第11話 名があがる

「でられたー!」


「ふむ、なんとか無事だったな」


「まあ、あたしのおかげね!」


 オレたちは村に降りて事情を説明した。


「えっ? 倒した......

 どういうことてすか?」


 村長のビルクさんが怪訝そうにいう。


「どういうこともこういうこともないわよ! 

 あんなデカイなんていってなかったじゃない!」


 メルアがくってかかる。

 

「ジャイアントスネークなら、村の若者が倒しましたけど......

 ほら」


 そう指差す方に4メートルぐらいの蛇が横たわっている。


「ええーーーー!」


 オレとメルアは同時にいった。


「ふむ、我らの倒したものではなかったのだな」


「なによそれーー!  

 こっちは死ぬ思いでお腹からでてきたのに!

 タダ働きってこと!」


 メルアは顔を真っ赤にして怒っている。


「まあ、しゃーないな。

 オレたちの倒したやつじゃないんだから」


「あ、あの倒したやつということは、まだいたのですか......」


「そうっす、あんなのより大きなやつ。

 そいつに食われて大変でした」


 その話を聞いてビルクさんは震えながらいった。


「ま、まさか、イビルスネークのことですか......」


「イビルスネーク?

 洞窟のような大きさの蛇っすけど」

 

「たしかジャイアントスネークは、長い年月を得るとそんな名前になったな」


 ベルがそういう。


「ちょっとみてきてくれ!」


 ビルクさんは村人にそういうと、オレたちに村に留まるようにいった。


 夕方、見に行った村人が帰ってくると、ビルクさんは驚いている。

 

「シンジさん!

 確かにイビルスネークが死んでいたとのことでした!」


「ねっ、あいつ倒すの大変だったのよ!」


「ええ、もちろんです!

 あのモンスターがいることで我々はこの百年、山の奥に入ることができず、細々と近くで牧畜などをするしかなかったのです......

 ギルドに依頼しても誰も受けてはくれないため、あきらめておりました。

 本当に本当にありがとうございました......」


 ビルクさんは涙声でこういった。


「ジャイアントスネークの報酬はお支払しますし、この村の払えるだけのお金はお支払いたします!」


「ほんと! やったー!」


 オレとメルアが一緒に喜んでると。


「それでは村が困ろう」


「わかってるよ......

 さすがに受け取れない。

 まあ、最初の依頼料でいいですよ」


「あっ! 少しだけ蛇の皮ちょうだいね!」


「うむ、昔からあの皮は高値で売れる。

 あれを売れば村の足しにはなろう」


 それを聞いてビルクさんと村人たちは涙をポロポロ流した。


「シンジさん、いえ、シンジさまたち本当にありがとうございました!」


 

 ギルドに向かうと、周囲がざわつく。


「なんかみんなこっち見てないか」


「まあ、みんなアイドル、このわたしメルアちゃんがいるからじゃない」


 メルアが髪の毛をかき上げる。


「シンジさん!」


 受付嬢の一人ライカさんが呼び掛けてきた。


「なんですか! 愛の告白ですか!」


「ぜんぜん違います! ぜんぜん違います!」


(二回も言われた)


「今、シンジさんたちのことでもちきりですよ」


「へ?」


「イビルスネークを倒したでしょう!」


「ああ、それで......

 あれってそんなにすごいんですか」


「すごいなんてもんじゃ......

 数十年このギルドで倒せる者はいなかった伝説のモンスターですよ!」


「へー」


「まあね、あたしにかかればこんなものよ」


「さすが! メルアさん」


「ふふん もっとほめなさーい」  


 メルアがライカさんにほめられて、くるくる廻っている。


「それで、あなたたちの噂を聞いて、指定した依頼がまいこんでいるんですけど......」 


「で、報酬は!!」


 くいぎみに詰めよったオレとメルアに引きながらライカさんは話を続けた。


「......ええ、一人はレスパー商会のレスパーさまで、もう一人は貴族のユリアーノさま。 

 二人ともかなりの報酬を用意してるみたい......でもお二人は少しクセのあるかたで......」


「じゃあいってきまーす!」


 

 オレたちは最後まで話も聞かずギルドを飛び出した。


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