しようと頭を悩ませているときに、俺がこの国の魔法学園に入学してもらえないかという話をした。その提案にはさすがにみんな驚いていたがすぐに俺の言っていることが本当なのかを確認する。すると、ルナだけは俺の言葉が信じられないとばかりにこちらに冷たい視線を送っていたのだった。だけど俺はそんなことはお構いなしに、この国の王にも手紙を書くから俺に力を貸して欲しいと頭を下げたのであった。その行動がよほど意外だったのであろう、俺の提案に対してルリカとリリカの両親は俺の提案を受け入れてくれていたのである。そのことにホッとした俺は、まずはリリカを魔法学園に入学させることが決まったことでまずは一安心することができた。

それからルナもなんとか魔法学園に通うように頼み込んでみることにした俺は魔法学園に入学することが決定したのであった。

それからすぐに魔法の練習を始めることになったのだが最初にやることが決まりましたね。それがなんと、この世界に来て一度も魔法を使っていないルナが使えるようになるかどうかだった。そのことを聞かれたときにはルミナとルリカ以外はルナに期待を寄せるような瞳を向けたが肝心のルナにはやる気がなかったようだ。そのことからリリカが代わりにルナに魔法を教えるということで話がまとまった。ちなみにルナの職業は『精霊魔法使い』というレアなものでその能力は、魔力量を上げることが可能でありそのレベルに応じて様々な属性の魔法を使用できるというかなり優秀なものであった。そして、その能力をフルに使うと全ての系統の最上級クラスである究極級の攻撃魔法が扱えるようになったのである。さらにリリカの方を見ると『聖魔法使い』と言う職業を持っていたのだ。その能力を使うと、自分の身体能力を大幅に上昇させることができ魔法も使用可能になるというものだったのである。

その二人の能力を知ったルナはかなりショックを受けていたようだったが気を取り直させるとルミナと一緒にルナの能力を調べることになったのである。

それから二人はしばらく黙っていたがそれからリリカがルナに話しかけると魔法を教え始める。その指導方法については、魔法を使うことで少しずつ魔力を感じるようにしてから徐々に魔法を習得させていったのだ。そのおかげで魔法が使えるようになった頃にはもう夕方になっており、リリカが用意していた食事を食べ終わると同時に寝る時間となっていた。それで明日も訓練をするために俺とリリカはルナと別れたのであった。それから俺はリリカとルナを二人っきりにする。そのことに疑問を持ったリリカはどうして二人だけにしてくれたのかを尋ねてきたのである。それに対して、俺はルミナがルクスと二人で話をしたいと言っていたと伝えてから部屋に戻った。

そのあとは風呂に入ってからベッドに横になるとルクスとルナとリリカが無事に仲良くなってくれたらいいなと考え眠りについたのである。

「ん? んん?」

「あれ? ここは何処?」

と俺はそう言って周囲を見渡してから自分の置かれていた状況を思い出す。そして自分の目の前にいる少女を見るなり話しかけていた。

「もしかして君は、俺達と同じ日本から召喚されたのか?」と質問すると彼女は首を傾げてから答えた。

その言葉に俺は、一瞬驚くがその話の内容から俺はその女の子が勇者なのだと察しが付く。だがそこで疑問が生じたのでその子のことについて尋ねることにする。するとその子は、俺が知っている内容を話し出すのである。名前 アリス 性別 女 種族 人間 職業 なし 年齢 15歳 状態 普通 身長 160センチ 体重 46キロ スリーサイズ 83/55/80(Dカップ)

備考 主人公のクラスメイトで女子生徒の中では一番背が高い それからステータスカードについて詳しく聞くことに

「えっと、君の名前は何ていうか教えてくれるかな」と、言うと彼女は「はい」と言って名乗ってくれた。

彼女の名前は

『 白崎 美香 シラサキミカ』と言い俺の名前も彼女に聞いてみる。すると彼女も同じ日本から来たということがわかり俺は彼女からいろいろ聞き出していった。その結果わかったことは以下の通り 彼女の名前が『シロザキミカ』という名前だということが分かり彼女は俺が通っていた高校の生徒ではないことがわかった。それから俺は彼女のステータスカードをもう一度見てみた。そしてその情報に目を疑ったのである。なぜなら、彼女が持っていたはずの職業と能力がすべて消えていたからだ。

そのことに驚きながらも俺と彼女はこれからのことを相談することにした。だがそこでも問題がある。それは俺が、ここがどんなところかもわからなかったからである。だから彼女にそのことを伝えると彼女はある方向を指さした。

その方向に視線を向けてみるとそこには、大きな門がある。そして門のそばには鎧を着た人達が立っていた。おそらくあそこを通らなければ街には入れないだろう。それによく考えれば、俺達はいきなりこんなところに転移させられたのだ。だから当然だがお金を持っていない。

そこで俺はアイテムボックスの中に金目のものが入っているかを確認することにした。その結果あったのは、 鉄銭貨×2枚と石銅貨が数個である。しかもその価値がわからなかったので俺は、まずそのお金の価値を確かめるために近くにいた兵士に声をかけてみた。

「すいません。ちょっといいですか」

「なんだお前らは」と、兵士の一人が威圧するようにこちらに歩いてくると俺は、ポケットの中に入っていたものを手に乗せる

「こ、これを見てください。俺のスキルで収納できるんですよ。ですのでその中にあるものを確かめてほしいんですけど」

「ほほう。なるほど、確かにそれは面白い。おい。確認してやれ。何か入ってるかもしらんしな」

それからしばらくして兵士たちが鑑定士を連れてきて俺達の持っているものを見せていくと驚いた表情を浮かべて「これは凄い。これがあれば商人なんてやらずに、この世界を旅して回っていろんな珍しい物を売っただけで一生遊んで暮らせるぞ」と言われてしまった。

「そ、そんなに大層なもんですか」

「当たり前だろう。だってこれは伝説級のものだ。下手したら国が買えるぐらいだ。それも、たったの二つしかないから国宝に指定されるぐらい貴重だ」

その説明を聞いた俺は、どうしようと困ってしまったのである。すると兵士は俺達にこう言ってきた。この二つのものはとりあえず俺たちに預けるとのことだった。そしてその対価はこの街に入るための手形として使わせてもらいたいと言われたのでそれならと了承した。その後俺はこの国の事についても聞いたのである そしてこの国は

『 エルシア 』という名前で冒険者になる人のために作られた場所だそうだ。他にも学園もありそこでは冒険者の訓練なども受けれるらしくそのことから俺は冒険者になることを決意したのである。だけど俺達の場合は冒険者としてではなく魔法を学ぶために学園に入ることを希望したのだ。それを聞いた兵士が不思議そうな顔をしていたが許可をくれたおかげで何とか学園に入れることができたのだった。だけどここで問題がおきたのだった。まずはその身分証がないという問題があったのだがそれに関しても兵士のおかげでどうにか解決することができていたのだった。その理由としては俺は貴族だったという設定だったらしいのだがそれでも、平民が冒険者をやろうとすることは珍しいことでかなり疑われたようだ。だが、俺には前世の記憶が残っているから問題ない。それに今はそのことよりも魔法学園の制服を手に入れる必要があったのだ。俺は兵士に相談するとこの国にある有名な服飾店で購入するしか方法はなさそうだが、その店は王族御用達となっているからかなりのお値段を要求されるのは間違いないと忠告されたのである。俺はその話を聞いた時に頭の中で考えるとまずはこの国から出ることを先にしたほうがいいと考えた。なのでそのことは後回しにしてまずは魔法学園に入学するための準備を行うことにする。そのために俺は学園に通うための教科書や教材を購入しに行くことを決めた。そのことについても兵士さんに相談する。それからすぐに俺は魔法に関する書物を購入することにした。ちなみにだが、リリカとルミナに関しては俺の手伝いをしたいと申し出てくれて学園に入学をしてくれることになった。それから俺は彼女たちと合流して一緒に買い物をして、学園の入学試験を受けるために必要な申請書を受付に持っていくと、そこで入学のためのテストを受けてもらう必要があるという。それを三人に説明するとそのことでルリカが、

「あのぉ~、私は別にテストを受けなくても良いのではないでしょうか。私ってその~実はですね、レベルは1になってるんです。でもその代わりというわけではないんですが職業が『聖騎士』になっていたりします」

「ちょっ。マジで?」

と俺はそう言ってからステータスカードを見せてもらってレベルを確認するとそこにはしっかりとレベルが書かれていた。しかも能力も上がっていて能力の方には『神聖属性魔法』と書かれているがこれはなんのことだろうか? そのことを尋ねると俺の質問に答えると、

「その件については俺から説明させていただきますよ。『神聖属性魔法』とはその名の通り回復系統の魔法です。それと『聖魔法』と『聖属性魔法』の違いは魔法を使う人の魔力の量によって変わるということと、魔法の種類も異なりまして。『聖魔法』『聖光魔法』は相手の体力を削ったり傷などを治すことができ、『聖闇魔法』『聖炎魔法』は攻撃に特化しているといった感じですね。まぁほかにもありますが、その辺りの説明については追々していくので今は気にしないで大丈夫ですよ。

それでルナさんの職業についてですが。それはルナさんは精霊使いでもありましたのでおそらく精霊たちがルナさんの職業を一時的に書き換えたんでしょうね。そのせいで今まで使えなかった力なども使えるようになっているはずです。試しに魔法を使ってみたらどうでしょうか」

「うん。分かったやってみる」と、ルナは言うとリリカは、ルナと一緒に部屋から出ていった。

それから少しして、二人は戻ってきたんだ。どうもリリカによると、 ルナのレベルも俺と同じように上昇しているようでレベルが上がっているようであった。そして俺は気になったことを聞いてみた。それはステータス画面の表示についてである。それはなぜか俺だけではなくルミナも表示されていたからだ。そして俺は、そのことを尋ねると彼女は俺達の世界から来る際に女神様の加護を受けていたと説明をされた。

そして俺は彼女からいろいろなことを教わったのである。例えば、職業の選び方だとかそういったものである。だがその前にまずはこの世界のお金を俺達は必要とした。そこで俺は自分の所持金を確認をすることにする。だがその方法がわからなかったので、兵士に尋ねたところ俺達が持ってきたものが売れる可能性があるということで、そのお金で換金してもらうことになったのである。

そしてお金について聞くと俺のお金の中には鉄銭貨と石銅貨が何枚か入っていた。そのことについて俺は二人に言うとまずはそのお金の価値を知るために街に出てみることにした。そこで俺は兵士から教えてもらった武器屋に向かう。その途中俺はあることに思い至る。この世界での貨幣の種類はどうなっているのかを尋ねることにした。その問いに彼女は、

「この国では『 銅銭貨 』『 銅貨 』の二つが主流となっていてあとはそれぞれで価値が分かれていて。『 石板金貨』が10万ゴールド。『 銀貨』が100ゴールドとなっています」と答えてくれた。

その話を聞き俺はアイテムボックスの中に何か売れそうなものがあるのかということを確認したが特にこれと言ってないので諦めたのだった。だがここで一つ俺にとって都合の悪いことが判明した。それは俺の所持金の量がかなり多かったことである。その理由としては俺のアイテムボックスの中に入っていたお金のほとんどが俺が日本で購入したものだったからであり、そしてそれはこちらの世界に転移した際にアイテムボックスの中から消えてしまったのである。そのため俺達のお金はほとんど残っていなかったのである。そのことに関して彼女は不思議そうな表情を浮かべていたけど、とりあえずそのことには触れないようにしてくれていた。それから俺たちは目的の場所にたどり着くことができたのである。そこは大きな店構えをしていたのだけれど、その店の名前を見ると看板には大きく、こう書かれてあったのだった。

その店名を見た時、俺は嫌な予感がしたのだ。その文字には『魔装商会』と書いてある。そして俺は、その名前には聞き覚えがあった。なぜなら、俺の知り合いの一人がその商会を経営しているのだからである。そしてそのことを伝えると彼女は、その店には近づかない方がいいと言い始めた。どうもその店にだけは行きたくないそうだ。理由はよく分からないんだけど。

「とにかくその店には入らない方が良い」

「でもお金がない以上、どうにもならないぞ」

「それじゃあどうすればいいんだよ」

「それなのよね」

その話し合いの結果。俺たちはとりあえずは学園に通えるだけの金額を得るためにこの店の品物を物色することにしたのである。だが俺の考えとは裏腹にこの店が扱っているものはほとんどがマジックアイテムであることが判明してしまったのである。この『魔装』という店で取り扱っているものは全てレア級のものばかりだった。だがその中で俺とリリカ、それからルミナの目に留まったものは一つだけだったのである。それは、俺が鑑定で調べてみるとそれはどうやら『魔法付与剣(二)』という名前の武器だった。それを手にした俺が、手に取ってみると思った通りこれは魔法の武器だ。しかもかなり貴重なもののようで俺が知っている限りでも、こんな性能の高い物は見たことがなかった。しかも、それの能力は攻撃力が3倍以上になっているしさらに自動修復機能もついていたのだ。これなら魔法学園に入学したときに買った装備よりも高い代価を払わなくてもすむかもしれないと考えながら商品を見て回る。ちなみにだがその代金に関しては兵士に聞いたのだが魔法学園の生徒として入学する場合は学費は免除となるらしいのである。

そして俺はそのことについてリリカに説明したのだけれどもそのことがどういうことだと言うことを詳しく理解できていなかったようだ。俺はリリカと話をしていて何となくだけど察していたことがあったのだがあえて口に出さずにいたのである。そしてその答えを彼女に教えるために説明を開始することにする そこで俺が最初に思いついたのがこの武器をリリカが使うということである。リリカがこの武器を使いさえできればこの国の人たちよりも強くなって見せることも可能だと考えたのだ。それにリリカにその能力があるならば俺よりも強くなることができるだろうと考えていたのもある。そのことから俺は彼女のためを思ってそう言ったのであるがリリカは納得がいかなったらしく。そんなのダメだと言われたので仕方なく俺はそれを諦めた。そのことに俺はがっかりしながらもリリカには無理強いすることはできないので仕方がないことだと思っていたのだ。だがそこで俺はあることに気が付いた。この『 魔法付与刀(一)』は魔法剣士用の武器なのだが、その武器には俺が求めていたものがあったのだ。俺はそのことに気が付きそのことを店員に伝える。すると俺が求めた物が売ってくれることになった。しかもただの売値の2倍の価格でだ。だが俺にとってはこの値段で売ってもらえるだけでもありがたいと感じていたのである。そしてその対価を支払うため俺はその『魔法付与弓』を売ろうとした。その時に俺はこの『 魔法付与矢 』も欲しいと思ったのである。だが、そのことについて店員さんに頼むと断られてしまうのだった。理由を聞いた俺だったが、俺が要求した弓矢の素材はこの店で売っていないとのことなので諦めるしかないと思い。リリカを連れて行くためにそのお店を後にしようとしたその時。リリカが俺のことを止めて。

「ルナは私がこのお店にある全ての魔法道具を使っても構わないと思っている」と言ったのであった。

そこで俺はその言葉の意味を理解するとすぐさまに店に置いてある魔法具を手に取りリリカと一緒に見て回ることにした。その結果リリカは本当にすべてのアイテムを使ってもいいということだったので俺は遠慮なしに使ってみたのであった。そして結果としてかなりの量を買うことになったのである。しかもすべてで合計520ゴールドという破格的な安さで購入することに成功してしまい、俺の財布には大量の硬貨が入っていたのであった。

その日俺は宿に戻ってくるとそのことで悩んでいた。そしてなぜ悩んでいるかというとその購入した商品をすべて使うことができるようになったからである。まず最初に行ったところは大きな本屋でそこに書かれていた魔法を使えるようにするために必要なアイテムを購入してきたのだ。

俺が行った本屋は『 大魔道図書館 』と呼ばれている場所だった。その名前の由来はその本屋で働いている司書さんの服装からである。なんでもその人は魔法書と呼ばれる本を読み漁ることでその職業に就いたのだというのである。

俺の知り合いはそういった方法で魔法を習得したのでその方法が一般的なのかと尋ねるとそうではないと言われてしまったのである。その方法は俺の知り合いである彼女が独自に編み出した方法であって普通の人では習得できないと教えてもらった。俺も最初はそういう風に説明されたんだ。だが俺の場合運が良かったらしく簡単に魔法を使えるようになることができたのである。それはこの世界にきてすぐの頃、リリカに回復してもらおうと思っていたらいきなり使えるようになっていたのだから。だから普通では魔法を使えるようにするためにはかなりの時間を要することになる。そのことに関してリリカはそのことを話すと少しだけ悔しいそうな表情をしたのだった。

「ルナは、まだルナは魔法が使えないからね。そのせいでルナはいつも皆んなより出遅れちゃう」と、悲しそうな声で言うので俺としては、どうにかしたいとは思うがどうすることもできなかったのである。

それから俺はその本の中身を読むと俺はこの魔法のアイテムで魔法を覚えることが出来るのではないかと考えたのだ。

そこでまず手始めに俺は自分の魔力がどれほどのものなのかを調べてみることにする。

それで俺のレベルを確認すると俺は、驚きの事実を知る。なんとレベルは25と表示されていた。

「え?なんだよ、これは?」

俺は慌ててステータス画面を開いた。

そしてその画面には俺の能力について詳しく記載されていた。そこにはこう書かれていたのである。

《名前》天月瑠那年齢:15歳

レベル:25

種族 :人間 職業 魔法使い Lv1 体力 175/250 魔力 600/670 攻撃力 100 防御力 200 物理耐性 210 魔法力 500 精神力 330 敏捷性 112 魔法操作能力 480 運 53ユニークスキル:鑑定 アイテムボックス(中)

全言語翻訳 経験値増加 獲得資金上昇 自動書記 成長速度アップ(中)

自動復活 スキル ファイヤーアロー 水属性 ウォーターボール ウィンドカッター ライトニングショット ダークランス 雷電砲 ヒール ハイキュア 身体強化(火、風、光)

生活魔法 土属性 スモールシールド 身体加速 称号 女神様の加護(小)

勇者召喚に巻き込まれし者

(巻き込まれし勇者?)

(まさか俺が巻き込まれし者になっていようとはな。しかしそれなら俺はこの世界を救うために呼ばれているということか。だがそれならばあの兵士たちが俺に何も言わなかったことがよく分からないな。もしかすると俺が呼ばれたのはあくまで魔王と戦うためではなく。あくまで俺と同郷のリリカのためだから、特に気にする必要もないと考えているのだろうか。それと、どうしてリリカだけが魔法を使うことができたんだろうな。やっぱり何か秘密があるはずだ。

とにかく今は俺自身のことを調べないとな)

そして俺が次に確認したところが自分の身体能力だったのだけれど。

「おい、ちょっとまってくれ」

俺の視界に入ったその文字は俺の想像を超えていたことに俺は驚くことになってしまった。それは俺の身体能力が数値化されていて、それが表示されているのだが。その数値というのがおかしいのである。なぜならその俺のステータスというのはこんなものだったからだ。

【名前】天月 瑠那 15才 性別 男 LV 1/20 状態健康 生命活動 問題なし 健康状態に異常なし。

ただ今俺は人生で一番緊張している。

それはなぜか。

俺は目の前の女性にプロポーズをするつもりでいるからである。もちろん結婚をするというわけじゃなくてその言葉を告げてみるということだ。それじゃあ何をする気なんだという話になるが俺にも色々とあってその女性のことを幸せにしてあげたいと思ってるのだ。だが相手は自分の気持ちを伝えていない状態でも俺が他の人と付き合うのを良しとしなかったのでそのことについて話をする必要があると思っていたのだ。だがそのタイミングで彼女は別の男性と付き合い始めたのだ。だからそれを止める必要があると思っていたのである。だがそんな時だったのだ。俺は彼女に呼び出しを受けたのは。俺はそのことに内心喜んでしまった。なぜなら俺は彼女と会うのが楽しみでここ数日眠れていなかったので睡眠不足だったのだ。だがそのことで頭が回っていなかったのも仕方がないと思う。

俺の名前は、真山 春斗という平凡な名前だ。そんな俺が彼女に出会ったのはまだ俺が小学生のときの話になるのだが。それはちょうど俺の人生が180度変わった日の事だと言ってもいいだろう。その時俺はクラスメートに虐められていた。だがそんなときに一人の女の子が現れて、その子が俺をいじめていた子達を追い返したのだ。俺は助けてくれたその子にお礼を言うため、そしてその子と仲良くなりたいために俺は話しかけた。するとその子はどうやらその見た目のせいもあって、友達がいなかったようで俺が話かけるととても嬉しそうな顔をしていた。だがその後俺と彼女が話すことはなくてそのまま卒業してしまった。

そして高校生になった俺は相変わらずクラスで浮いた存在のまま過ごしていた。高校でも中学と同じように俺は周りに馴染むことができないまま過ごしていていたのである。そんな中。ある一人の友人ができる。そしてある日俺のところに手紙が送られてくることになる。その中身を見た俺は、その内容が信じられないものであった。

『貴方を、私の仲間にする』という内容のものだ。そして俺はその文章が本当かどうかを確かめる為に俺はその人の下に行くことにしたのである。そして俺がその場所に着いたときには既にその人物は来ていた。その少女の姿を見て俺はすぐに思い出すことになった。そう。俺を助けた彼女のことをである。

そして俺をここに呼んだ張本人でもある彼女の名前は、リリカ。その人だ。

そんな彼女は俺が突然現れてびっくりしたのか少し固まっていたが。それでも俺は勇気を振り絞って話し掛けることに成功したのである。それからは彼女の家に居候をさせてもらえるようになり。そこで生活をするようになったのだが、その時に俺はリリカから魔法が使えないということを聞かされてしまう。だがそのリリカの言葉には俺は納得ができなかったのである。その理由は簡単である。俺はその魔法について詳しく調べてみることにした。そしてその時に俺は一つの魔法が目に入ってしまい。そしてそれについて詳しく知ることになった。そして俺はその魔法を手に入れるために必死になって勉強することになったのである。

そして俺が魔法を覚えた後は俺は毎日、リリカのために魔法を使っていった。だがそのたびに俺とリリカの体力の差を感じずにはいられなかったのであった。リリカの能力は俺の魔法を使うことでどんどんと上がっていく。そしてレベルが上がった時には、リリカはとんでもない強さになっていた。だが俺はその時になってもリリカは魔法を覚えることができずにいたのである。それからは俺はリリカの体調管理をしていくようになっていき、俺の日常に変化が訪れ始めるようになったのである。そんなある日。

その日の夜に俺たちはそのモンスターに襲われることになるがそこで俺は魔法を使うことができたのだ。それで俺はなんとか生き残ることが出来た。しかしここでまたリリカに助けられてしまったのである。そして俺は自分がこの世界に転移したときに手に入っていた能力についてリリカに伝える。そして俺の魔法によって魔法が覚えられるかもしれないということを説明すると。

「ほんとう?」

「ああ、本当だよ」

そして俺はリリカが俺の魔法を真似して、リリカが俺の魔法を覚えられないか実験をしてみたが、やはり魔法をコピーすることはリリカにはできないみたいである。ただ魔法を発動させることができていてその魔法は、リリカにとって凄い衝撃的なことであったらしい。それからは俺は魔法が使えるようになるために毎日練習を続けていくことになる。

リリカが俺のことを心配してくれているのはよく分かっていたが俺としても魔法が使えなかったのはかなりショックなことだったのだ。だってせっかく魔法の能力を手に入れられたと思ったら全く魔法を使えないと知ったら誰だって落ち込みもすると思う。だけど、そんな状況でも、リリカのおかげで今の俺があると思っている。だから感謝の思いを込めて、この先リリカのことを支えていきたいと、そう思っている。

「え?本当に私のことを助けてくれるんですか? ありがとうございます。

あの、それでですね。

もしもよければなのですけど、これからも一緒にいてくれませんでしょうか。私はその。まだ自分の能力で皆んなと仲良くなることができなくて、一人でいることがほとんどなんです。だからできればこれからもこの国で私と仲良くして欲しいのです。ダメですか?」

「ああ、分かった。俺なんかで良ければこれからもよろしくな」

「え?あ、あの?どうして私に手を差し伸べているの? もしかしてそういう意味で言ったわけじゃなくて。ただのお仲間としての、あれ?」

そして俺はその手を取ると俺は彼女を安心させるためにこう言葉をかけるのだった。

「違うぞ。俺がお前と一緒にいてやるっていうのは単にお前に俺が必要以上に世話を焼かないと、あいつらに追い出されるかもしれねえだろ。俺は別にそっちの意味で言っているんだ」

その発言を聞いたリリカはとても驚いたような表情を浮かべて俺の顔を見つめてきた。そのことに、なんとも居心地の悪さを感じた俺が手を離そうとしたのだが。それを引き止めるようにして、彼女はその手に力を込め握り返してきたのだ。俺はその反応に戸惑ってしまう。

するとリリカはゆっくりとその口を開いた。

「わぁ、嬉しいです。ありがとうございます。あのっ、私も頑張りますね!」

そして俺の手を握ったまま上目遣い気味に笑顔を見せるその姿に、一瞬ドキッとしてしまい。慌てて目を逸らす。するとリリカも恥ずかしくなったのか俺と同様に顔を真っ赤にして顔を伏せたのだ。それから少しの間無言でいたのであるがその沈黙を破ったのはリリカだったのである。リリカは俺に向かって話しかけてきたのだった。それは今後の俺についてのことでもあるのだが俺自身としては非常に不安になる内容だったのである。なぜなら俺は勇者ではなくて一般人なのだと説明を受けたからであり。そのことからリリカは何か勘違いをしているのではないかと思い始めたのだ。それにもし仮に俺がこの世界を救った後に何かしらの見返りを求めているのであれば、それは間違っていると思う。確かに俺がリリカを助けたことに変わりはないが、俺はリリカを助けたのはあくまで俺のためであって決してリリカのためではない。だがリリカはそれでは気が済まないらしく。俺に色々としてくれると言うのだ。だがそれを素直に受け入れることはできなかった俺は、リリカに対してその気持ちだけで充分だということを言って聞かせる。

だがリリカは俺の言葉を素直に受け止めるつもりはないようだ。なぜならその言葉を信じないからである。まぁそのことは当然だと思って俺はそれ以上何も言うことはできないのだが。そこでふと俺は疑問を感じることになる。なぜなら、 俺が助けなければこの世界で死んでいたはずの少女、 その少女を助けることができた。

そしてそんな彼女は魔王軍に殺されるはずだったのである。

なのになぜか生きているし。

なぜかこうして今ここにいる。

それはなぜなんだと、考えてしまうのだ。

ただ、今の時点では何もわからないので。

考えるのは後にしようと、 俺はそんなことを考えていた。

そしてそんなこんながあって。今の状況に至るというわけである。俺はとりあえずこの場を離れようとするが。だが俺の服の袖が引かれて動こうとすることができない。俺はどうすればいいのか悩んでいるとその女性が声をかけてきて俺はそちらに視線を向けた。その女性の名前はリリカと言い。リリカはこの国のお姫様だということが判明したのである。そんな女性である彼女がなぜあんな危険な場所にいるのかという理由について俺は聞いてみたかったが今はその話を聞いている時間はなかった。というのも俺がリリカを逃がすための囮になってくれた男、つまりこの国に召喚された勇者の一人である彼がいつまで経っても戻ってくる気配がなかったからだ。このままだとまずいと思い俺は行動に移すことにする。すると俺の袖がさらに引っ張られ俺はその方向に振り向くとそこにはリリカが立っていて。俺に話したいことがあると、そう伝えてきたのである。その話を俺は聞いたのだが正直意味がわからなかったので適当にはぐらかすと俺がここから逃げ出さなくてはならないことを察したリリカはそれを止めようとして来た。だが今は俺もそれどころではなかった。そして俺が逃げることを決めたことをリリカが確認するなり、俺は走り出したのである。そしてすぐに追ってこないことを確認して立ち止まった俺はリリカの方を振り向いて、大丈夫だったかと話しかけた。するとリリカはこちらを見て嬉しそうに笑いながら話しかけてくるのであった。そしてそんなリリカを見た瞬間。俺はリリカが綺麗で可愛い女の子だということを再認識させられるのと同時に少し緊張していたのである。そのことに、自分から話しかけたというのに俺はすぐにその場から離れてしまいたくなっていた。そこで何とか自分を律して。冷静を装いつつ。これからのことをリリカと相談していくことにした。そして俺がリリカのことを家に送って行くために歩き出す。そしてリリカは、自分の家の場所が分かるなら、帰りたくないと言ったのだ。その理由としてはやはり怖いということらしい。その意見に俺は反対することはできず、だが俺もあまり長い間はいられないことを理解しているようでそのことを伝えると俺の提案を受け入れるようにリリカは俺について来てくれることとなった。それからしばらくの間俺達は二人で会話をしていたのだが、リリカの家が見えて来た。そのことで俺は別れようと口にしようとするのだがその前にリリカが突然俺を抱きしめてきたのである。そしてリリカは俺の耳元へと口を近づけて囁きかけるように、俺の体に自身の体の匂いを付けるために俺のことを引き寄せて、それからは俺のことを離そうとしなかった。俺も流石にその行為を止めさせようとして離れようとしたのだが。リリカはまるで甘えるかのように体を密着させてきたため。俺も抵抗を諦めて大人しくすることにした。そしてそれからしばらく時間が経った頃。

リリカはようやく落ち着いてきたみたいである。俺はリリカのことを家に送ろうとそう考えていたのでリリカのことを家に送ることに決める。すると、その提案に、リリカは渋るような仕草を見せていたのである。そこで俺は、また一緒に遊びに来ることを伝える。するとリリカはとても喜んだような表情を見せてくれたのであった。そして俺達が家に到着する頃にはすっかり夜になっていたが、俺はリリカの家に泊めてもらうことになったのである。そこで俺は初めてこの世界のことについて詳しいリリカの両親に会うことになる。この二人は娘であるリリカのことを愛しすぎている節があり、娘の幸せを第一に考えてくれるとても良い人たちであるように思えたのだ。そのことが俺は嬉しかった。だがそれと同時に。俺もいずれはここを去らないといけないと実感してしまう。だからといって俺にできることなどほとんど無いのだから俺も早くリリカが安全に暮らせるようにこの国のためにできることを考えていかなければならないだろう。そして俺はこの世界に来た時からの自分の変化を感じずにはいられなかった。それは、自分が普通の人とは違う何か特別な能力を手に入れたのだという自覚を得たことだ。俺のステータス欄にはレベルというものが存在しているらしいのだが。その表示の仕方が普通とは違ったのだから、それで俺はなんとなく分かってしまったのだ。

俺はリリカ達からもらったお金を手にすると。そのままギルドへと向かう。そこで冒険者登録をして、依頼を受けて。今日も頑張って依頼をこなしていくことに決めていた。そして俺の冒険者としてのランクも少しずつ上がっているのである。だから、そろそろ受けられる討伐系の難易度の高い任務を受けても良いのかもしれないと考えていた。そしてそのためにはまず、 俺一人で倒せる程度の敵と戦う必要があるのだけど、 俺はそのことに関してはそれほど心配はしていなかったのである。なぜなら俺が手に入れたこの魔法が使えるようになるという能力は、その気になればかなり凄い魔法も使うことが可能だと思われるからだった。そして俺はいつも通り、 その辺にいた魔物を瞬殺していく。すると俺は何かを感じたのである。それは何かの気配がこちらに近づいていると気づいたのだ。そのことに気づいた直後、俺は何かに殴り飛ばされたのである。そして吹き飛んでいく俺は地面を転がった後になんとか立ち上がることに成功したのである。だがその何かが襲いかかってきたのだ。そしてその何かの正体を視認することができた時、俺は目を見開くこととなる。その何かは、オークと呼ばれる怪物の姿形をしていた。

しかしそんな化け物が俺に攻撃を加えてきた理由は分からなかった。なので俺はとりあえず戦闘に入ることに決めた。そこで俺が構えると、目の前の相手はなぜか攻撃を止めたのだ。そして何やらもぞもぞと動いている様子であり、俺にはよくわからなかったけども。どうやらそのオークはなぜかズボンを脱いで下半身丸出しの状態になった後で。俺に向かって飛びかかってきたのである。

そして俺に馬乗りになると、その大きなモノを使って俺を犯し始める。そのことに、俺はとても困惑していたのである。そしてその光景に呆然としてしまっていた。

「なっ、何が目的なんだ?」

俺は戸惑いながらも問いかける。だが俺の言葉を聞いたはずの相手の返答はなかった。

そして、俺はそのことに違和感を覚える。だってそうじゃないとおかしいんだ、だって俺はこんな状況なのに一切恐怖を覚えていないんだから。でもそのことは特に気にしない。ただ今問題なのはこの状況をどうやって切り抜けるかだ。俺は必死に頭を働かせていく。そしてどうにかして、この場を切り抜けないといけなくなった。だが相手が人間ではないということは確かだと思う。それにあの時の感触は絶対に人間のものとは思えないほどに大きくて硬かった。

俺はどうしようかと考えているとふと思うことがあった。俺が倒したあのオーガの死体を収納空間に回収していることがバレていたら、もしかすると襲われる理由になるのではないかと考えたのである。

そこで、俺はまずはオークの攻撃を避け続けることに決める。幸いにして相手はあまり力が強くないようで。簡単に振り払うことができる。そこで俺は思いつきを実行するために行動に移す。

それは、俺がこの相手を操れないかどうかと試すということだ。そしてその結果はすぐに出ることになる。

そしてその方法というのは簡単なことだった。

俺の魔法を使えばいいのである。

そこで俺はまず、相手の体の一部に触れることを試みる。

そして触れた箇所に向かって、俺は念じるようにして言葉を紡ぐ。

するとその言葉に反応して。オークの動きは止まり、俺に襲ってくることは無くなった。

そのことで俺は確信を得る。この相手に命令をすることのできる力は間違いなく本物だとわかったのである。俺はこの力を上手く利用できれば、 きっと、もっと効率良く魔物を倒すことが可能になるだろうと、俺は考えるのであった。

ただ俺はこの時忘れていたのである。オークの発情状態がいつ終わるかわからないということを、 そのため今はひたすらに避け続けているのだ。そしてしばらく経つと、急に俺の上で動いていた相手が激しく震え始めた。そしてその瞬間にオークは絶頂を迎えたようである。そのことから俺はこの行動によって、どうやら俺はオークに勝ったようだと判断した。俺はそのことが分かり少し嬉しかったのである。そしてオークはその場に倒れ込むと、俺の上に乗っていた状態からどいてくれていたのであった。その後でオークはその場に立ち尽くすだけで何も行動を起こすことはなかった。それからしばらくしてその巨体が霧のように霧散してしまったのだ。そして後には一つの小さな石のようなアイテムが残ったのである。それを拾い上げた俺はそれが一体どんな効果がある物なのかを調べようとしたのであるが、鑑定を行うとその石に書かれていた文字を見て。これはもしかしてと思ったのである。その石の文章の内容は。

――その効果により魔核が解放されました。スキル『支配』を獲得いたしました。

俺はその説明を見て驚いた。そしてその効果を確かめてみる。すると、確かに先程まで使えなくなっていた魔力感知能力が使えるようになっていた。

「もしかして、これが、この世界の法則とかルールを変えたって言うことなのか? だったらやっぱり俺の力はこの世界に変革をもたらしてしまう可能性があるということだよな。それならあまり使わない方がいいのかな」

そこで俺の脳内では女神が俺の疑問に答えるかのようなことを語りかけてきた。それによるとこの世界の生物にはもともと備わってない力があるという。それはその者の生まれついて持っている属性が、魂の波長というものに影響を与えることで、様々な現象を引き起こすと言われているそうだ。つまりその波動というものは、この世界の生命体は皆同じように持っているらしいのである。だがこの波動の強さはその生き物が生きている間ずっと変わることはないらしい。そして俺の持つ魔法とは、それらの生物の生命エネルギーのようなものを利用しているのだとか。ちなみに、その種族がもともと持っている力を使う場合。その力が強ければ強いほどその効果は大きくなる。ただし、使用者の能力に、よりその能力は大きく左右されるという。そのことからも、俺は俺の手に入れた魔法の効果がどれほど凄まじいものなのかを自覚した。

そこで女神がまた何かを言い出した。どうも俺の中に存在する魔王の存在のことを言っているらしいのだが。それはどういうことだろうと思っていると、突然視界が変わったのである。

その事に俺は混乱するのだが、目の前の景色は俺の知らない場所に変わっているようで。俺はその景色に見覚えがあった。

その光景はまるで巨大な図書館といった印象を受ける場所である。俺はこの場所で調べものをするために何度か訪れたことがあったのだ。そのことを確認すると、俺はそのことについて理解できたのである。どうやら俺の中に存在するもうひとりの俺はここで、知識を得ているようだ。

そこで俺はそのもう一人の自分に会うため、その奥の部屋を目指すことにしたのである。そこで部屋に入ると、そこには一人の少女がいた。その少女は本を読んでいる最中のようだった。俺は彼女に話しかけようと近づいたところで、 そこで彼女はこちらに気づき顔を上げる。そしてなぜか固まったままの状態でこちらのことを見たのだ。そして彼女はすぐに、本を机の上に置くと立ち上がったのである。

そこで俺は目の前にいる女性の姿を確認した。彼女はとても可愛らしい女の子であり、年は十五歳程度だろうか。背の高さはかなり低くて俺とほとんど変わらないくらいであり。そして肌の色は透き通るような白色だ。髪は銀色に染まっており瞳は紫色をしている。この子もまた俺と同じ存在であることを感じ取っていた。それは直感的にわかってしまったことである。そのことから俺には目の前の彼女の正体も大方予想ができてしまったのであった。すると、 その少女が口を開いたのだ。そしてその口調は見た目相応の子供らしさの欠片もないものであり。俺は少し戸惑ってしまう。だけどそこで彼女が名乗った名前を聞いて、目の前の子がいったい何者であるのかを理解する。

リリカの家の近くにある林の中にはたくさんのゴブリンたちが生息しており、彼らは普段は森の奥にいてそこから出てくるようなことは滅多にないというのに。その数は異常に多くなっているらしく、それでギルドから調査依頼を受けることになったというわけだ。そして、その依頼を受けたのはリリカであり、彼女とそのパーティーメンバーは依頼をこなすために森の中へと入って行った。俺も一緒に同行していいか聞くと、 リリカたちは俺のことを仲間として扱ってくれて、依頼を一緒に受けることにも快く了承してくれた。なので今回ばかりは他の冒険者たちとも一緒に行動することになると思っていたが、 なぜか、俺達以外の冒険者の姿はなかったのである。

だから俺たち三人だけでその依頼をすることになったのだ。だけどもその理由については俺は既に察しがついている。恐らくはあのオークが現れたことが原因なのではないかと俺は思っている。オークは普通のゴブリンよりも遥か上に存在する魔物であり。そんなものが突如現れたとなると、この村の人たちは不安になってしまうに違いないからだ。だからこそ俺と、他の人たちの実力の差を考えてあえて俺達のチームだけに任せたという可能性もあるのかもしれないけどね。

でもまぁとりあえず、 俺達はゴブリンたちの群れの退治のためにその森の奥へと向かったのである。

そこで俺とライルが前に出て、残りの二人は後方に控える形になったのである。そうすることで俺は二人の援護に回るつもりである。ただそれは同時に、俺は攻撃手段がないということを周囲に晒すということになりかねないのだが。

俺はそう思っても、その判断を変えることはなかった。というより、変えてはいけないと思った。なぜなら俺はこのチームの中のリーダー的存在であり。そのリーダーの言うことに逆らうということはメンバー全体の意思に反してしまうことになる。それに俺の能力は仲間たちにとっては切り札のようなものなのだ。その力のことはできれば知られたくないし。

そのため俺は後方待機で構わないと考えていたのである。そうすれば、もし仮に誰かに俺の秘密を知られたとしても。この二人であれば誤魔化せる可能性は高いと思うし。

俺はまずは相手の戦力を測りたかったのである。そのためにまずはこの辺の魔物を鑑定してみることにした。その結果わかったことはゴブリンたちの中にもレベルの高い個体が存在しているということである。なので、

「まずは相手の出方を伺うか」

そう決めた後でまずは先制攻撃を仕掛けるために俺は走り出すことにする。すると相手もこちらに向かってきたのである。ただ、その様子は明らかに俺を敵だとは認識しておらず、その動きはとても緩慢なものになっていた。それを見て俺は相手が俺に対して脅威を感じることができないのだと判断したのである。

そして相手の攻撃を紙一重で回避することに成功する。そしてそのついでに俺に殴りかかって来た奴の手首を掴んだ後に投げ飛ばしたのである。そのことに俺は違和感を覚えた。なぜなら俺は今かなりの速度で動いて、相手には目視すらできていないはずなのにである。でも相手の反応は普通ではないかったのだ。

そしてその事実に気づいた瞬間に俺の中で警報音が鳴り響くのが分かった。それは、この魔物が異常な存在であるという証明でもあったのである。

俺はすぐさまその場から離れようとしたのだが、それよりも先にそのゴブリンの拳が飛んできて、それが俺の顔を捉えたのであった。

俺は地面に転がり込みながらも何とか勢いを止めることに成功していたのだが、その時に自分の鼻がへしゃげて変形していく様子が視界に映った。しかもそれがどんどん加速しながら治っていくのだ。

そこでその痛みが一気に俺を襲う。

「な、何なんだこいつは」

その痛みによって、俺はまともに動けなくなる。しかし相手はその隙を逃すまいと俺に近づいてきたのである。俺はそれでも何とか体を起き上がらせる。すると今度は横からの打撃を受けて再び俺は吹き飛ばされたのだ。その時には俺の顔の傷は元に戻ってはいたが、衝撃によって頭の中が激しくシェイクされていたのである。そのおかげで俺の思考能力はかなり奪われてしまったのであった。そしてそのことがさらに状況を悪化させた。

次の一撃が来る。俺はなんとかその攻撃を避けようとするが上手く行かずに腹部に強烈なダメージを受けて、地面を転がるようにして木に叩きつけられてしまったのである。そのまま俺は気を失ってしまうのだが、すぐに意識を取り戻して立ち上がろうとしたところで。先程とは別のゴブリンが俺の前に立ちふさがって来る。どうやら俺が倒したのとは別に二体いたらしいのだ。そこでその一匹がこちらの様子を伺いながら仲間を呼んだのである。

そのゴブリンの声を聞きつけて、周囲の草むらの中から次々に別のゴブリンたちが姿を現して俺を囲むように陣取り始める。

俺はそれに対して舌打ちをするが、今の俺の状態は万全ではなくて戦うのが難しい状態であった。だがこのまま何もしない訳にはいかないと思い剣を構える。しかしその腕にもダメージが残っているせいか、力がうまく入らないのが自分でも分かってしまった。

「こんな時に俺に何か力があれば」

俺は悔しさを噛みしめていたのである。

すると、そこに俺達以外の声が聞こえて来た。それは俺にとってとても聞き覚えのある声。そしてその人物こそが、

「お前たち、何をしている!」

ライラさんが助けに来てくれたのだ。その事に俺も他のゴブリンたちも驚愕してしまう。なぜなら彼女はこの村の人間である。だからゴブリンたちと敵対関係になっているはずである。なのに彼女はここに来て助けにきてくれた。そのことについて俺はかなり驚いてしまい言葉が出なくなってしまう。すると、そこで彼女が、

『貴方が私の知り合いであるからという理由は一つだけだ。だから、もう無理をせずに下がっていて』

と俺に伝えてきたのだ。そのことに対し、俺はまだ戦えると言っても信じてもらえないだろうと考えてしまい口をつぐんで黙ってしまうのだが。

そこで俺は気づくことがあった。そういえば彼女は魔法を使うことができたはずだと。なので俺は魔法を使ってもらうことにしたのである。すると俺の中に宿る精霊王と呼ばれる存在の力を借りる形で、ライラさんの魔法を使うことが出来たのだ。その魔法は広範囲に氷を発生させ相手を凍らせて動きを止めたり、さらには巨大な槍を生み出す魔法であった。それらの魔法を使った結果。周囲は一面銀世界となり。さらにゴブリンたちはその魔法により完全に動きを封じられていたのである。俺はその様子を見て呆然としていた。そしてライラさんの魔法の威力の高さを改めて感じ取ったのだった。そして、その後、 俺はライラさんに謝られた。どうやら俺を助けに来たら、既に戦闘が行われていたようだということで。彼女は俺の身を気遣い心配してくれていたということだ。そんな彼女に俺は本当に嬉しく思うと同時に、申し訳なく思ってしまった。だから彼女にお礼を言いながら謝罪をしたのである。するとそこで俺達が会話をしている間に拘束から抜け出したのかゴブリンが数匹、こちらに向かってきたのである。俺はそれを迎撃しようと構えたが、その前に彼女が手を出して止めたのだ。そして俺の代わりに彼女は前に出る。そして向かってくるゴブリンたちに右手を向ける。すると、ゴブリンたちに向かい氷が降り注いだのである。

そこで彼らはその攻撃によって全身が凍りつき身動きが取れなくなったのであった。そしてそのまま動かなくなり沈黙したのだ。そのことにライラは満足気に笑みを浮かべているように見えたのである。

その光景を見ながらやっぱりこの人はすごい人だと思った。だってライラさんの魔法のレベルがあまりにも高すぎるからだ。

そう思いながらも俺は疑問に思ったことを質問する。どうしてこの場所まで来たんだという事をだ。それは彼女の強さを考えるならば一人でこの程度の数のゴブリンを相手にすることは簡単だろうと思ったからである。しかし、

「私は今回の件については直接関わっていない。そして私の役割はこの村の防衛であって調査依頼に関しては管轄外なんだ。つまり、この依頼を受けた時点でそれはギルド側に任せれば良いということになったんだよ」

そういうことなのかな? 俺はよく分からないので彼女の意見に素直に従う事にした。そうしてこの場は解散となったのだ。ちなみに他の冒険者たちについてはこの森の奥深くに生息しているオークのせいで依頼を諦めて帰ってきたそうだ。だから今は村に誰もいない状態であるとのことだった。

俺はとりあえず家に帰ることを優先するためにリリカに声をかけて一緒に戻ることになる。そこで、ライルとも別れることになる。だけど、

「リリカちゃんのことよろしくね」

「あぁ、任せておいてくれ」

という挨拶を交わすことになるのである。それを見て俺は、ライルならきっと大丈夫だと思いつつ家路についたのであった。

さて、家に帰ってから色々と話を聞くことにしよう。

俺はリリカと共に家に帰ってきてから話をすることにしたのである。というのも、実は今回ゴブリンと戦った時に、あのスキルの使い方をなんとなく理解できてしまったからだ。あの時俺は自分の体が動くようになったことに気づいていたのである。だからこそ俺は、あの時の状態を再現しようと思ってみた。そしたらあっさり出来てしまったので正直驚いてしまったのは秘密であるが。

そうして俺達は家の中に入る。そこでリリカは、

「まずは着替えてくるからリビングでくつろいでいてくれるかな?」

と言うので分かったと答えてから俺はソファーに座ることにしたのだ。そこでふと思う。なぜリリカは俺と一緒に暮らし始めたのだろうかという事についてだった。そのことについては俺もかなり気になってはいるのだ。

俺達は昨日初めて出会ってお互いに自己紹介をして別れただけなのだ。それなのにこうして一緒に暮らしているというのはどうなることかと思っていたのだが。ただその理由が未だに分かっていない。なのでもしかしたらリリカにはなにかしらの理由があってこのような行動に出たのではないかと考えているのだ。

それに、俺は彼女が何者かも知らなかったりしている。なのでその辺りも含めて話をすることにしようと思っているのだが果たしてどうしたものかと考えていた。

ただまぁとりあえず俺が考えるのは後にしようと思ってソファーに座ってゆっくりし始めているのだが、そのタイミングでなぜか扉をノックする音がしたので俺は立ち上がってドアノブに手をかけて開ける。

するとそこに立っていたのはエカテリナであり、しかも、なぜか頬が膨れているのだ。

「むー、お姉さまばかりずるいのです。あたしも一緒に暮らすはずじゃないのですか!なのにいつの間にか二人だけで住むことになっているのですよ!」

と言われてしまったのである。それでどう答えていいのか迷っていた俺であったが、ここでリリカが現れたのだ。しかも彼女はこの現状を見た瞬間固まってしまっていた。それもそうだろう。俺だって突然の事で何が何だかわからなくなって混乱していた。

そんな状態で俺達は何もできずにいたのだが、最初に動いたのはリリカの方であった。すぐに正気に戻った彼女はすぐに冷静に俺達に説明を始める。その内容はこんな内容だったのだ。なんでも彼女は俺の家に引っ越してきたかったのだという。だが彼女はまだ学生であるという理由で、親に止められていたそうなのである。しかし、今回の事件で両親の許可も取れたようなのだ。それで俺達の元へやってきたらしいのだ。でも俺は別に嫌ではないので問題はないんだけど、俺と同居するといろいろ面倒な事があるかもしれないよ? そう言う意味で俺は注意をしたのだ。

すると彼女は笑って大丈夫だと胸を張って言ってきたのである。

「あたしこう見えてもお兄様のために頑張れる子ですの」「え、お、俺のためってどういう意味なんだ?」

そのことについて俺は思わず聞き返してしまう。だけどそこでリリカが笑顔を返してきたのである。

「それはこれから分かることになりますの。ですので安心して欲しいのですの」

「そ、そうなのか?」

俺はいまいちその言葉に納得できなかったのである。だけどリリカが俺に対して嘘をつくとは考えにくく、また彼女なりに覚悟を持っての行動だという事が分かり、それ以上聞くことはしない事に決めたのである。

そんな訳もあり俺は彼女をこの家に招き入れた。

「改めて、あたしはエカテリナさんのお世話をさせて頂いている妹のエカリーナと言いますの」

そう言ってペコリとお辞儀をしてくる。

その仕草は礼儀正しく、見た目とのギャップが凄いなと俺は思う。というか姉妹の割には結構身長差が大きいように見えるけど。妹さんが小柄なのもあるだろう。

「俺がタケル。こっちにいるのが妻の」

「妻ではありませんが」

「ん?なんか言ったか?俺には聞こえなかったんだが」俺がリリカの方に視線をやると彼女は首を横に振っているのが目に入った。どうやら俺の勘違いのようである。という訳で俺は、

「こちらの美人が俺の妻である。名前はリリカと言う」

と言ったら今度はリリカの方が顔を赤くしながら慌てている様子が伺えたのであった。

そして彼女は少し慌て気味になりながらも俺に尋ねてきたのである。

「そ、その、奥様がこの家に来たのは初めてではないんですよね」

と確認をするように言われて俺は、確かにそうだと思い、俺はこの世界に来た時にリリカと出会い、そして結婚をしていると説明したのだ。それを聞いた途端に、エカリーナは目を丸くさせており、俺の事をまじまじと見てきたのだ。

俺は、その表情がなんなのか気になったのである。なので彼女に尋ねると、どうやら驚いたらしくその理由はこんなものだった。

「だってその年齢でそんなに強いなんておかしいと思ったんですの。という事はお父様に鍛えられたということですね。だったら強いのは当然かもしれませんわね。お母様も強かったという話を昔聞いていたことがありましたもの」

と俺の事を見上げながら告げたのであった。そこで、ふと気になったことがあったので、俺は彼女に質問する。それは彼女が先ほどから、俺のことを"お兄様"と呼んでいたので気になっていたのだ。俺がそのことを質問すると彼女は恥ずかしそうにしてこういったのである。それは自分が養子であることを説明し始めてくれたのだ。だから自分はこの村の領主の娘であると同時に村長の娘でもあったことを語ってくれたのである。そこでふと思い出したのである。そういえば領主の名前聞いてないぞ?確か名前を教えてもらう約束してたんだったっけな? そんな事を考えつつも俺は彼女の話を聞き続けた。彼女は自分の出生を話してくれて最後にこんなことを言われたのだ。

「この村は元々エルフの里として存在していたのですが、ある時人間族の侵略を受けて里の民のほとんどが攫われてしまいこの森に捨てられていたみたいなんですの。そんな中たまたまその時期を生きていたあたしは助けられ育てられていましたの。ですがその時にはもう既に両親と引き離されて一人ぼっちになってしまっていて。寂しかったのです。そして偶然この村を通りかかる人に拾われたんです。それがあたしを育ててくれるお婆ちゃんで、あたしにとても良くしてくれた人でもあるの。そこで、そのお婆ちゃんから色々聞いたの。そうして色々な種族の話を聞いていて、ある日そのお婆ちゃんが亡くなったときにあたしは思ったの。この村にもっと沢山の人達が幸せに過ごせるようにした方がいいって」

「だから冒険者ギルドの受付嬢をして、他の場所の情報を集めてるってことなのか?」

俺の言葉に、エカリーナは無言のままうなずく。

俺はその彼女の様子を見ながら、俺が想像していたよりもかなり重い過去があることを知り同情してしまう。だけどここで、リリカも同じように悲しい顔をしていることに俺は気づいたのだ。なので、

「どうしたんだよ二人共?」

と俺は問いかける。するとリリカが、悲しそうな顔をしながら、

「私の両親がその、魔物の襲撃によって命を失ってしまったので」と言って来た。そうか、そうだよな、辛い思いを抱えてきた人たちばっかりなんだもんな、この村の人たちは。俺はそう思ってリリカの頭に手を乗せて撫でてあげると、リリカが気持ち良さそうな顔になって、そのままじっとしている。それからしばらくしてからようやく落ち着きを取り戻してから、彼女は、話を続けたのである。

ちなみにエカテリナの方を見るとエカテリナも涙目になっており、それを見てつい、可愛いと感じてしまったのは内緒である。まぁでも実際この子は本当に可愛くて仕方がないから俺としては困りものである。それにしても俺には前世での兄妹はいなかったからなんとなく妹ができた気分になれている。それに俺にはこの世界でリリカがいてくれるしね。まぁリリカはそんな俺に対して、姉だと思ってくれていいと言っていたので、そう呼んではいるのだが。そんなこんなもあり俺はエカリーナの話を黙って聞くことにしたのである。そして彼女はその思いを告げてきたのだ。ジャンル:現代(?)恋愛 俺とエカリーナはリリカの家で夕食を食べる事になった。今日はいつも以上に張り切ってしまったせいか、気がついたときには結構な量の料理が出来上がっていたのである。それを見た俺とリリカが呆然としたのは言うまでもない事だろう。まぁとりあえず俺達はその大量の食事を食べ終えてから話をすることにしていた。ちなみに俺とリリカとリリカの家族は一緒に食事をする事が多い。なぜかと言えば俺とリリカが二人で食べる量と、エカリーナが一人で食べる量がほぼ同じなのだ。なので俺が二人分の量を作ればいいだけだ。それに俺達が美味しそうに食べてる姿をみたエカテリナが一緒に食べると言い出したので、それ以来こうなったのである。という訳でその日の夜は家族揃って食事をしているというわけなのだ。そんな訳もあって俺はリリカとリリカの家の住人達とも仲良くなっている。そんな感じに俺は過ごしておりエカリーナとは毎日会っていたのだがリリカと一緒に暮らすようになった今の方がより仲がいいような気がしている。それにこの村は本当に良い所だと改めて思うようになっていた。

そうしてリリカの家に居候してから三日目になるのだが、俺はある人物と出会う事になる。その人物は俺の住んでいる家へと訪れたのだ。

その相手というのはこの国の騎士長でありリリカの父親でもあり俺の親友であるライゼンであった。

俺は、その人物が目の前に現れたことで驚いてしまい何も出来ずにいた。なぜなら彼は普段このような所に姿を見せない存在だからである。しかも彼の姿を見るなり俺だけではなく、俺達の周りに座っている人々も皆が驚いた顔をしていたのだ。それは無理もないだろう。この村の騎士団の頂点にいる人が俺のところにやってきたのである。それも何か目的があってきたことは容易に察する事が出来た。俺は、彼が俺に会いに来たのかリリカに用事があっただけなのか判断に迷い、どちらにせよこの村ではまずいと判断しリリカに合図を送った。すると彼女もその意味を理解したようで俺の隣に腰を下ろした。

俺達の態度からただならぬ雰囲気を察知したのであろう。俺とリリカの事を睨みつけてくる騎士長の姿。だけど、俺達にはその眼光を正面から受け止める覚悟があり、そんな様子で見つめ返してしまったのである。

そんな俺とリリカに対して何を勘違いしたのか、騎士長はこう言ってきたのだ。

「まさかお前ら、この国の勇者様であるタケル殿とその妻であらせられるリリカさんに対して、無礼を働くつもりではありますまいな?」

この言葉をきいた村人たちから「やっぱりあの子も勇者様の関係者だったのかい」「そりゃそうだよな、あの顔を見ちまったら。あんな美少女なかなか見たことねえ」などと言っている声が聞こえてくる。だが俺はそれを否定する言葉を放ったのであった。というか否定しなければ俺がやばいことになる。だって、隣にいるリリカの機嫌が悪そうな表情になっていたからである。

そして俺はリリカに向かって、目配せして彼女に助けを求めた。するとリリカはすぐに理解してくれてうなずいて見せてくれてた。

そうしてなんとか事なきを得てほっと安心してるとリリカが立ち上がり、

「失礼しました。お父様。私達はお二人の事を知っているんです」と言った。しかしそれを遮るように再び騎士長が話し始めるのである。しかもその口調に怒りの色が含まれていたのだ。その言葉を耳にしたリリカと村人がざわついている中、その男は更に続ける。

「貴様! やはりこの国に害をなす為に近づいていたんだな!! こうなればこの村の住民共々切り捨ててやる」

と叫んでいたのである。

そこでエカリーナは「待ってください」と叫ぶ。そのエカリーナに気がついた村人がこちらを見てくるがエカリーナが手を横に振り、視線で騎士長を止めようとしている姿が伺えたのだ。そして俺はそのエカリーナに心の中で感謝をしていた。もしも止めなければ、大変なことになっていたに違いないと思ったから。そんなこんなあり、村人の皆さんの意識を自分に向けた後で、エカリーナはこんな提案をしてきたのだった。

それは、自分達に敵意がないことを証明するために、これから模擬戦をしようと言って来たのである。俺がそのエカリーナの言葉に驚きながら聞き返す。

「なにぃ!? そんなんで信じてもらえんの?」

その俺の言葉を聞いたエカリーナは「大丈夫ですわよ」と微笑んでくれると、リリカと二人で村の中央広場へと向かったのだった。

そうして村人達が集まっている中、村の中心にあった建物の前に二人が並んで立つ。そして村人から向けられている殺気にも似た緊張感を感じながら、二人は互いに剣を構える。そうして、

「はじめ!!」という掛け声とともに模擬戦が始まった。

そうして模擬戦は始まってすぐ、お互いが間合いを取るかのようにして動き始めた。そして最初に動いたのはリリカだった。彼女は地面を蹴った瞬間に一気に距離を詰めるのと同時に剣を繰り出す。だけどその斬撃を軽くよけられてしまい空を切る形になってしまう。そしてその隙を狙っていたエカリーナはすぐさま次の攻撃に転じていた。今度はリリカが距離を取ったのでそこを狙ったエカリーナが斬りつけるが、それも簡単に避けられてしまい、そして反撃に出られてしまう。そんな一進一退の戦いが何度も続きお互いに有効打が出ないまま時間は過ぎて行くのであった。そして村人たちは二人の息のあった動きに驚いていたが俺は内心で感嘆していたのである。なんつー戦いをするんだこの二人って。そしてしばらくすると、二人の間に沈黙が訪れる。

「ふむ、どうやら私の勝ちのようですね。リリカちゃん」

「くっ」とリリカは悔しそうにエカリーナにそう言われて歯噛みするのだった。

こうして俺は村の人々の目の前でこの国でトップレベルの実力を持った人間を倒した事で一躍有名となってしまったのはいうまでもない事だと思う。そうそう、この時エカリーナの年齢を聞いて驚いたのは言うまでもない。俺よりも二つ上だったという事実を知ってびっくりしたのはいうまでもないけどね。でもこれで村の人々が警戒しなくて済むようになったのは確かで俺としても助かったんだけど。ちなみにこの勝負は引き分けということになった。というのも、エカリーナの方は体力の消費が大きくこれ以上の続行が不可能と判断したからだ。俺も俺でちょっと手を抜いてしまった部分があったし。リリカの体の動きを見て、本気で戦った時の感覚を思い出せていなかったのが敗因かなと思っている。

で、俺のステータスを確認してみるとこんな感じに変化していたので紹介しようと思う。

【ステータス】(名前:レベル1職業:勇者/魔王軍四天王)

称号 勇者(Lv3/100)

能力値(合計100ポイント上昇カッコ内はスキルによる補正分 HP 30

(5UP+25 MP 20 STR 45 VIT 35 AGI 65 DEX 55 INT 10 SP0 MND 40 残り215 状態異常無効 LUK 15 STP 5(振り分け可能 スキル 経験値増大(Lv10)

成長率増加 剣術(MAX→∞)

槍術(MAX→9)

弓術 馬術 体術 盾 防御 隠密 索敵 罠解除 魔力回復量増加 生活魔法 料理 木工加工(鍛冶)→(錬金術→料理 錬金 採取)

気配感知(気配隠蔽 気力操作 → 精神統一 気闘法)

火属性耐性 土属性耐性 風圧軽減 魔力効率増強 詠唱短縮 魔力吸収(魔力循環気功制御 無呼吸連打 連続魔拳連舞 残像拳 虚実乱撃 幻影足 瞬動)

言語変換 収納 鑑定 偽装 変装 追跡 夜目 嗅覚強化 聴覚強化 視覚共有 並列思考 多重処理 速度向上 毒無効化 恐怖耐性 麻痺無効 即死回避 転移 飛翔 物理結界 魔法の巻物使用可 特殊魔法 召喚 契約 自動操縦 解析 称号 勇者 エカテリナの婿 リリカの夫 勇者と嫁達の父 エカテリナとリア充の道を歩んでいる ハーレムの主人 性豪 ドスケベ 愛されている男 愛のあるS〇Xを常に行うものに与えられる。効果は、常時、魅力大アップ。さらに相手からの好意が上がりやすくなる。

愛妻家の称号を獲得すれば、効果が上がる。ただし妻一人限定である。また、妻は自分以外の妻が居た場合はその人も含まれる。

愛の守護者 エカリーナに認められた者が与えられる。エカリーナの寵愛を受ける事ができる。その効果として魅了に対する完全耐力を持つことができる。

エカテリナに気に入られる その恩恵を受けれる。

エカリーナに認められた者の証。この紋章を持つものが近くに存在するとエカリーナに守られる。ただし、相手が男性であれば、魅了などの精神攻撃に対しては完全なる防御にはならないので注意が必要である。なお、その効果は永続的に持続するので安心してほしい。このアイテムを持つ者はエカリーナから特別な力を貰う事が出来るようになるのである。しかし、それを手に入れるためには彼女の好感度を上げる必要があるのである。そのためこの紋章を持っているからといってエカリーナに惚れられるとは思って欲しくはないのだ。エカリーナからこの紋章をもらった人は全員このエカリーナから貰ったアクセサリーを身につけることで彼女からの加護が得られるのだ。そのアクセサリーは首飾りや髪留めなど様々ある。ただ、それを身につけていれば彼女に近づくことが出来るというわけではない。彼女がそれを渡している人物だけなのだから。しかし、彼女からは何かしらのサービスは得られると思うので持っていて損はないはずだ。それに、彼女から直接贈り物を受け取るというだけで名誉なことだと言えるはずなので、頑張ってほしいと私は願っている。

称号 美の女神に認められし娘を妻にした英雄王 リリカと結婚した英雄王に送られる 美の女神様と仲がいい人に贈られる。美の女神が認めた男にのみ与えられる。この効果が付与されることにより相手の異性から好意を得られることになる。この効果は永続的なものになるのである。その期間は一年間のみ。その間にその効果は消え去る。

神速の速さを得たものに与えられる称号。敏捷性が1.5倍になり、移動速度が格段に上がるのである。この効果は半年に一度付与されリセットされるのだけれど、それまでの間はずっとこの能力値が適用されるのだ。その期間が終わったあとはこの効果は消えることになるのだ。だから今のうちにできるだけ速く移動する訓練をしておいた方がいいだろう。

その日を境に村人達の間でも俺たちに対して好意的な目を向けるようになったのである。そして村人達にお土産として俺が作った味噌などをたくさんおすそ分けしたりして友好的な関係を築いたところでその日の晩飯を食べに行こうとしていた時、エカリーナから話しかけてきたのだった。それは今後の話についてだ。まずエカリーナがこの村に住むことにしたことを村人達には伝えていて納得してもらっていたようだが、その理由については俺の妻になるという事を村人に伝えたら、あっさりと受け入れてもらえたそうである。

そこでリリカはエカリーナから話を聞いて驚きのあまり口をパクパクさせていたが俺にとってはありがたいことであり、エカリーナとリリカにそのことを伝えるのだった。そんなエカリーナは自分がここに住まうことは確定していることなんだが、とりあえず今はリリカと二人で暮らしているこの家で一緒に暮らすことになっている。そのエカリーナの提案を聞いて俺はすぐに賛成したのだが問題はそこではなくリリカだった。

その問題とはリリカはこれまで通りこの家に居候を続けるということだった。だけどそんなことはさすがに許可できないという俺の反論によって、その問題を解決するためにエカリーナがリリカにある条件を出したのだった。その内容とは俺にリリカを抱かせるというもので、それでリリカは俺の家に泊まることが許されるようになったのである。そのリリカが俺のところに泊まった翌朝は朝早くから起こされることになってしまったのは仕方ない事だと思いつつもエカリーナの策略に乗せられてしまったのはいうまでもない。だってリリカがすごく可愛くて我慢できなくなったんだもん。そう思いつつ俺も負けず嫌いなのか、その日から毎日リリカを抱いてしまいエカリーナの策謀通りの結果になった事は言うまでもない。そしてそんな日々を繰り返して行った末に俺も慣れてきて、最初のころのように緊張しなくなったことで余裕を持って接することができるようになってきてこの村にも馴染んできたのであった。

それから数日経って俺もだいぶ村に溶け込むことができていた。

「おはようございます!!」

俺は村の広場に行くと村長をはじめ、村の大人達がそこに集まっている事に気づいた。そんな彼らに朝の挨拶をしながら近寄っていくと一人の老人にいきなり怒鳴りつけられてしまう。

「このバカ息子め!!お前はいつまでここに留まっているつもりじゃ?!さっさと自分の家に帰って妻たちの面倒を見んか!!」

「父さん、落ち着いてください。」

そういって、俺の父親らしき人物が怒り心頭でそう言い放った後、隣にいた母親がそう言って宥めると俺はいったいなにが起こったのかが分からずに困惑するしかなかった。でも俺には家族がいたのだと知って少しホッとした。すると父親が今度は優しく俺に接してくれるようになり、これまでの事を説明してくれたのだった。それによると俺の母である女性は病気で倒れてしまってこの村で療養中だったらしいのだが俺のせいで村を離れられないで困っていたのであると言う。しかしそれでも父親は最後まで頑なに反対を続けていたようで結局母親の意思を尊重する形になっていたそうだ。

その後俺は母さんの様子を見るため急いで帰宅することに。ちなみに父は村での用事があるらしくまだ残ると言っていたのは言うまでもないだろう。そんなこんなあって俺の住む街に戻ってこれたのはもうすぐ夕方になる頃だったと思う。そこから家に帰るのに丸一日かかったわけで。でもようやく戻って来れた。

俺の家はこの街の中心部にあるため人が多くてとても活気がある。しかも街の端に住んでいる人達に比べて裕福であるために裕福な商人や貴族の人達もよく訪れるほどに栄えているのが自慢の街でもあった。

そんなことを考えながら街中を通り過ぎていき我が家にたどり着いたのだった。そして家の中に入ってみるとなぜかいつもとは違う雰囲気を感じることに違和感を覚えながらも家に入るためにドアノブを握った瞬間である。

ピキーン!!!

(え、なんだこれは!?この感じってまさか結界か?)

なんとその結界の発動によって弾き飛ばされるという事態に陥ったのである。それに驚いて思わず叫んでしまったのだが。

「きゃああああっ!!」

その叫び声とともに俺の視界が変化していって。

目を開けたらそこは森の中で俺は一人立ち尽くしていた。周りを見渡すと見覚えのある景色が広がり懐かしい感覚にとらわれてしまうのと同時にここはゲームの世界だということを思い出したのである。

俺の住んでいる国はアデン王国といって現実世界の日本とほぼ同じ歴史と文化を持った世界である。そのため通貨単位や建物などは現実世界のものとまったく一緒でその違いを見つけるほうが難しいほどであるのはもちろんの事。その国の王様が統治していて平和そのものの素晴らしいところだった。だがこの国に一つだけ問題点があったのだ。それがいわゆる剣と魔法のファンタジー系のゲームのような世界であるという点である。もちろんそのゲームとは現実に存在するものではあるのであるが、どう考えても現実的じゃないものばかりなのだ。例えば魔王軍と呼ばれるモンスターの軍隊が存在しているとかね。だから俺はこの世界の勇者となってみんなを救い出す役目を与えられているというのを女神さまに言われたんだけど、それに関してはいまいちピンとこないというか、そもそも勇者というのがよく分からない。なぜ勇者とつくかというとそういう役職だからというだけで勇者と呼ばれているだけで。ただその勇者というのは勇者というだけあって特別な能力を与えられるというのだけは聞いてはいる。ただ具体的にどういう能力が貰えるかについては全く教えられなかったのは確かである。ただその能力を得る方法というものがあるらしい。それを俺に伝えようとしていた時なにかあったのか記憶を失ってしまったとかなんとか。だからどんな能力を得られるかどうかわからないという非常に不安な状態でもあるのだ。

それに勇者というだけあって俺は一応普通の人間ではない。

その体は神の血を受け継ぐという特別な存在で神と人とのハーフということになるのだ。

そんな特殊な俺だからこそできる力もあって。それはアイテム収納というものなのである。そのスキルを使えば時間を止めることが出来るのだという。ただ実際に使ってみたことがないのでどの程度の力なのかは全く未知数なのではあるが。それにその力が発揮されるのはある一定の条件を満たされないとダメで、俺の場合でいうと。俺が身につけていることで常に効果を発揮する装備をしていないといけないという制限が存在する。つまりこの鎧を身に着けていればいつでもどこでも取り出せるということだ。

まぁ、そんなわけで、これから起こることを予測して準備を整える必要があったのである。とりあえずこの鎧を身につけておくことが一番大事だと思うので、それを実行することにした。それにしてもどうしていきなり俺の意識は別の場所に移動してしまったのだろうか。普通に歩いていてこの森に来たわけではないのに。何か理由があるはずだよな。そう思いつつも辺りに人の気配がないことを確認してから、念の為に俺がこの世界で手に入れた特殊能力を発動させる。この世界の言語が理解できなくて、会話が出来ないなんてことになったら大変だし。そう思った俺がまずは翻訳の能力が働くようにイメージしてみる。そうすれば俺の頭に入ってくる情報は全て自動的に日本語に置き換えられるという寸法だ。この世界にはまだ俺しか人間が住んでいないし、魔物も動物もほとんどが知能が低い種族ばかりで人間の言葉を理解しているものは確認されていないから今のところは安全だ。とはいえ人間以外の他の生物がいないということはあり得ないことであって、いつかは必ず誰かに出会うときがくるはずなのでそのときに会話ができないのは色々と不便な事になるだろうと思ったのだ。ま、その時になれば分かることだけどね。

それからこの能力のもう一つの特徴は身体能力を向上させることが出来る能力だ。これによってステータスの数値が大幅に上昇するから、その力で戦闘を優位に運ぶことができるようになるし、さらにレベルアップしたときにも基礎となる筋力や敏捷性が向上するというのもあるから戦いにおいては必須のものだと言える。それからもう一つは、相手の動きがスローモーションに感じられるほどの動体視力と瞬発力を持つこと。それから魔法攻撃に対する耐性が上がって物理攻撃力が1.5倍になるというものだった。ま、俺はチート主人公みたいなのが嫌だから、この二つを選んだというわけなんだが。あと他にもいろいろと選べるみたいだったけど面倒臭いから全部無視したというか。

そんなことを考えていたら目の前に急に小さな女の子が現れていた。年齢は8歳くらいだろうか。俺はその子の容姿が綺麗だったのもあり思わず固まってしまう。だって本当に可愛かったんだよ。その子は銀色の髪に緑色の目という不思議な色合いをした美少女であった。

「え、君は一体どこから来たの?」

俺のその言葉に対して彼女は答えようとしなかった。俺にはそんな彼女を見ていて疑問が浮かんできた。

(ん、なんだこれ?彼女の頭の上に表示されているあれはもしかして。)

その表示されていたものを俺はじっくりと見ることにした。そうしないとこの少女について知ることが出来なそうだったので。するとそこにこんなメッセージが表示されていたのだった。

『 名前 』

種族

『 ハーフエルフ 年齢 17歳 レベル1 HP 15000 MP 5500 STR 1500 VIT 800 AGI 1000 DEX 900 LUC 999999 』

この表示を見た時に俺はかなり戸惑った。なぜなら今まで見たことがないレベルの表示だったからだ。俺よりも圧倒的に数値が高いしこの子がもしこの世界で最強の部類だとしたら俺では敵わないかもしれない。俺はこの少女と敵対しないほうが良さそうだと思って少しの間彼女とお話することにした。

それから、この世界について話を聞かせてもらうと、この子の名前はアイナということと、どうも俺が突然現れた事によってびっくりさせてしまったようで申し訳ないことをしたと思う。でも俺は別に驚かせるつもりじゃなかったのでちょっと心苦しい気分になってしまった。

それからしばらく話しをしているうちに俺は彼女に気に入られてしまい懐かれて。この子と仲良くなった。

「ねえ、あなたの名前はなんてい言うの?私のことは好きな呼び方をしていいよ」

と笑顔で言われてしまうとつい心を奪われそうになる。だってこんなにかわいい子に名前を呼んでもらえるってなんか幸せになれるし。俺はその嬉しさを隠すために必死になって平静を保つ努力をしていたのである。そして俺はふと自分のステータス画面を開いてみて驚いた。そこには俺のレベルや能力値などが表示されており、それを見てみるとなぜか全て1になっていたからである。俺が不思議に思ってその理由を考えるとなんとなく予想がついてしまって。たぶんこの少女と俺が出会った事で何かが起こったんじゃないかと思うんだ。だから俺の能力は失われてしまったと考えるべきだろう。ただ俺はそれでもかまわなかった。なぜなら元々普通の人間の俺がこの世界で生きていけるとも思っていなかったし、そんなに強いわけでもない。だからこれでよかったのだと思っている。だから俺はこの世界で生きるための最低限の力さえあれば良いと考えていたのである。それにしても、俺がこうして生きているという事はきっと女神さまもこの世界に居るはずである。その人に会って俺に何をしてほしいか聞く必要はある。そしてこの子をどうやって元の場所に返せばいいかも聞きたいところではあるな。それにしてもこの子を連れて帰れれば一番楽だったんだが。この子の親がこの世界にいるのかどうかは分からなかった。まあ、この子にも事情があるのだろうと察したので無理に連れていくことはできないと判断したのである。

そんなことをしているとなぜかアイナは泣き出してしまったので。

「ごめん、こんなこと言って、君を傷つけるようなことを言う気はなかったのに、泣かないでほしい。でも俺は君が心配なんだ。元の場所に戻してあげたいんだけどそれができない以上俺と一緒に来てくれって言うのは間違ってるよな」

俺は彼女を安心させるために頭を撫でる。そうしたら泣き止むどころかもっと泣いてしまった。だから俺はそんなアイナを見ていると可哀想になってしまい抱きしめてしまう。

そして俺の胸で大声で泣く彼女を見て俺はこの世界で生きていかなければならないという事を改めて感じさせられたのである。この世界はとても危険だというのは知っている。だがこの子を置いて一人で生きていくのは難しいとも感じていて。どうするべきかを悩んでいた。

そんな時である。俺の頭の中でこんなメッセージが響き渡っていた。『スキル《勇者》を取得可能になりました。取得した場合はステータス画面の職業の欄が変更され、勇者となります。取得いたしますか?』

(これはどういうことだ。俺はこの世界に来てまだ数日程度しか経過していないというのになぜ今勇者という言葉が出て来たのか意味が分からない。とりあえず今はスルーしておいたほうが良いよな。それより問題はこの女の子をどうするかだよな。俺と一緒に居てもろくなことにならないのは目に見えているしな。それにこの子はハーフエルフでしかもかなり希少な存在らしい。そんな子を一緒に行動させるのはまずいんじゃないだろうか。それにしてもまさかこの子がハーフエルフで珍しい存在だというのは知らなかった。というかこの世界でハーフというのはあまり聞いたことがない。だから俺にとっての貴重な知識が一つ増えたな。よしっ、そんな事よりこの子の今後についてはちゃんと考えないといけないぞ。俺のせいでこうなってしまったからには何とか責任を取ってやりたいけど俺には何が出来るだろうか。まずはあの女神様に頼めばなんとかしてくれるのかもしれないけど。)

そう思いながら悩んでいる俺の顔をジーっと見つめていた彼女が突然俺に向かって話しかけてきた。

「あの私も連れていってほしいです」

(やっぱりこの子にそう言われたらダメだとは言えなくなってしまったな。ただ危険な目に合うかもしれないから慎重にならなければいけない。この子を守ることだけを第一に考えなければダメだ。)

そう思った俺は、

「ダメだ、君はこれから先辛い事がたくさんある。それに君の両親はもうこの世界にいないはずだ。俺が勝手に決めることは出来ないから、俺に付いてきて後悔しないようにしっかりと考える時間をあげよう。だけど絶対に離れないと約束できるかな?それと俺がこれから行く所はこの世界では魔物や魔獣が蔓延っているような危ないところだから俺から離れると君は死ぬことになるかもしれない。それでもいいかい?」

俺がそう問いかけると彼女は真剣な表情でこくりと縦に首を振った。そんな彼女を見て俺は決意を固めるのであった。それから俺が彼女にこれから行くところに魔物や魔王が存在する事を告げると驚いてはいたがすぐに理解していた様子だった。彼女はこの世界がどういうものなのかを知っているようだった。そして、

「私はお母さんがエルフの王様の隠し子だということを聞いています。それで私がこの世界で一人になった理由はその血が問題になっているんです。つまり、人間たちが私の力を利用して何かしら企んでいるのではないかと警戒されているから。それに人間たちの国が戦争を始めた時にエルフの国が巻き込まれるのは間違いないと言われています。そしてハーフエルフの私はどちら側についてもいいことはないの。それだったら人間に利用されてしまうのは嫌だし。だから私は真司についていきたいのです」

彼女の話を一通り聞いてみたがこの世界の情勢が色々と分かってきた気がした。彼女の話によると俺が今から向かう場所は王国なのだという。なんでもそこは人間と人外種の共存を目指す国であり。人とそれ以外の種族との間に大きな差別がないように取り組んでいるらしいのだ。だからこそ俺はそこに行ってみるべきだと思ったのだった。そして俺が彼女の願いを聞くために頭をポンと優しく叩くと。とても嬉しそうな笑みを浮かべてくれた。それから、俺は彼女に名前をつけてほしいと頼まれたので考えてみるが。女の子の名前などつけたことがなかった俺は少し悩んだ後に。結局、安直な名前を付ける事にした。

アイナと書いてアネと呼ぼうと思っている。俺が名前をつけた後、彼女は喜んでくれていた。俺はそんな彼女の様子を見てこの子が少しでも幸せな時間を過ごせるように頑張ろうと思っていた。

俺は、これからどうすればいいかを考えていた。

(この子に俺のスキルでレベルを上げさせてあげてもいいのだが、おそらくそれはしないほうがいいだろうな。そう考えるとこの子もある程度自分でレベルを上げて貰う必要がありそうだな。ただいきなり実戦とかやらせるわけにもいかないだろう。俺は一応チート級の強さを持ってるみたいだから。何か俺に出来ることでもあればなぁ。そうだ、ステータスに鑑定があったな。それで調べればこの子が何者なのが分かるかも。)

俺はそう思ってアイナのことを鑑定しようとした。するとそこには。

名前:アイナ

種族:ハイエルフ(ハーフ?)

年齢:8歳

性別:女

状態:普通 加護 【女神ソフィア】

備考:エルフ族 魔法を極めし者の子 称号 精霊神の加護 聖剣の担い手 神童 魔力量が異常に高い。

どうも、この子は普通のハーフではなく。エルフの血が入っているため、魔法の才能が高いようだ。そしてこの子が持っているスキルの効果は、俺の持つものと似たようなものであると分かった。それにこの子は、俺が考えていたよりも、強い存在だと判明する。それから、スキルの使い方が分かりステータスを開くことができると、その詳細を調べることが出来るということが分かった。しかし、この世界の人間はそういうことが出来ないようである。

「ねぇ、あなたって本当に凄い人だったのね。」

(いやいや、それほどでも。というか君の方がもっと強いじゃないか。というか俺は別に特別ではないんだよ。だって俺はこの世界ではただの凡人なんだ。俺よりも弱い人はいっぱいいるだろうし、逆に言えば俺はその中でも上位にいると思うけど、君ほど強くもないと思うよ。だから君が強いだけで、俺自身が特別っていうわけではないんだよね。だから気にしなくていいよ)

そんな事を心の中で思いながらも口に出すことはしなかった。だって恥ずかしいんだもん。そしてアイナはそんな俺の様子に気づいているのかいないのかわからないけど。ずっと微笑んでいて俺の事を見ていてくれているのである。そして俺たちはそのまま森を抜けることにした。そうしないと俺がこの世界に転移してきた場所にたどり着くことができないからである。

「よしっ、ここからは魔物が出るかもしれないから気を付けて進まないとな。とりあえず俺は自分の身を最優先で守ることを第一に行動しようと思っているから、この子の事は任せた。」

俺がそういうと彼女もコクりと首を縦に振り了承してくれたのである。そして、森の中を進んでいくのだが、なぜかこの辺りの木々は不思議なくらい枯れていて歩きやすくなっている。そのおかげもあって、すぐに出口に到着することができた。

だが、俺は外に出たら魔物に襲われるという可能性も考えて、武器を取り出すことにして、短剣を取り出しておくことにする。ちなみにこれはゲームでよく使う武器なので、特に思い入れはないのである。俺はこの世界ではこの装備が一番戦いやすそうだと考えた結果である。まあ、そんなわけで俺は短剣を装備したわけだが。彼女は俺と同じようにして戦うということが想像できなく。俺がこの子の分までカバーしないといけないなと感じたのだった。

俺はとりあえず周りの様子を探りながら、ゆっくりと進んでいこうと思っていたのだけど。この辺にいる敵はゴブリンしかいないらしい。まあこの辺りは人間が滅多に訪れないため仕方がないのだろうけど、俺的には物足りない相手だと感じていた。というのも、さっきのモンスターのように簡単に倒すことが出来ていたからだ。俺がそう感じていると、アイナが不思議そうに俺の顔を見てきたので、「どうも俺のレベルが高すぎるせいなのか全然大したことないなって思うんだ。この世界に来る前の俺はただの一般人だし、そこまで強かったとは思えないんだけど。どうやらこの世界に来て俺の能力が大幅に上昇しているらしくて、正直なところ自分がチート級の強者であると認識できないというかなんというか、実感できていないというのが本当の感想かな」

俺がそう言うと彼女も納得してくれていて。確かにステータスを見る限りこの世界に来てもおかしくないほどの実力を有しているのは間違いなさそうではあるけれど。俺のこの世界の知識不足のせいでまだこの世界の常識が理解出来ていないのが残念だ。だから今はこの世界の常識を知らないのだから俺が今すべきことは、この世界についての情報収集に努めるべきだという結論に至ったのであった。

それからしばらく歩くと。やっと町が見えてきた。その町に辿り着くまでかなりの時間がかかり、もう夕方になってしまっていた。だけど、そんなこともあまり気にならなかったのはやはりこの町に居る住人はみんなハーフの人たちが多いからだった。俺の見た目は明らかに人間に見えるし。アイナの方は髪の色が銀色なだけでそれ以外はほとんど人間の容姿をしているから目立たずにすんでいたのだ。

それにしてもこの町の治安はあまりよくないらしいから注意は必要だよなと思いながら、町の人に聞きながら宿を探していくと一軒だけ良さそうな宿屋を見つけることが出来たのでそこに泊まることにした。

俺達は無事に宿を確保することができたけど。お金がほとんどない事を忘れていたのは致命的だった。なぜなら俺達の手持ちのお金はほぼ無いに等しかったからなのである。それに今晩は野宿になるのかもしれないと覚悟していたが。そうはならなかった。俺の所持品の中に大量の硬貨があり、それを売ることで何とかその日の食事にありつくことに成功したのだ。

そうやってなんとか食いつなぐ事に成功したのだけど、明日からどうやって生きていくべきかが最大の課題になってしまった。そして明日は、冒険者ギルドに行ってみて、何か依頼を受けてみようと決めて眠りについたのだった。

(それにしても、この町はどうやら人間族と魔族との共存を目指している場所だとわかったからな。俺としてはその試みに興味があったからここに来たのもある。だから俺はまず冒険者として生活しながら、この町に起こっている異変の原因を探る事にしようと決めた)

翌日になった俺は朝ご飯を食べるために食堂に行くことにしたのだがそこでとんでもない人物に出会った。そして俺はなぜこの場にいるはずのない人がいるんだ?と疑問を抱いたがすぐにこの人は神様だったということを思い出した。そんな神様がなぜ俺の前に現れたのかを聞いてみると俺が死にかけてしまって、俺に会いたくなってしまったのだということだ。その理由が少しおかしい気がするがそこはあえて突っ込まないようにした。そして俺は神様に会えたことで嬉しい気持ちでいっぱいになりテンションが上がってしまいつい神様に対して色々と失礼なことを口にしてしまったのは後悔している。しかし神様はその事を全く気にしていないようだったので安心できた。

ただ一つ心配なことがあるとすれば神様はかなりの美人さんでありスタイルもいいというのに胸が全くないというのである。俺はそれがすごく残念であり悲しいというのに気づいたのだった。そういえばあの綺麗なお姉さんの方はどうなったのだろうと疑問を抱いていると神様が「あぁ、私の娘はね。君が死んでからというものずっとふさぎ込んでしまっているんだよ。」と俺の心を読んで教えてくれたのだ。そして娘が元気になるように手伝ってほしいと言ってきたのである。もちろん、断るわけにはいかないと俺は思っているし、そもそもこの人が俺の母親代わりのようなものだと思っているのだから。俺としてもできるかぎり力になろうと考えている。

そして俺は早速これからどうすればいいかについて考えなければならない。それはこの世界をどう楽しむかである。だってこの世界では俺は最強の存在になっているらしいのでこの世界で好き勝手に暴れていいらしいし、何よりレベル上げがとても簡単なのだ。つまりこの世界で俺がすることは、ただレベルを上げて最強を目指すだけだ。俺はそれだけを考えてこの世界で楽しく生きていけるように努力するつもりでいる。そうしないとあまりにもつまらなくなってしまうからな。そう思ってこれからの俺の計画を頭の中でまとめている間に神様の話は進んでいたようで。俺にお願いをするのも済んだようなので。神様はこの世界に戻っていくようだ。そして最後に俺は、俺のこの世界に転移する原因を作った奴が近くにいた場合は必ず俺が責任もって倒すから、そいつの情報を教えてほしいということを伝えた。

「君のような子供が一人で倒せるのかい?」

「大丈夫です。俺にはすでにスキルがあるんです。それと、俺は子供じゃありませんよ」

「へぇー、君は大人顔負けなんだね!それなら私の力なんてなくても余裕そうだねぇ。分かった。私は君の願いを叶えてあげることにするよ。でももし、もしもの時は頼んだよ。君が死んでしまうのだけはどうしても避けなければいけないからね」

そして俺にこの世界にまた何かが起こった場合の対処方法と俺にできることがあればなんでもするという約束をしてもらい。この場を後にするのだった。それから俺はこの世界の情報を得るため。この町の冒険者が行くであろう場所に足を運んだ。

しかし俺はその道中に気になるものを目にしてその建物に入ろうか入るまいかで悩んでいたのである。そこには大きな掲示板が設置されており、そこに貼られている依頼の紙を見てみるとこの世界におけるお金の基準などが書かれていて。さらにこの世界で必要なアイテムについても書かれていたのだ。

しかしここで問題が浮上してしまう。なぜなら俺達はまだこの国の貨幣の価値を理解できておらずお金をこの国に持っていなかったからである。この国でお買い物をするためにはこの国独自の貨幣が必要になるため。今の状態ではこの国の通貨を手に入れることはできないのだ。だが俺はこの時あることを思い出してしまったのである。俺が持っていた大量の硬貨の中にこの国の金貨と銀貨が混じっていることに、しかも俺の知っている限りではこれは本物だという確信があったため、とりあえずこれを売りに出せばお金に変えることが出来るのではないかと考えた。

なので、この国から脱出する前に少しでもお金を手に入れておきたかった俺は、とりあえずお金を稼ぐことにしたのである。

「すみません、ここに書かれているものでこの国にないものがありまして、これを売ってもらうことは出来ますか?」

俺は受付のお姉さんにこの硬貨を売りたいと伝えると、最初は驚いた表情をしていたがその硬貨を受け取るとまじまじと観察していた。おそらくこれが本物の貨幣かどうかを鑑定するために確認をしていたんだろう。そして俺が差し出した硬貨を確認すると、 そのお姉さんはすぐに鑑定の魔法を発動させたみたいだ。その魔法の発動によって俺が売ったお金がこの世界で使われているものではなく、別の世界から持ち込まれたものだと見抜いたのである。俺はそのお姉さんの行動が気になってしまい。思わず聞いてしまった。

俺がその言葉を聞くと。やはりこのお店の店員は、他の店と比べて対応が違いすぎている気がすると思えてくるのだ。普通だったら偽物じゃないかと疑うのが当たり前だと思うのにそれをせずにちゃんと俺の言葉を信じてくれて鑑定してくれたのだ。そしてお姉さんはこんなことを言いだしたのである。

この国の王族があなたのようにこの国のものではないものを持ち込んできてくれる方を探していらっしゃるらしい。この世界のお金はあなたの持ちこんだものでほとんど流通してしまったと聞いていたからもう誰も持ってくることはないと思っていたけど。どうやら運良く私が持って来たのと同じ種類のお金を持ち込んだお客様がいらしたみたいで本当によかったと思っていますと嬉しそうに話してきたのである。そしてそんな時だった、俺はふとこの国の王都にある学園に通わないかと勧められたのだ。俺はその話を詳しく聞きたくてこの女性に質問をしたのだが、 彼女は仕事があるので詳しくは説明ができないと言われたのだ。だから詳しい事は後日この国の役所の方で手続きを行ってくれれば分かるからと言って帰されてしまった。そして俺は今更ながらに思った。

なんで俺が勇者召喚に巻き込まれてしまったのかというと、きっと神様があの綺麗なお姉さんの頼みを俺が引き受けると分かっていたから巻き込まれたんじゃないのか?そして今回もまた同じ事を繰り返してしまうんではないかという不安が頭を過ぎってしまったのだった。俺はそんな考えを振り払おうと、これからやることに集中しようとすると。さっきのお姉さんが俺を呼びに来た。

俺達が宿に戻った頃には既に夜の帳が下りており。外にはたくさんの明かりが灯り始めていて、まるで夜の街がお祭りをしているかのように賑やかになってきているのだ。

この時間帯は酒場も開店し始めて。外からは美味しそうな食べ物の匂いや酒に酔っている冒険者達の笑い声なんかが響いて来ている。しかし俺たちはその時間を利用して宿の一階で晩御飯を食べながら話し合いをしているのである。

そしてこの宿屋には一階のレストランがあり、そこではご飯とお酒を一緒に楽しむ事が出来る場所があるのだ。そしてこの宿屋の料理は結構評判がよく。この町の人たちはここを利用することが多いようだ。俺はこの宿屋でご飯を食べるのは初めてだったので少しワクワクした気持ちで食堂に入るとそこに広がっていた光景を見た瞬間に驚いてしまったのだ。なぜならこの宿屋にいる全ての人たちがみんな綺麗なお姉さんなのである。そして俺の目の前にいる人達がこの宿屋の看板娘たちなのだということが分かったのだ。

そして俺達は席に座るのだけど。なぜか周りからの視線を感じて仕方がなかったのである。俺はそのことを疑問に思い。そのことについて考えてみた結果、アイナの顔が綺麗すぎるからだと結論づけることにした。

だってそれ以外に考えられないし。この食堂にいるお客のほとんどが綺麗なお姉さんだからなのである。それにこの町では魔族差別というものがなく、この町に人間と魔族のカップルが多いからこそこのような状況になってしまったんだと納得することが出来たのだった。

そして俺は、この雰囲気に慣れようとしながらメニューを見ていく。すると俺の目の前に可愛らしいウェイトレスがやってきたのだ。

「当店で働いている可愛い看板娘達の顔を見てどうですか?」

俺はそんなことを聞かれても困ってしまったので。どう反応していいのか迷っていると。

俺はウェイトレスさんに質問を返してしまった。

なぜこの子たちはお店に立っているのか、なぜこの子たちばかりなのかという質問である。

そしてその答えは、お姉さんたちがお店をやりたいと言い出してお店を開いたのだが。その店には男の人は入ってこなくて、そのせいで女の子が働きたいと言ってこの宿屋で働くことを決めたという経緯があったのだというのだ。つまり彼女たちが働く理由は俺と同じだということだったのだ。だから俺もその気持ちが理解できると伝えたのであった。

「分かりました。それでは私は、今日からこの宿屋で働き始めたリシアです。そして私の仕事内容は主にウエイトレスをしていますので。何か分からないことがありましたら遠慮なく聞いてくださいね」

そして俺は彼女の名前を知ることが出来た。この子がこの宿の娘の中でリーダー的な役割を担っているらしく。この町に来てからまだ日の浅い俺に対して優しくしてくれるいい人でもあるみたいだ。ただこの子の顔つきが少し幼いような気がするのは気のせいだろうと思っている。だって俺は大人っぽい人が好きなのだ。

そんなことを考えながら、この子は将来いい女になりそうだなんて思っていると。彼女は、そんなことありませんよと照れながらも俺に向かってこう言って来たのだ。俺はこの子みたいな子と早く恋人になりたいと思い、彼女を見ながら微笑むのだった。

俺はそれから注文をするべく。テーブルに置いてあった呼び出しベルを押した。

するとしばらくして、俺達の所にリリスと言うお姉さんがやって来たのである。この人も俺好みの女性だった。その人の容姿について詳しく言うと。髪の毛はショートヘアで茶色髪色で瞳の色が赤色であるのが特徴な人でスタイルは出るところは出て引っ込むところは引き締まっている。まさに俺が求める完璧な女性そのもののような見た目をしていた。そして俺とアイナはリリカに頼んで二人分の支払いを済ませてもらう事にしたのだった。

俺は支払いが終わった後、早速本題に入ることにしようとした。俺の今のステータスについて教えて欲しいと言った。するとリリカは不思議そうな顔をしていた。そして彼女は俺とアイナにそのことについていろいろ質問をして来たのだった。その時に俺は、レベルが2から10になったと話した時のリリカが、 かなり驚きながら。俺のことを見ていたのをしっかりと確認していたのである。それから俺がこの国にやってきた理由を簡単に説明すると。この世界にあるスキルについてはある程度把握しているから、俺の持っているスキルについても説明できると思うんだけど。俺の固有技能についても教えようかと考えていると。リリカは俺の考えを先読みしたかのようにこんな事を言ってきたのである。

それはこの世界の人間はスキルを1つか2つしか持っていないからだというのだ。そして3つ目の固有技能を持っているのはとても珍しいことなんだと、俺はそんなことを言われてしまったら。自分の持っているスキルの説明をすることをためらってしまうじゃないかと思ったのである。だから俺は、この世界の人間にはまだ知られていないであろう、固有能力とスキルを融合させた力の話をすることにしたのだ。その力は俺の知っているゲームの中でもあまり存在していなかったものだからこの世界の人間には知られて欲しくなかったのである。だが、俺はある考えを思いついてしまい、それを利用することにしてみたのである。

俺は自分がこの世界で勇者になるために、ある人物を仲間に加える必要があると考えていた。そのためにはまずは、その人物をこの国で探す必要がある。だがしかし、どうやって探すかということが問題になってくるのだ。俺としては俺と年齢が近く。かつ同性の友人が欲しいと思っていたのだ。

しかし現実はそれほど甘くはなかった。俺の周りには俺と同じくらいの子が全くいないのである。俺は、そんな状況に少し絶望してしまいそうになっていた。そんな時だった。俺はアイナが勇者召喚に巻き込まれたことを思い出したのである。この国の王様も召喚された人をこの国に呼び戻せないか考えていたはずだし、きっとアイナが戻ってくることも考えているんじゃないかと考えてしまったのだった。そして俺達はこの世界の王城へと戻ることに決めるとリリカに挨拶してから部屋に戻り、寝ることにしたのであった。

翌朝になるとすぐに宿を引き払い。次の町を目指すことにしたのである。この宿から一番近い場所はこの町ではなく。隣の町らしいのだが、ここからだと歩いて半日くらいの距離があり、急ぐなら今すぐ出発したほうが良いと言われたのだ。だから俺たちは準備をした後すぐに出発することにする。ちなみにこの町のギルドに顔を出して、俺に話しかけてきた受付のお姉さんにもお別れの挨拶だけしてきた。あの人にはかなりお世話になっているからちゃんと感謝を伝えておきたかったので。ちゃんとお礼をしておくと。あのお姉さんもとても喜んでいたみたいでよかったと思う。そしてその日の夜には隣の町の門が見えてくる距離まで移動することができたのだった。

俺がこの世界の王都を出て旅に出た初日は、無事に次の街に到着することができていた。

俺達がたどり着いたのは。大きな外壁に囲まれた、城塞都市と呼ばれる町である。

その町にたどり着くまでにいくつかの宿場町を通って来たのだけど。そこで見た街並みの綺麗さ、活気のある人たちの笑顔が印象的だったが。この町に関してはそんな事はなく。まるで戦争でも起こりそうな雰囲気を出しているような町であり、俺が思っていたよりも殺伐としている雰囲気を感じる場所なのである。

ただ俺と、そしてなぜか一緒にいる事になった女神さまは、この町の雰囲気を楽しんでいたのであった。なぜかと言えば。ここは魔王軍に対抗するために作られた最前線基地である。そのため他の町より、冒険者が多く集まる場所でもあるからだ。そのせいか、この町にはダンジョンが存在すると言われているのである。

だからこの町は、他の場所では手に入らないような素材が入手できるので。それ目当てに多くの商人たちが訪れる。それに腕利きの冒険者たちが集まって来るので。必然的に賑やかになっていくという仕組みなのである。そして冒険者が稼いでくれたお金の一部が税金として収められているので。ここに住む人たちはそれなりに裕福な暮らしをしているみたいだ。ただ、この城塞都市の住民たちの多くは兵士とその家族、それと職人たちの家族がほとんどなので、冒険者の出入りが少ない。だから、ダンジョンの入口も閉鎖状態のままになっているのだ。

「あの~。この城塞都市にはどのようなご用事で?」

俺はこの目の前に立っている騎士風の男性に声をかけられてしまったのだ。

しかし俺には彼が誰だか分からず困惑してしまうのだった。

俺はこの町には仕事のために立ち寄っただけで、特に目的がないのだ。しかしここで本当のことを言うのも変だし。

だから適当な言い訳を考えていたら隣にいた自称女神が口を開くと、 その男性の目の前に行き手を取りながら。俺の仕事内容を説明すると男性の方もそれを信じたのか。少し困った様子を見せ始めると。その男性の隣に立っている女性がこう言ったのだ。

「申し遅れました。私の名前はクレアと言います。それでそちらにいる方が私の主人で。こちらにお越しになったということはあなた様もこの土地で商売を始めようとされてるのですよね?それならば是非とも当家に来ていただきたいと主人が申しておりまして、ぜひ我が屋敷に来ていただけませんでしょうか?」

俺とアイナは彼女の申し出にどうするか考えると。その前に確認することがあると伝えると彼女は首を縦に振るのだった。

「分かりました。ではその確認というのはなんですか?」

そして俺の職業について聞かれたので。正直に答えておく。そしてその話を聞いた女性は俺の顔をじっと見つめて来たのだ。

俺がこの世界に来た理由を説明したら信じてくれたので、安心して本題に移ることが出来ると思った。

俺はまず、この町で一番強い冒険者は誰かを聞きたいと言うと。彼女は少し困ったように答えてくれるのだった。

その人は最近になって頭角を現してきて、今はレベルが40を超えていて。この辺りの魔物では相手にすらならないほどの強さを手に入れているというのだ。そしてこの町にはそんな化け物のような冒険者を簡単に倒す事ができる実力者もいるのだと言う。

そしてそんな人がこの町に居るなんて知らなかった俺は、どんな人物なのかと興味を持ち始めてしまう。そしてこの町最強と言うのなら、この町のどこかにあると言う。その人が作ったと言う、魔剣がある場所に案内して欲しいと言ったら。彼女に連れられて。この町で一番の権力者が住んでいると言う屋敷に連れてこられたのである。

そして、そんな権力者の一人が俺達の前に現れると、彼女は膝をつくとこう話したのだ。

「私がこの街で二番目に偉い人だぞ」

その言葉を耳にすると、俺は少し笑いながら。彼女にこう告げたのだった。

俺は君をそんな扱いしないで欲しい。なぜなら君はこの国の中で、たった二人しかいない女性の伯爵なんだから。そしてこの国の貴族が俺に対して無礼な態度を取ることはないと知っているんだからと。俺が彼女の事を名前で言うと。彼女はその事を気にしていたらしくて、俺の話を信じるのだった。

そして彼女が、俺がどうしてこんなところまでやって来たのかきいてきたので、この町に俺が仕事をする上で拠点に出来る宿はないかどうかを確認すると、俺を自分の家に泊めるのは嫌ではないらしく、快く引き受けてくれたのである。そのあとは彼女との会話を楽しんでいた。俺は気になる事が一つあったのを思い出し、聞いてみる事にした。この国は、魔王軍が攻めてきているはずなのになぜここまで静かなのだと聞いたのである。すると彼女はこう説明してくれたのだ。

魔王軍の進行速度は、そこまで早くないとのことで、この城塞都市にも、数日中に押し寄せるようなことはないから安心してほしいと言われたのだった。しかし俺はそれを聞くと疑問に思ったのである。この国の首都にある、王城と城下町の警備は、厳重であると聞いていたからだ。

俺がそのことを質問すると、そのことはこの国の上層部の一部しか知っていない極秘情報であり。王城に勤めていないこの都市の領主にも伝えてはいけないと言われていたのである。そしてその理由は、この町を守る結界を維持する魔力を供給するための儀式魔法を発動しているからなのだと教えてもらった。

その話は、この国の機密情報を漏らすことになるからこれ以上話すことができないと言われてしまったのである。俺は、そんな大事なことを、この俺なんかに教えても良かったのかと不安になってしまった。だってもしこのことが他国に漏れたりしたらこの国は危ない目にあうだろうし。俺としてはそれだけは避けたかったから、このことだけは絶対に守ってほしいと頼んでおいた。

俺の話を聞いてくれるリリカは優しい子だと思うけど。俺の言う事を鵜呑みにしてくれないかもしれない。そう思ってしまったのだ。

だから念のためにと。俺はリリカにこの城塞都市が、魔王軍に狙われたら、すぐに逃げるように命じておけばいいかなと考えたのであった――

「それならお言葉に甘えてしばらくの間だけ。よろしくお願いしますね!」

俺の言葉が効き、リリカさんは、とても嬉しそうな笑顔を見せて、そんな事を言いながら頭を深く下げたのである。

「それじゃあ俺達はちょっと出かけてくるよ!アイナとリリカさんの二人が心配だから、何か危険な事があったらすぐ戻ってくるし、宿の方も、今日一日は部屋を使ってもいいって言ってくれてるから大丈夫だからさ。俺がいない間も、この町で自由に楽しんでくれればいいよ」

(うん。リリカさんと仲良くなれたし、とりあえずこの町を色々と見て回る事にしたいなぁ。それと、アイナのことが心配だけど。リリカさんにお願いしておこうと思う)

「わかりました!!お姉ちゃんのこと頼みますね!ユウト様!!」

俺の願いを聞き入れてくれているのか、俺の顔を見て何度も力強くうなずいているリリカさんがいたのであった。そしてその後ろにいたクレアさんからもお願いをされてしまった。俺は彼女たちの気持ちを受け取り。しっかりと約束をすると、その場から離れることにする。そうすると俺はクレアに、冒険者ギルドまでの道のりを教えてもらうと。その道を歩いて向かって行くのだった。

(クレアは俺のことをかなり信用してくれているみたいだ。この感じだともしかしてリリカはもっと前から俺の事を信じてくれていたんじゃないだろうか?)

そんな事を考えながらも俺は。俺を信じてくれる人のことを考えていくのだった。

(それにしてもさっきのクレアは綺麗で優しかったな。それに、俺よりもずっと大人に見えるのにまだ成人したばかりの18歳らしい。やっぱりクレアはこの世界の人間の中でも一番若く見えるよな?見た目的にはまだ10代前半でも通用しそうだもんなぁー)

俺は先程出会ったクレアとリリカの容姿を思い出しながら考えていたのである。そしてクレアと別れてから、俺は一人で冒険者になるための手続きを行うために、クレアに言われた場所に向かう。その途中この町を見渡していくのだが、この世界は本当にゲームの世界みたいだよな?と思っていたのであった。

「おっ、ここか。この建物の二階か」

俺はそう言いつつ目の前の建物を見る。

その建物は二階建てになっている建物で。その周りには宿屋が何軒もあるようだ。その建物を一通り見てみると。この辺りの人たちが宿泊するための施設がたくさんあるようなのだった。その建物の中に冒険者の宿と言う看板を出している建物を見つけ。俺はそこに入ると中にいる人達を観察した。

中には武器を持った冒険者が数人いた。彼らは依頼掲示板の前で話をしているようで、そこには色々な種類の紙が貼ってあったのである。俺はその中の一枚の張り紙に目をつけたのだ。その貼り紙に書かれていた文字を見たら俺は驚愕したのである。なぜならそこには。この町に突如現れた正体不明の謎の人物に殺された護衛任務の依頼内容が載っていたからである。そして報酬金額の欄を見ると俺の全財産に匹敵するほど高額な金額が書かれているのだ。そして俺はそんな高ランクの仕事がこんなところにあるわけがないと思い、もう一度貼り紙の方に目をやると。その護衛任務の依頼内容が変わっているのである。その仕事内容はこの町で開かれる大きな祭りの警備と言う仕事の内容になっているのだ。

その仕事は日雇いの警備兵と同じ給料で。俺が受けたいと思っている、この城塞都市の周辺の魔物狩りとそれほど変わらない額で受けれるようになっていたのである。そしてこの依頼を受けた人は全員このお祭りが終わればこの都市を出ていくことになっている。そしてこの依頼書が貼り出されると同時にたくさんの人がこの場にやってきたのである。しかしみんな依頼書を受け取って、その内容を確認したら。なぜか悔しがったり。怒った様子を見せるのだった。そして俺はこの光景を見て。この町では今まさに冒険者になりたがっている冒険者が大量に発生しているんじゃないかと察することができたのだ。

(これならこの城塞都市に来たばかりの新人が溢れかえっていそうだよな。しかもそんな時に、その謎の人物が町に現れ、そいつに殺されたという事になっていたら。その人物はいったい誰なんだろうか?ってなるはずだから。この依頼書が張られた時点でこの城塞都市に滞在する者が殺到することになるんだよな。そして、この町に冒険者になろうと訪れる人も一気に増えるってことだ。そうなった場合。この町での冒険者は確実に枯渇する事になるよな。それでこの町は衰退の道をたどることになって、魔物達の脅威にさらされて滅びるかもしれないよなぁ。だからこの町を救える可能性を持っているのは間違いなく。その依頼を受けている俺たちだけなんだよな)

俺はそんな事を思いつつも。自分がこの依頼を引き受けるしかないと決意を固めると。俺はこの仕事を受けることを決める。そして受付に並び始めた。俺の後ろにも長蛇の列ができていて。俺はこの列が動き出す前に。俺の前に並ぼうとする人に声をかけることにしたのである。

「すいません。あなたはもしかして俺より先に並んでいたんですか?」

俺は前に並ぶ、男性に向かって話しかけてみたのである。

するとその男性は振り返って、俺の顔を見ながら少し考える素振りをする。そしてすぐに何か思い当たったのか。その表情が変わり、少し嬉しそうな顔を見せたのだった。

「えっと。君は確か、さっき僕がこの仕事を譲ってもらった時。後ろで待っていた子じゃないかい?」

その言葉に俺がうなずくと、俺がどうしてこの仕事を欲しいと思ったのかを尋ねられた。俺はその理由を話すと、その男性もその話を詳しく聞きたいと言い出したのである。そこで俺がこの男性の素性を訪ねると、彼はこの仕事を譲ってくれたということから、俺と同じようにこの町に来て間もない冒険者なのだということが分かり。俺は彼と話がしたいと思ったのだ。そうして俺はこの冒険者に名前を聞くことにした。すると彼の口から飛び出したのは俺の知らない名前だったのである。

「ああ、僕はアメリア伯爵家のリリカ様の使用人をさせてもらっていてね。君もこの町に来る途中に、この町の領主であるリリカ様の屋敷があるだろう?その屋敷の前を通ることがあると思うんだけれど。その時にあの立派な館が目に入らないかい?僕の名はカインズっていうんだ。覚えてくれたら嬉しいよ。よろしく頼むよ。えっと名前はなんていうんだい?できればこれからは呼び捨てで呼んでもらいたいな」

俺はこの冒険者の名を聞いて。彼がこの町に最近来たばかりなのかを聞いたのである。するとやはりこの男もこの町の出身ではないとのことだった。俺にこの町の出身でないことを教えるとすぐにこの町のことを教えてくれる。俺にとってこの町の常識を知ることができるのは助かるので、彼にお礼を言う。そうしてお互いに自己紹介をすると俺は、彼と一緒に依頼掲示板に向かうことになったのである。

「なるほどねぇ。じゃあ君は冒険者として生活したかったんじゃなくて、お金を稼ぐために、この町に来たんだね?それはどうしてなんだい?」

「まぁそういうことです。この世界で生活するための資金が必要だったんで。とりあえず、この国のことや冒険者のことを色々と調べるために、まずはここで稼ごうと思ってきました。俺の目標はこの世界を見て回り、元の世界に帰ること。それと家族と友達の三人が幸せになれる道を見つけることですかね」

俺の答えに、このリリカの護衛を務めている男は俺に笑顔を見せてくれると「へぇ、君はこの国のことだけじゃないんだね。面白い。いい目標だと思うよ!じゃあそんな君の力に少しでもなれるように僕も全力でサポートさせてもらうことにするよ!」と嬉しそうな顔をしてくれるのだった。

俺達は二人で相談しながら仕事を選ぶ。

護衛任務で、この城塞都市まで来て、この町に数日間滞在する冒険者達は、基本的にこの町にある宿屋で寝泊まりしているので。宿の従業員たちは彼らの事を知っているようだった。そのため宿で泊まる場合はその宿の格をある程度考慮すれば、特に問題はないそうだ。

そして、俺はこの宿の中で比較的良い部屋が空いている宿屋を探そうと思っていたのだが。カインズが気になる宿屋を見つけていたのであった。その宿屋の名は、【白薔薇亭】。その宿の名前は、この町で一番高級と言われる宿の名前だったのである。その説明を受けた俺は驚いてしまったのだ。

「リリカ様のお父様はこの町に滞在する時は必ずと言っていい程この【白百合亭】にご宿泊されるんだよ。リリカ様がこの町に来る際は、いつもこの町にやってくるとこの宿に必ず一ヶ月は滞在なさられる。この辺りは、あまり大きな祭りなどが開かれることはない。だが、領主の娘が、この町で催される大きな祭りに参加したら、町の知名度も上がるし、何よりも娘に会いたい人たちが押し寄せてくるだろうからな。リリカ様にはこの祭りの期間だけこの町に滞在して頂くことにしているのだ。そしてその期間中はリリカ様には町を歩き回る事を禁じさせている。その方が安全だと我々は考えているからな。リリカ様はこの祭りが終わった後は、また違う町へと行かれるのだろうな。そしてまた、別の祭りに参加するためだけにこの町に訪れるのだ」そう言ったのだ。

俺にはその話を聞いたとき。なんとも言えない感情が沸き起こった。

(そうか。この世界の貴族令嬢の事情までは知らなかったが。どうも普通とは違うようだな)

俺にはその話を興味深く聞いたのだった。

そしてこの話の流れで。この町の冒険者がよく使う、一番安い宿を紹介してもらったのである。宿の部屋代は一日当たり、一銀貨程度だという。この辺りは食事代を含めて計算されているようなのである。その宿の一階は食堂兼飲み屋のような店になっており。多くの客で賑わっていた。この世界の人達が普段から食べている物と。この店の食べ物の質が違うように俺は感じたのである。そして料理を運んでいる人たちが、俺達の方に時折視線を投げかけてくることがあったのだ。

そんな事を気にしながらも俺とカインズは、護衛対象の女性リリカとその使用人と思われる二人と対面していた。そして護衛の仕事の話に入る。俺とカインは護衛として、この町の警備の仕事をすることになっていた。俺はその警備の仕事を受けるつもりだったのだ。しかしそこで護衛対象であるリリカが護衛に雇った二人の男性に警備ではなく、冒険者をやりたいと言ったのである。そして冒険者がやりたいというならば、自分の警護も冒険者が行い、自分は祭りの間、この宿屋で引きこもるつもりだと言い出したのである。

そんな訳で俺ともう一人の男性と俺達と同じような目的でこの依頼書に申し込んできた者たち五人とでパーティーを組み、それぞれ担当する警備区域が決められていたのである。

「それでは皆さんよろしくお願いしますわね?」

「よろしくお願いいたします」

リリカが挨拶をし、それに皆返事をする中。

俺だけがその流れに乗り遅れてしまっていたのだった。そして俺が出遅れたことに、その場にいるみんなが気付き、一瞬静寂が訪れたのだけれど。そんな微妙な空気を打ち破ってくれた人物がいたのだった。

「え?ちょっと待ってよ。あんたはそれで納得しているかもしれないけどさ。僕はまだ承諾してないからさ。なんで僕がこんな奴らと一緒なんだよ。こいつは、僕が雇ってやるよ!僕の方がお前らより強いんだからな。僕の言うことは絶対なんだぞ!」

その言葉に俺は驚きを隠せなかったのである。

そしてリリカと他の男性二人は。その言葉を発して、こちらを睨みつけてきた男性に向かって冷めた目を向け、呆れた声でつぶやく。

「貴方は何を勘違いをしているのですか?」

「ああ?てめぇ。誰にそんな口の利き方してるのか分かっているのか?僕はな。この城塞都市でも有名な貴族の家柄の子供なんだよ!僕が命令したらこの町にいる連中なんて、簡単に従えるんだからな!」

そう言って男性は胸を張るが、そんな彼の行動に女性陣二人は顔を見合わせて苦笑いをしていた。そしてカインズともう一人の女性が俺に向かって頭を下げながら「すいません。彼のことをよろしくお願いします。あの、私達はリリカ様とこの依頼を受けていますので。彼の事はほっておくつもりでしたが、この態度にさすがに我慢できなくなってしまいまして。本当にすいません」と言う。

そしてその男性の言葉を聞き。その男性の仲間たちも一緒になって。なぜか俺のことを指差して、声を上げ始めたのである。

「おいおい、その男を俺によこせよ!俺だってそいつより俺のほうがよっぽど役に立てるぜ?俺を護衛に雇えよ!ほら早くしねえと、俺はこの町をさっさと立ち去らなくちゃならなくなるんだ。そうしたら俺はこの仕事が受けられなくなってしまうじゃねぇか。俺のために残しておいてやったんだ。感謝しろ。俺がいなきゃこの町から出ていくしかねぇんだぞ?」

「あはははははははは」

その言葉を聞いた女性は突然大きな笑い出した。「えっとね、君みたいな雑魚じゃなくて、君の仲間のほうを、私達が雇いたいと思っているんだけれど?」

「ああ?どういう意味だよ?ていうかさ。そもそも俺の連れの男がこの町に来たかったからこそ、俺もこの仕事をしたんじゃねえんだ。あいつがどうしても、この町に来てみたいっていうからな。だから仕方なくついて来たっていうだけなんだよ。だけど俺は、その仕事をして金を稼いだらすぐにこの町を出るつもりなんだ」

俺達はその男の話を聞いても全く笑わず、冷たい目で見続けていたのである。そしてリリカが男に対して、はっきりと口にした。

「この町での私のお世話をしてくださっている方たちに、あまり変な言い掛かりをつけないで下さいますか?不快です」

その発言を聞いて、男は顔を赤く染め「な、なんだ?やんのかよ?」と言って戦闘態勢を取ったのである。そしてリリカの方もその男のことを無視して話を続けたのである。

「あなたたち。この方の護衛に付いていなさい。それからカインズさんとそちらの方は冒険者のランクを教えてください」

リリカは俺の方をチラッと見たあとに。俺以外の三人の事をそう尋ねてきたのだった。そして俺は自分がF級であることを伝え。残りの二人の冒険者のことも紹介してもらう。

そして冒険者の三人はそれぞれに冒険者の証を取り出してリリカに手渡したのであった。そして冒険者の証明カードを受け取ったリリカはそのカードのランクを確かめていた。そのカードには冒険者のランクが書かれているからだ。

ちなみに冒険者のギルドのカードは偽造ができず、そしてランクによって、冒険者のカードを使い分けることが一般的になっているそうだ。

そして冒険者カードを受け取ったリリカは、それぞれのカードのランクを眺めていたのだが。その瞬間に顔を歪める。そして彼女は少し焦った表情を見せるとこう言う。その表情は焦りの気持ちが表れていて俺達は心配になってしまう。そしてそんな彼女に対し、俺達と一緒にいた女性の一人が「どうされましたか?」と問いかけていた。

するとリリカは顔を伏せたまま答える。

「C級の方もいるとは予想外だったのです。私はA級のランク帯までを想定していましたので。B級の方たちがこの依頼を受けられるとは思ってませんでしたの。なので護衛の依頼に関してはDかEのランクまでに抑えるはずでしたので。護衛の人員をもう少し減らせると思っていたので助かりますわ。ではこれからよろしくお願いいたしますね。私の名前はリリカと申します。こちらは使用人のアメリア。この方は護衛の冒険者として、私が信頼している冒険者、カグラ様。もう一人いますが今は別行動をとっておりまして。今はいない状態ですわね。それでは宿へと移動致しましょう。部屋も確保しなければなりませんから」

そんな話をしてから宿屋に俺とカインズが宿泊することになった部屋へと向かうために移動を開始するのであった。その際俺にリリカは話しかけてきたのである。

「ところで、あなたはこの城塞都市へ何用できたのでしょうか?それと先ほどカインズが言っていたように貴方はなぜこのような依頼を?」

(ん?俺はリリカの様子がいつもと違って、何かを企んでいるのではないかと思い、その質問には適当に嘘を交えて話をしようと思ったのだけれど。そんな必要はなかったな。むしろリリカはいつものリリカじゃない。いつもと雰囲気が違う。なんか演技臭い感じがするな)

「俺か。俺はこの都市にある、冒険者用の学園に興味があるから来たんだよ。そこで学びたいと考えている」

俺はそのようにリリカに本当のことを告げる。

だがリリカはそんな言葉を疑うこともなく信じてくれたのである。

そしてリリカはそのままカインズと俺に、この街に来るまでの道中の出来事を話してくれることになったのである。その出来事について、俺は特に気になったことがあった。それはリリカの馬車に乗っていて襲われたあの魔獣の事である。あの時、俺が魔法を使って倒していたはずの魔獣がなんと復活して再び現れたというのである。その魔獣を倒した時に俺はこの世界がゲームに似たような設定の世界だと推測することができたのだった。つまり俺が倒した相手も魔物と同じで。俺が魔力を込めて殺したとしても完全に殺すことはできなかったということだ。これは俺の憶測でしかないが。俺のレベルが低いためだと思うのだ。俺は自分のステータスを見てみないと、その辺りの情報が全くわからない。でも今の俺の強さから考えると。普通の人間に俺を倒すことは難しいと判断できるのだ。なぜならば、レベル99のスキルを持っている俺に勝つことなど不可能だろうと考えているからである。

「なあ、あんたが助けようとしなかったから、あいつら死んだんじゃねえのか?」

「はい?何を言っているのかしら?」

「なんだよ?とぼけるのか?」

俺はリリカとその仲間たちが会話する様子を見ながら考えごとをしていたが。俺達の目の前にいるリリカが仲間である護衛の3人に対して冷たい態度をとっていることが気になっていた。そして俺もあの男と同じように、なんでこのリリカという女性はこんなにも他人に対して冷たく当たれるのだろうかと考えてしまう。

その答えがわかる前に俺は、そんなことを言い出すその男の事が少しばかり許せなくなってしまったのであった。なので俺は思わず男にそんな言葉を返してしまっていたのだった。その返答にその男が怒るのなら、その怒りの理由を聞いてみるか。そんな事を考えていたのに、まさか俺のほうに向かってくるとは。そんなにリリカが冷たく接することが腹が立ったのか。その男は俺に向かってきたのであった。俺はそのことに驚きながらも身構える。

しかしそんな状況の中でも冷静に対応をしている人物がいた。その人物は男性に掴みかかられている俺を救おうともせず、そんな男性の行動を止めるわけでもなく。じっと観察するように眺め続けているのであった。そしてその男性の仲間と思われる女性は「おい、お前やめろって!この女をこれ以上刺激するような行動はよせよ。こいつかなり強いからな」と言うが、そんな女性の態度にリリカがさらに声を上げる。

「ちょっと、そこの女性も邪魔をするなですわ!私の邪魔をするのはやめていただきたいですわ!」

リリカのその発言を聞き、俺のことを睨んでいた男はその瞳に憎悪のような感情を込めたような視線を送りつけてくる。俺もリリカの言葉に少しイラッとしたこともあり、その女性に向かって、同じように敵意の目を向けてしまった。するとそのリリカの言葉を聞いたその男性はリリカを指差して「この女の味方なのかよ?」と言ってきたのである。その言葉を聞いたリリカが、男性の指先を掴み。その腕を強引にねじり上げて、そして捻った。男性は突然の攻撃に反応できず、苦痛に顔を歪ませていたが、それでもリリカを怒鳴ろうとした。

「おい、て、てめぇ!い、痛えだろが!お、俺は貴族の子供なんだよ!そ、そんな俺に暴力を振るえばただじゃおかねえぞ?い、いいのかよ?貴族に逆らったら、て、手前の人生終わることになるんだぞ?」その言葉を聞いて、俺はこのリリカが言った通り。リリカに手を出さなくて良かったと思う。なぜならその男性の貴族は俺にとって、あまり好ましい印象を持っていない人物であったからなのであった。

「なぁ、俺を殴っても構わないが。リリカは関係ねえからな。そいつには手を出すな」俺はリリカを庇うように一歩前に出てそう口にした。

そしてその言葉で俺に対する敵意が薄れていく。

その様子から察して、おそらくだがリリカはこの男から、お金を巻き上げようとしていたんじゃないかと思っている。そう思ってしまうと俺は、リリカに対して嫌悪感を持とうとしていたのに。その気持ちがどこかに行ってしまった。その男は悔しそうな表情をしてリリカに「覚えとけよ」と、まるで捨て台詞のように言い残してから立ち去っていったのである。その男が去って行くのを確認したあと。俺に話しかけて来た女性が「ごめんなさいね。あんなバカな事をしていても一応あれでも貴族で。この町で一番力を持つ貴族だからね。逆らえずに黙って見ていることしかできなくてつらい思いをしていたの。リリカに危害を加える気はないし。あなたたちに対しても何もするつもりはないのだけど。本当にリリカが失礼なことをしちゃったよね」そう言うとリリカがそれに続けて。

そしてもう一人の男性が口を開く。

その二人から俺は事情を聞く。

そしてその話を聞いた後、俺はリリカに謝罪を受けた。

それからは俺とリリカは自己紹介を交わし、それからは護衛の依頼を遂行していく。

それから二週間の時が流れた頃、リリカの乗っている馬車の車輪が壊れるという出来事が起きる。その事態に対し俺は自分の力で何とかできないものだろうかと試行錯誤をした結果。【創造】を使い新しい馬車を作り出したのである。それを見たリリカとその仲間たち、カインズと呼ばれる男は、その力を目の当たりにしたことで俺を護衛として迎え入れることになったのである。そして護衛の仕事を終えてからも、しばらくのあいだ、俺たち四人で一緒に行動をするようになるのだった。

護衛の件が終わった後もカインズという男性は、しばらくの間この都市に留まることになったのだそうだ。理由はカインズの父親の商会がこの城塞都市で商売を始めており、この街を拠点に活動することに決まったそうだからだ。それでカインズは俺達のところに滞在することになったということだそうだ。まあ別に断るつもりもなかったけど。

こうして俺は、この世界で知り合いが増えていくことになるのだったのだ。そして俺がこの世界にきてから三か月くらい経過したのである。

剣士 レベル 1 体力 10 MP 1000 攻撃 9(+9UP!素早さ 7 魔力 560 運 620 固有技能 聖属性耐性強化III 全ステータスアップ 経験値倍加 技能 身体制御IV 剣術LV10 盾術V 風魔法LV4 水魔法 火魔法 光魔法 空間魔法 生活魔法 カインズとアメリアが冒険者カードを見せてくれないかなと思って俺は聞いてみることにした。だが、どうも俺に見せるのが嫌らしい。それどころか二人は冒険者カードについて、何か隠している部分がありそうであると俺が判断できたのだ。でも俺は無理に見せて欲しいとは言わなかったのである。だってカインズとアメリアの態度を見ていたら俺も見せたくなくなるような雰囲気を醸し出しているのを感じ取れたから。そんなわけで、とりあえず俺もカインズたちに俺の冒険者カードをみせて、冒険者カードは個人情報が詰まった大事なものだからな。そんな簡単に見せてはいけないという常識を教えようと思っていたのだ。だから俺は二人のことを責めるようなことはせずに、その話を聞いていた。そんな時だった。「あのさ、ところで。君の名前はなんていうのか教えてくれる?それと、なんでこんな依頼をしているの?」と、カインズが言ってきたのである。

(このタイミングで名前を聞いてきたということは、俺に名前を聞かせたくないってことだな)

と、俺は考えながらもその質問に対して正直に答えたのだった。するとアメリアが、「あら。もしかして貴方、勇者様なんですか?」と言ってきたのだ。俺も少し驚いてしまい言葉が出てこなかったので、まずいと思いながらカインズとリリカの顔を見るが。やはり俺のことを、警戒するかのような顔でこちらをみている。でも、そんな時に。俺の持っているスキルが発動してくれたのだ。俺には相手の感情を読むスキルが備わっており、相手がどのような感情を持っているかわかるようになっているのだ。そんなスキルのおかげでカインズの考えていることがわかってしまったのだ。どうやらカインズは、このリリアの街の領主の息子であると分かった。そして領主の息子は自分より強い奴には絶対に頭を下げないと父親から教えられているため、俺に対してかなり強い警戒心を持っていることがわかったのだ。俺はそのことを理解し納得して笑みを浮かべていたのだが、そんな様子を見られて不審に思われないようにするためカインズに向かって微笑むだけで、それ以上の事は何も話さなかったのである。

俺はこの場でこれ以上詮索しないことにした。そしてこれ以上詮索されないために、さっさと別れることを決意したのだ。これ以上ここにいるのはまずいなと判断したからである。なので早くこの場から離れることにする。

俺がカインズに向かって、「ああ、一応勇者をやっています」と言うと、その言葉をきいたリリカの表情が一瞬で険しくなっていく。俺の言葉に反応したリリカの様子から俺を睨んでいることがわかるが。その視線を受けて俺はリリカを落ち着かせようと声をかけようとすると、それよりも先に俺とアメリアの視界からカインズとその仲間たちの姿が消えてしまったのであった。

それは突然の出来事であった。俺の【索敵領域】の範囲外に瞬時に移動してしまったため、何が起こったのか理解できなかった。ただリリカは今の俺の発言に、とても反応していたことから俺と会話をすることで俺の情報をある程度引き出そうとしていたのではないかと俺は考えた。でも、それが失敗したと感じたのかリリカたちはその場から逃げていった。俺はその行動を見て、リリカたちとこれ以上仲良くなるのは難しいと判断してしまうのであった。そんなことを考えていたら俺は急に不安になって来たので、すぐに宿屋に戻りたくなってきたのである。なのでリリカたちのことが気になるが、今は急いで帰ろうと決意をするのであった。


***

俺は宿屋に帰りつくと受付にいるサーシャに部屋の鍵を受け取り。そして二階へと上がる。部屋に帰ってみるとなぜかリリカが居間にいたのである。しかもかなり不機嫌になっているようで、眉間に深いシワを寄せて俺を睨んでくるのである。俺はそのことに戸惑ってしまう。

「お、おい、リリカ?どうしてお前が俺の部屋に入って来ているんだよ?」俺は恐る恐るリリカに尋ねてみた。

するとリリカは「別に。貴方が私達に迷惑をかけてこないか見張りに来てあげただけよ」と言ってきた。俺に視線を送りながら、そして俺のことを見下すような目をしてくるリリカは相変わらず偉そうな態度だなと、そう思ったのである。そして俺はリリカが俺の目の前まで近づいて来てから俺の目をじっと覗き込んできたのであった。そんな様子から俺が、この都市から逃げ出すような事を考えてるんじゃないだろうなと思っているのかと俺は思い、少し慌ててリリカに話しかけて誤解を解きにかかる。

「なぁリリカ、俺がそんなことするはずないだろ?」俺は必死にそう言いながら両手を振ったのであった。そしてそのことでリリカは、やっと安心していつものリリカに戻ったようにみえたので俺はホッとしたのだった。だがその時に。「ねぇ貴方が、さっき言ってた"勇者様"っていうの本当なのよね?」リリカは、先ほどまでの不愉快そうな様子を無くし笑顔になりながら俺にそんなことを言い出したのである。

(ん?もしかして、リリカは俺が嘘をついていると思ったのかもしれない。だから俺に確認してきたんだな)

そう考えた俺は。リリカに自分のことを改めて説明した。そして俺は自分の持っている剣をリリカに渡すと、リリカは俺の持っている剣に興味津々な様子でまじまじと見ているのである。そして俺は自分のスキルのことを説明していく。その事で自分が他の人よりも強くなっているということをアピールするためにあえて大げさにスキルを使って見せていくのであった。

「ふぅ~ん、なかなかいい腕をしてるようね。その年でよくここまで鍛え上げられたわね?」

「へぇーすごいじゃん!」

リリアとライアがそんな感じのことを言ってくる。どうやらこの世界の人たちは皆、俺が【全知全能】によってステータスが上がったりスキルを手に入れたりするということは知らなかったようだ。俺はリリカが俺の話を信じてくれたのだと思い内心喜んでいたのだ。これでもう、これから俺に危害を加えるようなことはしなくなったかなと考えていたのである。だが俺は、次のリリカの言葉を聞いて、まだ信用されていないことを確信した。

「それなら私が貴方のその力試させてあげる。それで私が勝ったら大人しくこの街から出て行きなさい!それでいいでしょう?」

俺はいきなりそんなことを言ってきたリリカの言っている意味がよく分からず。なんで俺が街から追い出されなければならないのかと考えた。

(いや、そもそも俺が勇者だということで疑って、この都市の領主の息子であるカインズのところに行こうとしていたはずだよな?)

そんなことを考えたが俺は特に気にすることなく、「分かった」と言って了承をしたのだった。

それから俺達は、宿の外に出て戦闘訓練を始めることになった。そこで俺達の戦いを見物することになったのである。リリアが審判として俺たちの戦いを見届けることになった。

リリアが、俺たちが戦える場所に誘導してくれて。俺は今、その場所に来ていた。その場所は闘技場のようになっていたので、俺は周りを確認してみたところ。そこには観客と思われる者たちがたくさんいたのである。

(これは俺を逃がさないためにも、この観衆の前で倒すつもりなのかな)

俺の脳裏にリリカの言葉が思い出された。

俺は、俺のことを殺そうとしていたカインズの父親が俺のことを認めてくれていたということを思い出していたのだ。

それにしてもリリカたちにとって俺をここで倒すという事はかなりのリスクを負うことになるだろうと思っていたのである。それは当然だ、もしそんなことをすれば勇者に負けたという事実を残してしまいこの都市の評判を下げることになり、下手したらリリカ達が責任を取る羽目になってしまう可能性もあったからだ。

だが、それでも俺と決闘することを選んだのだからそれだけ、リリカたちは追い詰められているのだと理解できるのであった。

(でもまあ、俺としてはこの都市から出ることは確定事項だったから構わないんだけどな)

そんなことを考えていた俺に。

「ねえ君、リリカちゃんから聞いたけど本当に強いみたいだな?もしかしてあの子は君の奴隷だったりするのか?」

「もしかすると君は貴族の子だったのか?貴族であれば、君のような年齢で、これほど強いわけがないもんな。君って実はかなりの名家の出身だったのか?」

などと言ってきてきたので。俺は全く関係ないという事を説明する。そのおかげで彼らは納得してくれたのだった。そして俺は彼らに向かってこう言ったのである。

「悪いが俺は君たちが誰だろうと負けるわけにはいかないんだ」

俺はカインズに向かってそういうと剣を構える。

それに対して、カインズはニヤッと笑みを浮かべると。

「ほう。随分と余裕じゃないか」

そう言ってから。カインズもまた剣を構えたのであった。

俺は、剣を片手にカインズと向き合っていた。そしてカインズに対して、いつでもかかってこいという意味を込めて挑発してみたのだ。その行為に対してカインズは眉をぴくっと動かすだけで、特に反応を示さなかった。俺はカインズの様子を見ると、すぐに攻撃を仕掛けようか迷っているように見えたのであった。どうやら、すぐに攻撃しないのは、この都市の中で暴れるリスクを恐れているのではないかと感じたのだ。俺はこの隙に、どうやってカインズを倒すかを考える。まずはこの場で戦っても被害が出ないようにカインズの動きを止める方法が必要だと感じたのだ。俺はとりあえず【空間転移】でカインズに攻撃をすることにしたのである。

俺がそんなことを考えていたらカインズが俺の方に向かって突っ込んできた。俺は、それを待ち構える。そしてカインズに向かって俺も突撃した。

カインズはそのまま手に持っていた長剣で俺を薙ぎ払うかのように切りつけてくるが。その攻撃を回避した俺は。そのままカインズに向かって魔法を発動したのであった。

俺はカインズを魔法によって動きを封じようとしたのである。そして、俺が【雷球】を使ったことで辺りにバチバチと音を立てて光が走り始めた。

その様子に周りの観戦していた人たちが騒めくが俺はそんなことを全く無視して魔法を使う事にした。そして俺は【神炎の支配者】の効果をフル活用して、カインズの周囲に巨大な火柱を発生させた。俺はこの一撃に賭けたのであった。だがその俺の予想を遥かに上回る威力で。俺が想像する以上の熱量が発生してしまった。そのため俺自身もあまりの熱量と爆風に耐え切れずに、その場から離れてしまったのである。

その俺の魔法の効果を見て、近くに居た人たちからは歓声が上がる。

俺はその光景を見て、これならばいくら勇者であるといってもただでは済まないんじゃないかなと考えたのであった。そしてカインズのいた方向を見ていたら、爆煙のせいで様子が分からない。だが、徐々に晴れてきてその状況が確認できるようになってきたのである。そして俺の目に映ったものを見て驚いた。俺の視線の先には、まるで何事も無かったかのような姿で平然としているカインズの姿が目に入ったのである。

そのカインズの周りを見たときに、カインズの立っている位置が俺が思っていた場所よりも少し離れた場所に移動していたことに気付いたのである。

(まさか、あれだけの威力がある俺の放った【火球の爆発弾】をまともに食らいながらも無事だなんて、どんな防御力を持ってるんだよあいつは!?しかも移動能力まで上がってるってどんだけチートな能力なんだよ。俺なんかよりよっぽど主人公っぽい能力だよ)そんなことを俺は考えてしまう。俺だってこんな世界に来て、自分のスキルでチート級の力を貰ったからこそここまで強くなれたと思っている。だけど目の前にいるカインズはそれ以上だと感じてしまっていたのである。そのせいで、俺は思わず歯を食いしばってしまう。

(いや、このままじゃだめだ。なんとかしないといけない)

そう思い俺は必死に対策を考えた。その結果、ある作戦を思いついたのである。

(やっぱりここは、あのスキルに頼るしかないかな?)

俺がそう思い。

【解析】を発動させようとした時だった。

俺に向かって一直線に何かが迫ってきているのを感じた。

(なんだ?この気配は?)

俺は不思議に感じつつも。この気配が俺の命を奪うものだと気づき、慌てて回避行動に移ったのである。そして俺に迫ってきたものが俺の横を通り過ぎたと思った瞬間。俺の背後に大きな音が響いて地面が砕けたような感覚に襲われたのである。そして、俺は自分の横にあったはずの壁に大きな亀裂が入ってしまったことに気がつき驚く。俺は咄嵯の事で避けることに集中するので精一杯だったため、俺を襲ってきた物が何なのか確認することができなかったが。恐らくあの攻撃が当たっていたら死んでいたであろうということだけは理解することができたのであった。

「なかなかいい勘をしているな。普通だったら避けれるはずないと思うんだがな」

カインズは、余裕な表情を浮かべてそんな事を言っているが、そんなことはお構いなしに次の攻撃を仕掛けるために、また、剣を握りなおしたのである。そして、俺とカインズとの二度目の戦闘が始まるのであった。

俺は今、先ほど俺を襲った物体について考えてみることにした。俺の視界に入る範囲でしか【全知全能】の能力を使うことが出来ないので詳しい事はわからないが。

俺に向かって放たれたものを、カインズから目を離さずに分析を行っていく。すると、どうやらそれは剣のようなものらしいことが分かったのである。

(なんなんだこれは?)俺はその剣のような物を【全知全能】を使って調べてみると。どうやら魔道具の一種のようだということが判明した。

「おい、貴様!何をしている?」

「お前も勇者だというなら早く攻撃しろ!」

俺の後ろからそんなことを言ってくるギャラリーたち。

(いや、そんなこと言われても。この攻撃を避けるのに必死なんですけど?)俺はそんなことを思いつつ、俺に向かってくる斬撃の嵐を回避する事に専念するのであった。そしてカインズの放つ攻撃の速度が段々と上がっている事を感じるのである。そして俺がそんなことを考えていた時にカインズはとんでもない速さで、今度は剣を投げつけてきたのである。

俺はそれに驚きつつもギリギリのところで避けることに成功した。するとその剣は地面に突き刺さり大穴が空いていたのだった。その剣の凄まじさに俺は唖然となる。

(これが、伝説の武器の力なのか?あんな速度で投げつけられた剣を避けられたのは奇跡的だぞ)

俺がそんな事を考えながら戦っていると、いつの間にか俺に近付いてきたカインズは、俺に向かって蹴りを放ってきていた。

俺は、その攻撃をなんとか受け止めることに成功をするのだが、カインズの強烈な攻撃に俺は耐えることができなかった。

(なんて威力だ、流石は伝説級の攻撃か、これは本気で攻撃しないとまずいな)

俺がそう思っているとカインズが再び攻撃を仕掛けてきていた。俺はそれに対応するために構えようとするのだが。

(ん?あれっ、体が動かない)

俺は、体に力が入らないことを自覚する。

「やっと薬の効果が効いて来たみたいだな」そんなことを言って俺にゆっくりと近づいてくるカインズ。だが俺は、そんなことはお構いなしに魔法で反撃を行おうとした。だがなぜか発動することが出来なかった。そこで俺は初めて自分の身体に異常をきたしていることに気づいたのである。

その事を知った俺は焦る気持ちを抑えつつ。カインズの様子を見る。すると俺が思った通りに。俺が何も出来ないのを分かったのかカインズは俺のことを笑い出した。

「ハッハッハ。俺に勝とうとしていたんだろ?それが残念だったな?もう終わりだぜ?諦めて俺のものになれよ」

カインズは俺の耳元に顔を近づけて、そんなことを言うが。俺は、その言葉を無視して抵抗を試みるがやはり、体の方は言うことをきかなかったのであった。そんな俺の反応を面白そうに眺めてくるカインズだったが。すぐにつまらなそうな顔になると、いきなり拳を振りかざしてきたのである。その事に反応できないでいた俺は、顔面にカインズのパンチを食らうことになったのだ。

「ぐふぉ!!」俺は、鼻血を出しながら吹き飛ばされてしまうと地面に転がり動かなくなってしまうのであった。だがその時であった。突然俺に向かって攻撃してきた奴らがいたのだ。そいつらは、俺を攻撃したあとすぐに逃げようとしたが捕まってしまうことになる。そして何故か俺を助けようとしていたリリカまで一緒になって捕まったまま連れられていく光景が見えたのである。俺はその事に戸惑いを覚えていたのだ。なぜなら、助けられる側にいた人物が自分を助けたのだから。そんなことが普通起こるとは到底考えられないことだったからである。

だが俺はそれよりも今は、自分の状態の方が優先だと、思い体を無理やり動かし立ち上がろうとするが。体は全く動くことはなかった。そんな状況でも俺は何とかしてその場から離れようと足掻いたのであった。だがその行為は虚しく、全く動けなかったのである。俺がその場でじたばたとしている様子に気づいたカインズが俺に話しかけてきた。

「ほう。この状況になってまだそんな元気があるんだな。流石は勇者ってところなのかな?」

カインズがそんなことを俺に向かって言って来たが。俺は、そんなことを気にしている暇はなかった。俺は今すぐ【神炎の支配者】の魔法を使うための準備をしていたのである。

「無駄だぜ。お前の状態がどんなものか分からないが。【神炎の支配者】のスキルを使うために何かをしようとしていたのかもしれないが、この都市の中でそんなものを発動したらどうなるかわかっているよな?この場で俺たちもろともに吹っ飛んでもいいならやってみるがいいさ」と俺の考えていたことを言い当てるカインズ。

俺はその発言を聞いて【鑑定】を使いカインズのステータスを確認してみた。

【名前】カインズ 【種族】人間族 【年齢】20 【職業】剣士 【スキル】火属性上級レベル10、水属中級レベル9、風属性上級レベル5、土属中級、闇属性初級、光属初級 【加護】

【魔力量】

5000000/150000 この都市の外でなら俺が【雷球】の魔法で、俺自身が【雷撃】のスキルを使ってカインズを倒すことが出来ただろう。しかしここは都市の中だ。いくら俺が勇者であってもそのルールからは逃れられない。その事から俺はここで打つ手がなくなり。絶体絶命だと感じてしまったのである。

(クソ、俺は一体何をやっていたんだよ。こんな場所で俺は終わってしまうってことなのかよ。そんなの絶対にごめんだ。俺はこんな理不尽な世界で死ぬのなんてまっぴら御免なんだよ)

俺はそんな事を考えている時、先ほどの出来事を思い出すのであった。

俺は、カインズの剣による攻撃を受けるのを回避しようと試みたが全くと言っていいほど俺の体は動いてはくれなかった。俺はなんとかして剣を受け止めることに専念しようとしたのだが。カインズは、俺のことなんかお構いなしに俺に向かって何度も剣で攻撃してくるのであった。

(なんでこいつはこんな攻撃ができるんだよ!)俺は心のなかで叫びながらも、どうにかこうにか避け続けていたのである。

そんな時だった。俺が先ほどから受け続けてきた斬撃が、今までより更に速いスピードで襲いかかってきた。

(これを受けたら確実に死ぬな)俺は直感的にそれを感じ取るがどうすることもできなかったのである。そしてとうとう剣の一撃が俺のことを捉えた。

「うわぁあああ!!!!」俺は大きな声で叫ぶと自分の体に何か異変が起こったような気がした。

俺は自分の体が一瞬軽くなったような気がしたのである。俺は不思議に思いながらも、自分の体に意識を向けてみると自分の体の調子が良いことがわかったのであった。そしてそんな俺の様子にカインズも驚いたような表情で見ていた。そして次の瞬間にはカインズの姿が消えた。そして、気がつくとカインズは地面を舐めるような状態で転がっていたのである。俺は、カインズのその姿を目を見開いて驚いて見ていることしか出来なかったのであった。

それから、カインズは俺の目の前に現れた。その表情はとても悔しそうにしていて。俺に対して殺意にも似たような感情が感じ取れたのである。

カインズは俺の方を見ながら「今のは、俺に攻撃するために【限界突破】を使用したのか?」と聞いてきた。俺はそれに対して。

「いや違う。ただ俺もあんたと同じように、【限界突破】を使っただけだよ」とカインズに答える。すると俺の回答に信じられないというような態度を見せるカインズ。その行動を見た俺は少しイラっとしていた。それは俺の攻撃に全く対応出来ていないというように見えたからだった。なので俺はカインズに「今度は俺から行かせてもらう」と宣言すると。俺は全力でカインズに向かって攻撃を開始した。すると、俺の攻撃はカインズを捉えることができたのだ。カインズは自分の攻撃にカウンター攻撃が来るなんて考えていなかったようで、完全に俺の攻撃に対応できていないように見えたのである。だが俺の攻撃はカインズを捕らえることができず、カインズの剣によって受け止められてしまっていた。そしてカインズは反撃を仕掛けてくるが、その攻撃は、また俺にダメージを与えることは出来なかったのである。その事に対し苛立ちを感じるカインズ。だが、その事が切っ掛けとなり俺は徐々にカインズを圧倒することが出来るようになっていったのであった。

カインズはそんなことはあり得ないと言い出す。だがそんなことを言われても俺にだってなぜこのようなことが可能になっているのか全く理解できてはいなかったのである。俺が【神速移動】と【瞬迅槍突】を使用し、連続で攻撃するとカインズは防戦一方になってしまうが、カインズも負けじと剣を振り続けるのであった。するとそんな攻防が暫くの間続いたあとに、俺はカインズの攻撃を受け流しながら。「降参してくれないか?」とカインズに問いかけてみることにする。するとカインズは俺に向かって笑みを見せながら「誰が貴様みたいな雑魚にやられてたまるか!」と怒鳴りつけるように答えてくるのであった。

(こいつまだ自分が勇者だということを忘れてやがる)と俺は呆れていた。カインズがあまりにもしつこく食い下がってきて。俺のことをバカにするように言ってくるので俺は仕方なくカインズを殺すことを決意する。

そしてカインズに俺の本気の攻撃を仕掛けようとする。

「もうお前との会話は疲れた」そう言うと同時に俺は、カインズに攻撃を放ったのである。

その攻撃をもろに受けることになったカインズは、吹き飛びながら壁に衝突して、気絶してしまうことになる。

その後すぐに衛兵達が駆けつけてきて俺たちを連行していく。だがカインズは目を覚ますことは無かった。だが、カインズは何故か、幸せそうな表情をしていたのだ。その理由はカインズは、この国の英雄として表彰されることが決まっており。勇者であるカインズに勝利を与えたことで英雄の仲間入りをするということなのだそうだ。

俺がそんなことを考えている間に俺は、この都市の中で一番偉い人がいるところに連れて行かれることになり、そこで色々と話をすることになったのである。

俺の事情聴取が終わった頃にはもう夜になっており、俺はこの都市の領主の城の中に案内される。そこには俺をこの都市まで運んでくれた人たちもいたのだ。どうやら俺が目覚めたのを知って、迎えに来てくれてたらしい。俺が、この都市の権力者たちに頭を下げて謝っていると、リリカの両親が姿を現して俺に謝罪してきたのである。俺はそんな二人の姿を複雑な気持ちになりながら眺めていたのであった。俺はそんな二人の姿を見ながら、俺に出来ることをしようと考えてあることを決行することを決めたのである。

(やっぱり俺って勇者とか向いてなかったのかな?)そんな事を考えてしまう俺。

俺は今、リリアナのお父さんの頼みを聞き入れる事に決めたのであった。俺は、この街にいる間この人達の力になろうと考えたからだ。俺はこの世界に転移させられた時に【鑑定眼】と言うユニークスキルを手に入れていて。そのスキルを使って人の力を見ることができるようになっているのである。俺はまず、【S級鑑定】を使い、二人の力を詳しく調べることにしたのであった。その結果俺はこの二人がかなりすごい人物だと分かることになったのである。この世界では【鑑定】を使う事が出来るのは限られた一部の人間しかいないので、俺が、そのスキルを使ったということは隠しておくことにした。そして俺は【鑑定】を使って得た情報で、二人のステータスを確認してみる。

ステータスはこうなっていた。

【名前】

【年齢】45 【性別】男性 【種族】人間族 【レベル】

70 【職業】

魔獣使い 【体力】

25000/20000 【魔力】

60000/30000 【攻撃力】

10000 【知 能】

11000 【防御力】7900 【素早さ】

4500 【精神力】

4000 【運】

30000 どう見ても化け物クラスの強さだった。この人が本気を出した場合この大陸にすむ生物たちは簡単に滅んでしまうのでは無いだろうか?そんな考えに至るほどのステータスだったのである。

(なんでこんなに強いステータスを持っているのか気になるけど、今は聞くべきじゃないだろうな)そんな事を考えているうちに二人は帰っていき。俺は部屋へと案内されることになった。その部屋はとても豪華なもので、まるでどこかの国の王族のような部屋に見えたのである。俺はその事を疑問視しながらも。その日は休むことに決め、眠りにつくのであった。

翌朝俺は、この都市の探索を行うことにする。そして【魔力感知】と【気配察知】を使い俺はこの都市の探索を行ったのである。すると【魔法結界】の範囲に一人の女の子が入った。俺はその子が危ないと思って助けに入るが、俺は少女を庇って怪我をしてしまうのであった。そして俺が倒れてしまった後。その子は俺に駆け寄って「大丈夫ですか!?すいません!!私を助けてくれたんですね」と言って俺に話しかけてきたのである。

(えっ?なんのことだろう。俺、別にそんな事をした覚えはないんだけどな。ってまさかあの時の子なのか?)

俺には心当たりがあり、もしかしたらそうかもしれないと思えた。俺は「とりあえず回復してあげようか?」と聞くとその子は嬉しそうに微笑むのであった。俺は、その子のステータスを見て驚愕してしまったのである。そのステータスの数値が、全て50万を超えていたからだった。俺は、その子が俺を騙しているのではないかと疑いながらその子に話しかけることにしたのである。

「ねぇ、あなたの名前はなんていうの?ちなみに俺のことはどう思う?君は何者なんだい?」そう俺は聞いてみると。彼女は俺が何者かについて答えようとしなかった。そればかりか、俺のことを信用できる人と認識したらしく俺に対して好意を向けてきているようなのである。俺はそれを感じ取りながらも、その彼女のステータスを【鑑定眼】で見てみると。その全てが、5桁を超えるようになっていた。それを見た俺は、彼女に警戒を解かないようにするのであった。そして彼女には俺の事は黙っていて欲しいと頼んだのだが。

俺はなぜか、そのお願いを聞いて貰えなかったのである。俺は、彼女が、この国の中でもかなりの地位にいる存在だと言うことを知ることになる。そんな彼女が、なぜ俺に好意を寄せるような行動を取るのか、俺にはよくわからなかったのである。だがそんなことは関係なく。俺がこの国に来た理由を話す。すると、彼女は「そうなのですね」と言って。それから俺に色々な質問をしてくるのであった。

その質問に答える俺だが。正直俺は何一つ答えることができなかった。俺は元の世界に帰る方法を探してこの国に訪れただけなのだから。それに俺がこの世界の出身というわけでもないからなのだがそのことを説明しても仕方が無いことなのだ。俺の事情を聞いた彼女は「そうなのですね」と言ったあと少しの間何かを考えるようなそぶりを見せていた。

そんなことをしていた俺たちの元にリリカが姿を現すがその姿はボロ雑巾のようになっていて服は所々破けている上に体中傷だらけだったのだ。それをみた俺は急いでリリカの元に向かう。

そして俺は、リリカを癒やすと「リリカ、いったいどうしてあんな状況になっていたんだよ?」と聞いてみる。それに対して、リリカは何も言わないで俯いてしまっていたのだ。

俺はそんなリリカにこれ以上聞くことが出来ないと思ったため諦めたのであった。それから俺はこの都市の領主の元へと行くために準備を始めることにする。そして俺は領主に会う為に着替えるとそのまま部屋を後にしようとした。そして部屋の扉を開けたところで、そこに現れた人物と目が合ってしまうことになる。そこには、あの時俺を助けた女の人が、驚いた表情をしながらこちらを見ていた。

(やばい!俺の顔見られちゃったよな。なんか俺をジロジロ見てるし。でもあれ?もしかして気づかれてないのか?)

そんな事を思いながら俺を見つめる彼女を見ていると。彼女の背後に一人の女性が姿を現したのである。その女性はこの都市の偉い人らしい。そんなことを思った俺は、この都市の権力者であるその人に挨拶をすることにしたのだった。

「お初にお目にかかります。俺は冒険者のカイトと言います。以後宜しく御願い致します。俺がこの都市に来た理由は、俺と同じ日本からやってきた人達のことで話がしたいと思いましてここに訪れました」

そう言うと、俺の前にいた女性は「わかりました」と言って。この場は俺に譲ってくれることになった。

「私はこの都市の領主のリッカです。あなたが、カイトさんでいいのでしょうか?」

「はい、俺はこの世界に召喚された勇者なんですよ。だから俺がこの国を訪れたのは、勇者である勇者達に会いたかったというのが理由です。そしてこの世界に勇者は三人存在すると聞かされていました。なので勇者達に話をするために俺はここまで来ました。俺はその話に乗らせてもらうつもりです。俺も日本から来た一人なんです。俺も、この世界で生きていこうと思っています。俺もこの都市で暮らす許可を下さい」

俺は、真剣な表情で領主に向かって話す。するとリリカは「カイト様がこの都市に滞在することを認めます。リリカからもよろしくと伝えて欲しいと父から伝言があります」と。そして俺は「ありがとうございます」とリリカに礼を言う。

俺はそれから、この都市に住むのに困っていることはないかとリリカに尋ねると。特に問題は無いとのことだった。それならば、俺は自分のやりたい事のために行動を開始しようと思うのであった。

俺はこの都市にある図書館に行く事にしたのである。

この世界の知識を少しでも多く知りたいと思っていたのだ。そんな俺はリリカに案内される形で図書館に辿り着くことができたのである。そして俺はリリカに案内されて、俺が読めるように文字を書いてもらったのである。

俺のスキル【言語変換】があれば読むのには苦労しないのだが。やはり読めなければ、これからこの世界で生きていく上で不便になる。そのためにも、俺は必死に本を読み続けることにしたのであった。

そんなこんなで、数日が経過していき。俺は本を読み続けた結果。

俺は【鑑定眼】を使い。【魔法】や【スキル】の力を、俺なりの方法で検証していった。その結果。俺は、【魔力回復薬】を使って回復させることによって魔力の自然回復速度を上昇させることができることがわかったのである。

これはかなり有用なスキルだと思うので俺は早速魔力を回復するアイテムを作り出すことにしたのである。俺は【錬金術師】のスキルを持っているから【魔法陣】が使うことができるようになるので俺は魔法を発動させるために、魔法陣を作り上げることに集中するのであった。そして完成した魔力を補充するための道具を鞄の中に入れることにした。それは、見た目にはポーションのような色をしているものだったのである。そして俺はこの【魔力補給剤】と名付けたものを手にいれたことで、この世界で生活するためのお金を手に入れることができそうな手掛かりを見つけることが出来たのであった。

それから数日後。俺は図書館に行き様々な知識を身に着ける事が出来たので満足していた。俺としては一ヶ月ほどこの国に留まって情報を集めたかった。だが俺の目的は元の世界に帰り元の世界に帰る手段を見つけ出す事である以上いつまでもここにいるわけにも行かないと思ったのだ。それにリリカをこのままにしておいてもいいのかとも考えていたのだ。リリカが危険な状況におちいる可能性も考えられるので、出来るだけ早くこの問題を解決したいと考え始めた。

(やっぱりあの子が危なくなる前にどうにかしたほうが良さそうだな)俺はそんな事を思っていたのだが、そんな時に俺に声をかけてきた者がいたのである。

「貴方はこの都市の住民ではないですよね?それなのにこの都市に滞在して何を調べていたんですか?それに私にはどうしても聞き逃せないことがあったんです」そう声をかけてきたのは俺を庇って怪我をさせてしまった女の子だったのである。そして俺は彼女がどうしてそんな質問をしたのか分からなかった為。その理由を訪ねてみると彼女は答えた。それはこの国の姫であるという。そしてその答えを聞いた時俺は言葉を失ってしまったのである。

(まじか!?こいつ王族なのか!?でもなんだろうな?あまり凄さが感じられないような気がするのはなんでだろうな?)

「すいません、質問してもよろしいですか?」俺がそんなことを考えているうちに彼女は話しかけてきていた。そこで俺は我に返ると「えっと何を聞きたいんですかね?」と訪ねる。すると彼女の方もなぜか緊張しているみたいだ。俺の方を見て何故かモジモジしながらこう答えたのだ。「私は貴女のことをお兄ちゃんと呼ぶことはできますよね?だって私の命を救ってくれたんだから。あの時は本当にありがとうございました」

俺はその言葉を聞いて少しの間考えるようなそぶりを見せてしまう。俺は彼女のことをどう呼べばいいのか迷ってしまったからだ。俺にとって彼女は恩人ではあるので。そう言った事を聞かれたとしても断る理由もないのだ。俺が悩んでいる間になぜか彼女は嬉しそうな表情で俺をみつめてくるのであった。

「まぁ、好きに呼んだらいいんじゃないかな。呼び方なんて俺の自由にすればいいんじゃない?」俺は彼女に返事を返すと、彼女はとてもうれしそうな顔をしていたのである。

そんな彼女に俺は疑問に思ったことを訪ねると。「俺は君の名前を知らないんだが。名前なんていうの?」と俺が言うと彼女は「申し遅れました。私の名前はセフィと言います」と。それから彼女は俺に自己紹介をしてきた。それから俺達は、一緒に行動することが多くなっていくのであった。そんなこんなで、俺達が行動を共にしているのを偶然目撃されてしまったらしい。

そして彼女はこの都市を治める権力者の娘だという事がばれてしまい。俺達も面倒に巻き込まれることになってしまうのだった。だがそんなことは俺の知ったことではなく。ただこの国を俺の求める方向に進めればいいだけだと思っている。俺はこの世界でやることがあるから、そのために邪魔をする存在が現れたとしたら俺は容赦なく叩き潰すことにしているのである。

それから数日間、俺は図書館で調べものをしていた。

俺は俺なりのアプローチをして。この世界の情報を頭に叩き込んでいくことにしていたのだ。この世界の成り立ち。その世界にいる魔王について。そしてその魔王を召喚した奴についても、その方法や、その世界の人間が勇者と呼ばれる者を呼び出して戦わせているということ。そして俺のステータスにあった。勇者と言う言葉の意味と。この世界に存在する神の存在とその神が人間に与えた力のことについて調べていったのである。俺はこの世界にいる神様に心当たりがあるからな。そして俺は【鑑定眼】と【錬金士】の力を使う事で、新しい魔法を作りあげることに成功したのであった。それがこれだ!

「スキル創造!」

そう言って、魔法名を言うと俺の目の前にウインドウが現れる。

『新しく魔法を作ることができるようになりました。魔法の作成は【錬金術】で行うことが出来ます』と表示されていたのである。

(これでまた一つ便利なものが作れるようになったぞ!)

俺は早速、どんな魔法を作成したのか確認することにしたのだ!まずは魔法の説明を読んでみることにする。

魔法名時空操作 消費MP500(時間短縮可能)

効果 指定した対象の時間を1分間加速することが出来る 俺が考えたのは、簡単に言うとタイムマシーン的な使い方が出来るようになるという物を作ろうと考えたのだ。そうすると時間が稼げると思ったから、このスキルを作ることを思いついてしまったのだ。そうすることで、この世界での滞在期間をもっと伸ばせるようなことをしようと考えたのである。

それともう一つ作った魔法は。俺の身体能力強化の魔法なのである。

【身体活性】と【魔力活性】を組み合わせた、俺のオリジナルスキルを作り出したのであった。

効果は【魔力活性】と同じなので省略させて貰うことにした。そんな訳で俺は魔法を創り出してこの都市の問題を解決するために動くことを決めたのである。

そんなこんなでこの都市で俺は色々な問題に立ち向かって行くことになった。

俺はリリカと一緒に買い物に来ていた。

その目的は俺の装備を整えようと思っていたので、俺は武器を買うことに決めたのである。だがしかし、この街で売られている剣の殆どは、この前戦ったオークやゴブリンにすら通じないような品しか存在しないことがわかった。

この世界には魔物がいるのだが。

魔物はレベルの概念が存在しているのだ。

そしてこの世界に生息している魔物は最低でもLV100を超えるモンスターしかいないのである。そしてこの国の騎士達でさえレベルは70程度しかいないのだという。

そのため俺はこの国には冒険者がいないのだと考えていた。だから俺は、この国にある武器でこの先の戦いを生き抜くことが出来ないと判断して、別の国に向かうことを決めることにしたのである。

リリカから紹介された武器屋で俺はリリカから貰った金貨を使って装備を整えることにしたのである。

ちなみに、この世界に流通している貨幣の単位なんだけど、 1ゴル=1000円ぐらいの価値になるようだ。

つまり俺は10万ゴールドをリリカから渡されていることになる。そしてこの店に並んでいる武器は、俺が持っている武器よりも明らかに値段が高い商品ばかりだ。

俺はその中から、自分に一番合っているものを選ぶために。真剣に武器を選んでいったのである。

(流石に今のままじゃ厳しいからな。俺の【刀術】と【短剣術】がどこまで通じるかが勝負の決め手になってくるだろう)

そうして俺は自分の能力と相談をしながら、自分が使いやすいと思う物を何個か選び取る。そして俺はその店の主人である人に、この店で扱っている中で、一番の武器を見繕ってくれるように頼むことにしたのである。

「あのすいません。少し頼みたいことがあるんですけどいいですか?」

「おう?どうした?何か欲しいものでもできたのかい?」

俺の言葉に反応して返事を返してくれた。この店主がこのお店の主で名前はアウルと言っていて。ドワーフの男性であるのだ。俺はこのお店で一番良い装備を買っていきたいと伝える。すると彼は「へっ!いいぜ?この国の鍛冶師がどれだけの腕をしているのか見せてやるよ」と言いながら、その腕を披露してくれた。

この世界での武具の作り手としてこの人はトップレベルの人なのではないかと思うほどの完成度の高すぎる出来だったのである。そんな彼が作った作品の中から俺は気に入ったものを見つけることができたので、それを購入することにしたのだ。その代金を支払い俺はこのお店を後にしたのである。それからリリカと合流しようとしたところで。

リリカの母親とリリカに遭遇したのである。リリカの姉と妹の二人も一緒にいる状態でだ。そんなリリカが突然、

「あ~!!!私のお気に入りに手をだしたでしょ?」と叫んできたのだ。

俺はその言葉に対して、「この店の中で俺が一番だと思う作品を選べって言ってきたから。俺なりの判断で、あの武器を買ったんだよ。あの剣を作れてるなら俺でも十分にあの化け物に太刀打ちできると思ったんだ」そう答えると。俺の答えに納得をしなかったようで「嘘でしょ!?あれを買っちゃったの?それは駄目だって」と言っていたので俺は、この店に展示されている商品の中でも、最も優れていると言える商品を選んだんだと説明した。するとリリカが俺の目をじっとみつめてきたあと「はぁー」とため息をつく。

それからしばらくして「しょうがない。今回だけ特別なんだからね?これからはちゃんと考えて選んでね?」とリリカが言っていたのである。俺はそんな会話を聞いていた二人の女性がとても興味深そうな顔をしてこちらを見てきていた。それから俺達は、この都市に来て初めて外食をすることにしたのだ。

そして食事が終わりかけた時だった。

俺達はいきなり数人の男達に囲まれたのである。それから俺は、 その者達の目的を聞き出すことにした。

どうやらこの国の権力者の娘であるリリカを狙った誘拐を企んでいたらしく。それを止めようとしていたらし。その時にリリカの姉であるアイナのことが気に入らない奴がいたから、そいつをぶっ飛ばしたと言うのが事の顛末だったらしい。そして、そいつを気絶させた俺も一緒に連れ去ろうとしたらしいが。俺はその場から逃走することが出来た。

俺は逃げる際に。そいつらに魔法で作った氷塊をぶつけて行動不能にしておいた。そのせいでこの国を出るのに手間取ってしまった。

俺は外に出た瞬間に気配察知の能力を最大限に広げてから走り始めたのである。それから数時間、全力で走り続けてなんとか無事に国境を越えて隣の国までたどり着いたのであった。それから、その国から出るのに2日ほどかかってしまうのであった。それから俺達は馬車に乗って移動することにしたのである。理由は特に無いがなんとなく、徒歩で移動する気分ではなかったのでそうしたのだ。そして数日、馬を走らせること数日目。

ようやく目的の町が見えてきていたので俺はそこで一泊しようと思い。

リリカたちに伝えようとしたその時。

目の前から巨大なドラゴンが現れたのである。

「ルクスさん逃げてください。この魔物は普通の生き物ではありません!」

リリカが必死に逃げろと言っているのだが。俺達の前に現れた魔物は俺達を無視して何処かに飛んで行ってしまうのであった。それから俺は、リリカ達を家の中に入るように促してから自分も中に入って扉の鍵を閉めたのである。するとリリカが家の窓から、さっきの奴を眺めていて俺はその方向をみると、さっき奴の姿を確認したが。今度は別の場所に姿を現していた。俺はその様子を見ていると、またもどこかに姿を消してしまう。

(これは俺がここにいる間に何度も目撃することになるのか?)と思い。とりあえず今はリリカの安全を確保するためにもこの家に結界を張ることにした。この結界は俺が創り出したもので。【結界創造】で作り出されたものである。この家は【錬金士】の力で強化してあるので、並みのモンスターは侵入できない。そんなことをやっていると。外から悲鳴や戦闘音が聞こえてくるようになったのである。それから数分後、 この家に避難している俺達の元に現れた一人の男が。「この国に何か用があって来たのか?もし、俺に手を貸してくれる気があるのならば助けてほしい」と言ったのだ。

俺は目の前にいる男のステータスを覗き見てから判断を下すことにしたのである。

(こいつのステータスは確かに高いが、この国にいる騎士団の騎士達と大差ないな。俺達がこの国に来るまでに戦った騎士達より強いとは到底思えない)そう考えた俺はその言葉を信用しないことに決めたのだ。そしてリリカ達に俺が今考えていたことを伝えて。この場からすぐに立ち去ることを告げてこの部屋から出ようとする。すると男が、この家を出て行くなと叫ぶが。俺はそれを無視して家を飛び出していくのであった。

俺は、先程、家から飛び出すときに、この家の玄関の前に転移魔法でゲートを作ってから出てきたのである。そして、俺は、そのままこの国から脱出することに成功したのであった。その日の夜。俺達は先程の町に戻ってきたのである。リリカとリリカの母親が宿を探しに、俺とリリカの姉と妹は先に食事を取るためにこの酒場にやってきたのである。俺が頼んだのは肉と野菜をパンに挟んでいるサンドイッチである。そんな食事を楽しみながら俺達はこの世界に来て何日経ったかを確認をすることにする。そして俺は、リリカから渡された懐に入れていたこの世界での一日の時間の感覚を知ることが出来る腕時計で、今が何年何月なのかを確認すると。この世界はどうやら俺が暮らしていた地球と同じ時間の流れ方をしていたようだ。そのため、まだ1か月も経ってないことが判明したのである。それから俺は明日になったらこの国を出発することを決めたのである。

俺は、リリカ達と共にこの町で最後の一夜を過ごしていた。この世界でリリカと会うことはこれで最後になるだろうと思っていたからだ。だがしかし、リリカと俺は、この都市を離れないで済むような状況になってしまうのである。

俺達は夕食を終えてから。俺はこの国の観光をしてみようと思っていたのである。そして俺がリリカたちと行動を別にしようとしたとき。

リリカの母であるレイネシアに呼び止められたのである。

そしてリリカのお母さんから話を聞くことになったのだ。俺にリリカと仲良くしてやってくれないかというお願いをされたのである。

リリカの両親はこの国に代々続く伯爵の地位に就いており。そしてこの国の政治を行っている一族なのであるそうだ。そんなリリカの両親は娘に婿を取らせたいと考えていて。この国の王子であるルーセント公爵との縁談をセッティングしたらしいのであるが。リリカはその婚約を断ったそうなのである。その話を聞いた時に思ったのだが。この国は実力主義で、王族でも、力が無いものには人権などは無いに等しいらしいのである。だからそのせいで俺に白羽の矢が立ったわけである。そのことに納得ができた。それで俺に話を振ってきた理由が。リリカの母親は俺にこの娘の婚約者になってほしいと思っているようだ。

「あの、俺でよければリリカのお嫁さんになりますよ」と俺は答える。すると彼女は嬉しそうにしていた。それからリリカと姉であるサーヤも俺の返事を聞いて驚いていた。俺はそんな三人の反応を見てから自分のステータス画面を確認してからリリカと二人っきりになってから改めてプロポーズしたのだった。そして俺達は結婚したのである。

リリカと俺は結婚してから数日後のことだ。

リリカがいきなりこの世界の言語についての勉強を始めてしまったのだ。俺の記憶を探って、この世界に存在している全ての国の言語を覚えたいと言うので、俺が通訳して教えることになる。そして俺は自分の記憶の中にあるこの国の文字を使ってリリカに勉強を教え始めたのである。リリカと俺はお互いの認識をすり合わせながら順調に読み書きができるようになっていったのだった。そんな感じでリリカとの生活が始まり。俺は幸せを感じながらもリリカとこの世界を生きていくことを心に決める。そんな幸せな生活が続いていたある日のこと。

突然、王城から使者が訪れて来て、ある貴族をこの城に招き入れてほしいという要望を俺に言ってきたのである。その貴族の名は「リリファウス」というらしい。その貴族が来た時、俺と妻となったリリカはこの国の第一王女に謁見することになったのである。そこで俺がリリカの横に立っているとその女性は言ったのだ。「貴様はリリカが選んだ男か?それならば妾に仕えぬかえ?」と。その言葉を聞いた時。

リリカは、俺の腕を掴み震えだしてしまったのである。その行動から、俺は、このリリカの両親であるレイラック夫妻が言っていたことを思い出したのである。リリカは王家の血を引いていないただの娘であり、王家とは何の関わり合いのない一般人なのだと。そのことを思いだした俺は。

このリリカに対して高圧的な物言いをしたこの姫に対して殺意が沸き起こってしまったのだ。そんな俺の様子を感じたのかリリカのお母さんが止めようとしてくる。

リリカはそんな俺を必死に引き止めるのだが。俺の心は怒りの感情に支配されていたのだ。そして、俺を止めようとするリリカに俺の意識を向けさせようと必死になっているので俺は冷静になれたので一度深呼吸してから目の前の女性と向き合うことにしたのである。すると目の前のその女性は「貴様には、少し聞きたいことがある。付いてこい!」と怒鳴るように言うのであった。俺はそんな女性の行動に不快感を覚えて、俺は無言のままその場から消え去ったのである。

その日の夜のことだった。俺は一人で外に出た。そして気配察知の能力を最大限に使い。この都市の闇に溶け込んでいる者達の存在を感じる。そして俺はこの都市の治安を維持する為に作られた騎士達が待機する場所に歩いていく。そこには数人の騎士と、俺をリリカの元に案内してきた女性が一人いたのである。そして俺は騎士達に向かって、

「こいつらはお前達の手に負える相手じゃない。俺が引き受ける。だからお前達はこのことを上に報告するんだ」と言ったのだ。

それから俺は目の前の連中を叩き潰すことだけを考えることにしたのである。

それから俺が襲った奴等は俺の魔法で全員動けなくなるまで叩きのめすことに成功したのである。それからそのあとは俺とこの都市を治める騎士達が協力して犯人の捕獲と、その関係者たちの連行を行うのであった。そしてその翌日のことである。

この国の騎士の一人が俺の元を訪ねてきたのだ。その騎士によると、リリカの両親のレイラック子爵と、その妹のリーシャちゃんが昨晩に何者かに襲われ殺されたことが報告されたのである。

俺はそれを聞いた瞬間に。怒りを我慢することができなかったのである。

俺は、騎士にこう告げた。

俺が殺した奴等を捕まえたと嘘をついて、俺達の家にやって来たその襲撃者のことを。そいつは【全回復】を使った後に俺を襲ってきたから返り討ちにしたが、他の二人は【風刃】の魔法で切り裂いてやったと言って。そして【蘇生薬】も使って蘇らせて、拷問したと伝えておく。そう伝えたときのリリカの顔は真っ青になっていて。

それから俺の胸に飛び込んでくる。俺はそんなリリカを抱き留めると「大丈夫。俺はもう怒っていないから心配しないで」と告げるがリリカは泣いているだけだった。そして俺は騎士達に、この件に関しての一切を秘匿してもらい。リリカが落ち着くのを待ちながら。この国で起きたことについて考えることにしたのである。

(まず間違いなくあの二人が殺された原因は俺にあるだろう。おそらく俺が、リリカの父親を俺が殺して、俺とリリカの母親を助けた件が原因だろう。あの一件で、リリカの一族と敵対する勢力に目を付けられた可能性が非常に高い。そして今回のことで、その勢力の誰かが動き出して。この国を襲ったのだろう。そして、リリカを狙ってきたということは、この国の貴族に紛れ込んだ敵勢力が、この国で好き勝手やっている証拠だな)

そう思った俺はこの国にリリカを残しておいていいのかと考えてしまったのである。すると俺の様子を不思議に思っていたリリカに俺はこれからのことを相談することにした。その結果として、俺はリリカと一緒に、リリカのご両親が眠る墓を作りに行くことにする。そして俺は、この場所に残っていてくれるリリカの両親の為に、花を供えることに決めて。

そして俺達は一緒に旅支度を始める。

この国の王城に乗り込むことに決めていたからである。その事を知ったリリカと俺は顔を見合わせて苦笑いしてしまう。俺はこの時、リリカが泣き止んで笑顔を見せてくれたことを嬉しく思えたのである。そして準備を終えて俺達は、リリカの実家に向かうと、そこでこの家の留守番をしている使用人の中から、俺の護衛になる者を選んでもらうように頼む。そして俺とリリカが家を出るときに護衛してくれる者を数人選んでもらった。その者たちは、この国の第二騎士団に所属する者であると教えてもらった。その者たちの名前は、アベルナ、カシム、スザクの三人である。

それからリリカと俺達は王城の近くの町に移動をする。その町の宿屋で一晩を過ごすことになったのだが。ここで俺のステータス画面に変化が起きる。俺はステータス画面を確認したらレベルが上がったようで能力値が一気に上昇してスキルも増えているようだった。

俺のレベルは30になったようだ。俺はリリカにステータス画面を見せる。リリカの方は相変わらず魔法の適性が無いままでレベルが1しか上がっていなかったのだ。

その日は特に何もなく夜が明けてしまう。そして俺はこの国に潜入するための準備をすることにしたのである。俺はリリカに頼んで王城に近い貴族の館に手紙を送る手配をしてもらう。俺も王城に侵入するための方法を考えたがあまり良い方法が思い浮かばなかった。しかし、王城には門兵がいるはずだと思い出し。リリカが持っている魔道具を使えばその兵士たちに気づかれることなく王城に出入りすることが出来るのではないのかと考える。そのことに気がついてリリカに確認したところ。確かにそれは可能かもしれないという結論に達する。だから俺は早速、リリカに、俺の想像しているような機能があるか調べてくれるように指示を出したのである。

俺はその間に王城に侵入するために必要なものを考えて、アイテムボックスの中に収納されている材料を使い装備を整える。そして出来上がったのは、俺の体に合わせた全身鎧である。それに武器は刀だ。この世界の剣は俺の世界の日本刀と比べると切れ味も強度も遥かに落ちるので。刀を作っておいた方がいいと思ったからだ。俺はリリカに完成した俺の作った防具一式を彼女に渡す。リリカはその出来映えに満足していたようだ。そんなリリカに俺はこの国の地図が欲しいと伝えると。それを聞いてからリリカはすぐに地図を持ってきてくれ。そして俺に渡してくれたのだ。

それから、この国のお金と金貨が欲しかったので。俺とリリカはその足で両替商の元へと向かうのである。この国で使われている硬貨を、日本円に替えるためだ。そのついでにリリカが着る服を買わないと行けないのでそれもお願いしておく。そして両替をした後は食料を買って、王城の近くに拠点となる建物を借りることにしたのである。リリカの希望で、この屋敷からそんな遠くない場所で目立たない場所を選んだのだ。そしてそこに生活に必要な家具などを運んで行くことになる。もちろんその中にはこの世界に来てから俺が作った物も含まれている。

その次の日には、俺が考えた計画が上手くいくのか確かめるべく。この都市の警備状況を調べてみることにした。まず最初にこの都市を治める貴族の屋敷を探り、その屋敷の警備状況を詳しく知ろうとしたのである。すると予想どおりこの都市の治安を維持している第一騎士隊の隊長が屋敷にいたのである。そこで俺はこの屋敷にいる騎士達を気絶させて、リリカと共に忍び込み調査を行うことにした。

そこでわかったのはこの都市を治めている貴族の家系図が詳細に書かれていた資料を発見することができたのである。その資料によるとリリカの家系の先祖は、ある伯爵家に仕えていたということがわかった。そしてリリカの一族が代々仕えていたその家はこの都市でも有数に力を持つ一族だったという。そんな話を俺が聞き出しているとリリカが急に怒りだし、リリカが俺に抱きつき怒り出したのだ。その話によるとこの家の当主は。リリカを誘拐した犯人の一人でリリカの一族を暗殺しようとした人物であるということらしい。リリカはそのことを思い出したのか怒りを露わにしている。そんなリリカの頭を撫でながら落ち着かせることにした。そして俺はリリカに「俺が必ずお前のお父さんとお母さんを救い出すから心配するな」と優しく声をかけてあげたのである。するとリリカの怒りは消えていき落ち着いてきた。そしてリリカに、俺はこの領主の家に潜り込むために作戦があることを伝えて協力してもらうことにする。

そして俺とリリカが屋敷の中に侵入しようと決意したとき、突然俺の目の前に見知った人物が姿を見せたのだ。そうあのレイラック卿が俺達の前に姿を現したのである。

俺とレイラック子爵は対峙する。お互いに警戒しながらも相手の様子を窺うのだが、子爵の表情はどこか怯えているように見える。おそらく、レイラック男爵を殺した犯人である俺を睨んでいるだけだと思う。そして俺達の間に緊張が走る。俺と子爵の二人だけがこの場に取り残されたかのように思えるほど沈黙が続いていた。だが俺はここで子爵に向かって口を開いたのである。

「この家に用事がある」

そう俺が言うと。レイラック卿は驚いた顔をしながら俺のことを見つめてくる。

それから俺は、自分のことを名乗り、そして自分が勇者であることを名乗った上で。レイラック家の娘と婚姻を結んだ者だと告げてからこの家に訪れた目的を彼に話す。そして、この家を襲ってきた連中を捕まえたのでその連中を引き取りに来たのだと説明した。

それを聞いたレイラック子爵が、「お前の連れはどこだ?まさかとは思うがお前が手に掛けたんじゃないだろうな?」と言うので。俺は、この屋敷の中にいると伝えて、子爵に中に招き入れてもらうことにする。俺はリリカの手を握ってから中に入る。するとすぐに子爵の執事が俺達の前に現れたので。俺はリリカから聞いた話で、俺が殺した男が使っていた武器がどのような武器なのかを確認したいからと嘘を言って。レイラックスの執事を部屋から出してもらうようにお願いをする。そして、その執事がいなくなったことを確認してから。俺はリリカの手を離すのである。そしてレイラック邸の中を歩き回ってリリカの父親が愛用していたと思われる部屋を探すと直ぐに見つかった。

それから俺はレイラック家の騎士達の亡骸を見つけたのである。俺は、騎士達が死んでしまったことを悲しみ。それから騎士の遺体に近づき【蘇生薬】を飲ませるのであった。

俺が使った【蘇生薬】によって生き返った騎士達は目を覚ます。そして俺の姿を見ると彼らは全員、地面に膝をつけながら俺に対して土下座をするのである。俺はそれを見ていたら居心地が悪くなりやめさせたのである。そうやって、この家の使用人たちが全員、目を覚ました頃。俺とリリカは使用人を集め。この家の主人に挨拶がしたいと告げる。すると一人の使用人が名乗り出るので、その使用人に連れられてレイラック家の現当主である人物のところに向かう。そしてその人物の前まで到着して俺達は立ち止まる。そして俺達にその人物はこう話しかけてきた。

「私に何の御用でしょうか?」

その人物は、40代後半の男性で白髪が目立つ老人のように見えた。しかしその男性はとても若く見え、その年齢が俺には理解できなかったのである。俺はその男性をじっと見てしまう。

俺は目の前の人を見て少し考え事をしていた。それは目の前の人物が本当に俺の想像通りの人物なのかを考えていたからである。そして俺がそのことを考えていると、俺の横にいるリリカがいきなり頭を下げ始めたのである。

「お父様。申し訳ございません。私は、この家の方々と関わりを持った覚えがありません。私が貴方の家の血を引いていることは間違いないようですが。それでしたら私は間違いなく、この家から逃げているはずなのです。それにこの家には私以外の家族がいたと思うのですが。もしかして私の姉か妹に当たる方がいましたでしょうか?もしいたとしたらその子の行方も知っておきたいと思っています」

俺はその話を聞いてリリカの父親の顔を見る。その男は悲しそうな顔で俺のことを見据えているのだ。その目は俺を敵として見ているような気がしないでもないが、何かを俺に訴えようとしているようでもあった。俺はそんな彼の様子を見ながらも、この場で何が起きていてリリカの家族はどうなっているのかを知る必要があると思ったのである。

俺がここに来る前にこの家で何が起きたのかを俺はリリカから聞いていなかった。そのことから、俺はリリカの父親の方に目を向けると、その男性は語りだしたのである。「あなたが何者かは知らないが、この娘を助けてくれたことは感謝している。ただ、今、この家では、とある事件に巻き込まれて混乱状態にあるので、この話はまた後日改めてさせてもらえないだろうか?この子には身内がいないため、私がこの子の面倒を見てあげなければならないと思っているのだが、その件についても話を聞かせてもらいたい。それに貴殿はどうやってこの屋敷に入り込んだんだね。それにどうしてこの家で起きたことを知っているのかね?まあ、今は、まだ、この家に忍び込んでいた賊が捕まったばかりで屋敷の警戒態勢を整えている状態だから、貴殿が不審者に見えるのも無理はないのだが、その点について説明をして欲しい」

俺はその質問に答えるべきか迷ってしまう。だが、そのことでこの人に不信感を持たれても面倒なことになってしまうと思い。俺が自分の身分を証明することにした。そして俺とリリカの二人がこの家を襲撃した人間を倒したのだと説明すると。レイラック家の当主である人は驚きの表情を見せたのである。そして、彼はリリカに視線を戻すと真剣な表情をして。リリカの頭を撫で始めるのである。

それからリリカの父親が俺にこの国の貴族のしきたりを教えてくれたのだ。それによると貴族同士の婚姻関係を結ぶためには互いの家同士の間で、両家に血族が産まれていることが最低条件となるのだそうだ。その決まりをこの国で破った場合。貴族は国から追放処分を受けるのだそうだ。そしてリリカが産む子供は必然的にこの家の血を引く子供になる。そのため貴族の間ではこの家の血を引く子供を産ませたいとリリカに婿を迎えるように迫られるのが普通であるのだそうだ。そしてレイラック男爵の妻になった女性も例外ではないらしく。リリカの母にも、リリカの姉がいて彼女もリリカと同じようにこの家から逃げ出すようにして嫁いだらしい。つまり、彼女は男爵との間にできた子供の出産後に男爵に殺されてしまっているらしい。ちなみに男爵の最初の妻はその子供が無事に生まれた直後に殺されているようだ。その話を聞いていたリリカは、涙を流している。おそらく彼女の記憶を思い出してしまったのではないかと俺は思ったのである。そんな状況のリリカを見かねたのかその父親が俺に声をかけてきた。

「娘の恩人である君には大変感謝をしている。だが娘に危害を加えないと約束をしてくれ。もし娘を傷つけるようなことがあるのなら私は、君の命を奪うつもりでいる」そう言ったその人の目に迷いは見えないのだった。その様子に俺が困惑するとそのリリカの父親は、こんなことを俺に頼んできたのだ。

「君はリリカと婚姻を結びたいと言ってくれていた。それならばこの子を頼む」そのリリカの父はそう言うと俺に向かって頭をさげるのである。そんな父親の姿を見ていたリリカは。泣きじゃくりながら父親に抱きついていた。そんな二人を見ながら俺はその男に問いかける。

「俺はあんたがこの家の当主だって証明できない」

「そうかもしれないが、その証拠がない以上。信じてくれとは言いきれないが。リリカのことに関しては安心して欲しい。そしてもしものときは責任を取るつもりである。だからこの家にずっといてもらわなくても構わない。そのかわり、どうかこの家に住むことだけは許可して欲しい。そのかわりにできる限りの便宜は図らせていただきます。お願いできませんでしょうか?」

その言葉を聞くと俺は悩むことにした。俺の目的はあくまでもレベルを上げることにあるのである。この屋敷の中で生活してもいいのだが、その行動のせいで俺の目的である、レベル上げに支障が出ないかを考えることにした。

そこでまずはこの屋敷から出ていくとリリカに伝えようとしたとき。俺と手を繋いでいるルミナが「私をここに置いて欲しい」とお願いをしてきたのである。そして、その言葉に対して俺は驚いた。

なぜならばこの都市の領主であるこの男が、俺達の仲間をこの都市から追放すると脅しをかけてきたからである。そうこの男の口からは。

そのように言われたリリカが困ったような顔をしているとレイラック子爵はリリカを慰めるために抱きしめると、リリカが俺の方を見てこう話しかけてきた。「ルナちゃんはどうしたいの?」と。そんなリリカに俺はこう答える。「この屋敷での生活は楽しそうだ。だが俺には目的があるから、ここに長くはいられないんだ」と正直なことを答えた。

リリカに本音を伝えた後、俺はレイラック伯爵とレイラック卿、それからこの家に住んでいる者達の態度をみてみると俺の言葉を嘘だと疑っているように思えた。

それからレイラック卿とレイラック卿が連れてきてくれた騎士達を部屋の中に入れることになったのである。その騎士達が入ってくると同時にレイラック家のメイドが紅茶を出してくる。その出されたお茶に毒など入ってないことを確かめてから、俺達全員がその飲み物を飲むことにする。それから騎士達は俺達に頭を下げると自己紹介をしてくるのであった。「レイラック領を治めることになったレイラック家の執事のロランです。それとこっちの者は、レイラック家の騎士達の長であるバルザックです。私も騎士として訓練を受けていた時期がありましたが、彼にはとてもかないませんでした。なので、彼と勝負をした貴方の腕前は相当高いものだと私は感じました」そんなことを言う。

俺の剣の腕がどの程度のレベルなのか気になっていたので俺とバルザックの二人がかりで相手をすることになった。俺としては一対二での戦いも考えていた。そして俺が剣を構えるとレイラック卿が、合図をするように告げて。決闘を始めることに決めるのである。その前にレイラック家の使用人達とリリカが俺たちのことを見ていたのだが俺は気にせず決闘を開始することにする。俺は剣を構えて戦闘態勢をとるとその相手を見て構えるが目の前の男を見て少し違和感を感じるのだ。それは彼が構えていたからではなく。その動きに俺は少し不自然さを感じられるからなのだ。

(なんだこの違和感は?)そのことについて俺は考えてみるが全く理由がわからなかったのだ。だけど目の前にいるバルザックはそんなことは気にせずにこちらに襲ってくるようだったので、その攻撃を俺は避けて反撃に出ることにした。俺は、そのままバルザックが振り下ろしてきた一撃を避けて腹部に横蹴りを食らわせることに成功する。俺はバルザックの攻撃のスピードが遅くなったので攻撃が当たりやすいので、相手の武器を破壊してしまうことにした。俺は、剣の持ち手部分に足を置くと体重を乗せて踏みつけるようにしながら蹴飛ばした。その攻撃により、バルザックの手から短剣が飛んでいき地面に落ちると、バルザックはその勢いで壁まで吹き飛ばされてしまう。

その後すぐに俺はもう一人の人物のところに移動しようとしたがその人物が俺のことを拘束しようとする。俺はそれを何とかかわすことに成功したのだが相手が女性だったこともあり。力を入れ過ぎないように注意をしていたのである。そしてそんな時に先ほど吹き飛ばされたはずのバルザックが立ち上がって俺に近づいてきたのだ。しかもその顔には笑みを浮かべていて余裕のある表情を見せられていたのだ。

「お前。強いんだなぁ?だがまだまだ甘さが残っていたぞ」バルザックは自分の体の状態を確認するかのように肩や首を動かし始めていて、そんな様子の彼を見つめていた俺はあることに気づく。俺に倒された方の男性から全くと言っていいほど血が流れていない。俺はそれが不思議に思いつつも、俺はこの男をどうするか悩んでいた。

俺から距離を置いたその男は、自分の体に傷がついている箇所を見つけると、そこに手を当てていた。そしてその手の隙間からは黒い光が漏れ出しているのが見えた気がした。すると次の瞬間、彼の手が突然変形し始める。まるで昆虫のように変化していったのだ。そして最終的に現れたのは黒光りした巨大な虫であり彼はその姿になると俺の方を向き口を開いたのである。そして俺に向けて何かを話し出したのだがその内容は俺にとっては信じられないものだったのだ。

俺はその言葉を聞き呆然とするしかない。どうしてこのような生き物が存在しているのかも疑問だが、その見た目にも問題があったからだ。そう全身の体毛は全て針で覆われておりその長さは数十センチはあるように見える。また胴体の大きさも異常で太さも普通の成人男性のウエストよりも太く見えるほどだったのだ。そんな生物が人間の姿をしていたなんて俺は信じたくはなかった。だがその生物の外見には見覚えがあることに気づいたのである。

(そういえばリリカの屋敷にいた化け物の姿があの男に似ているような)そんなことを思い出していると、その男が話しかけてきたのだ「おい。貴様の名前はなんというのだ」そしてそんなことを聞いてくるのだ。俺はまだこの怪物に名前を明かしていないことを思い出したので名前を教えることにした。

俺が自分の名を答えると男は、俺に質問をぶつけてくる。「その女がなぜそのような姿になっているか知りたくないのか?」と尋ねられる。

その質問の意味がわからなかった俺は、俺はそのことを尋ねると答えを返されるのだった。

「そいつの体を改造してやった。そしてそいつはその実験によって成功した唯一の存在だ!その証拠を見せてやるよ」そう言って、男は自身の指の腹の部分を切ると、血を流し始める。その行動に何が起こるのかを見守っていると、その男は腕をリリカの方に向ける。

その男の行動が理解できずに俺は混乱をしていると、突如リリカのいる場所に魔法陣のような物が現れる。そしてそのリリカがいる空間に歪みが発生したのでリリカの姿が消えた。その光景を見た俺とシルルは驚く。なぜならばリリカはこの部屋にいなかったはずだからである。俺はそんなことを考えながら目の前のこの男の話を黙って聞くしかなかったのである。

それからその男から語られた内容によると。リリカの体を弄り。彼女を魔物に変貌させることができたのは、俺達の持つこの世界とは違う技術によるものであるとのことだった。そして、その技術をこの男が提供することでリリカが救われたのだという話だった。

そんな説明を聞かされてもいまいち信用できなかったのである。俺にはこの男の言葉に真実性がないと思っていた。そんな俺に男は言う「では俺のこの姿を見ればわかる」と言って、その体が徐々に変わり始めていたのである。

俺はそれを見て絶句をするしか方法がなかった。そして男の変化が止まったときに、その変化した部分を確認してみると、人間のものとは違っており、その体の表面に生えている毛が全て針へと変わっていた。さらに、俺が知っている昆虫とは比べ物にならず。それは俺の常識を超えた化け物がそこには存在したのである。

俺はその光景をみてこの男の言葉を信じる以外に選択肢が存在しなかった。その男の話の内容は俺を驚かせることばかりだったのである。

「この都市の住民のほとんどがその化け物に変えられてる。俺はこの都市を救うことができれば。元の体に戻ることができる」そんなことを言われる。俺の頭の中は、リリカの件でいっぱいになっていた。そんな状態で俺達は、レイラック卿に連れられてレイラック領の首都の城へと向かうことになった。俺の予想通りなら。この国には、レイラック卿とこの屋敷に住んでいる者たちの他にまだ、人間が生き残っている可能性があったのである。俺はそんなことを考えながら城の門番から許可を取る。レイラック領の首都の城は外から眺めただけでも分かるぐらいの広さがあった。その城の中にはレイラック卿の妹とレイラック卿の夫人が住んでいてレイラック卿の二人はそこで暮らしているらしい。そんなことを教えてもらった俺達は城内に入りレイラック家のメイドに連れられ。リリカの父親に俺達のことを報告に向かった。そこで俺はレイラック卿と、レイラック卿の妻であるリリカの母親が出迎えてくれることになる。

その後すぐにリリカの母親から食事に誘われることになる。俺達はレイラック卿と共に食事をすることになって緊張していたのだが、その部屋で一緒に食事をとることになった。それからレイラック卿が俺たちに向かって話しかけてきた。その内容がレイラック卿と妻、それにリリカの母も俺達に会いたがっているというものだった。俺は少し考えた後に了承することに決める。それから俺はレイラック伯爵がレイラック卿になる前のことを少しだけ聞いていたのである。そんな時にレイラック夫人が部屋に入ってくる。俺はそんな時でも、俺がここにやってきた本当の目的を果たすことに意識を向けた。そんなこんなで食事を終えて俺達は帰ることにする。

その途中で俺がこのレイラック家に仕えようと考えているという話を伝えると、二人ともとても喜んでくれたのであった。そしてレイラック家の領地にある森に転移用の道具が隠されているのでその場所に向かうことにした。その道中の途中でバルザックとリリカが戦うことになっている。リリカの実力を見るためだと俺は思うのだが。リリカの母親は、娘の成長を見てみたいと言ったのである。リリカの姉に関しては興味がないようだったがそれでも、妹の戦闘を見てみたいと言うのだ。その姉の意見を尊重して、リリカの戦いを見ることに決まる。そして俺は、俺に戦いを挑んできた、バルザックと戦ってみたのだが、バルザックの武器である剣と短剣による攻撃の速度が速すぎて俺は苦戦をしいられてしまう。だが何とか勝つことはできた。

バルザックとの決闘を終えたあと、俺の視界の先を見ると、リリカが剣を使って戦っていた。そんな彼女の動きは確かに洗練されていて俺も驚いたのだった。

俺は目の前に現れた、バルザックに驚いていた。バルザックは俺を拘束しようとしていたのだ。だけどバルザックは突然現れた、男の存在を確認するとその男の拘束を辞めてその人物のことを警戒し始めたのである。

その男が俺に対してバルザックを拘束するよう命令してきたのだ。その男の命令を聞いたバルザックは俺を襲ってきた。俺はバルザックの拘束から逃れようと必死で抵抗をしていたのだ。そして俺の腕を掴むとそのまま投げ飛ばしてしまう。だがその攻撃は当たらずに地面に着地をしたバルザックはこちらの様子を伺ってくるのだ。そして俺のことを見定めるように見ていたのである。

(こいつは、本当に強い。油断をしていたらやられるかもしれないな)そんな風に考えながら俺は気を引き締める。そして次の瞬間にはバルザックがこちらに向かって走ってくる。そんな彼の攻撃を俺はなんとか避けることに成功する。

(今の攻撃が本命じゃないよな?)そう思いながら、俺はその攻撃を誘ったのだ。するとバルザックはその俺の動きを読んでいたようで俺の体を掴みにかかってきたのである。だが俺はそれを予測していたので俺は自分の腕に力を入れると相手の力を利用して投げ飛ばす。だがバルザックの体は空中で体勢を整えてから俺から距離を離した。だがその直後の俺の反応も悪くはなかったはずだ。なぜならばそのバルザックが俺から目をそらした隙に攻撃を仕掛けていたのだ。そして俺は相手の短剣を破壊することに成功する。バルザックが短剣を落としたのを確認した俺はその短剣を蹴飛ばした。

その短剣が俺の足に当たったことにより、短剣に仕込まれていた、何かしらの効果を受けたようだ。

その効果がなんなのかを知ろうとは思わない。俺が知るべきなのは。その効果がなんだったのかを知るのではなく、俺をどのように倒そうとしていたのかだ。だから俺がやるべき行動は決まっていたのだ。そうして俺はバルザックと戦闘を始めるのである。

「貴様、なかなかやりやがるじゃねえか」と俺の行動を賞賛する。だが俺もここで簡単にやられるわけにはいかないので俺も全力を出すことにした。

「俺は負けられない理由があるんだよ!」と叫び、俺の全力を出した一撃を叩き込んだ。だがそんな攻撃を受けてもバルザックの体は全くダメージを受けていなかったのだ。俺はバルザックに驚きながら。

その光景を見て俺は、自分の体に起こっている変化を理解した。それは俺が、この世界に来て手に入れた能力『 ステータスアップ 』の力が上がっているからだ。俺は今までの修行の成果が出たのかと思ったが、おそらく違うだろうと思い直した。

なぜなら、この世界でのステータスの上がり方は異常なのだ。俺自身でさえ。その事実を知った時にはかなり焦ってしまったほどだ。この世界での、人間のレベルを上げる方法は大きく分けて2つあるのだ。1つ目は、俺のように、この世界に来ていない一般人から得られる経験値。2つ目はこの世界の魔物を倒して得られる経験点なのだ。この2つがこの世界でレベルアップに必要なものである。そしてその二つ以外にもある方法でレベルを上昇させることができるのだが、この方法を使うと、かなりの確率で死に至ると言われている。なので俺は使っていないし使ったことはない。

そんなこんなで、バルザックにダメージを与えられなかった俺は。

次にどうしようか悩んでいたが、その時、俺が持っている刀が光出したのである。その光景を見たバルザックは「お前!それは魔族が持っていた伝説の剣じゃねぇか!!」と俺の持っているものを見ながら言う。俺は、その言葉を聞いて納得した。その現象に心当たりがあったからである。この世界に来る前に俺の祖父から聞いた話を思い出したのだ。その祖父はこの世界に来る前の世界の住人だったということだ。そしてその祖父の話によれば、その世界にも、この世界と似たような世界があり、そしてその世界から俺の先祖たちがこの世界に来たのだと聞いた。つまりは俺の一族は代々その世界の人間たちの力を受け継いだものということになる。

そしてその力は俺の家系の者が受け継いだものだそうだ。

そんな感じの説明を受けてきた。そして今の俺の力はその話の通りのものなのではないかと思っている。

それからバルザックの方を向いてみると彼はもう戦いをやめていたのだ。

そしてバルザックはあることを言い出した。それが、 俺達の国に加護をもたらす代わりにレイラック家の配下となってくれという提案であった。正直、俺はレイラック卿の頼みを受けるかどうかを悩んだが。リリカのことを考えると受けざる負えないと思ってしまったのである。

俺がバルザックと戦っている時。リリカの方でも動きがあったことをリリカから聞いて俺は安心をするのだがそれは束の間の出来事だった。バルザックがいきなり倒れたのだ。それだけでなく。リリカが、あの男の方に走って行ってしまうのが見えたのだ。だが俺はその光景に戸惑って動けなくなっていた。だがそんな時だった。

「君、リリカを救ってくれてありがとう」と、レイラック家の当主であるレイラック卿に声をかけられた。その発言を聞いた俺の頭の中では混乱が巻き起こり思考停止状態になってしまった。だがそんな時に聞こえたのは「レイちゃん大丈夫?どこか痛いところとか無い?」と、レイラック伯爵夫人が話しかけてきている光景が目に入る。それだけではなく、レイラッレ子爵と奥方の姿もあったのであった。

そして彼らは、バルザックと戦闘を始めたばかりの頃に突然姿を現してバルザックにとどめを差したのだそうだ。俺がその話を聞いていた時に、レイラック卿の妻であるレイラック夫人が現れたのだ。そのレイラック夫人の話を聞く限りだと俺達の戦いを見に来ていたようなことを言っていた。そんなことを聞きながらも俺はレイラック卿の言葉に対して、自分が助けたことを伝えると、レイラック夫人から、リリカの姉から俺達を助けてくれたことについてお礼を言われたのである。俺はその後からリリカのことに関して心配をしているとリリカは怪我もなく無事だったことが分かり。俺達は、リリカを連れて帰ることになる。

俺はリリカとレイラック家の人たちと会話をしていた。そしてその途中でレイラック卿とレイラック夫人と少しだけ会話をすることができたのである。その二人の反応を見ると俺がレイラック卿の娘のリリカを救ったというのは本当のことだったのだなと分かった。そのことに俺はほっと一息ついたのである。だがそのタイミングでリリカが「ご主人様に報告することがあるんです」と口を開くので俺は少しだけ嫌な予感がした。

そしてリリカの報告を聞いた後にリリカの口から俺がこの国の貴族になることが伝えられたのであった。そんな風に俺達が話している時に、レイラック家の三人がある人物の名前を出したのである。その人物の名前は、レイラック家の現当主であり。俺とリリカの父親であるレイラック伯爵のようだ。

それから俺達に夕食の誘いをしてきた。もちろん断るつもりもないのだが俺は断れる状況ではなかったのでその食事会に参加することになった。それから俺は食事をしながら気になったことを質問することにしたのだ。俺が質問したい内容は、レイラック家がこの領地を治めていることに対する不満だったのだ。そしてそのことを口に出してみる。俺がそうして、意見を言っている間。レイラック卿は俺の言葉を遮ったりすることはなかった。そして俺は自分の意見を述べ終わったあとに、なぜこの領の領主になっているのかを聞いた。それに対しての返答としては。レイラック家は元々別の土地に住んでいたのだが、先代のレイラック伯爵の時代の時のことだ。その時の国王の暗殺を企んだ者たちがいたらしく。その計画を未然に防ぐことに成功したので、レイラック家は貴族としての地位を手に入れたらしいのだ。

俺はそんな内容のことを言われてから、俺は思ったのだ。

(俺の父さんはどんな奴に殺されたんだよ!!普通に考えてそんな事件があれば父さんの耳に入らないはずがないんだけど。なんで知らないんだろ?)と俺は疑問に思うがそんな疑問が浮かんできた直後に。

「ところで君のその腰に差している刀について聞きたいことがあるのだが、見せてもらえないだろうか?」と。そんな発言をしてくるのだ。

俺も、そんな風に興味を持たれることについては別に構わなかった。

俺が刀を抜いてみせようと手を伸ばすと刀が光出す。だがその刀の光が収まることはなくそのままの状態が続いている。

その光景に驚いていたレイラック夫妻はすぐに俺から離れて距離を取った。

(この反応を見るにやはりこれはまずいものだったようだな)俺はそんなことを考えながら、レイラック家に迷惑をかけてしまったことを申し訳なく思っていた。それから俺は、この場にいる人全員が俺のそばから離れるように伝えてから刀を鞘に納めた。俺が、その行動をとったのは。俺がこの場で力を見せるとレイラック家からどのような扱いをされるのかが分からなかったことと。その行動を取るとなぜか、刀がおとなしくなってくれたからだ。

そんな行動を取りながら俺はレイラック邸の応接室に連れて行かれることになったのであった。

その道中、俺はレイラック家の屋敷の中を歩いて行くが、この館はかなりの大きさを持っているようだった。俺は、俺の目の前にある扉が開くとその部屋に足を踏み入れた。そして部屋に入るとそこにも先程と同じように長いテーブルが置かれていてその上にたくさんの料理が置かれている状態だった。そして部屋の奥にはレイラック夫妻が座っている席が用意されていてその手前側には俺たち4人の席が用意されているという状況だった。そんな光景を見ている中で俺はあることを思った。それはここにいる人数である。その人数は、リリカを含めて8人で食事をしようとしていることがわかった。そして俺はそんな状況を確認し終わる頃には自分の椅子に座っていいのか分からないので立っていた。

そんな様子を見ていたレイラック夫妻は、自分たちもまだ食べ始めていないことを口にしてから、自分たちの席に着くように俺に伝えるのである。俺はその言葉に従う形で俺の正面に置かれている椅子へと向かっていくのであった。

それからレイラック夫人が俺に対してこう言って来たのだ。

レイちゃんがあなたに助けられたことで。私たちの命が助かったと感謝していたと。

その発言を聞いて俺は驚いた。レイラック卿にそんなことは言っていないし。そもそも俺とあの男はそんな話をするような仲でもなかったのだから。だが俺のそんな考えとは裏腹に。俺に向かってそんなことを言い出してしまうのである。俺が、レイラック夫人に対してどういう意味ですかと問いかけてみると。俺の問いに対してはレイラック夫人が答え始めた。

その回答の内容は。俺がバルザックを倒した後の出来事のことだと言う。その時にリリカを助けた男とは、俺のことであって。その時からリリカの俺に対する気持ちに変化が訪れたということだそうだ。リリカはあの時にバルザックにやられて、殺されてしまうところだったが。バルザックの魔法を食らっても俺だけは死んでいなかったということがあったからなのだという。その話を聞いて俺は少し恥ずかしさを感じながらもあの時に自分がとった行動が間違っていなかったと思うことにしたのだった。

そんなことがあり俺は少し緊張しながら夕食を食べることになってしまっていた。その光景を見た俺の隣に座っているリリカの表情はとても楽しそうな感じだ。そんな時である。レイラック卿が俺とリリカに向けてこう言ったのであった。それはこの国の国王である、ルミオン様から直々のお礼の書状を渡されて来ているので。二人共それを受け取るようにと。俺達の前に一通の封筒を差し出したのだ。

俺はそのレイラック卿の行動に疑問を覚えつつも。その封筒を受け取ろうとした。

そして、その瞬間に俺の手の中にあった手紙の封が切られていたのだ。それに驚き俺はレイラック卿の方を見てしまう。

その時に俺はレイラック卿の方に視線を向けた時に、彼はニヤリと笑みを浮かべるだけだった。そんな状況になった時に俺は。俺の手の中で勝手に封が切れてしまったことを、謝罪をしようとするのだが、 それよりも早くにレイラッレ夫人は俺の方を見ながら微笑んで「気にする必要は無いですよ。私達はレイちゃんからお礼の言葉は受け取らなかったですからね」と言い出すのである。そして彼女は、レイック卿の方を見て、彼の方からもレイちゃんに対してお礼を伝えてほしいと言ったのだ。

だが、そんなやり取りをした後に、食事が始まったのだ。俺は食事をしながらレイラック夫妻の話を聞いてみると。どうやら彼らはこの領の貴族たちをまとめ上げているということがわかってきた。

だがそんな時だったのだ。俺はいきなり、俺達に向けられて攻撃が行われた。だがレイラック夫妻に危害を加えることはなかったのである。だがレイラック夫妻の護衛たちが俺達の周りにいた人達を守るために攻撃をしてきたのだ。

それから俺達は護衛たちの援護を受けて安全な場所に移動する。そして、俺達の安全が確保された時。俺がレイラック邸に入ってからずっと黙っていたレイラック伯爵が俺のそばまでやって来て話しかけてくるのであった。その会話の内容としてはこの館の敷地内にいる敵は全て始末したことと。俺とリリカに怪我はないのかを確認され。俺はその言葉に対して「問題ない。ありがとうございます」と伝えると。

「君がリリカを守ってくれなければ。リリカは確実に殺されていただろうからね。私は心から礼を言いたいと思っているよ。君は本当に素晴らしい少年だと私は思うのだが。君は私の娘と婚約してはもらえないか?娘の婿になってほしいと、私は思っているのだがどうか?」とレイラック卿は、真剣な目つきでこちらを見てきたのだ。そんな状況の中で俺は、少し考える時間をくださいと言って。その場を離れる。

それから、俺とリリカは食事が終わらない前に部屋に戻っていた。そこで、俺とリリカは少し会話をして、リリカにレイラック家でのことについて聞くとリリカはそのことについて詳しく教えてくれた。その時にリリカがレイラック伯爵について話してくれた。

そのレイラック伯の能力は【神眼の加護】というものを持っており。自分のスキルを他人にも渡すことができるという。その能力を使ってレイラック卿は自分の妻であるレイラック夫人と娘にレイラック家の加護を与えたのだとか。レイラック夫人に、レイラック卿の力が宿ってから、二人はレイラック家を支えていく存在になっていたのだという。そんな話をしている時に俺は、なぜ俺がここに呼ばれたのかをレイラック夫に尋ねてみることにする。するとその答えとして、レイラック伯爵に呼び出されたということと。俺がレイラック家の一員になることを伝えられたのだ。

だがその時には俺はその誘いを受けることは断らせてもらう。そうしなければレイラック伯爵夫人と、レイラック家の人たちを危険な目に合わせることになると思ったからだ。そのことに関して俺はリリカに話すと納得してもらってから俺はレイラック家に泊まることになったのであった。

その晩、俺とリリカが寝ている部屋の中に何者かが侵入する。そしてその者は、俺たちを殺そうとしてくる。

その人物の正体は俺にリリカを殺すように命じた者だった。

「お前にはもう生きる価値がないのだ。だから死ぬのだ。リリカとともに、この私が殺してくれよう」と暗殺者が言ってくるが、 俺はその攻撃を避けることができた。俺は『神眼の加護』のおかげで暗殺者の攻撃を防ぐことができたのである。

それから俺は反撃に移るためにその相手に斬りかかったのだ。だが、俺はその相手の姿を見ることになるのだが。そこには先程殺したはずの相手が立っているのであった。

(どうして、俺は確かに殺したはずだぞ)そんな疑問を抱きながらも俺は相手を倒そうとする。だけど俺が戦おうとしたその人物は俺のことを簡単にあしらう。俺もそれなりに剣の扱いに関しては自信があったはずなのにだ。そのことだけでも、俺がどれだけ弱いのかが分かる。それからも何度も攻撃を仕掛けても全てかわされるだけなのだ。

そんな状況に俺も流石にイラついてしまい、相手の懐に潜り込むように動くと見せかけながら相手の首を切り落とそうと動いたが、 俺の攻撃は簡単に避けられてしまったのである。それからしばらく戦闘が続いた後にようやく決着がついたのだ。

(なんでだよ!!どうして俺はこいつを殺せなかったんだ!くそっ。こんな奴を俺は殺し損ねたというのだろうか。いや、そんなわけがねぇんだよ!!!俺の方が強いはずだったしこの程度の強さしか持っていないなら絶対に負けるはずがなかったんだ!!俺よりもこいつのほうが強かったとでもいうんじゃねえだろうな!?)

俺は自分が負けたことに腹を立てて悔しさを感じていたが。今はそんなことを考えている暇はないと考えなおした俺はとりあえず、自分が生きているという証拠を見せようと思い服を脱いで傷がないかを確認することにした。それから俺は自分の身体を確認した。そして特に目立った傷が無いことを改めて確認できた時に安心した。

そしてそのことを確認した後は服を着てからベッドに戻り。リリカと共に朝を迎えることになったのだった。だがリリカはまだ眠っていたようだったので俺一人が目を覚ますことになり俺はリリカが起きるまでの間に少し外に出ることにした。そしてリリカの部屋から出て行った後に、俺が一人で散歩をするかのように庭に出た。そして庭に出てみると一人の男性が木刀で素振りをしていたので少し気になって近づいてみたのだ。そして俺はその男に話しかけてみることにした。それから、その男にレイラック卿が俺に対して感謝をしているという言葉を伝えに来たことを伝えるとその男は俺に対して質問を投げかけて来たのである。それはなぜレイラック伯爵からの手紙の封を切らずに持ち歩くのかというものだったのだ。

それに対して俺は。封を開けることができないため、俺の手から勝手に開封してしまったという説明をしたのだが。その男はそれを聞くと笑い出し。レイラック夫人に渡してほしいものがあるのならば直接渡した方がいいだろうと、俺に言うのである。その発言に対して俺はそれぐらいは俺にできると思うと答えてから。俺は一度レイラック卿の元に行くことを伝えた。そして俺はその男と一緒にレイラック邸に向かったのである。そしてレイラック邸に着いた時にレイラック夫人に手紙を渡してレイラック卿と話ができる機会がほしいことを伝えたのだ。そして、その言葉を聞いたレイラック夫妻は喜んで俺を屋敷に招いて話をしてくれることが決まったのである。それから俺とレイラック卿は、レイラック夫妻に連れられて、彼らの部屋にやって来たのである。

その部屋に入ってみると、そこにいたのは二人の男女と俺と同年代くらいに見える女の子だった。俺はこの人たちがレイラック夫妻の子供と娘さんたちなのかと考える。そして俺とリリカの目の前にいるレイラック夫妻は俺とリリカに席に着くように促してから。そのあとに俺はこの部屋の空気が変わったことに気づいたのである。

それから、俺はその変化に戸惑うとレイラック卿は、そのことについて話を始めたのである。それは、リリカをレイラック伯爵の娘にしたいと思っているということや。リリカの婚約の申し込みがされているということを俺に伝えたのであった。そしてその話は俺がレイラック伯爵邸に招かれるきっかけになった話であった。そんな話を聞いている中で俺はレイラック伯爵が、どうしてここまでの実力を持った護衛を二人ほど用意していたのかということや。あのレイラック夫人が俺がレイラック家の跡取りになれるかもしれないということを話し出したときにレイックが見せた表情の意味などについても考えていた。

「それで君は私の娘と結婚する意思はあるかな?あるというのであれば。君と私の子供との間に子供を作らないといけなくなるのだがね」と、レイラック卿は俺に問いかけてくるので俺はレイラック卿の質問に対して俺はこう答えたのである。「俺で良ければ結婚させていただきたいと思っています」と、俺が答えるとそれを聞いたリリカは顔を真っ赤にさせてしまったのだった。それから俺はレイラック伯爵が、俺に何かしら頼みごとがあることを伝えてきたのである。その内容というのはこの領を治める貴族達を俺の力で治めてほしいというものであった。そんな話を聞きながら俺は、俺がどうしてここに呼ばれていたのかをやっと理解することができたのであった。俺はそんな会話をした後にレイラック伯爵夫人に頼まれていた仕事があるということを思い出す。俺はリリカを連れて行くと伝えると、レイラック伯爵は、リリカを連れて行ってもいいと伝えてくるのである。そんな会話の後、俺はリリカと二人で外に出ていくことにした。

だが、その時にレイラック夫人は俺に向かって「美華のことを助けてくれましてありがとうございます」と俺に感謝の気持ちを込めて言葉をかけてくれたのであった。

そのあとに、俺はリリカと共に外に出ていくのだが。俺はレイラック夫人からもらった地図を見ながらレイラック邸の中を探索してみることを決める。その時にリリカは少し不満そうだったが、俺が「ちょっとだけ待っていてくれるかい?」とリリカにお願いをするとリリカはすぐに機嫌を直し、了承してくれたので俺はリリカに後で迎えに来ることを伝えてから俺はレイラック卿が俺とリリカに用意した馬車を使ってレイラック家にある書物室へと向かった。そこで、俺はレイラック伯爵夫人に頼んでもらっていた仕事をするためである。俺が本を手に取るとレイラック伯爵の加護の能力が発動するのを感じ取った。俺はそんなことを思いながら俺に何の用か尋ねてくる使用人を相手にしている。そして俺がその本をレイラック伯爵からの届け物だというと。

レイラック家には、この世界の歴史が書かれている書があるから、それを見てほしいということを教えてくれる。そんな話をした後、俺はその本のあり場所を教えてもらったので、その場所まで案内してもらえることになる。だが、俺はその前にレイラック夫人からレイラック伯爵がこのレイラック領の統治者であり。レイラック家の人間としてこの国の行く末を左右させる立場に自分がなるのだという説明を受けた。それから俺はレイラック卿が言っていた通りにこの部屋にあった書庫の中にあった書物を見ることにした。俺はレイラック伯の持っている書が気になって手にとってみると。

「おい!そこの男!!この部屋に勝手に入るな!!お前はこの家に仕えている執事なのか!?だとしたらお前のような者が入っていい場所ではないんだぞ!!」と、俺のことを止めようとした男が声を出してくる。それに対して俺は、その男の方に振り返ってからこう答えた。

その時に、男は驚きの表情を見せたが俺は構わず書を読むことにする。

それから俺はレイラック家に伝えられている歴史を知ることになるのだが。

レイラック家に受け継がれている歴史書は、今より300年以上も前の時代が書かれてあった。その内容はとても衝撃的なものでもあった。この世界に魔族と呼ばれる者たちが現れたのが始まりだった。そして、彼らは自分たちの国を作り上げたらしい。そんなことを書き残していたのだ。そんな話を俺が読んでいるとレイラック夫人が慌てて俺の元に駆けつけて来たのだ。俺は、そんな夫人のことを見ているが。俺のことを止めようとしてくる女性がいる。

その女性は俺のことを睨みつけながら怒鳴り散らしてきたのである。それに対して俺は何も反論できなかったので、大人しくその場を離れるとレイラック夫人の息子さんが近づいてきたのだ。俺はその息子がレイラック卿の言っていた跡取り候補の少年だと判断してしまう。そんな息子さんはなぜか俺に興味を示したようで話し掛けてきました。そして俺は彼に、レイラッス卿に頼んでいたことの返事を聞くことにします。

俺の質問に対して彼は、自分の父親のことを名前で呼び、そして彼のことを自分の兄貴とでも言わんばかりの勢いで俺の質問に対してこう答えたのだ。

その瞬間にレイラック夫人の息子さんは自分の父親である、レイラック卿の名前を呼び捨てにして話を始めてしまったのである。その行動を見て俺はそのことが気に入らず。ついつい感情的になってしまい、彼を叩きつぶしてしまう。その後すぐに俺はレイラック卿の加護のスキルによって拘束され、俺はレイラック邸の地下に連れていかれたのである。

それからしばらく経った時に、俺とリリカは、リリカの部屋に戻ろうとしたが俺はリリカを部屋に連れていくことを躊躇ったのである。その理由というのが、さっきの出来事について俺はどうすることもできずに。ただレイラック伯爵が俺を怒ってくるのを待つしかできなかった。そんなことを思っていた時である。俺の部屋の方角の廊下のほうにレイラック伯爵が現れ、そして俺はリリカと一緒にその男に呼び出されることになったのであった。

俺が、その男、レイラック卿に連れられてやってきた部屋はさっきレイラック卿にリリカが呼ばれた部屋の中に入るように指示をされたので俺とリリカはその指示に従い部屋の中に入ってみるとそこには、俺をこの場に連れてきた張本人であるレイラック伯爵が待っていたのである。そして俺はレイラック伯爵に対して自分がやってしまったことについての謝罪をするが、レイラック伯爵からは。レイラック伯爵夫人を悲しませたことについての叱責を受ける。それから俺はレイラック夫人が、リリカに俺と結婚させようとしていたことを知った上で。どうしてこんなにも簡単にリリカと婚約の申し込みをしている相手に断りを入れたのかと問われてしまったのである。そのことに対して俺は、まず、どうしてリリカを婚約者にしようとしていたのかが疑問だったのだ。そんなことを思いながら話を続けると。レイラック伯爵夫人は俺にリリカとの仲を裂こうとしたのではなくて。俺がレイラック卿に気に入られる可能性があったためにレイラック卿はリリカと俺を婚約させようとしたことを教えられる。そして俺にそんなことを考えていたことを話し始めると。

俺とリリカは顔が赤くなっていたのであった。それからレイラック夫妻が、どうしてリリカと俺を結婚させようとするのかをレイラック卿に質問をしたのであるが。レイラック卿はその答えについては、この領地にいる子供たちの誰かにリリカを娶らせるつもりなのだと言うのだ。そんなことを言い始めたレイラック卿の表情はどこか真剣で何かを決意したかのような表情をしていたのである。そしてレイラック卿は俺とリリカの二人で話がしたいということなので俺は部屋を出ることになったのであった。部屋を出てすぐ俺は先ほどの話の内容を考えてみる。リリカは、レイラック伯爵夫人がリリカを俺に嫁がせると言っていた理由がわからず戸惑っていたが、レイラック伯爵の表情を見るとリリカを幸せにできるかもしれない人物を見つけ出したということだけは理解したようだ。

そして俺達は、その日はそこで別れることになる。俺とリリカはそれぞれ自分の家に帰るとリリカは、リリカの父と母とこれからのことについて話すと言って別れたのである。俺はリリカと別れてからリリカにレイラック卿が俺とリリカの婚約の話をした理由についてをリリカの母に聞くことにした。だがリリカは、そのことを母親には内緒にしているようだったので俺は母親には聞かないほうがいいのだろうかと考えながら自分に与えられた部屋に戻っていったのである。それから、俺は、そのあとすぐに寝ることにした。

そして次の日の朝になったとき俺はレイラック家のメイドが持ってきた朝食を食べていたときにリリカが俺の部屋に訪ねてきたのである。俺は食事が終わったタイミングであったので。そのまま、俺はレイラック夫人に会いに行こうとしたが。レイラック伯爵夫人は今は外出していると言われたので仕方なく俺はレイラックス邸の中を歩いていた。

そして俺は書庫の中にいるレイラック夫人の姿を見つけると俺はレイラック伯爵夫人に話しかけることを決める。

「あの~少しだけよろしいでしょうか?」

「えっ?あっ、はい、あの、何か御用でございますか?」

「あなたがこの書庫を管理している人ですか?俺は、昨日からレイラック卿に頼んでいた書を持ってきてくれたのですが」

俺の言葉を聞いて、レイラック伯爵は驚きの顔を見せていた。そのレイラック夫人は、レイラック卿から書を受け取り、それを確認した後俺に礼を言いながら。俺はそのレイラック夫人が持っている本を見ながらどんなことが書いてあるか確認することにした。すると。その本には、この世界の歴史についてが書かれているのだとレイラック伯爵から教えてもらうと。その内容についてもレイラック伯爵夫人が説明してくれたのである。

俺がこの書の内容を読んでいる時に、レイラック伯爵が、突然、俺のことをレイラック卿と呼ぶようになり。それから俺のほうもレイラック夫人の事を奥様と、呼び合う関係に変わっていくことになるのである。俺は、そんな関係になってしまったことに戸惑いながらも俺はレイラック夫人に書庫の中を見せてもらってもいいかお願いをしてみたが。そのことに対しては、レイラッス伯爵夫人から許可が出なかったため、書庫の中にある書物を見ることができなかった。そのことでレイラック卿はとても悔しそうにしていながら、書庫の中の書物を読みたいのなら、またここに来て欲しいと言われる。それから、書庫の中を見たいと頼んでみることにしたが。その書庫の書物の持ち出しの許可が出ないのと、書庫の中に入るためにはレイラック卿が一緒でなければならないらしいので俺は、書庫の中に入ることを断念する。そして俺は書庫から出て、自分の部屋に戻ってくることにする。俺は部屋に戻る途中でレイラック卿の私室に寄り、そこでレイラック伯爵夫人と、話をしてみることにする。

そこで俺は、俺は、この国の歴史書を読む許可を得たのだが。レイラック伯爵夫人から、俺が今度来るときにはその歴史書を読むための条件があると言われてしまい、それを承諾することにして書を読むことができる許可をもらうのだった。俺は、そんな風にレイラック夫人から話を聞きながら、書斎から退室して部屋に戻った。そして、俺は書斎から持ち出せた歴史書を見てみることにしました。その書物の中身を見てみると、その本の内容が気になってしまい俺は、その歴史書に夢中になり。その歴史書をずっと読み続けていたのである。

それから俺達は、それぞれ別々に行動する。俺がレイラック卿の書斎に行ってみるとそこにレイラック卿がいて書棚に並べれている書を手に取っていたのだ。それから俺はレイラック伯爵に歴史書を読めるようになったということを報告をする。そしてレイラック卿はそのことを聞いて、俺が、書の持ち込みを許可したことをレイラック夫人に伝えてくるといってその場を去って行ってしまう。

俺はレイラック夫人に会ってレイラック卿が、歴史についての書物を持ち出す許可を出してもらったと伝えて、それから俺が持っていた歴史書を、この家に保管されている書物と一緒に保管して欲しいと頼む。するとレイラック夫人は笑顔でその願いを受け入れてくれる。

そして俺がこの屋敷に来た用事が終わるとレイラック伯爵にリリカのことを頼まれる。

リリカのことを頼まれた時、俺の頭の中にはリリカのことをレイラック卿に任せてしまえば、リリカは安全だと思ったのである。

そして俺はレイラック伯爵の申し出を受けることに決め、俺にレイラック伯爵に頼んでいた歴史書を、リリカと一緒に読んでみることにする。

そして俺はリリカに、レイラック伯爵夫人のことはレイラック伯爵がリリカのことを見張ってくれるだろうという予想を俺はしていたので。俺自身は、レイラック伯爵が言ってきたリリカの婚約相手を探し出してみようということに決める。そんな俺にレイラック伯爵は。

レイラック伯爵は、リリカのことを大切にしてくれればそれで良いと、俺に対して言ってきて。その言葉を、俺は受け入れてリリカのことをレイラック卿に全て任せてしまった。そのことについてリリカは心配していたが。俺はリリカに何も言わずにレイラック伯爵の屋敷を後にすることになったのであった。そして俺はリリカと一緒に王都に戻り、そして俺はリリカと一緒に図書館に向かい、この国について書かれている本を探すが、そんな本が見つからなかったのでリリカに探すのをやめてもらうことにしたのである。

俺はリリカに自分のことを、勇者であることを知られたくないと思っているのでリリカが俺に何か尋ねてきた時には知らないと答え、そしてレイラック伯爵から受けた依頼については、適当に誤魔化すことに決めたのであった。だけど俺はこの時あることを思い出していたのである。それは自分が召喚された時のことを思い出し、その時に俺は魔王を倒した英雄として崇められたりし、そんなことが嫌いだったなと俺は思ってしまった。

それからしばらく経った頃に、俺は王城の中で国王から直々にあることを言われた。その内容は、これから俺にやってくるであろう、俺を蔑むような目で見たり、利用しようとしたりする連中がやってきた時にどう対処すればいいかというもので。俺はそれに、レイラック伯から受けている頼みごとが終わってから考えるということを伝えたのである。

俺達が書庫に行くために書斎を訪れていた頃。レイラック邸の中にレイラック夫人がいる。レイラック伯爵夫人は書庫の中に入ったあと書の選別を始めたのである。そしてその書庫の中ではレイラック夫人が持ってきた書以外にも色々な書物が置かれていてその中にこの世界の歴史に関するものが書かれていたのである。

それから俺はリリカと一緒に書庫の中に入ると、書の量がすごいとリリカは言うが、リリカは書庫の中に並んでいる本の中から、俺が興味がありそうな内容の書を選び出してくれたのである。そしてリリカは俺のために書を持ってきてくれた。その書をリリカから受け取り俺は、その書を読むことにしてみたのだが。その書物の題目は、初代の王様とその仲間たちの冒険記で、そしてその書はリリカが俺のためにとってきてくれた書なのだと俺は知るのだった。

その書を読み進めていくうちに俺は、リリカは俺にこの書を読んで欲しいのだろうと察する。

そしてその書には俺の知らないことも書いてあり、その中には初代の王様の仲間になった人達が残した日記みたいなものも存在していいた。俺はリリカにお礼を言ってリリカのことを帰らせるのだが。俺はその後リリカに持ってきてもらった本を全て読み終えてリリカと一緒に書庫を出ることになる。だがその時リリカの顔が少し赤くなっていたが俺は特にそのことを気にすることなく。書庫から出て行った。そしてそれからしばらくしてリリカが書庫から戻ってくるが、なぜかリリカは恥ずかしそうにしている。その姿を見ていた俺は一体何があったのかと思いながらも。そのことについて聞くことができずに俺は、書を読むことができたことを喜んでいる。

そのようにして俺はこの国の書物を読み進めることになっていく。そのことでこの国は初代の王様と、その仲間達によって作られた国家だということを知る。さらに俺のこの世界での立ち位置についても調べることにしたが。そのことについてはこの国の歴史書には何も書かれていないようだった。俺は書の中身を確かめても何も分からないことがほとんどだったのでその日は書庫から出ることにする。そして俺はリリカと一緒に書庫を後して。それから、その日も俺の部屋で一緒に寝ることになる。

それから俺は書の解読を続けるが一向に俺が求めているものは見つからない。そしてそのことから俺はこれ以上ここで調べていても意味がないのではないかと思ってしまう。それから俺は書の捜索を諦め、その次の日に書庫の整理を始めることにしたのである。そしてその作業が終わったころに俺が、この書庫で俺が見つけることができた書物はたったの一つだけでしかもその書物は、書庫の中の書ではなくこの城の書庫に置かれているものであった。俺はそのことを残念に思うと同時に、その書物の内容が気になりその書物を書架から抜き取ってみることにする。その本の内容は、勇者のことが書かれたものであると分かるがその書物には俺が求めていた内容は存在していなかった。それからその書には俺が持っている書物と同じような内容が書かれていたのである。

その本の内容を一通り読んだ後に。その書物についている書名が気になるようになり、俺はその書名を、自分の持っている書物と見比べると書名と、その書の内容が違っていることに気付き。俺はこの本の中身は別の人の手で書かれたものであると思うようになっていた。そして俺はリリカを呼んでその書物について、リリカにも読んでみてもらい、俺の考えについて、正しいかどうかを確かめる。すると、リリカはそんなことはありえないと俺に言い切っていたので。俺はそんなことを言っているリリカに対して、どうして俺が間違っていないと断言できるんだと聞き返してしまう。するとその書物について俺が持っている本と同じ内容をその書が書いているからだと言われてしまう。

それからその書の続きを読むために俺は書庫に行こうとしたがリリカに書の続きを読もうとする俺をとめられて書の持ち出しはできないと、その書物を読むための条件を言われてしまい、その言葉を聞いた俺はリリカに謝った。それから俺はレイラック卿が、俺が歴史に興味があることをリリカから聞いたと、俺に言ったことと、リリカにこの書庫の中の本を全部読むようにお願いすると言い出す。

それを聞いて、書の持ち出しは駄目だと言われてしまい書庫の中を見ることもできないのでは俺としてはどうすることもできず。俺は諦めるしかなくなり、俺がレイラック伯爵から受けていた頼まれ事をリリカがしている間に、俺もその依頼を受けるためにレイラック夫人の元に向かい話をすることにしました。

俺はそれから、レイラック伯爵夫人に頼まれ事を引き受けたいと言ってみたところ、その頼み事は、今、リリカにやってもらっている書庫の中にある書物の整理を、俺にやってほしいというものだったのである。俺の予想だとこれは、王妃様からのお願いという感じだと思うけどどうなのかはわからない。でも王妃様から頼まれて俺は引き受けることになったのだけれども、さすがにリリカ一人だけでは心配なので、俺は自分なりに考えてあることを思いついたのだ。そしてその考えとは、レイラック伯爵夫人に、この仕事を受けるにあたっての条件をつけるということである。そして条件というのはこんなものだったのだ。

まずは、この仕事をリリカと二人っきりで行わせるのではなくて誰か他の人と一緒にやらせてあげて欲しいと言うことである。それを言ったら案外簡単に受け入れられたので拍子抜けしたくらいである。それで俺はそのことを伝えてから書庫に入るための書類を受け取ることになる。そして俺はその紙に書かれた内容を見て驚くことになっりその内容

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元勇者が辺境に転移して魔王を討伐するそうです あずま悠紀 @berute00

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