第154話 残された時間・遺された者
日本皇国への襲撃から数日後。
犠牲となった人達の葬儀が行われていた。
負傷者や重症者は多数いたのだが、死者は3名という奇跡的な数字だった。
死者3名…そう、三賢者のみだったのだ。
日本皇国を代表とする魔法師であり、装甲騎手であった3人葬儀も全国中継される程だったのだ。
錬達もその葬儀や通夜には参加した。
だが、そんな錬達も気を落としている場合ではなかった。
葬儀の後、観測所より報告が上がったものがあった。
リコンの言っていたモノの正体…それは巨大な彗星だった。
本来であれば地球の側を通過する筈のルートと計算されていたのだが、ここ数日で地球へ確実に衝突するルートになっていたとの事だ。
衝突すれば地球の生命はほぼ全滅と言ってもいいものだ。
直ぐに開かれた国連会議ではリコンを倒せなかったハバキリの面々への批判が相次いだ。
しかし、日本皇国を含む数カ国はリコンの事について話しても大して対策もせず、流して来た国や国がリコン側についていたという事実が露呈した国へ批判する事となった。
時間もない中、争う姿勢を見せる各国に錬は苦肉の策を投じる他なかった。
錬「もう時間もありません。これは各国の皆さんに協力してもらわなければいけない。技術者の皆さんにはほぼ不眠不休での作業になるかもしれませんが…」
錬が提示した案…それは龍の顎やリコンの魔力砲を参考にした巨大砲台魔装砲それを各国で作成し彗星へ向けて放つ。
一つや二つならば彗星を破壊できないが、恐らく10基ほどそれを打ち込めばもしかすれば破壊できる可能性がある。
「可能性か…だが、確実ではないのだろう?」
錬「無駄だと諦めてこのまま滅びを待ちますか?」
「………」
錬「俺はそんなのは嫌です。万が一可能性があるのであれば俺はそれに賭けたいと思ってます」
その会話の後、各国は満場一致で協力するという事で話がついた。
その日から彗星の観測を行いつつ魔装砲の制作が各国で始まった。
素材の確保や組み立ての時間を考えてもギリギリだ。それに、じっくり試験をする時間もない…耐久性にも問題があるのは確かだった。
一発放てば壊れる可能性が高い。
事実ぶっつけ本番一発勝負になるのは確実…。
数日後、ドワーフの里にて
錬「あとは…」
先日の事を思い出しながら錬は飛燕や他の魔法装甲の補修作業を見ていた錬。
瑠衣やソアラ達がそこにかけつけると、
様子を見ている事を咎められる。
瑠衣「錬さん!ここにいらしたのですか!」
ソアラ「また病室を抜け出したって聞いたから…」
瑠衣「貴方の身体状況…本来であればまだ安静にしていなければいけません…」
錬「大丈夫です…俺はまだ動けます…」
瀬那「………馬鹿!」
バチンという乾いた音と共に錬は頬に痛みを感じた。
瀬那「忘れたんですか?三賢者の奥さん達に言われた事を?」
錬「それは…わかってる…」
瀬那「わかってないです!全然!」
錬「瀬那…」
瀬那「託された想いと、責任…とてつもなく重いのはわかります…。でも、いざとなって動けなくてはそれも無意味になるんですよ?」
錬「………わかった。すみません、瑠衣様。提案された通り、1週間程休養させてもらいます」
瑠衣「構いません。本来であればもう少し休んでもらいたい所ですが…。今は貴方に頼るしかありませんから」
ソアラ「1人で戻れる?」
錬「あぁ…問題ない」
ドワーフの里の医療施設に戻った錬はベッドに横になった。
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