第153話 限界と逃走

1時間…そんな時を2人は戦っていた。

消耗し、互いの武装や機体は悲鳴をあげている。

周りの戦闘はもう殆ど収束していた。

共に来ていた仲間達や戦闘を中継していたのだろうマスコミ関係の機体もチラホラ遠目で彼らの戦闘を見ていた。





リコン「ば、馬鹿な!僕が…僕のオウガが押されてる!」

錬「もらったぞ!」




リコンの魔法装甲…オウガの片腕が宙を舞い、そして、錬の飛燕の双牙龍の一本が折れる。




リコン「くそぉぉぉ!よくもぉぉぉ!うがっ!」



片腕を飛ばされたオウガは飛燕に突進してくるがそれを蹴りを入れ吹き飛ばす。

体制を崩した好機を錬は見逃さず、追撃をすると残った片腕も切り落とす。

再び魔力砲を使用して来たため、錬は残った双牙龍で切り裂くがその際消耗状態からか根本から折れてしまう。

そして、リコンは再び魔力砲を連発しようとするがそれに合わせるように錬も龍の顎を構え互いに至近距離で放つ。

互いの武装は遂に壊れ、可能なのは肉弾戦のみとなった。

しかし、リコンのオウガは両腕を欠いた状態…飛燕は破損はしているものの、両腕はまだ使える。勝敗は誰が見てもわかっていた。




リコン「ふ…ふふふ…それで勝ったつもりかい?」



ゆっくりとオウガに近づいていく飛燕。

手が届く範囲まで来た時、オウガの背後から槍のように鋭い触手のようなものが飛燕目掛けて飛んでくる。




リコン「隠し球というのはこういう事を言うんだよ!死ねぇ!…はぁ?」





リコンは情けない声を上げたのには理由があった。

飛燕目掛け飛んでいた自分の背後に装備されていたであろう武器が飛燕に当たる前に逆に切り裂かれてしまったのだから。




錬「隠し球はそれだけか?」



リコンの武器を切断したのは飛燕の手刀だった。

ただの手刀ではない、マナを纏った錬の十八番だ。



リコン「僕のオウガが…僕の作戦が悉《ことごと》く…」

錬「終わりにしようか…リコン」




動揺して動けなくなっているリコンのオウガに近づきトドメを刺そうとする錬の飛燕。

マナを纏った手刀をオウガに突き刺そうとする刹那、飛燕は突然膝をつく。



飛燕:マスター!機体も貴方の身体も限界です!これ以上は!

錬「まだ…だ!…ゴホッ!」

飛燕:これ以上この状態を維持すると周囲を巻き込む程の爆発と消滅波を生み出します。




錬はまだ、戦闘区域になっている近くに避難していない人がいると言うことや蒼穹にも怪我人がいる事を把握していた為、巻き込む訳にはいかないと今の状態をゆっくり解除する。

リコンは動かない飛燕から素早く離れると、言葉を発する。




リコン「ざ、残念だったな!どうやらトラブルのようだね?僕を倒せなかったことを後悔するといい!僕の機体にはあるを呼び寄せる装置が搭載されている!それは後1ヶ月もすればこの地球に到達する!そして、人類は殆ど滅びを迎える!残った奴らを僕は皆殺しにして僕自身が新たな始祖となる!」




高らかにそう言うと、リコンのオウガはゆっくりと消えていく。

その言葉を聞き、周りの装甲達は戦闘を辞めコチラに向かって来ている事がわかった。




リコン「さぁ、それまで僕はゆっくり隠れながら逃げさせてもらうよ…。ここで撃墜されて君に対応されるかもしれないからね…。それじゃ、僕は高みの見物をさせてもらうよ…」



そして、オウガの姿が消え完全に居なくなってしまった。

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