第138話 2008年 ④大切な人
琳「それじゃ、俺らは邪魔なようだから先に戻ってる」
ウル「少しは時間を稼いでやるからゆっくりしてから来い」
2人は屋上から立ち去ると、屋上には錬と1人の少女のみになっていた。
少女は小走りで錬に近づいてくる。
「どう…ですかね?」
先程会場で見た時とは別の服に着替えたのだろう。赤色のドレス姿になった彼女は少し後大人っぽく見えていた。
錬「う、うん。似合ってる」
「あ、あの…。私…今日は錬さんに大切な話があってきました」
錬「うん…」
「あの……………」
目の前の少女は頬を赤く染め俯くと暫く沈黙する。
いつもなら何か言うところであったが何故か自分でも気が効くような感じの答えが浮かんでこなかった。
錬「えっと…」
「今は大変な時だとわかっています!私は錬さんが好きです!例えどんな事があっても!例えどんなに離れてても、私は錬さんを嫌いにならずに待ってますから!返事は後ででも構いません!」
捲し立てるように言葉を発した目の前の少女。
目に涙を浮かべる少女はその後謝ってくる。
「ごめんなさい…3年後の事を考えるとこんな事言うべきじゃないのかもしれないのも理解してます…。でも、このまま感情を抑えきれなくて…!」
そう言って後ろを向き駆け出そうとした少女。
錬はその少女の手を取り静止させる。
錬「待ってよ!瀬那ちゃん!俺はまだ何も言ってないだろ?」
瀬那「だけどっ!」
涙を流しながら振り向むいた瀬那を錬は引き寄せ優しく抱きしめる。
錬「ごめん。ありがとう…。君にそこまで言わせてしまうなんて男として失格だな…」
瀬那「違います!わ、私がっ!」
錬「本当にごめん…自分でも迷ってたんだ…」
そして、錬は瀬那に自分の心境を話した。
退院の前に気がついた想い、瀬那の存在が自分の中で大きくなっていたがそれをハッキリとさせないままこの先の戦いに赴こうとしていた事。
だけど、今日改めて瀬那を見て、その気持ちを聞いてこのままじゃいけないという事も。
瀬那「それじゃぁ…」
錬「こんな俺で良ければだけど…。よろしくお願いします」
瀬那「うぅっ…」
そして、瀬那はその言葉に錬に思いっきり抱き付きその胸で泣いた。
錬「3年後の戦い絶対勝って君の元へ帰ってくる!」
瀬那「私も待ってます!錬さんの事を嫌いにならずずっと!」
その日、彼女にとっても錬にとっても、互いにかけがえのない大切な存在が1人増えた。
その彼女の生きる世界を守る為にも負けられない。錬はそう決意を新たにしたのだった。
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