第162話 世界を包む歌
ニエドから避難した乗員達。
ブリッジには瀬那と遙もいたのだった。
¨瀬那…¨
瀬那は呼ばれたと思い辺りを見回すが周りは慌ただしく状況を確認している人がほとんどだった。
瀬那「錬…さん?」
そう、錬がニエド内で彼女の名前を呼んでいた頃。蒼穹の中で彼女もまた彼の名前を呟いていた。
祈るように両手を胸の前で組み、目を閉じるとあの時と同じ声が聞こえてきた。
¨錬を…助けてあげて?¨
そんな声が聞こえると、組んだ両手を包み込むように誰かの手が重なった事を瀬那は感じた。
それと同時に自分の中にまた新しい歌が浮かんでくるのがわかった。
瀬那「♪~」
慌ただしいブリッジ内、こんな切羽つまった状況で歌うことは誰もが咎めることであったがそれをするものは誰もいなかった。
それだけでない、ブリッジのシステムが勝手に彼女の歌を全チャンネルで流していたのだ。彼女の歌はシステムを通じ、どんどん世界へ広がっていく。
混乱していた各国も彼女の歌を聴くと、混乱が静まっていっていた。
瀬那(お願い…錬さんに…力を貸して!)
そんな瀬那の想いが通じたのか普段活性化だけし、その場に留まっているだけのマナがどんどんニエドのほうへ集まっていくのが皆の目にもわかった。
ソアラ「可視化されたマナがこんなにも…」
スール「それにあの方向…ニエドに向かっていく?」
瑠衣「瀬那さん…貴女は一体…」
全員が瀬那や可視化されたマナの方向へ目をやっていたが、そこに慌てたレアがブリッジへ入ってくる。
レア「あ、あの!親父…レビックはいませんか!?」
瀬那以外の全員が首を横に振る。
レア「まさか…まだ、ニエドに…?」
どんどんマナが集まっていく方向に全員が目を向けていた。
そんなニエド内では歓喜の声が挙げられていた。
レビック「やったぞ!魔力がどんどん溜まっていく!これならさっき漏れ出た分を補填しても十分に艦を動かせる!」
スカイ:マスター。飛燕も魔力が充填されていきます。声も聞こえます。これは…
錬「あぁ…瀬那だ…。彼女が歌を…」
ぎゅっと拳を握る錬。
レビック「さっ、時間もあまりない…お前さんもこの艦から出ていざという時に備えろ!」
錬「わかりました!レビックさんは?」
レビック「この艦をオートパイロットにしてからゆっくり脱出するから心配するな!」
錬は飛燕に乗り込みニエドから出ていく。
その後、ニエドは浮上すると彗星へ向けて天へ向かっていく。
錬「レビックさん!早く脱出を!」
ニエドに呼びかける錬。
だが、帰ってきた返事は予想を外れたものだった。
レビック『馬鹿を言うな…この艦をただぶつけるだけじゃ駄目なんだろ?炉を限界まで稼働させる必要がある!』
錬「だったら自動でそれを…」
レビック『さっきのな…攻撃でその自動で行う装置がイカレちまったのよ。オートパイロットと浮上させる動力の確保する所は修理できたが他は無理だった。だから、誰かが手動で炉を臨界までもっていかなきゃならねぇ。それをやるのはこの老いぼれで十分だってことだ!』
錬「だったら俺も手伝う!」
錬は飛燕をニエドに近づけようとするがレビックに怒鳴られる。
レビック『馬鹿野郎!お前の相棒も言ってたじゃねーか。あくまで破壊できる可能性があるってな。確実じゃない…だからもしもの時に備えろ?それに大切なものがあるのにそれを残して行くんじゃ駄目だ!』
錬「だったらレビックさんだってレアさんが…」
レビック『うるせぇ!あいつには俺の教えられることはすべて教えた!老いぼれの俺が出しゃばる番は終わりなんだよ!最後くらいかっこつけさせろ…』
錬「レビックさん!」
レビック『それじゃ、あとは頼んだぞ…この地球の未来を…な』
そういって通信を強制的に切られてしまう。
レビック「さて、そろそろか…。王…いや、わが友ドルン。先に逝って待ってるぞ」
レビックは炉を臨界以上まで稼働させるスイッチを押すと、その後すぐにニエドは彗星へ衝突し大きな爆発を起こした。
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