第134話 真夜中のコール
南極へ向かう艦内で錬はとある人へ連絡をとっていた。
錬「ごめん、こんな時間に…」
『大丈夫です!どうかしました?』
電話口からは若い女性の声が聞こえてくる。
錬「ちょっと声が聴きたくなってさ…」
『らしくないですね…。いつもなら俺に任せろ!みたいな感じなのに』
錬「俺ってそんな感じなのか?」
『そうですよ。それに琳さんや紗菜さん達も言ってましたよ。いつも一人でやってのけてた人だから素直に頼ったり、甘えるのは下手だろうから甘えたりできるよう誘導してやってくれって』
錬「アイツら…!」
『アハハハ!』
ちょっと恥ずかしい感情が湧いてきたからなのかいつの間にかそんな事を言ってしまったが、そんな自分の言葉を聞いたのか電話口の相手が笑っていた。
錬「な、何笑って!?」
『い、いえ!ちょっと安心したんです』
錬「安心?」
『はい!なんとなくですけど、電話口の錬さんの口調少し穏やかになったといいますか…』
錬「そ、そうか?」
『そうですよ!付き合って暫く経ちますけど怖い感じの声な時多かったですし。でも、最近はそれも減ってきてる感じですね』
錬「ごめん…。何か不愉快な感じにさせていたみたいだな…」
『そんな事ありませんよ?謝らないで下さい!錬さんの事情も今の世界の状態も全てではないですが理解してます!そんな中で私のわがままにも付き合ってもらってますから謝るべきは私の方です』
錬「そんな事はないさ。ずっと息抜きも出来ない感じだったのが君と一緒に過ごしたり、出かけてる時とかこうして電話してる時なんかは落ち着いて過ごせている。ありがとう」
『………』
電話口の相手は錬の言葉に何かを察したのか少しの沈黙の後不意に約束をしてくる。
錬「どうかした?」
『あの……。絶対帰って来てくださいね?』
錬「……うん」
『私まだ錬さんの誕生日3回しか祝ってないですから…』
錬は電話口の相手の悲しそうな声をしていたため焦って返答する。
錬「だ、大丈夫!絶対帰る!おおよそ決着がつく頃には誕生日も近いから!」
『約束…ですよ?』
錬「約束する!」
『あっ、あともう一つお母様のケーキも食べたいかな〜』
錬「わ、わかったよ!そっちもお願いしておく!」
『フフフッ!お願いしますね!………絶対無事に帰って来て下さいね。私待ってますから…』
錬「あぁ…。それじゃ、切るよ。ありがとう瀬那」
そして、電話を終え艦の自室から出ると、部屋の前にはニヤニヤ笑っている二人がいた。
錬「な、なんなんだよお前ら!」
ウル「何とは?」
琳「あちらはもう日付変わる時間だってのにラブコールとはな?」
錬「か、構わないだろ!一応恋人同士なんだから!」
ウル「関心はしないな?女性を夜遅くまで拘束しておくのはな…」
琳「まぁ、あちらもあちらでお前の事心配して連絡待ってた感はありそうだけどな!」
錬「ウルサイゾオマエタチ!」
ウル「フッ…」
琳「あははは!こんな事ないとお前をいじられないからな!悪く思うなよ?」
ウル「だが、少しは楽になっただろう?」
錬「そうだな…」
そう、自分たちはこの戦いは負けられない人類の存亡も関わってくるかもしれないのだ。
だが気負いすぎて自滅のようなことにならないようにもしなければいけない…。
様々なプレッシャーからか、いつもなら電話をかける時も時間を気にしていた事も抜け落ちる程冷静な判断が出来なくなっていたようだった。二人に指摘されようやく気がついた。後の祭りだ罪悪感と彼女に嫌わられてしまったのではないかという不安が急に押し寄せてくる。
そんな錬の表情を察してなのか、琳は錬に声をかける。
琳「大丈夫だよ。あの子は簡単にお前の事を嫌いにはならないさ。信じてやれよ」
錬「そう…だな。そう彼女も言ってたからな…」
付き合う前に言われた言葉を思い出していた。
“今は大変な時だとわかっています!私は錬さんが好きです!例えどんな事があっても!例えどんなに離れてても、私は錬さんを嫌いにならずに待ってますから!返事は後ででも構いません!”
そうあの日。二人でした約束も。
それは三年前のことだった。
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