「A」1ー1
私がそれを聞いたのはただの偶然だった。
いつも通り、私がコソコソと女官から逃げている最中、お父様についている若い従者二人が話しているのを聞いたのだ。
その内容がなんと王に隠し子がいるとかなんとか。しかも、もう十七歳になる娘だとか。
驚天動地とはこのことだ。
そして、生まれて初めてお父様を最低だと思ったわ。だって私も今年十七歳になったばかりなんだもの。それってほとんど同時にやらかしているってことでしょ。紳士の風上にもおけない。お母様は知ってるのかしら。
私はその従者二人を締め上げて詳しく話を聞いた。自分たちが話したことは言わないでくれと懇願されながら聞いた内容は、ほんの一週間前、その子どもは引き取られて城内にやってきているのだとか。
お父様には心底軽蔑する。だけども、私は別の意味で興奮が止まらなかった。
まさかこんなかたちで、こんなかたちで待望の姉妹が出来るなんて!
だがしかし。私はちょっと冷静になって考えてみる。
果たして本家の血を引いているからといって正統な後継者として扱われるだろうか。
否。お父様の性格からしてそれはあり得ない。
まぁ次代の王をその子に、なんて話になっても別に私はやぶさかでもなかった。王の座にこだわりなんてないし、むしろ差し上げたいくらいだ。私のしたいことは国王でなくてもできるし。
ただ、正妻の子でないという事実を重く捉える連中はいるだろう。血と伝統は受け継がれることこそに意味があって、国はその長い長い線の上に成り立っているのだ。創られた線の上には数多の命が編まれている。無下にできないという主張は理解できるものだった。
もっとも、伝統伝統と叫ぶ連中の大半は、そうした国の歴史に敬意を払っているのではなく、定型文句として反対しているだけなのだが。何かを変える責任を負いたくないだけである。まことアホらしい話だが、継承権が移るということはほぼないといっていい。
ならば。可能性として件の姉妹は分家のパーマー夫妻の親戚にあてがわれるはずだ。あそこは子どもがいないし、立場的にお父様に意見することはできないだろうから。
善は急げとさっそくパーマー家のおじさま宅に行った私だったけどアテが外れてしまった。それらしき子はどこにもいなかった。おじさまが嘘をついている風にも見えなかったし。
待つのが大っ嫌いな私は、同じ年の女の子だという少ない情報を元に城内を探し始めた。小うるさい女官のケイリーの目を盗めるのは数十分だから効率的に捜索しないといけないのだがーー
「アイシア姫。見つけましたよ」
「ぎゃっ」
なんて思ってる矢先に、私はあっという間に首根っこを掴まれケイリーに捕獲されてしまった。
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