第136話 2008年 ②祝いの席

退院したその日、荷物を自宅に置いた錬の元に学校より連絡が入る。

今日、渡すものがあるから学校へ来てほしいというものだった。

唐突な話であったが、両親からも言ってこいと言われた為仕方なく向かう事にしたのだ。

学校へ行くと、冬休みに入っていた為か生徒達はいないようだったが先生達は職員室で忙しそうに仕事をしているようだった。

校長室へ向かうと、校長と芳沢が出迎えてくれた。



校長「無事に退院できたようで何よりだ。以前言えなかった事を伝えるよ。この学園の生徒達や先生達を守ってくれてありがとう。感謝しきれないよ君には」



固く握手される錬。



芳沢「元気そうでよかった!この前もお見舞いに行ってたから、わかっていたけど…。でも、こうして病院の外でこうして会えたこと嬉しく思うよ」



少し他愛もない話をした後、校長から体育館で渡したいものがあるから来てくれとのことで錬は学校の体育館へと向かった。

体育館へ入るとパン!と乾いた音と共に錬に長い紙がかかってくる。




錬「こ、これは?」



体育館には元クラスメイト達だけでなく、自分の家族達やハバキリに所属する面々それに関わった人達やそれに3賢者達もいたのだった。



ウル「やっと主役の登場か…」

尊「待ちくたびれたぞ!」



揉みくちゃにされながら進められるように前に押し出されていく。



「信条錬!」



突然スピーカーから芳沢の声が聞こえると。ステージ上ではいつのまにか校長が待っているようであった。



琳「行ってこい!」

渉「さぁ、兄さん!」



琳と渉に促され、ステージに上がる。



校長「信条錬。本校での学業の全日程を修了したことを証する。卒業おめでとう!そして、改めて言わせてもらうよ。私達がこうして無事にここにいられることに感謝する!」




自分は入院していたためにできていなかった卒業式。

それをわざわざ行ってくれたのだ。

少し涙ぐみながら証書を受け取る。



錬「ありがとう…ございます!」




錬が証書を受け取ると拍手が巻き起こる。

ステージから降りると再び揉みくちゃにされる。

そして、校長が皆に向けて話始める。




校長「さて、今日はめでたい日だ!これからここで祝いの席としよう!皆手伝いを頼むぞ!もちろん主役の錬くんはそのまま待機だ」



校長の言葉が合図になったように体育館へぞくぞくイス、テーブル、料理が準備されていく。そして、ステージには音響関係の機材も運ばれているようだった。

ある程度準備が終わると、再び校長から言葉が発せられた。



校長「本来であれば学校での飲酒など禁止はされている…だが、今日は私は何も見ていない事にする!だから保護者の方々や成人してる皆さんはどうぞこの席を楽しんでいってくれ!あと、生徒の皆はもちろん飲酒は禁止だからな!乾杯の音頭は…錬くんにお願いしようかね?」




他の人達に促され再びステージに登る錬。




錬「えっと……。今日は皆さん、なんだか自分の為に集まってもらったようですみません」

「何謝ってるんだ!」




少しヤジが飛んでくる。



錬「今、自分がこうしてこの瞬間ここにいられるのは入院して寝たきりの自分にリハビリのような事をしてくれた皆さんのおかげです。ありがとうございます!」



精一杯お辞儀をする。

それに誰もヤジを飛ばすものはいなかった。

それから感謝の言葉を告げた後「乾杯!」の声をあげる。

集まっていた人他もそれにつられて乾杯の声をだしたのだった。



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