Another19 ある日の告白

武「それから、ばあさんと話してな。君の事が気になって色々と調べたよ」

錬「そう…なんですね…」

武「君も瀬那と似たような境遇だったんだな…?」

錬「そうかもしれませんね。自分は幼い頃に魔力を無くしました。だから魔法師としては終わったようなものです。両親にも見捨てられて自暴自棄になりそうな時もありました。でも、真っ直ぐいられたのは俺を育ててくれた養父と血の繋がった弟、事情を知ってる幼馴染や親友その人たちがいたからこそ今の自分がいると思ってます」




そんな話をしていた座敷に1人入ってくる。



「同じような境遇それだけじゃ、ありませんよ?あの子は色んな意味で救われたんですよ。貴方にね?」

錬「えっ?」

「瀬那の祖母の里子です。よろしくね。錬さん?」

錬「は、はい!」

里子「ふふふっ!やっぱりあの子が言っていた通りだわ!」

錬「えっと…どういう事ですか?」




困惑する錬に里子は話始める。




里子「おじさんはわからないかもしれないけどね…」



自宅にいる時は祖母の里子と一緒にご飯の支度をしたりするのが日課だったそうだ。

こっちに来てからの瀬那は何処か自信もなく、殆ど話す事もなかったそうだった。

だが、あのライブ以降は頻繁に錬の名前

を言うようになり結構お喋りになったそうだ。

里子もどんな人か気になり瀬那に尋ねると、顔を赤くして黙った事もあったらしくそれで察したそうだ。




里子「あの子ったら私と話す時はほとんど貴方の話ばかりするもんだから私も気になってねぇ…」

武「お前、そんな話一度も…」

里子「だって、女同士だもの!秘密にしたい事はいくつかありますよ?」

武「あのな、真剣に彼を調べた俺の気持ちは…」




錬を前にして喧嘩を始める2人。

その様子を見ておかしくなってしまった。




錬「あははは!す、すみません!彼女が明るくなった原因は2人にもあるかもしれませんね」

武、里子「えっ?」



取っ組み合いの喧嘩をしていた2人はその言葉に手を止める。



錬「多分、2人を見てると些細な事に拘ってると馬鹿らしく思えてきたのではないかと思いますよ?」

武「ワシらの?」

里子「おかげ?」

錬「ええ。自分はそう思います」




2人は顔を見合わせて微笑む。




武「やはり、瀬那を頼めるのは君しかいないようだ…」

里子「これから聞く話は先の短い私達のお願いだと思って聞いて欲しいの…」



そして、先程とは変わって真面目な表情で錬を見つめる。



武「ワシらは不治の病に侵されてもう数年生きられるかわからない…」

里子「だから、貴方にあの子を託したいの…」

錬「いきなりそんなっ!」



廊下からガシャンという音がしてそちらを見ると、瀬那が立っていたのだ。

どうやらお茶を持って来るところだったらしい。



里子「せ、瀬那!大事な話をするから部屋にいなさいって!」

瀬那「ど、どうして…どうして病気の事を…そんな大事な事黙ってたの!?」

里子「せ、瀬那!!待ちなさい!」




ダダダダと走り去る音がすると

扉を開け閉めする音が聞こえた。




里子「あなた!瀬那が!」

武「わかってる…。だが…今話さなくても、いずれあの子には話さなければいけない事だった」

里子「それは、わかってますが…」

武「すまないな、錬くん…。家族のゴタゴタに巻き込んでしまってな。申し訳ないが瀬那を連れ戻して来てくれないだろうか?」

錬「わかりました。彼女の事は任せて下さい!それと…」




それから錬は瀬那を探す為、外へ向かった。



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