Another17 ある日の暮らし

2010年 10月



錬のマンション一室



瀬那「うぁっ…い、いぃ!!」

錬「…………」


ギシギシ

何かが軋む音が部屋に響く。



瀬那「あっ……そっ、そこっ…だめぇ!」

錬「………」




ベッド上で横になっている人の上に1人が跨っていた。

そのうちの1人は艶っぽい声をあげている。




瀬那「錬さん……気持ちいぃぃぃぃ!」



部屋に響く絶叫のような声。





錬「…………お前な…」




錬は正面に見えている瀬那の頭部をペシっと叩く。




瀬那「うぅっ……だって気持ち良かったんだもん……マッサージ…」

錬「明日からのツアー前に色々特訓して疲れてそうだったからマッサージを買って出たが、なんなんだよあの悩ましい声は?出す必要あったか?」

瀬那「…ちょっと興奮しました?」




悪戯っぽく顔を覗き込む瀬那。

錬の頬が赤く染まっているのがわかった。



瀬那「ふ〜ん……。錬さんのエッチ…」

錬「おまっ」

瀬那「あははは!私、少しベランダに出て風に当たってきますね!」




そう言って駆け足でベランダへ向かう。




錬「全く…アイツは…。風呂に入って休もう…」



浴室へ向かう。

脱衣所で服を脱ぎ、浴室で身体と頭を洗い、流した後ゆっくりお湯へ浸かる。

リコンの組織との対決も近く色々と考える事はあるが、錬は思ってしまう。


こんな穏やかな生活がずっと続けばいいと…

だが、それは叶わない、そんな考えを流すかのように湯船に深く全身を沈める。



ガチャ…

何か音がしたが気にせず顔を湯から上げる。



錬「ブフォッ!」

瀬那「キャッ!」



錬が顔を上げるとそこにはバスタオルを巻いた瀬那がシャワーを浴びていた所だった。



錬「せ、せ、せ、せ、瀬那さん!?さっき先に入りましたよね?」

瀬那「えっと…ちょっと汗もかいちゃったから少し汗を流してから…なんちゃって…」

錬「わ、わかった!それじゃ、俺は先に…上がるからゆっくり汗を…」

瀬那「待って!」




焦って浴室を出ようとする錬を瀬那は手を握り引き止める。




瀬那「最後かもしれないから…一緒に…」




彼女の真剣な眼差しに錬はゆっくり頷く。

浴槽の中で、互いに体育座りで背中合わせに入っていた。



瀬那「私、明日から遙やリーナさんと最後のワールドツワーだからしばらく錬さんに会えなくなる…」

錬「俺は多分そのワールドツワーが終わる頃には戦いの準備に入ると思う…」

瀬那「ねぇ、錬さん…。私ね、こんな毎日がずっと続けばいいなって思ってる…。あんな事があってこれからの事を考えればそんな事を言うのは間違いかもしれないけど…」

錬「いや…。俺も同じさ。こんな当たり前の日常を大切な人達とずっと過ごせたら幸せなんだろうなって」

瀬那「錬さん…」

錬「そんな当たり前の日常を過ごす為にも…俺は」




ザバっ

錬の背中の感触が変わる。



瀬那「ありがとう、錬さん」

錬「せ、瀬那?」

瀬那「好きになった人があなたで良かった」

錬「俺も君で良かった…」



背中から回された手に錬は優しく重ねる。



次の日、瀬那はワールドツアーへ旅立つ。

それを見送った錬はリコンとの決戦に向けて飛燕の最終調整を行っていた。

そして、改めて自分の背負っているものの重さ、大切さを実感したのだった。



ちなみにワールドツアーに参加した瀬那のいつもと違う様子を感じた女子2名はツアーの間中瀬那をからかっていたのだった。

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